週刊デッキウォッチング vol.73 -スワンアサルト etc.-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: エルドラージランプ



Aoki Yuutarou「エルドラージランプ」
平日スタンダード17時の部(3-0)

6 《森》
6 《島》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
3 《伐採地の滝》
4 《見捨てられた神々の神殿》
1 《ウギンの聖域》

-土地 (24)-

3 《ラムホルトの平和主義者》
3 《面晶体の這行器》
2 《エルフの幻想家》
1 《森の代言者》
2 《不屈の追跡者》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《もう一人の自分》
3 《現実を砕くもの》
3 《希望を溺れさせるもの》
1 《破滅の伝導者》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー (22)-
4 《ニッサの巡礼》
4 《逆境》
2 《謎の石の儀式》
2 《面晶体の記録庫》
2 《秘密の解明者、ジェイス》

-呪文 (14)-
3 《薄暮見の徴募兵》
3 《呪文萎れ》
3 《巻き締め付け》
2 《ガイアの復讐者》
2 《深海の主、キオーラ》
1 《大いなる歪み、コジレック》
1 《ウギンの聖域》

-サイドボード (15)-
hareruya



ラムホルトの平和主義者希望を溺れさせるもの逆境



 エルドラージランプはコントロールには圧倒的な相性を誇るものの、反対にアグロデッキや《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は苦手とすることが多い。そこで最近では、隆盛する人間アグロと《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》への対抗策として、《ラムホルトの平和主義者》《森の代言者》といったブロッカー兼プレインズウォーカーへのプレッシャー要員を採用した、いわゆる「アグロランプ」がバリエーションとして見られる傾向にあり、MOPTQも突破している(→【参考】)。

 このデッキはそんな「アグロランプ」の系列だが、赤緑ではなく青緑を選択している点が特徴的だ。《希望を溺れさせるもの》はブロッカーとマナブーストを兼ねることができるし、《謎の石の儀式》も貼ってあれば6マナから一気に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》のマナ域まで到達することも可能だ。また、対抗色ならではの《伐採地の滝》《森の代言者》と合わせてコントロール相手の切り札となりうる。

 とはいえブロッカーとして採用された程度のクリーチャーだけで相手を倒し切ることができるか不安に思うかもしれないが、そこは【Temur New Generation】でもお馴染み(?)の《Time Walk》こと《逆境》が攻守を転換する役割を果たす。《もう一人の自分》は状況に合わせて《現実を砕くもの》《希望を溺れさせるもの》、はたまた対戦相手のクリーチャーにもなれる上に、有り余るマナの注ぎ込み先としても最適だ。

 何より強力なのが《秘密の解明者、ジェイス》で、「-2」能力がバウンスであるために《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》と違って純粋にコントロール的な用途だけでは使いづらいこのカードだが、潤沢なアタッカー/ブロッカーと合わせて使うならば、戦闘のバックアップ要員として申し分ない。《先駆ける者、ナヒリ》《死の宿敵、ソリン》《アーリン・コード》と次々と活躍の舞台を見つけている他の『イニストラードを覆う影』のプレインズウォーカーたちに続いて、ついに《秘密の解明者、ジェイス》にも居場所が見つかったようだ。


【「エルドラージランプ」でデッキを検索】





■ モダン: 青赤コントロール



Masuda Satoshi「青赤コントロール」
休日モダン17時の部(3-0)

12 《冠雪の島》
8 《冠雪の山》
4 《滝の断崖》
2 《ダクムーアの回収場》

-土地 (26)-

2 《瞬唱の魔道士》
2 《呪文滑り》
3 《ブリン・アーゴルの白鳥》
1 《真実の解体者、コジレック》

-クリーチャー (8)-
4 《血清の幻視》
3 《稲妻》
2 《雪崩し》
2 《呪文嵌め》
1 《信仰無き物あさり》
2 《マナ漏出》
2 《差し戻し》
3 《神々の憤怒》
1 《謎めいた命令》
3 《血染めの月》
2 《突撃の地鳴り》
1 《月の賢者タミヨウ》

-呪文 (26)-
2 《頑固な否認》
2 《大祖始の遺産》
1 《イゼットの静電術師》
1 《嵐の息吹のドラゴン》
1 《嵐の神、ケラノス》
1 《破壊放題》
1 《死亡+退場》
1 《瞬間凍結》
1 《対抗変転》
1 《塵への崩壊》
1 《真髄の針》
1 《墓掘りの檻》
1 《漸増爆弾》

