週刊デッキウォッチング vol.81 -「昂揚」BUG続唱-

伊藤 敦

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 黒赤コントロール



medvedev「黒赤コントロール」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

10 《山》
4 《沼》
4 《燻る湿地》
4 《凶兆の廃墟》
1 《ガイアー岬の療養所》

-土地 (23)-

4 《傲慢な新生子》
4 《熱錬金術師》
4 《騒乱の歓楽者》

-クリーチャー (12)-
1 《稲妻の斧》
4 《苦しめる声》
4 《焼夷流》
4 《集団的蛮行》
4 《集団的抵抗》
4 《血管の施し》
4 《癇しゃく》

-呪文 (25)-
4 《稲妻織り》
4 《自傷疵》
3 《黄金夜の懲罰者》
2 《穢れた療法》
1 《ゴブリンの闇住まい》
1 《極上の炎技》

-サイドボード (15)-
hareruya



騒乱の歓楽者集団的蛮行集団的抵抗



 【プロツアー『異界月』】のスタンダードラウンドで9勝1敗と好成績を残した【青赤バーン】は、《ドロモカの命令》擁するバントカンパニーが跋扈するスタンダードにおいても赤いデッキが活躍できる可能性を示してくれた。そして実はスタンダードには《癇しゃく》《血管の施し》という8枚の1マナ3点火力が存在することから、そこからさらにバーンというコンセプトを強烈に推し進めた赤黒バーンが成立したとしても何らおかしくはないのだ。

 編集部でも好評を博した結果勢いあまって【MTG Just Now! vol.58】でも紹介してしまったこちらのデッキは、もちろん《癇しゃく》《血管の施し》を1マナでプレイするためには「マッドネス」を達成する必要があるが、《傲慢な新生子》《苦しめる声》そして《集団的蛮行》があれば手札は捨て放題である。8枚も当たりが入っていれば、毎ターンの《ガイアー岬の療養所》の起動も楽しみで仕方がないだろう。

 青赤における《熱病の幻視》が担っていた役割については替えがきかないが、代わりに「マッドネス」要員兼アドバンテージソースとして《騒乱の歓楽者》が採用されており、2マナでプレイできたときの使い心地はさながらモダン環境で一時期存在した《宝船の巡航》入りのバーンを彷彿とさせる。

 何より【先週のデッキ】と同様、赤いデッキの魅力は「値段が安い」ことにある。マジックを始めたての友人がいたら、このデッキをオススメしてみると良いだろう。


【「黒赤コントロール」でデッキを検索】





■ モダン: 吹き荒れる潜在能力



Matsushima Tatsuo「吹き荒れる潜在能力」
平日モダン17時の部(3-0)

17 《冠雪の山》
4 《生けるものの洞窟》
3 《占術の岩床》

-土地 (24)-

4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (4)-
4 《信仰無き物あさり》
4 《稲妻》
4 《マグマの噴流》
4 《捨て身の儀式》
4 《発熱の儀式》
4 《裂け目の突破》
4 《突沸の器》
4 《吹き荒れる潜在能力》

-呪文 (32)-
4 《神々の憤怒》
3 《血染めの月》
2 《汚損破》
2 《耳障りな反応》
2 《大祖始の遺産》
2 《真髄の針》

-サイドボード (15)-
hareruya



吹き荒れる潜在能力裂け目の突破占術の岩床



 モダンにおいて3ターンキルは不健全とされる。しかしデッキビルダーたるもの、その壁を超えてみたくなるものだ。その点このデッキは「3ターン目に5マナを出し、ゲームを事実上決着させる」という、壁の突破に限りなく近いポテンシャルを持っていると言える。

 ゲームを決着させる手段の一つ目は「《裂け目の突破》《引き裂かれし永劫、エムラクール》」のコンボ。《御霊の復讐》デッキや赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》デッキなどでも使われているこのコンボは、決まれば有無を言わせず15点+パーマネントを6個も吹き飛ばすため、対戦相手はリカバリーが完了するまで大幅に減速を強いられることとなる。そのようにして対戦相手がもたついている間に《稲妻》《マグマの噴流》を本体に叩き込めばぴったり20点、任務完了だ。

