USA Standard Express vol.50 -GP Buenos Aires etc.-

Kenta Hiroki


みなさんこんにちは!

編集スタッフや読者の皆さんの支えもあってUSA Standard Expressは今回で50回目を迎えることができました。今後もアメリカの大会結果を中心に皆さんにスタンダードの情報を提供していきたいと思うのでよろしくお願いいたします。


さて、今回の記事では現環境最後のスタンダードの大会のSCGO BaltimoreGP Buenos Airesの結果を見ていきたいと思います。


GP Buenos Aires トップ8
~現環境最後のスタンダードのGPを制したのはAbzan~


2015年6月28日

Pascal Maynard

1位 Abzan Control/白黒緑コントロール
2位 GR Devotion/緑信心
3位 Mardu Midrange/白黒赤ビートダウン
4位 Mardu Midrange/白赤黒ビートダウン
5位 Esper Control/白青黒コントロール
6位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
7位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
8位 Abzan Midrange/白黒緑ビートダウン

トップ8入賞者の半分がAbzan系を選択し、優勝を収めたのもAbzan Megamorphでした。GR Devotionは今回も準優勝と安定した成績を残し続けています。



GP Buenos Aires デッキ解説

「Abzan Control」



Pascal Maynard「Abzan Control」
GP Buenos Aires (1位)

2 《平地》
2 《森》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《砂草原の城塞》
4 《疾病の神殿》
4 《ラノワールの荒原》
3 《静寂の神殿》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(24)-

4 《サテュロスの道探し》
4 《棲み家の防御者》
4 《クルフィックスの狩猟者》
3 《死霧の猛禽》
4 《包囲サイ》

-クリーチャー(19)-
4 《思考囲い》
1 《究極の価格》
4 《アブザンの魔除け》
3 《英雄の破滅》
1 《対立の終結》
1 《命運の核心》
3 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(17)-
2 《アラシンの僧侶》
2 《風番いのロック》
2 《究極の価格》
2 《悲哀まみれ》
1 《死霧の猛禽》
1 《強迫》
1 《胆汁病》
1 《自傷疵》
1 《ドロモカの命令》
1 《対立の終結》
1 《英雄の導師、アジャニ》

-サイドボード(15)-
hareruya



今大会見事に優勝を収めたPascal MaynardはGP Las VegasのプレイオフのドラフトでFoil《タルモゴイフ》をピックしたことで一躍有名となったアメリカのプロです。そのGP Las Vegasでもトップ4にまで勝ち残っている強豪プレイヤーです。

Abzan Megamorphは市川ユウキ選手がGP上海を制して以来、最も人気のあるAbzanの形として定着しているようです。


☆注目ポイント


デッキの完成度の高さからあまり変化がないように見えますが、脅威の種類の多様化により最近はメイン《命運の核心》2枚よりも《対立の終結》《命運の核心》のスプリットになっています。
サイドにはPWよりも《風番いのロック》が優先的に追加の勝ち手段として採用されていることから、Esper Dragonsよりも緑系のデッキとのマッチアップを意識しているようです。

『マジック・オリジン』からも《巨森の予見者、ニッサ》《衰滅》といったこのデッキでも使えそうな新カードが見られるので、今後も人気が出そうなデッキです。

対立の終結命運の核心風番いのロック





SCGO Baltimore トップ8
~Abzan Aggroの名手Andrew Boswellがトロフィー獲得~


2015年6月28日

Andrew Boswell

1位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン
2位 GR Devotion/緑信心
3位 Bant Megamorph/白青緑ビートダウン
4位 Jeskai Aggro/白青赤ビートダウン
5位 GR Megamorph/緑信心
6位 Mono Red Goblins/赤単
7位 Mono Red Devotion/赤単
8位 GR Devotion/緑信心

環境最後のSCGO BaltimoreはAbzan Aggroの優勝で幕を閉じました。今大会を制したAndrew BoswellのAbzan Aggro、準優勝を収めたChris AndersonのGR DevotionKevin JonesのJeskaiなど、各自が使い慣れたデッキで結果を残していたのが印象的でした。



SCGO Baltimore デッキ解説

「Abzan Aggro」「Mono Red Devotion」



Andrew Boswell「Abzan Aggro」
SCGO Baltimore (1位)

2 《森》
1 《平地》
3 《吹きさらしの荒野》
4 《マナの合流点》
4 《砂草原の城塞》
4 《ラノワールの荒原》
2 《コイロスの洞窟》
2 《静寂の神殿》
1 《豊潤の神殿》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(24)-

4 《始まりの木の管理人》
4 《羊毛鬣のライオン》
4 《ラクシャーサの死与え》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
3 《オレスコスの王、ブリマーズ》
2 《責め苦の伝令》
4 《包囲サイ》
1 《狩猟の統率者、スーラク》

-クリーチャー(26)-
4 《ドロモカの命令》
3 《勇敢な姿勢》
3 《究極の価格》

-呪文(10)-
4 《思考囲い》
3 《狩人狩り》
3 《自傷疵》
1 《責め苦の伝令》
1 《黄金牙、タシグル》
1 《神々の思し召し》
1 《勇敢な姿勢》
1 《究極の価格》