-サイドボード (15)-
hareruya



ブリン・アーゴルの白鳥突撃の地鳴りダクムーアの回収場



 悪名高き《欠片の双子》コンボがついにモダンで禁止になって以降、青赤というカラーリングはそれに代わる新たなフィニッシュコンボを求め続けてきた。そして、【vol.56】で紹介した《新たな造形》や、《裂け目の突破》に可能性を見出すプレイヤーもいる中で、懐かしの《ブリン・アーゴルの白鳥》《突撃の地鳴り》コンボ、通称「スワンアサルト」のモダンにおける可能性の開拓に乗り出したのがこのデッキだ。

 このコンボのメリットはなんといっても「モダン環境の標準除去である《稲妻》が効かない」という点にある。この点《血染めの月》を貼ってしまえば対戦相手がプレイできる除去はもはや《稲妻》くらいのものだろうから、メインに3枚も積まれた《血染めの月》はコンボの露払いにこれ以上なく相応しい。

 コンボパーツである《突撃の地鳴り》が2枚というのは少なく見えるが、《ブリン・アーゴルの白鳥》さえ着地してしまえば、《神々の憤怒》は全体除去+3ドローとなるし、《稲妻》に至っては《Ancestral Recall》となるので、容易にたどり着くことができる。

 《血清の幻視》《稲妻》を擁する青赤というカラーリングは、もとより攻守のバランスに長けている。《ブリン・アーゴルの白鳥》コンボというフィニッシャーが見つかった今、モダンにおける青赤の復権は、もはや時間の問題と言えるかもしれない。


【「青赤コントロール」でデッキを検索】





■ レガシー: スタイフルノート



Maehara Kouichi「スタイフルノート」
Known Magicians Clan – Invitational 7th 併設レガシー(5位)

2 《島》
1 《山》
2 《Volcanic Island》
2 《Tundra》
4 《沸騰する小湖》
2 《霧深い雨林》
2 《魂の洞窟》
1 《教議会の座席》
4 《不毛の大地》
2 《アカデミーの廃墟》

-土地 (22)-

3 《ファイレクシアン・ドレッドノート》
1 《渋面の溶岩使い》
4 《瞬唱の魔道士》
4 《粗石の魔道士》

-クリーチャー (12)-
4 《渦まく知識》
4 《もみ消し》
4 《稲妻》
2 《呪文嵌め》
1 《呪文貫き》
4 《意志の力》
3 《雲変化》
1 《呪われた巻物》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《真髄の針》
1 《師範の占い独楽》

-呪文 (26)-
2 《紅蓮破》
1 《渋面の溶岩使い》
1 《嵐の神、ケラノス》
1 《狼狽の嵐》
1 《侵襲手術》
1 《外科的摘出》
1 《摩耗+損耗》
1 《粉々》
1 《残響する真実》
1 《焦熱の合流点》
1 《誤った指図》
1 《トーモッドの墓所》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《真髄の針》

-サイドボード (15)-
hareruya



もみ消しファイレクシアン・ドレッドノート雲変化



 「わずか2マナで12/12トランプルを場に出せるコンボ」として有名な《もみ消し》《ファイレクシアン・ドレッドノート》、通称「スタイフルノート」だが、《剣を鍬に》で以下略という弱点があるほかにも、《もみ消し》自体フェッチランドの起動に合わせて撃てたりと何かと汎用性が高く、反面コンボパーツとして手札に残りづらいという難点があった。

 そこでこのデッキは《もみ消し》を経由せずに《ファイレクシアン・ドレッドノート》を降臨させる手段として、『運命再編』より《雲変化》というマニアックなカードを採用している。普通にプレイしても「予示」で出てくるのはランダムなライブラリトップだが、《渦まく知識》と合わせれば必然の12/12トランプル、しかも飛行+呪禁の究極生命体となって降臨するという夢のあるコンセプトである。

 もし《渦まく知識》が引けなくても《師範の占い独楽》とフェッチランドで《ファイレクシアン・ドレッドノート》を探せば良い上に、《師範の占い独楽》《ファイレクシアン・ドレッドノート》ともども《粗石の魔道士》で探してこれるので、《意志の力》のコスト云々という常套句を抜きにしても、《雲変化》が手札に腐って困ることは少ないだろう。

 呪禁の《ファイレクシアン・ドレッドノート》を処理できるデッキはレガシーといえど少ないし、《アカデミーの廃墟》《ファイレクシアン・ドレッドノート》をトップに乗せてからの《雲変化》という裏ルートもある。マイナーなアーキタイプは研究している競合プレイヤーが少ないため、最近のエキスパンションのカードリストを見直してみることで、意外な発見がもたらされるかもしれないのだ。


【「スタイフルノート」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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