 二つ目の手段は《吹き荒れる潜在能力》。5マナでこのカードをプレイしただけではゲームは決着しないが、以後の呪文のプレイについて対戦相手は「狙い通りの呪文がプレイできない」という制約を背負うことになる。そうして時間を稼いだ後に《生けるものの洞窟》を「変異」でプレイすれば、デッキの中の唯一のクリーチャーである《引き裂かれし永劫、エムラクール》がこんにちは、というわけだ。

 《占術の岩床》は自身と《冠雪の山》があるので、およそ3分の1の確率で追加ドローができる。また5マナを出す手段としては二種類の「儀式」のほか、1枚で2マナ分ブーストできる《突沸の器》も採用されており、パーツの代替性は十分だ。また、コンセプトに必要なカードと不要なカードが明確となっている結果、スペルがすべて4枚積みなのもコンボデッキとして実に美しい。近頃は【ドレッジ】の影響でサイドボードには墓地対策が多く積まれていることから、こうした墓地を一切利用しないコンボデッキを使うことで対戦相手の裏をかくことができそうだ。


【「吹き荒れる潜在能力」でデッキを検索】





■ レガシー: 続唱青黒緑



Ikegami Akira「続唱青黒緑」
晴れる屋レガシー杯(5-1)

1 《森》
1 《沼》
3 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
3 《新緑の地下墓地》
2 《霧深い雨林》
1 《忍び寄るタール坑》
3 《不毛の大地》

-土地 (21)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《タルモゴイフ》
3 《悪意の大梟》
3 《残忍な剥ぎ取り》
4 《断片無き工作員》
2 《裏切り者グリッサ》

-クリーチャー (20)-
4 《渦まく知識》
2 《思案》
4 《突然の衰微》
3 《トーラックへの賛歌》
3 《意志の力》
1 《森の知恵》
1 《ヴェールのリリアナ》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (19)-
2 《狼狽の嵐》
2 《外科的摘出》
2 《死の重み》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《トーラックへの賛歌》
1 《毒の濁流》
1 《大渦の脈動》
1 《意志の力》
1 《森の知恵》
1 《寒け》
1 《梅澤の十手》
1 《ヴェールのリリアナ》

-サイドボード (15)-
hareruya



残忍な剥ぎ取り断片無き工作員裏切り者グリッサ



 先週末の【モダンMOCS Playoff】ではJacob Wilsonの駆る【<残忍な剥ぎ取り>入りジャンド】が優勝して話題をさらった。ひとたび「昂揚」を達成してしまえば4/4トランプルの強烈なクロックとともに無駄ドローをなくしてくれるこのカードは、黒緑系のデッキにおける5~8枚目の《タルモゴイフ》として下の環境でも十分通用しうるカードパワーを持っている。その証拠に、レガシーのBUG続唱でも採用の兆しを見せているのだ。

 レガシーにおいては「昂揚」をどのように達成するのかが問題となるが、実はBUG続唱においては「土地、インスタントかソーサリー、クリーチャー、アーティファクト」を達成するのは造作もない。なんといっても《悪意の大梟》《断片無き工作員》も「アーティファクト・クリーチャー」なのだ。

 《裏切り者グリッサ》はあまり見ないカードだが、地味にコンバット性能が高いことに加え、上記の2枚を何度でも回収して再利用できるため、定着してしまえばプレインズウォーカーにも匹敵するアドバンテージソースとなる。

 地味に《渦まく知識》との相性が良いほか、《思案》のように使って1枚差しのサイドカードも探しやすくなる《残忍な剥ぎ取り》にとっては、長期戦にはなりにくいモダンよりも、実はレガシーこそがその真の力を発揮できる最適な舞台と言えるかもしれない。


【「続唱青黒緑」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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