-サイドボード(15)-
hareruya



Abzan Aggroを一貫して使い続けているAndrew Boswellは今大会でついに優勝を収めました。
他のリストと異なり《棲み家の防御者》やPWなどは不採用で全体的に軽い構成になっており、Aggroと呼ぶのに相応しいリストに仕上がっています。


☆注目ポイント


《風番いのロック》やPWなど重いフィニッシャーは不採用で《始まりの木の管理人》《オレスコスの王、ブリマーズ》など軽いクリーチャーが多めに採られています。
特に《オレスコスの王、ブリマーズ》は攻守に優れ、Mono Redのような速いクリーチャーデッキとの相性が緩和されています。

除去も《英雄の破滅》《アブザンの魔除け》といった3マナの除去よりも《究極の価格》《勇敢な姿勢》といった軽いスペルが優先されています。特に《勇敢な姿勢》は自軍のクリーチャーを相手の除去から守る手段にも使えるので無駄になり難いのが強みです。
サイドの《狩人狩り》は1マナと軽く、緑信心に対して除去兼強化スペルとして使える優秀なスペルです。

始まりの木の管理人オレスコスの王、ブリマーズ勇敢な姿勢






Dylan Hysen「Mono Red Devotion」
SCGO Baltimore (7位)

21 《山》
1 《精霊龍の安息地》
3 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-土地(25)-

4 《龍を操る者》
4 《大歓楽の幻霊》
4 《炎跡のフェニックス》
3 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《モーギスの狂信者》
4 《雷破の執政》
1 《灰雲のフェニックス》
4 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー(28)-
3 《火口の爪》
4 《龍詞の咆哮》

-呪文(7)-
4 《乱撃斬》
4 《焙り焼き》
4 《神々の憤怒》
3 《かき立てる炎》

-サイドボード(15)-
hareruya



同じ赤単でも速さを重視したリストと異なり《嵐の息吹のドラゴン》《雷破の執政》も採用した中速寄りの構成で、《モーギスの狂信者》《ニクスの祭殿、ニクソス》など信心要素も見られます。そのため《龍を操る者》《炎跡のフェニックス》といった色拘束の強いクリーチャーが多数採用されています。


☆注目ポイント


《龍を操る者》は2マナ2/2とサイズは平凡ですが、自身の起動型能力で飛行を得ることができ、パンプ能力も持っています。さらに「圧倒」達成時のみ起動できる能力はドラゴントークンを生み出し、中盤以降も十分に強さを発揮するクリーチャーです。また、ダブルシンボルという色拘束の強さは信心を集めるのにも貢献します。

《炎跡のフェニックス》《嵐の息吹のドラゴン》《雷破の執政》《灰雲のフェニックス》といった回避能力持ちのクリーチャーが多く採用されているため、緑系のミッドレンジに対して強い構成で、たとえ地上を固められてもダメージを与え続けることが可能です。
《ニクスの祭殿、ニクソス》から得たマナによる《火口の爪》や、《モーギスの狂信者》で戦闘をすることなく止めを刺すことも可能です。

モーギスの狂信者龍を操る者雷破の執政



Interview With Kevin Jones

SCGO、SCG Premier IQなどでコンスタントに結果を出し続けている強豪プレイヤーのKevin Jones(※)は、今大会ではJeskaiで入賞を収めています。
今回の記事のためにデッキについてお話を聞くことができました。


※編注:Kelvin Jonesは現在【SCG Player Championshipの年間ランキング】で首位をマークしている、SCGを代表する強豪プレイヤー。

『タルキール覇王譚』直後に完成度の高いJeskai AggroでSCGOを優勝し、プロツアーのメタゲームに多大な影響を与えた張本人。



Kevin Jones「Jeskai Aggro」
SCGO Baltimore (4位)

2 《平地》
2 《島》
1 《山》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《神秘の僧院》
4 《凱旋の神殿》
3 《天啓の神殿》
3 《戦場の鍛冶場》
3 《シヴの浅瀬》

-土地(26)-

4 《魂火の大導師》
2 《層雲の踊り手》
4 《カマキリの乗り手》
3 《ゴブリンの熟練扇動者》
2 《龍王オジュタイ》

-クリーチャー(15)-
4 《稲妻の一撃》
3 《勇敢な姿勢》
2 《軍族童の突発》
4 《かき立てる炎》
3 《オジュタイの命令》
3 《時を越えた探索》

-呪文(19)-
3 《軽蔑的な一撃》
3 《神々の憤怒》
3 《見えざるものの熟達》
2 《アラシンの僧侶》
1 《異端の輝き》
1 《否認》
1 《焙り焼き》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-サイドボード(15)-
hareruya



