週刊デッキウォッチング vol.83 -帰ってきたアミュレットブルーム-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 赤緑ビートダウン



Sukegawa Hayato「赤緑ビートダウン」
休日スタンダード20時の部(3-0)

6 《森》
5 《山》
4 《燃えがらの林間地》
2 《進化する未開地》
4 《獲物道》
3 《ハンウィアーの要塞》

-土地 (24)-

4 《薄暮見の徴募兵》
4 《森の代言者》
2 《小村の隊長》
4 《ハンウィアー守備隊》
4 《不屈の追跡者》
4 《罪を誘うもの》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《カラデシュの火、チャンドラ》

-クリーチャー (25)-
4 《アタルカの命令》
3 《集団的抵抗》
4 《集合した中隊》

-呪文 (11)-
2 《苛性イモムシ》
2 《空への斉射》
2 《引き裂く流弾》
2 《翼切り》
2 《威圧の誇示》
2 《焼夷流》
2 《護法の宝珠》
1 《アーリン・コード》

-サイドボード (15)-
hareruya



ハンウィアー守備隊アタルカの命令罪を誘うもの



 《ハンウィアー守備隊》を見たとき、誰もが「《集合した中隊》と組み合わせたい」と考えたはずだが、にもかかわらずそのコンセプトはなかなか形になることはなかった。攻撃的な《ハンウィアー守備隊》に合わせてデッキを前のめりに寄せすぎると《集合した中隊》の威力も減衰するし、また戦線をこじ開けるためのスペルも大量に必要になってしまうからだ。

 そこでこのデッキは「バントカンパニー」の思想とマナ域を転用し、赤と緑の太いクリーチャーのみを採用することで、長期戦になっても戦い抜ける構造をとっている。《罪を誘うもの》は土地は手札に入らないものの、優秀な3マナ域のクリーチャーたちをめくり続ければ、対戦相手はそういつまでもライフを支払うことはできないだろう。

 攻撃的なベクトルを持つ《ハンウィアー守備隊》が浮いているようにも見えるが、中盤~終盤でも《アタルカの命令》との組み合わせは脅威になりうるし、《集合した中隊》から《小村の隊長》と一緒にめくれれば一撃必殺レベルの打点をたたき出せる。《不屈の追跡者》《巨森の予見者、ニッサ》で土地が伸びるので《ハンウィアーの要塞》との「合体」もかなり現実的だ。

 ある程度ライフを削った後は、《不屈の追跡者》のドローから《アタルカの命令》《集団的抵抗》を重ねる「待ち」の状態にもできる。《ハンウィアー守備隊》の居場所は、実はこうした中速デッキにこそあるのかもしれない。


【「赤緑ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: 精力の護符ランプ



jmaw「精力の護符ランプ」
Modern Constructed League(5-0)

2 《森》
4 《宝石鉱山》
1 《崩壊する痕跡》
1 《宝石の洞窟》
4 《シミックの成長室》
4 《グルールの芝地》
1 《ボロスの駐屯地》
3 《トレイリア西部》
1 《カルニの庭》
1 《幽霊街》
1 《光輝の泉》
1 《ケッシグの狼の地》
1 《処刑者の要塞》
1 《軍の要塞、サンホーム》
1 《ヴェズーヴァ》

-土地 (27)-

4 《桜族の斥候》
3 《迷える探求者、梓》
2 《猿人の指導霊》
4 《原始のタイタン》
1 《女王スズメバチ》

-クリーチャー (14)-
4 《召喚士の契約》
1 《否定の契約》
4 《血清の幻視》
4 《古きものの活性》
1 《集団意識》
1 《仕組まれた爆薬》
4 《精力の護符》

-呪文 (19)-
2 《強情なベイロス》
1 《シルヴォクののけ者、メリーラ》
1 《不屈の追跡者》
1 《スラーグ牙》
1 《自然の要求》
1 《アケノヒカリの注入》
1 《紅蓮地獄》
1 《突然のショック》
1 《古えの遺恨》
1 《炎渦竜巻》
1 《神々の憤怒》
1 《集団意識》
1 《ボジューカの沼》
1 《幽霊街》

