週刊デッキウォッチング vol.88 -機械巨人リアニ-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 白黒赤コントロール



Takaku Yousuke「白黒赤コントロール」
平日スタンダード20時の部(3-0)

3 《山》
3 《平地》
2 《沼》
4 《燻る湿地》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》
4 《霊気拠点》

-土地 (24)-

3 《稲妻織り》
4 《激変の機械巨人》
4 《害悪の機械巨人》
4 《焼却の機械巨人》

-クリーチャー (15)-
4 《蓄霊稲妻》
4 《安堵の再会》
3 《苦しめる声》
4 《復元》
3 《宿命の決着》
3 《末永く》

-呪文 (21)-
3 《配分の領事、カンバール》
3 《断片化》
3 《コジレックの帰還》
3 《破滅の道》
3 《停滞の罠》

-サイドボード (15)-
hareruya



焼却の機械巨人復元宿命の決着



 先週末に待望の『カラデシュ』が発売し、スタンダード環境は一変した。海の向こう、SCGでは一週目から《密輸人の回転翼機》【トップ8に32枚使用されていた】ということで話題となったが、しかし冷静に考えてみればまだ一週目なのだ。環境は始まったばかり、《密輸人の回転翼機》がビートダウンを定義するというならば、ミッドレンジはそれをメタって形作られるだけだ。

 【The Finals07の藤田修の「リアニメイト」】を彷彿とさせるこのデッキは、《蓄霊稲妻》《稲妻織り》という2種の「稲妻」で《密輸人の回転翼機》をケアしつつ、《激変の機械巨人》《害悪の機械巨人》《焼却の機械巨人》の3種の「機械巨人」を《復元》で墓地から釣り上げることで、その強力なETB能力を割安で誘発させることができる、という構造となっている。

 《安堵の再会》《苦しめる声》の2種のドローにより、「機械巨人」を墓地に送り込みつつ安定してリアニメイトスペルを引き込むことができる。さらに除去とドローを兼ねる《宿命の決着》は、対戦相手は本体火力がないと思って《焼却の機械巨人》の「3枚削り」を選択しがちと考えられることもあり、土地が最大6枚しか必要ないこのデッキならフィニッシュブローにもなりうる。

 《末永く》で2体の「機械巨人」を一気に釣り上げることができればその様はさながら『風の谷のナウシカ』勝利は目前だ。《過去に学ぶ》がローテーション落ちして、今のスタンダードで墓地利用をケアできるカードはかなり少ないことも追い風となる。豪快極まりない「機械巨人」のカードパワーで、対戦相手を「機体」ごと踏みつぶそう。


【「白黒赤コントロール」でデッキを検索】





■ モダン: 親和



Hirasawa Daisuke「親和」
晴れる屋モダン杯(5-1)

1 《平地》
4 《空僻地》
4 《ちらつき蛾の生息地》
4 《墨蛾の生息地》
4 《ダークスティールの城塞》

-土地 (17)-

4 《羽ばたき飛行機械》
2 《メムナイト》
4 《信号の邪魔者》
4 《大霊堂のスカージ》
4 《電結の荒廃者》

-クリーチャー (18)-
3 《感電破》
4 《未練ある魂》
4 《オパールのモックス》
4 《バネ葉の太鼓》
4 《密輸人の回転翼機》
4 《頭蓋囲い》

-呪文 (23)-
2 《急送》
2 《思考囲い》
2 《頑固な否認》
2 《摩耗+損耗》
2 《鞭打ち炎》
2 《安らかなる眠り》
1 《刻まれた勇者》
1 《苦花》
1 《血染めの月》

-サイドボード (15)-
hareruya



密輸人の回転翼機未練ある魂急送



 『カラデシュ』のカードのうち、スタンダードにおいて最初に頭角を現したのは《密輸人の回転翼機》となったわけだが、4マナ以下のカードはモダンでも活躍する可能性が常に存在する。アーティファクトであるならばなおさらそうだろう。なぜなら、モダンには【親和】というアーティファクト単のデッキが存在するからだ。

