週刊デッキウォッチング vol.84 -エル・タコビジョン-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: エルドラージストンピィ



Yokota Kazuya「エルドラージストンピィ」
平日スタンダード20時の部(3-0)

5 《島》
4 《山》
4 《シヴの浅瀬》
4 《さまよう噴気孔》
4 《見捨てられた神々の神殿》
4 《ウギンの聖域》

-土地 (25)-

4 《作り変えるもの》
4 《現実を砕くもの》
4 《老いたる深海鬼》

-クリーチャー (12)-
4 《流電砲撃》
4 《次元の歪曲》
3 《予期》
4 《コジレックの帰還》
1 《一日のやり直し》
3 《粗暴な排除》
4 《熱病の幻視》

-呪文 (23)-
3 《難題の予見者》
3 《タイタンの存在》
3 《即時却下》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
2 《否認》
1 《エルドラージの寸借者》
1 《払拭》

-サイドボード (15)-
hareruya



熱病の幻視老いたる深海鬼現実を砕くもの



 【プロツアー『カラデシュ』地域予選in東京】では《熱病の幻視》《老いたる深海鬼》という一見噛み合わなさそうな2枚をうまく活用した【タコビジョン】をピックアップしたが、今回はそこにさらに無色マナからのエルドラージ要素も加えた「エル・タコビジョン」を取り上げよう。

 【タコビジョン】よりもシナジー色を薄くし、コントロール要素が強まったこのデッキでは、《流電砲撃》《次元の歪曲》という8枚の単体除去と、フル搭載した《コジレックの帰還》で、《呪文捕らえ》はもちろんあらゆる低マナクリーチャーの生存を許さない。

 さらに《熱病の幻視》《作り変えるもの》で下準備を整えた後は、《現実を砕くもの》が一気にゲームをクライマックスに持っていく。ブロッカーを《老いたる深海鬼》でタップすれば、《さまよう噴気孔》と合わせて計2回ほどのアタックで対戦相手のライフは消失するだろう。他にも《作り変えるもの》の能力で《熱病の幻視》がめくれればフィーバー間違いなしだ。

 また7枚目の土地を置いて以降の《見捨てられた神々の神殿》は、《老いたる深海鬼》の素プレイを助けることはもちろん、そこから予想できない角度で飛んでくる《粗暴な排除》により圧倒的なまでのテンポをも獲得できる。《ウギンの聖域》による「タコループ」も自然に搭載したこのデッキのコンセプトは、《シヴの浅瀬》の穴が埋められるかが焦点となるが、次の『カラデシュ』環境でも参考にするべき部分が多そうだ。


【「エルドラージストンピィ」でデッキを検索】





■ モダン: 風景の変容



Jeff Hoogland「風景の変容」
StarCityGames.com – Modern Classic 2016/09/04 Richmond(3位)

1 《森》
1 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
4 《樹木茂る山麓》
3 《吹きさらしの荒野》
4 《トロウケアの敷石》
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
1 《飛翔する海崖》

-土地 (27)-

4 《ステップのオオヤマネコ》
4 《板金鎧の土百足》
4 《聖遺の騎士》

-クリーチャー (12)-
4 《流刑への道》
4 《探検》
4 《魔力変》
1 《遥か見》
4 《風景の変容》
4 《虹色の前兆》

-呪文 (21)-
4 《爆裂+破綻》
3 《神々の憤怒》
3 《石のような静寂》
3 《罠の橋》
1 《ボジューカの沼》
1 《ドライアドの東屋》

-サイドボード (15)-
hareruya



ステップのオオヤマネコ風景の変容虹色の前兆



 スタンダード/モダン/レガシーのすべてに精通し、SCG Tourのポイントランキングで首位を走りながらも個性的なデッキ選択で知られるJeff Hooglandは、今回も「アグロスケープ」というかなりマニアックなデッキ選択でモダンのイベントの上位に入賞した。《ステップのオオヤマネコ》《板金鎧の土百足》といった「上陸」能力持ちクリーチャーの後に繰り出される《探検》、ここまではまだいい。だが伸ばしたマナから繰り出されるのは《虹色の前兆》、そして《風景の変容》(!)なのだ。

