週刊デッキウォッチング vol.82 -ゲートウォッチ配備-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Tw33Ty「ローグ」
Standard PTQ – #10010523(10位)

1 《森》
1 《島》
1 《山》
1 《平地》
1 《沼》
2 《燃えがらの林間地》
2 《大草原の川》
2 《燻る湿地》
1 《窪み渓谷》
4 《進化する未開地》
4 《崩壊する痕跡》
4 《ラノワールの荒原》
2 《戦場の鍛冶場》
1 《ヤヴィマヤの沿岸》

-土地 (27)-

1 《龍王アタルカ》

-クリーチャー (1)-
3 《衰滅》
2 《ゲートウォッチ配備》
4 《ニッサの誓い》
3 《チャンドラの誓い》
3 《リリアナの誓い》
2 《最後の望み、リリアナ》
1 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》
3 《先駆ける者、ナヒリ》
3 《実地研究者、タミヨウ》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《アーリン・コード》
2 《揺るぎないサルカン》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
2 《炎呼び、チャンドラ》
1 《死の宿敵、ソリン》

-呪文 (32)-
4 《前線の僧侶》
3 《強迫》
3 《光輝の炎》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《龍王シルムガル》
1 《衰滅》

-サイドボード (15)-
hareruya



ゲートウォッチ配備実地研究者、タミヨウ先駆ける者、ナヒリ



 発売当初はプレインズウォーカー版《集合した中隊》として期待されながらも、「プレインズウォーカーをデッキにそんなに入れることができない」という冷静な反論を受けてネタ神話レアとしての人気を一身に集めていた《ゲートウォッチ配備》だが、デッキビルダーたちの飽くなき挑戦により、ついにガチデッキとして日の目を見ることとなった。

 27枚の土地に《進化する未開地》《崩壊する痕跡》を潔くフル搭載した上で《ニッサの誓い》も積んでおり、5色のカードを素でプレイする気満々のこのデッキは、中心となるプレインズウォーカーを《ゲートウォッチ配備》から配備したいプレインズウォーカー第1位&第2位(晴れる屋調べ)」であるところの《炎呼び、チャンドラ》《死の宿敵、ソリン》を常識的な枚数に留め、代わりに《先駆ける者、ナヒリ》《実地研究者、タミヨウ》という軽くて場持ちの良いプレインズウォーカーを多めに搭載している点に特徴がある。

 プレインズウォーカーの枚数を削ってまでも《チャンドラの誓い》《リリアナの誓い》《衰滅》をきちんと3枚ずつ積むことで、プレインズウォーカーコントロール、いわゆる「スーパーフレンズ」に《ゲートウォッチ配備》をちょっとだけ混ぜ込んでいることから、デッキとして破綻なく、きちんと戦える構造になっているのが魅力だ。

 もちろん1枚ずつ搭載されたプレインズウォーカーをゲームごとに違う順番でプレイする楽しさは失われていない。楽しさと強さを両立したデッキという意味で、このデッキも前回の【赤黒バーン】に負けず劣らずクリエイティブなデッキと言えるだろう。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: ローグ



Akita Naoto「ローグ」
PPTQ2017#1 – 横浜西公会堂(優勝)

6 《沼》
2 《島》
1 《湿った墓》
4 《汚染された三角州》
4 《忍び寄るタール坑》
3 《欺瞞の神殿》
3 《幽霊街》
2 《ダークスティールの城塞》

-土地 (25)-

2 《呪文滑り》
3 《粗石の魔道士》

-クリーチャー (5)-
4 《コジレックの審問》
4 《思考囲い》
3 《血清の幻視》
2 《冥府の教示者》
1 《ズアーの運命支配》
3 《仕組まれた爆薬》
2 《拷問台》
1 《写本裁断機》
1 《真髄の針》
3 《罠の橋》
1 《魔女封じの宝珠》
4 《ヴェールのリリアナ》
1 《ボーラスの工作員、テゼレット》

-呪文 (30)-
3 《集団的蛮行》
3 《マナ漏出》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《喉首狙い》
1 《残響する真実》
1 《四肢切断》
1 《無限の抹消》
1 《魂の裏切りの夜》
1 《トーモッドの墓所》
1 《大祖始の遺産》