-サイドボード (15)-
hareruya



精力の護符桜族の斥候原始のタイタン



 【今年初めの禁止改定】《欠片の双子》とともに《花盛りの夏》がモダン環境を去ったことで、「アミュレットブルーム」というデッキ自体も過去のものとなったかのように思われていた。しかし、2キルする手段を失ったとはいえ、1ターンに複数枚の土地を置くことができれば《精力の護符》と『ラヴニカ』の「お帰りランド」とのコンボが大量のマナを生むことに変わりはない。そしてモダンの広大なカードプールならば、1ターンに複数枚土地を置く方法など他にもいくらでも存在するのだ。

 《桜族の斥候》は初期の「アミュレットブルーム」には採用されていたこともあるカードで、わずか1マナのクリーチャーながら土地を手札から場に出せる能力を持っている。無論それだけではすぐに手札が尽きてしまうが、置いた土地が《グルールの芝地》《シミックの成長室》のような「お帰りランド」なら話は別だ。

 また、《花盛りの夏》は禁止になったとはいえ《迷える探求者、梓》は健在であり、《精力の護符》が戦場に出ていれば《シミックの成長室》1枚から《原始のタイタン》が速攻でアタック、ついでに《否定の契約》を構えるところまで行きかねないという、圧倒的なまでの嵌めパターンが存在するのが強みだ。

 モダンの「土地コンボ」は感染・親和や【Super Crazy Zoo】の隆盛により押され気味だが、逆に言えば現在はマークが甘いということでもある。「土地コンボ」の中でも随一の爆発力を持つこの「アミュレットブルーム」は、これから要注目のデッキと言えるだろう。


【「精力の護符ランプ」でデッキを検索】





■ レガシー: 黒緑アグロ



sgretolatore「黒緑アグロ」
Legacy Constructed League(5-0)

6 《森》
3 《沼》
2 《Bayou》
4 《新緑の地下墓地》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《樹木茂る山麓》
2 《ドライアドの東屋》

-土地 (23)-

4 《老練の探険者》
2 《死儀礼のシャーマン》
4 《エルフの幻想家》
3 《不屈の追跡者》
1 《永遠の証人》
1 《森林の怒声吠え》
1 《大祖始》

-クリーチャー (16)-
4 《陰謀団式療法》
4 《緑の太陽の頂点》
2 《思考囲い》
2 《無垢の血》
3 《突然の衰微》
3 《自然の秩序》
3 《破滅的な行為》

-呪文 (21)-
3 《大祖始の遺産》
2 《思考囲い》
2 《見栄え損ない》
2 《クローサの掌握》
2 《Chains of Mephistopheles》
2 《窒息》
1 《永遠の証人》
1 《大渦の脈動》

-サイドボード (15)-
hareruya



老練の探険者不屈の追跡者自然の秩序



 レガシーというのはあまりに簡単に色を足せる上に《渦まく知識》があればそうそう事故らないものだから、ついついあれもこれもとタッチして「グッドスタッフ」の名を借りた産業廃棄物を作ってしまいがちだ。しかしそういったデッキは往々にして《秘密を掘り下げる者》デッキの《もみ消し》や土地単の《不毛の大地》、あるいは奇跡デッキのサイドボードに入った《基本に帰れ》《灰からの再興》に咎められることになるのであり、そうなって初めてレガシー初心者はレガシーにおける多色化のリスクを知ることになるのである。

 信じられるのは結局のところ基本地形のみ。その観点からするとこれほどソリッドなデッキもないだろう。緑と黒の純正2色に《老練の探険者》《死儀礼のシャーマン》、そして《緑の太陽の頂点》《ドライアドの東屋》とのシナジーを搭載し、《不毛の大地》するのが馬鹿らしくなるほどにマナを伸ばした後は、《不屈の追跡者》が有り余るマナを生かしてアドバンテージを獲得する。

 エルフのそれとは異なり、6枚の手札破壊のバックアップを受けた《自然の秩序》は確実に《大祖始》を着地させ、2度のアタックでゲームを終わらせる。《破滅的な行為》《精神を刻む者、ジェイス》こそ流せないものの、《無垢の血》と合わせてクリーチャーを殲滅するには十分だ。《森林の怒声吠え》《永遠の証人》《不屈の追跡者》を呼び出し、消耗戦を戦い抜くだけのリソースを確保してくれる。

 手札破壊による妨害、除去、アドバンテージ獲得手段、そしてフィニッシュのコンボ。すべてを緑と黒の2色で完璧に担えるのだから、多色化の必要はもはやない。ありそうでなかった黒緑ミッドレンジは、レガシーの奥深さをまた一つ見せてくれたようだ。


【「黒緑アグロ」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事

このシリーズの過去記事