マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: エルドラージランプ
5 《島》 4 《高地の湖》 4 《シヴの浅瀬》 4 《さまよう噴気孔》 4 《魔道士輪の魔力網》 4 《見捨てられた神々の神殿》 2 《繁殖苗床》 -土地 (27)- 3 《希望を溺れさせるもの》 3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー (6)- |
4 《意思の激突》 1 《溺墓での天啓》 4 《次元の歪曲》 2 《予期》 4 《虚空の粉砕》 2 《コジレックの帰還》 1 《粗暴な排除》 1 《疑惑の裏付け》 4 《面晶体の記録庫》 2 《秘密の解明者、ジェイス》 2 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文 (27)- |
3 《現実を砕くもの》 2 《焦熱の衝動》 2 《否認》 2 《コジレックの帰還》 2 《熱病の幻視》 1 《希望を溺れさせるもの》 1 《破滅の昇華者》 1 《焙り焼き》 1 《歪める嘆き》 -サイドボード (15)- |
先週末は2つのスタンダードGPが開催され、その両方を白緑トークンが制したことが話題となったが、その片方、【グランプリ・マンチェスター2016のトップ8デッキ】の中でも最も異彩を放っていたのがこのデッキだ。
4枚フル搭載された《意思の激突》《虚空の粉砕》に加えて《粗暴な排除》《疑惑の裏付け》と、「カウンター呪文が弱い」と言われる現代にあるまじきヘビーカウンターな構成から、大胆に3枚も搭載されたフィニッシャー・《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が降臨する。序盤に打ち漏らしたクリーチャーは《次元の歪曲》や《コジレックの帰還》できっちり対処できる。
《ヴリンの神童、ジェイス》のせいでいまいち居場所を見つけられていなかった《秘密の解明者、ジェイス》も、ランプというアーキタイプならば必要不可欠なアドバンテージ源としてきっちり機能しそうだ。
多様なアーキタイプが存在するスタンダードにおいては、得手不得手の振れ幅が大きい赤緑のランプと比べて最高速度は落ちるものの、対戦相手への干渉手段はより多いこの青赤ランプの方が、環境には合っているということなのかもしれない。
【「エルドラージランプ」でデッキを検索】
■ モダン: 土地破壊
10 《森》 1 《山》 1 《平地》 2 《踏み鳴らされる地》 1 《聖なる鋳造所》 1 《寺院の庭》 4 《樹木茂る山麓》 2 《吹きさらしの荒野》 1 《新緑の地下墓地》 1 《ケッシグの狼の地》 -土地 (24)- 4 《東屋のエルフ》 2 《極楽鳥》 2 《最後のトロール、スラーン》 1 《龍王アタルカ》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー (10)- |
4 《石の雨》 4 《ムウォンヴーリーの酸苔》 4 《ニッサの誓い》 4 《楽園の拡散》 3 《血染めの月》 4 《先駆ける者、ナヒリ》 2 《復讐のアジャニ》 1 《野生語りのガラク》 1 《龍語りのサルカン》 3 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文 (30)- |
4 《突然のショック》 3 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 3 《機を見た援軍》 3 《大祖始の遺産》 2 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード (15)- |
エルドラージがモダンに残した爪痕は大きかったが、同時にエルドラージがいたからこそ発展したアーキタイプもある。土地破壊がそれだ。
先手2ターン目に《石の雨》を撃たれても平然としていられるのは、モダンといえど「親和」くらいのものだろう。しかも1ターン目のマナ加速が《東屋のエルフ》ならまだしも《稲妻》で妨害できるが、もし《楽園の拡散》スタートならば手札破壊くらいでしか防ぎようがないのだ。
《先駆ける者、ナヒリ》は除去・ドロー・フィニッシャーと多様な役割で土地破壊にありがちな噛み合わない手札のパターンを緩和してくれるし、《復讐のアジャニ》は《ハルマゲドン》をちらつかせつつ相手の土地を縛ることが可能だ。タッチ白は《血染めの月》と相性が悪いように見えて、《ニッサの誓い》があれば何の問題もない。
64枚のデッキリストは一見奇異に見えるかもしれないが、《ニッサの誓い》《先駆ける者、ナヒリ》《炎呼び、チャンドラ》といった豊富なサーチ・ドロー手段があれば1枚差しにも意味が出てくる。《突然の衰微》の効かない4マナ以上のプレインズウォーカーを2体以上並べることができれば、モダンではあまり見られないようなカードパワーによる暴力を堪能することができそうだ。
【「土地破壊」でデッキを検索】
■ レガシー: ゾンバードメント
3 《沼》 1 《森》 2 《血の墓所》 2 《草むした墓》 1 《Badlands》 4 《血染めのぬかるみ》 3 《汚染された三角州》 1 《湿地の干潟》 1 《蛮族のリング》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地 (19)- 4 《屍肉喰らい》 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《墓所這い》 4 《恐血鬼》 3 《サテュロスの道探し》 1 《ズーラポートの殺し屋》 2 《秘蔵の縫合体》 1 《不気味な腸卜師》 -クリーチャー (23)- |