-サイドボード (15)-
hareruya



粗石の魔道士ヴェールのリリアナ罠の橋



 モダン環境にはたまに、突然変異としか言いようがないデッキが誕生する。赤緑トロン……アミュレットブルーム……そして【Super Crazy Zoo】。それらは禍々しい見た目と理解不能な成立経緯を持ちながらも、例外なく環境を支配するほどのポテンシャルを有していた。そして今、その系列に連なるのではないかと思えるほどに圧倒的に禍々しい見た目のデッキが目の前にある。これを見逃す手はないだろう。

 このデッキはいわゆる「メガハンデス」と【ランタンコントロール】とのハイブリッドのような構造をとっている。ただ《洞察のランタン》《グール呼びの鈴》といった置物を並べる代わりに《仕組まれた爆薬》《ヴェールのリリアナ》を採用したことで、盤面の制御を《罠の橋》に依存することなく、モダン特有の様々なオールインに対して耐性を獲得しているのが特徴だ。

 もちろん《洞察のランタン》によるドローロックがない分、お互いに平たい盤面からトップデッキでまくられてしまう確率は高まるが、そこは最強のユーティリティカードこと《粗石の魔道士》が状況に応じて《拷問台》《仕組まれた爆薬》《真髄の針》《写本裁断機》をサーチし分けることで、イレギュラーな状況にも対応できるようになっている。

 【ワールド・マジック・カップ2016東京予選】で高速化した環境への対策としてメインから《仕組まれた爆薬》を積んだ《風景の変容》が見事優勝という結果となったことからもわかるように、《欠片の双子》を失って以降のモダン環境は極端に速度を追求したデッキばかりが蔓延っている。そんな環境において独自のポジションを主張するこのアーキタイプは、あまりにも多い「わからん殺し」要素と合わせて、今後の研究の進展が非常に楽しみなデッキだ。


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■ レガシー: 茶単



Disgruntled_Elk「茶単」
Competitive Legacy Constructed League(5-0)

3 《平地》
2 《カラカス》
2 《魂の洞窟》
4 《コイロスの洞窟》
3 《エルドラージの寺院》
4 《古えの墳墓》
4 《不毛の大地》
1 《水晶鉱脈》
3 《裏切り者の都》

-土地 (26)-

3 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《ファイレクシアの破棄者》
2 《石鍛冶の神秘家》
4 《異端聖戦士、サリア》
3 《変位エルドラージ》
4 《磁石のゴーレム》
4 《難題の予見者》

-クリーチャー (22)-
2 《歪める嘆き》
1 《四肢切断》
4 《虚空の杯》
3 《モックス・ダイアモンド》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》

-呪文 (12)-
3 《剣を鍬に》
3 《安らかなる眠り》
2 《封じ込める僧侶》
2 《解呪》
2 《真髄の針》
2 《アメジストのとげ》
1 《歪める嘆き》

-サイドボード (15)-
hareruya



異端聖戦士、サリア磁石のゴーレム虚空の杯



 あるフォーマットのデッキアイデアがまた別の全く異なるフォーマットに流用されるというのは、何も珍しいことではない。特にレガシーとヴィンテージは禁止・制限カードの量以外は実質的にカードプールはほぼ共通のため、互いに様々なアイデアを共有する関係にある。このデッキ、「白単サリア」もその一つだ。

 元ネタとなったのはマジックオンラインのヴィンテージ大会で【活躍した】デッキで、『ゲートウォッチの誓い』時点から存在していた【白単エルドラージ】からエルドラージ要素を薄め、代わりに《異端聖戦士、サリア》をフル投入した構造となっている。ヴィンテージと違ってMoxenや《Black Lotus》はないが、《モックス・ダイアモンド》が同じ役割を担う。

 《難題の予見者》《磁石のゴーレム》と合わせて、先手2ターン目までにプレイできれば圧倒的に有利に立てるカードをこれでもかと取り揃えており、《古えの墳墓》《水晶鉱脈》《裏切り者の都》に(限定的だが)《エルドラージの寺院》という豊富な2マナ生成土地と合わせて、嵌めパターンは多岐に渡る。

 さらに今週末に発売される【『コンスピラシー:王位争奪』】でも、《護衛募集員/Recruiter of the Guard》や《聖域の僧院長/Sanctum Prelate》など、白くて強力なカードが目白押しとなっている。奇跡やデス&タックスなどと同様、この「白単エルドラージ」も、これから要注目のアーキタイプとなっていきそうだ。


【「茶単」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


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