週刊デッキウォッチング vol.77 -赤単スニーク-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: リアニメイト



Tsukada Atsushi「リアニメイト」
FNM20時の部(3-0)

15 《沼》
3 《ラノワールの荒原》
1 《シヴの浅瀬》
4 《精霊龍の安息地》
2 《溺墓の寺院》

-土地 (25)-

3 《搭載歩行機械》
3 《ファルケンラスの後継者》
4 《闇告げカラス》
4 《精神壊しの悪魔》
3 《現実を砕くもの》
2 《龍王コラガン》
2 《龍王シルムガル》
2 《龍王アタルカ》

-クリーチャー (23)-
4 《闇の掌握》
2 《骨読み》
4 《末永く》
2 《悪意の調合》

-呪文 (12)-
3 《難題の予見者》
2 《アンデッドの大臣、シディシ》
2 《強迫》
2 《精神背信》
2 《鞭打つ触手》
2 《衰滅》
1 《ドロモカの命令》
1 《餌食》

-サイドボード (15)-
hareruya



末永く現実を砕くもの龍王コラガン



 《末永く》《龍王コラガン》《龍王アタルカ》を一度に釣り上げて14点を叩き込むというコンセプトは【vol.64】でも紹介したが、このデッキはそのバリエーションとして、《ファルケンラスの後継者》《闇告げカラス》《現実を砕くもの》を採用してよりアグロ要素を強めている部分に特徴がある。

 《末永く》《龍王コラガン》《龍王アタルカ》を釣り上げて14点を叩き込むと、返しでどちらかを除去されても6点以上入るので隙がないところ、そもそも最初から6点以上のダメージを与えていれば、《末永く》を撃った時点で勝利が確定する。そして6点だけ削ればいいなら《ファルケンラスの後継者》はその役割にうってつけだ。

 また《闇告げカラス》はどちらかといえば墓地を肥やせるブロッカーとしての側面が強く、《精神壊しの悪魔》の「昂揚」達成のための露払いとなりつつ、釣り上げたい龍王や《溺墓の寺院》を墓地に送り込むことができる。

 最近は出番がなく環境に存在していることを忘れがちな《精霊龍の安息地》は、このデッキにおいては手札に来てしまった《龍王コラガン》の赤マナ、《龍王シルムガル》の青マナ、《龍王アタルカ》の赤マナと緑マナを供給する多色土地としての役割に加え、《現実を砕くもの》の無色までも供給してくれるスーパー万能ランドとなる。『異界月』からは能動的に墓地を肥やせるプレインズウォーカーである《最後の望み、リリアナ》が加わることもあり、新環境での進化も楽しみなアーキタイプだ。


【「リアニメイト」でデッキを検索】





■ モダン: エルドラージランプ



Alex_VoroG「エルドラージランプ」
Modern Constructed League(5-0)

2 《荒地》
4 《エルドラージの寺院》
4 《ウルザの塔》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの鉱山》
4 《幽霊街》
1 《海門の残骸》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地 (24)-

3 《呪文滑り》
4 《作り変えるもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
4 《終末を招くもの》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《大いなる歪み、コジレック》

-クリーチャー (22)-
3 《歪める嘆き》
3 《四肢切断》
4 《虚空の杯》
4 《探検の地図》

-呪文 (14)-
4 《大祖始の遺産》
4 《漸増爆弾》
3 《全ては塵》
2 《真髄の針》
2 《バジリスクの首輪》

-サイドボード (15)-
hareruya



ウルザの塔難題の予見者虚空の杯



 《エルドラージの寺院》に加えての5~8枚目のマナ加速手段である《ウギンの目》を禁止改定で失った「エルドラージ」は、代わりにマナクリーチャーに目をつけ、【バントエルドラージ】へと変化を遂げた。だがモダンでマナ加速に長けたコンセプトといえば他にも「ウルザトロン」があり、そして《ウルザの塔》《ウルザの魔力炉》《ウルザの鉱山》は無色土地なのだ。ならば「エルドラージトロン」という発想に至るのはごく自然と言えるだろう。