■Jeskaiを選んだ経緯

Kevin: Jeskaiは環境初期から使い続けているデッキで(『タルキール覇王譚』リリース直後に開催されたSCGO New JerseyではJeskaiを持ち込み優勝を収めている)たぶんメタ的に不利な立ち位置でも使い続けると思う。そもそも、圧倒的に不利なマッチもそんなにないしね。

緑系のミッドレンジが人気だった今大会ではメタ的にもかなり有利なポジションだったよ。他のプレイヤーは緑系のデッキ対策やミラーマッチの対策で大忙しで、メインにもサイドにも対策(Jeskaiに対して)が薄かったのも勝因かな。
Abzanも今は《死霧の猛禽》《棲み家の防御者》の大変異クリーチャーのシナジーを重視して《胆汁病》のような軽い除去が減らされる傾向にあるから《カマキリの乗り手》のような軽いクリーチャーが強い。

Jeskaiは状況に応じて攻守を切り替えられるアグロコントロールで、サイドボードのカードの選択肢が豊富なのもこのデッキを使う理由になる。


--《オジュタイの命令》の使い勝手は?

Kevin: 《オジュタイの命令》は強かったよ。4つの全てのモードが使用に耐える強さで、攻守において優れているからこちらの軽いクリーチャーによるプレッシャーに耐え兼ねてクリーチャーを出してきた相手に合わせて使える。
でも一番強いのは《魂火の大導師》の「バイバック」能力との組み合わせだね。


--相性の良いマッチ、悪いマッチについて教えて

Kevin: 有利なマッチはMardu Dragons、Abzan Aggro、GW Company、Heroic、UB ControlでAbzan Control(大変異含む)、RG Dragons、緑信心、は互角から微有利で不利なマッチはEsper Dragons、Atarka Red、Whip系とJeskai Tokensかな。

カマキリの乗り手オジュタイの命令魂火の大導師



■サイドボードについて

Kevin: メインが緑系のミッドレンジとのマッチアップを想定して構築されているのに対して、サイドはやや不利になるEsper DragonsとAtarka Red対策に重点を置いている。
《見えざるものの熟達》はEsper Dragonsや同系対策で《軽蔑的な一撃》はAtarka RedとHeroic以外の全てのマッチでサイドインされる。
《神々の憤怒》はAtarka Redのような速いデッキ対策と《死霧の猛禽》対策。《太陽の勇者、エルズペス》はサイド後コントロールデッキにシフトする際に投入される。


--なるほど。今回は詳しく説明してくれてありがとう。

発売当初は《謎めいた命令》を彷彿させるスペルで活躍が期待されていた《オジュタイの命令》。今回のKevin JonesのJeskaiはこの《オジュタイの命令》を有効に使える戦略のようで、《本質の散乱》しつつアドバンテージを得られるのでクリーチャーを主体とするデッキが多い現在のスタンダードのメタにも合っています。


ボーナストピック

先述のKevin Jonesと、SCGの強豪プレイヤーであるGerry Thompson(※)に新セット『マジック・オリジン』についてお話を聞くことができました。

※編注:Gerry Thompsonはアメリカのプロプレイヤーであり、SCGの看板ライター。
スタンダードとリミテッドを得意とし、SCGのトーナメントシリーズでも数多く入賞している。PTトップ8入賞1回、SCG Invitationalトップ8入賞計6回。


■ 『マジック・オリジン』の印象

Kevin: 『マジック・オリジン』は素晴らしいセットだと思う。全体的にカードパワーも高めで、ユニークなカードが多いね。

Gerry: 新しいカードも再録カードも強くて、2色デッキでも活躍しそうなものも多い。『タルキール龍紀伝』もそうだったけど、スタンダードで使えそうなカードがたくさん見られるからデッキを作るのが楽しそうだね。



■好きなカードは?

Kevin: まずJeskaiで使えそうなカードは《ヴリンの神童、ジェイス》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》かな。他には《ゴブリンの群衆追い》《群れのシャーマン》《テレパスの才能》なんかもよく見かけることになりそうかな。

Gerry: 《巨森の予見者、ニッサ》《衰滅》が今のところベストなカードだと思うけど、個人的に一番興味があるのは《ヴリンの神童、ジェイス》。環境の青をベースにしたデッキで、新たな2マナ域の戦力として使えそうだね。昼の面のルーティング能力で「探査」を持った《時を越えた探索》《宝船の巡航》が今までよりもキャストしやすくなりそうなのも使ってみたい理由かな。





総括

環境最後のスタンダードのGPとSCGOを制したのは、形は違うもののAbzanカラーのデッキでした。
『タルキール覇王譚』リリース以来環境に応じて形を変えながら大きな大会で結果を残し続けているデッキで、ローテーションまで人気が続きそうです。
『マジック・オリジン』は最後の基本セットということで全体的にカードパワーが高めで、リーガルになるSCGO Chicagoが楽しみですね。

以上USA Standard Express vol.50でした。
次回の記事では新環境初の大規模なスタンダードの大会であるSCGO Chicagoの結果を中心にカバーしていく予定です。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!



※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『StarCityGames.com』
http://www.starcitygames.com/index.php


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