4 《陰謀団式療法》 4 《信仰無き物あさり》 2 《引き裂かれた記憶》 1 《悪魔の意図》 1 《壌土からの生命》 1 《生き埋め》 2 《ゴブリンの砲撃》 2 《黄泉からの橋》 1 《虚空の力線》 1 《Helm of Obedience》 -呪文 (19)- |
3 《突然の衰微》 2 《古えの遺恨》 2 《ゴルガリの魔除け》 2 《ラクドスの魔除け》 1 《強迫》 1 《胆汁病》 1 《発展の代価》 1 《血染めの月》 1 《虚空の力線》 1 《真髄の針》 -サイドボード (15)- |
レガシーの《墓所這い》+《恐血鬼》+《ゴブリンの砲撃》デッキ、いわゆる「ゾンバードメント」といえばSam Blackがデザインしたデッキとして有名だ。戦場と墓地を行き来するクリーチャーを駆使し、《屍肉喰らい》や《陰謀団式療法》といったカードを有効活用するこのデッキは、数多くのシナジーを内包しており、特にフェアデッキとの対戦においては無類の強さを発揮する。
小粒のクリーチャーが多いように見えて意外に高い打点と、《死儀礼のシャーマン》《ゴブリンの砲撃》といったカードによって戦闘を挟まずにライフを削りにいける器用さを持ち合わせていることで、このデッキを相手にする際はプレイングやサイドボードがなかなかに難しい。
期待の新戦力《秘蔵の縫合体》は《墓所這い》《恐血鬼》と違ってブロックできるのが頼もしい。《虚空の力線》《Helm of Obedience》はそれぞれ1枚ずつだが、うっかり揃ってしまえばそれだけでゲームセットだ。
だが何よりこのデッキが素晴らしいのは、《Force of Will》《実物提示教育》《ヴェールのリリアナ》《ライオンの瞳のダイアモンド》といったカードを使っておらず、フェッチランドや《恐血鬼》さえ持っていればかなりお財布に優しくなるというところだ。いわゆる「アリストクラッツ」系のデッキが好きという方は、一度このデッキを試してみるといいだろう。
【「ゾンバードメント」でデッキを検索】
■ ヴィンテージ: エルドラージ
4 《魂の洞窟》 4 《コイロスの洞窟》 2 《Karakas》 4 《古えの墳墓》 4 《エルドラージの寺院》 1 《裏切り者の都》 3 《ウギンの目》 -土地 (22)- 4 《果てしなきもの》 4 《エルドラージのミミック》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 1 《迷宮の霊魂》 3 《変位エルドラージ》 4 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 -クリーチャー (24)- 1 《Black Lotus》 1 《Mox Emerald》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Pearl》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Sapphire》 -パワー9 (6)- |
1 《虚空の杯》 1 《Mana Crypt》 1 《太陽の指輪》 4 《アメジストのとげ》 1 《梅澤の十手》 -呪文 (8)- |
4 《封じ込める僧侶》 4 《神聖の力線》 2 《四肢切断》 2 《虚空の力線》 1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《弁論の幻霊》 1 《梅澤の十手》 -サイドボード (15)- |
今回は特別にヴィンテージのデッキもお届けしよう。今後についても毎週というわけにはいかないが、時々挟んでいくつもりだ。
さて今回紹介するのはマジック・オンラインで開催された【パワー9チャレンジ】の入賞デッキである。この大会は優勝こそ「ドレッジ」だったものの、トップ8には合計20枚もの《難題の予見者》が存在するという驚きの結果となった。そう、エルドラージのカードパワーは既にヴィンテージ環境をも侵略し始めているのだ。
その要因はやはり《磁石のゴーレム》が制限カードとなってしまったことにあるのだろう。これにより《Mishra's Workshop》は「先手1ターン目《アメジストのとげ》」によるMoxenへの牽制は依然として実現できるものの、それ以外のクロックを展開するための土地としては、甚だ心もとないものとなってしまった。また《虚空の杯》も制限カードなので、先手で妨害カードを設置するにはもう一種類の妨害カードが欲しいのだが、《抵抗の宝球》では素のコストが重いエルドラージにとっては負担となる。こういった経緯から、《エルドラージの寺院》《スレイベンの守護者、サリア》《難題の予見者》に白羽の矢が立ったものと思われる。
「オース」「メンター」「MUD」と定番のアーキタイプでメタゲームが回っていくかと思われていたところに突如として殴り込んできた「エルドラージ」。これからはヴィンテージも、群雄割拠の戦国時代へと突入していくのかもしれない。
【「エルドラージ」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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