 トロンと違って《彩色の星》《彩色の宝球》《古きものの活性》を採用しておらず、マナコストが1マナのカードは《探検の地図》くらいなので、《虚空の杯》を投入して1マナ封じを図っている。最近のモダンは【SCZ】【青赤昇天】を見ればわかるように1マナに寄せた構築が主流となっていることから、フィールドの多くのデッキに対して切り札となるほか、苦手な【親和】にも先手「X=0」で高速展開を封じにいくこともできる。

 コンボデッキに対して無抵抗に見えるが、《難題の予見者》からの《現実を砕くもの》ものはどんなデッキも相手にしたくない動きだし、《風景の変容》のようなソーサリーを主軸にしたコンボは《歪める嘆き》の餌食となる。《終末を招くもの》は除去/時間稼ぎ/アドバンテージソースとフィニッシャーを兼ねるだけでなく、サイドボードの《バジリスクの首輪》と組み合わせることで盤面を完全に制圧できる。

 サイドボードから飛んでくる《全ては塵》はトロンが使うそれと違い、クロックが存在する状況で打たれるので、単なるリセットを超えた《疫病風》の上位互換となる。《ウギンの目》が禁止となった今こそ、逆に「エルドラージ」を研究するべき最良のタイミングなのだ。


【「エルドラージランプ」でデッキを検索】





■ レガシー: 騙し討ち



Jeff Hoogland「騙し討ち」
StarCityGames.com – Legacy Open 2016/07/10 Worcester(7位)

9 《山》
1 《鋭き砂岩》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
1 《水晶鉱脈》

-土地 (19)-

4 《猿人の指導霊》
2 《山賊の頭、伍堂》
2 《業火のタイタン》
3 《グリセルブランド》
2 《世界棘のワーム》
2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (15)-
4 《煮えたぎる歌》
4 《裂け目の突破》
4 《血染めの月》
4 《騙し討ち》
4 《虚空の杯》
4 《水蓮の花びら》
2 《殴打頭蓋》

-呪文 (26)-
3 《三なる宝球》
2 《月の大魔術師》
2 《破壊放題》
2 《突然のショック》
2 《紅蓮光電の柱》
2 《紅蓮術》
1 《紅蓮地獄》
1 《沸騰》

-サイドボード (15)-
hareruya



騙し討ち山賊の頭、伍堂裂け目の突破



 「エルドラージ」の登場はレガシーのメタゲームに大きな影響を与えた。今やサイドボードに《基本に帰れ》《血染めの月》《灰からの再興》といった特殊地形対策を積んだデッキは珍しくない。しかしエルドラージ側もそれを予期し、《漸増爆弾》《全ては塵》をサイドボードから搭載してくるのがもはや通例となっている。ならばどうすればいいのか?そう、メインから《血染めの月》で嵌め殺せばいいのだ。

 《猿人の指導霊》《水蓮の花びら》のセットと《古えの墳墓》《裏切り者の都》のセットがそれぞれ合計8枚ずつ搭載されている以上、1ターン目に3マナ出すことは造作もない。そこから《虚空の杯》《血染めの月》のいずれかを設置すれば、その両方に引っかからないレガシーのデッキはほとんどないであろうから、対戦相手は大幅に行動を制限される。そうなればあとは動けない相手を《騙し討ち》で速やかに屠るだけだ。

 《騙し討ち》の代替として《裂け目の突破》も採用されており、恒例の《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》だけでなく、《世界棘のワーム》だったとしても対戦相手にとっては致命傷であることに変わりはない。また《山賊の頭、伍堂》からの《殴打頭蓋》というオプションは、これらを素引きしても使用に耐えうるという意味で非常にうまいリスクケアだ。

 サイドボードの《紅蓮術》《封じ込める僧侶》《カラカス》対策として申し分ない。《血染めの月》が強そうなメタゲームだと思ったなら、このデッキを選択肢の一つとして検討してみるといいだろう。


【「騙し討ち」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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