週刊デッキウォッチング vol.76 -契約デックウィン-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Scottish_Wayfinder「ローグ」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

8 《森》
8 《島》
4 《伐採地の滝》
3 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《ならず者の道》
1 《荒廃した森林》

-土地 (25)-

4 《エルフの幻想家》
4 《棲み家の防御者》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《つむじ風のならず者》
1 《世界を壊すもの》

-クリーチャー (12)-
4 《予期》
3 《眠りへの誘い》
3 《ニッサの巡礼》
3 《爆発的植生》
2 《千里眼》
4 《押し潰す触手》
3 《水の帳の分離》
1 《ニッサの復興》

-呪文 (23)-
3 《森の代言者》
3 《死霧の猛禽》
2 《払拭》
2 《水撃》
1 《ジャディの横枝》
1 《アイノクの生き残り》
1 《世界を壊すもの》
1 《侵襲手術》
1 《翼切り》

-サイドボード (15)-
hareruya



押し潰す触手棲み家の防御者水の帳の分離



 スタンダードの環境末期には思いもよらぬデッキが往々にして登場する。『イニストラードを覆う影』期のスタンダードは白と緑が支配的な環境だったわけだが、白と緑が支配的ということは、パーマネントを並べるデッキばかりということでもある。ならば最終的には《押し潰す触手》こそが環境への解答、なんて事態も起こりうるのだ。

 【グランプリ・ピッツバーグ2016】【トップ32デッキリスト】で知られるようになったこのアーキタイプは、《棲み家の防御者》《押し潰す触手》によるハーフロックの実現を目標とする。そのためには10マナほど必要になるため、《ニッサの巡礼》《爆発的植生》によるマナブーストを取り入れたマナランプ的な構造となっている。

 ランプ的構造のデッキは白単人間や《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》による高打点が厳しいところ、《エルフの幻想家》《眠りへの誘い》が最序盤の守りの要となる。適当にターンを稼いだ後は《予期》《千里眼》《押し潰す触手》を探し出し、タコと戯れるだけの単純な作業だ。

 11マナあれば《水の帳の分離》からの《押し潰す触手》「怒濤」という必殺のタコワープも可能となる。プレインズウォーカーをものともしない最強のリセット手段だけに、『異界月』後の環境でも活躍が期待できそうだ。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: ローグアグロ



ナカモト カズマサ「ローグアグロ」
WMCQ2016東京予選ラストチャンス予選(2位)

2 《島》
1 《平地》
1 《沼》
1 《神無き祭殿》
1 《神聖なる泉》
1 《蒸気孔》
1 《湿った墓》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
3 《湿地の干潟》
1 《天界の列柱》
2 《トレイリア西部》

-土地 (22)-

1 《ニヴメイガスの精霊》
4 《闇の腹心》
4 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー (9)-
4 《否定の契約》
4 《タイタンの契約》
3 《殺戮の契約》
4 《流刑への道》
4 《頑固な否認》
4 《目くらましの呪文》
3 《天使の嗜み》
3 《交錯の混乱》

-呪文 (29)-
2 《思考囲い》
2 《外科的摘出》
2 《天界の粛清》
2 《紅蓮地獄》
2 《真髄の針》
1 《渋面の溶岩使い》
1 《呪文滑り》
1 《摩耗+損耗》
1 《石のような静寂》
1 《バジリスクの首輪》

-サイドボード (15)-
hareruya



闇の腹心タイタンの契約天使の嗜み



 トップ8に「ドレッジ」が2人、「昇天」が2人、さらに優勝は「スケープシフト」と、モダンのメタゲームの移り変わりを実感させるトップ8となった【ワールド・マジック・カップ2016東京予選】だが、その前日に開催された【ラストチャンストライアル】では、そんな世間の風潮などものともしないウルトラ個性的なデッキが、惜しくも準優勝で予選の参加権利を逃していた。

 60枚の平均マナコストが約0.63という驚異的なまでに軽いスペルだけで構成されたこのデッキは、11枚もの「契約」スペルを《闇の腹心》でタダで手に入れ、《瞬唱の魔道士》で使いまわすという漢気溢れる構成となっている。

 もちろんそんなにポンポン「契約」していたらあとで多重債務の支払いが大変なことになるのだが、そこは【アドグレイス】でお馴染みの《天使の嗜み》が徳政令を発布してくれるので何の問題もない。マナの使い道はほとんどないので、《目くらましの呪文》の「変成」で《天使の嗜み》をサーチする動きはデッキにすこぶる噛み合っている。

 さらにこれだけ「契約」スペルを積んでいると、《ニヴメイガスの精霊》を一瞬で化け物みたいなサイズに成長させることも可能となる。もしかするとこのデッキも【Super Crazy Zoo】のように、一年後にはモダンのメタゲームの一角に食い込んでいるかもしれない。


【「ローグアグロ」でデッキを検索】





■ レガシー: 発掘



Bazsiuz「発掘」
Legacy Constructed League(5-0)



-土地 (0)-

4 《ナルコメーバ》
4 《冥界の影》
4 《ゴルガリの凶漢》
4 《秘蔵の縫合体》
4 《臭い草のインプ》
4 《よろめく殻》
4 《イチョリッド》
3 《欄干のスパイ》
4 《通りの悪霊》
4 《ゴルガリの墓トロール》
1 《憎悪縛りの剥ぎ取り》
4 《変幻影魔》

-クリーチャー (44)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《陰謀団式療法》
4 《戦慄の復活》
4 《黄泉からの橋》

-呪文 (16)-
4 《不快な群れ》
4 《Contagion》
4 《トーモッドの墓所》
1 《別館の大長》
1 《灰燼の乗り手》

-サイドボード (14)-
hareruya



秘蔵の縫合体ゴルガリの墓トロール不快な群れ



 【vol.22】以来の登場となる、「ダイスで勝って後手、ディスカードしてエンド」が最適戦略となる変態デッキ、「ノーランドドレッジ」。モダンでは《傲慢な新生子》《秘蔵の縫合体》の登場が【ドレッジ】を超一線級のデッキまで引き上げたわけだが、同様にこのデッキも《秘蔵の縫合体》によってアップデートされることとなった。

 最終的には《欄干のスパイ》で自分のライブラリをすべて削り落とし、《陰謀団式療法》のバックアップのもとで《憎悪縛りの剥ぎ取り》《戦慄の復活》した後に極大サイズの《ゴルガリの墓トロール》《戦慄の復活》で釣り上げることがゴールとなるこのデッキだが、《秘蔵の縫合体》を入れたことで土地を置かずとも場に出せるパワー3のクリーチャーが《イチョリッド》も含めて8体になり、通常ビートダウンによるプレッシャーをかけやすくなったことは大きな収穫と言える。黒のクリーチャーということで、いざとなれば《イチョリッド》の餌にもできる。

 またサイドボードからは土地がなくてもプレイできる《Contagion》《不快な群れ》を搭載しており、《秘蔵の縫合体》はそのコストとしても役に立つ。

 土地が入っていないということは、フェッチもデュアランも一切不要ということでもある。レガシーのデッキとしては破格の安さと言えることから、これからレガシーに参入したい方の入門デッキとしても評価できるだろう。


【「発掘」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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