 通常《風景の変容》というデッキは土地を7枚まで伸ばすのとそのターンまで生き残ることに主眼が置かれているが、それだけに能動的なアクションは少なく、対戦相手に的確なリアクションを構えられてしまうと《風景の変容》コンボを決められなくなってしまう。そこでこのデッキでは最序盤からパワー4~6ほどにもなるクリーチャーを展開してプレッシャーをかけることにより相手に対応を迫り、相手がマナを使ったところでコンボを決める、という【Super Crazy Zoo】にも似た思想のデッキとなっている。

 また《虹色の前兆》は設置すれば土地をすべて《山》としてカウントできるようになるため、6枚目の土地を置くだけで《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が誘発することはもちろん、《風景の変容》を撃って《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》4枚を含む土地6枚を持ってくるだけで72点が飛ぶという恐ろしいカードである。

 また対戦相手のライフが10点ほどまで減っていれば、《聖遺の騎士》《風景の変容》《飛翔する海崖》を持ってきてアタックして勝ちという文字通りの「飛び道具」もある。このデッキを知らない人が相手なら、ほぼ確実に「わからん殺し」できるだろう。


【「風景の変容」でデッキを検索】





■ レガシー: バント



David Courson「バント」
StarCityGames.com – Legacy Classic 2016/09/04 Richmond(13位)

1 《森》
3 《Tropical Island》
2 《Tundra》
1 《Scrubland》
1 《Underground Sea》
4 《霧深い雨林》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《吹きさらしの荒野》
4 《不毛の大地》

-土地 (20)-

4 《貴族の教主》
3 《死儀礼のシャーマン》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《真の名の宿敵》
2 《トレストの使者、レオヴォルド》
1 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー (18)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
1 《思案》
4 《目くらまし》
4 《意志の力》
1 《森の知恵》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (22)-
2 《翻弄する魔道士》
2 《外科的摘出》
2 《突然の衰微》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《聖域の僧院長》
1 《侵襲手術》
1 《狼狽の嵐》
1 《流刑への道》
1 《盲信的迫害》
1 《クローサの掌握》
1 《安らかなる眠り》
1 《情け知らずのガラク》

-サイドボード (15)-
hareruya



トレストの使者、レオヴォルド真の名の宿敵突然の衰微



 『コンスピラシー:王位争奪』の中でレガシーで注目のカードといえば、デス&タックスを強化した《護衛募集員》《聖域の僧院長》の名前が真っ先に挙がるだろうが、「合意していただけると思っていますよ。」のセリフで知られる《トレストの使者、レオヴォルド》の活躍も見逃せないところだ。

 対戦相手にはカードを引かせず、自分や自分のパーマネントが対象になったらカードを引くという「青いヘイトベア」的な能力を持つこのカードは、ブルーカウントを減らさないままに単体でゲームを支配できるカードとして、このデッキにおいてはバントカラーにタッチまでされている。《トレストの使者、レオヴォルド》自身が対戦相手の《カラカス》で対象にとられてもカードが引けるので、《意志の力》を引いていなくても無駄カードになってしまうようなことはない。

 《迷宮の霊魂》と違って自分には影響がないので、相手が《渦まく知識》を実質唱えられない間、自分は好きなだけ《渦まく知識》をプレイしたり《精神を刻む者、ジェイス》の「0」能力を起動したりして差をつけることができる。

 レガシーのフェアデッキといえば《秘密を掘り下げる者》系が主流だが、雑多なデッキに当たることを想定するならば、メタられにくさや1枚1枚のカードパワーも大事になってくる。まだあまり意識されていないかもしれないが、「バント」はこれから注目のアーキタイプとなっていきそうだ。


【「バント」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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