 《鋼の監視者》のスロットを《密輸人の回転翼機》に差し替えたこのデッキは、飛行ビートダウンとしての一貫性をさらに高めることに成功している。《密輸人の回転翼機》の強みはそれだけでなく、《ちらつき蛾の生息地》《墨蛾の生息地》同様、「搭乗」するまでは (《突然の衰微》こそ食らうものの) クリーチャー除去の対象とならないため、相手がマナを構えているところではあえて「搭乗」せずに、相手の除去の使い方を不自由にするという選択肢も生まれる。

 また、《エーテリウムの達人》《刻まれた勇者》のスロットには「フラッシュバック」持ちで《密輸人の回転翼機》と相性が良い《未練ある魂》が収まっている。もちろんトークンは「搭乗」するのにもぴったりだ。

 単純な打点としては《鋼の監視者》《エーテリウムの達人》に劣るため、コンボが多いメタゲームでは採用しづらい戦略だが、単体除去を採用したフェアデッキが多いようなら、こちらの《密輸人の回転翼機》《未練ある魂》バージョンに軍配が上がりそうである。出場する大会のメタゲームに合わせて使い分けることができれば、勝率の向上が見込めることだろう。


【「親和」でデッキを検索】





■ レガシー: 複合コンボ



Ikegami Akira「複合コンボ」
晴れる屋レガシー杯(5-0-1)

3 《島》
2 《平地》
2 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
2 《魂の洞窟》
1 《教議会の座席》
1 《カラカス》
1 《発明博覧会》

-土地 (20)-

3 《僧院の導師》
3 《粗石の魔道士》

-クリーチャー (6)-
4 《渦まく知識》
2 《思案》
1 《悟りの教示者》
1 《嘘か真か》
3 《意志の力》
3 《終末》
2 《安らかなる眠り》
1 《謙虚》
1 《未来予知》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《水蓮の花びら》
4 《師範の占い独楽》
1 《真髄の針》
1 《群の祭壇》
3 《覚醒の兜》
1 《罠の橋》
2 《霊気貯蔵器》
1 《Helm of Obedience》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (35)-
3 《相殺》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《呪文貫き》
1 《封じ込める僧侶》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《議会の採決》
1 《意志の力》
1 《浄化の印章》
1 《基本に帰れ》
1 《墓掘りの檻》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード (15)-
hareruya



師範の占い独楽覚醒の兜霊気貯蔵器



 カードプールが極めて広いレガシーにおいては、コンボデッキというのは枚挙に暇がない。「ANT」や《実物提示教育》が代表的だが、《魔の魅惑》《食物連鎖》など、若干マイナーと言えるものもたくさん存在する。そしてその先を掘り下げていくと……もはや誰も知らないようなものもたまには出てくる。この《師範の占い独楽》《覚醒の兜》とのコンボデッキ、「Sensei, Sensei」もそういったデッキの一つだ。

 《覚醒の兜》が置いてある状態では、《師範の占い独楽》はタダでプレイできる。ということは、《師範の占い独楽》が2枚あれば無限ストームが実現するのだ。かつてはそこから《ぶどう弾》でのフィニッシュにつなげるのが一般的だったが、このデッキは『カラデシュ』の最新カード《霊気貯蔵器》を採用している。《霊気貯蔵器》が置いてあって無限ストームということはすなわち無限ライフになるので、対戦相手のライフを宇宙の彼方までも吹き飛ばすことができる。

 また、このデッキには元祖「Sensei, Sensei」コンボの他にも様々なコンボが隠されている。「《安らかなる眠り》《Helm of Obedience》」は言わずもがな、《僧院の導師》《師範の占い独楽》もプチコンボと言えるだろう。さらにサイドから《相殺》を投入することで、《師範の占い独楽》と合わせて自分より早いコンボデッキに対する切り札となりうる。

 「奇跡」デッキのような見た目をしておきながら、しかしあらゆる角度で瞬殺コンボを決めてくるこのデッキは、一見個々のパーツがちぐはぐなようでいて、一種類の対策カードによっては完封されないタフさと、相手に合わせてルートを選択できる柔軟性を合わせもっている。残り一か月と少しとなったグランプリ・千葉2016でも活躍する可能性は十分ありそうだ。


【「複合コンボ」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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