USA Standard Express vol.56 -SCGO Milwaukee etc.-

Kenta Hiroki


みなさんこんにちは。

先週末には新セット『戦乱のゼンディカー』のプレリリースがありましたが、皆さんは楽しい週末を過ごせましたか?

今週末にはいよいよ『戦乱のゼンディカー』が発売され、アメリカでは早速新環境のスタンダードの大会であるSCGO Indianapolisが開催される予定です。【プロツアー『マジック・オリジン』】で試験的に導入されていた【新マリガンルール】が正式に採用される最初のオープンとなります。

さて、今回の記事では現環境最後のスタンダードのオープンである【SCGO Milwaukee】の入賞デッキを見ていくとともに、『戦乱のゼンディカー』加入後の環境の予想もしていきたいと思います。




SCGO Milwaukee
~環境最後のスタンダードのオープンの優勝は赤単~


2015年9月19-20日
Jory White
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。


1位 Mono Red Aggro/赤単
2位 Sultai Pact/青黒緑コントロール
3位 Mono Red Aggro/赤単
4位 UW Control/白青コントロール
5位 Jeskai/白青赤ビートダウン
6位 Abzan Control/白黒緑コントロール
7位 UW Control/白青コントロール
8位 Abzan Aggro/白黒緑ビートダウン



現環境最後のスタンダードのオープンを制したのは赤単でした。【前回の記事】でも予想した通り、Esper Dragonsの隆盛によりタップインランドを多数採用したコントロールにスピードで勝る赤単が勝ち残り、Abzan Control、Abzan Aggroに次いで二日目最大勢力でした。

コントロールデッキではUW Controlがトップ8に2名、Sultaiカラーのコントロールが準優勝という結果を残していました。



SCGO Milwaukee デッキ解説

「Mono Red Aggro」「UW Control」




Jasper Johnson-Epstein「Mono Red Aggro」
SCGO Milwaukee(3位)

21 《山》

-土地(21)-

4 《僧院の速槍》
3 《鐘突きのズルゴ》
2 《稲妻の狂戦士》
4 《ケラル砦の修道院長》
4 《大歓楽の幻霊》
1 《カラデシュの火、チャンドラ》
1 《ゴブリンの踵裂き》

-クリーチャー(19)-
4 《乱撃斬》
4 《灼熱の血》
4 《稲妻の一撃》
4 《極上の炎技》
4 《かき立てる炎》

-呪文(20)-
4 《焙り焼き》
2 《ゴブリンの踵裂き》
2 《雷破の執政》
2 《マグマのしぶき》
2 《粉々》
1 《溶鉄の渦》
1 《前哨地の包囲》
1 《紅蓮の達人チャンドラ》

-サイドボード(15)-
hareruya



今大会でAbzan Control、Abzan Aggroに次ぐ二日目最大勢力だった赤単。Jasper Johnson-Epsteinは【直近のモダンのGP】でもバーンで入賞を収めている強豪プレイヤーです。


☆注目ポイント

【プロツアーの優勝デッキ】と比べると、《大歓楽の幻霊》がメインから採用されているなど若干変化が見られます。

サイドには《雷破の執政》《紅蓮の達人チャンドラ》《前哨地の包囲》といった4マナのスペルが多めに採られており、ゲーム2以降はロングゲームも意識しています。特に飛行を持つ《雷破の執政》は除去を撃たれても相手に3ダメージが入るので、Abzanに強いクリーチャーです。

《溶鉄の渦》は手札に余った土地を《ショック》に変換できるエンチャントで、フラッド対策にもなる上に1マナと軽いため、コントロール相手にもカウンターなどをかいくぐりやすいのも魅力です。《搭載歩行機械》対策に《マグマのしぶき》《粉々》なども見られ、プロツアー後のメタにもしっかり対応しています。

ローテーション後は《僧院の速槍》《ケラル砦の修道院長》、各種「疾駆」クリーチャーは健在なので赤単というデッキ自体は残るものの、《大歓楽の幻霊》《稲妻の一撃》《灼熱の血》《かき立てる炎》など主に優秀な火力がこぞって退場してしまうため、構成を変える必要が出てきそうです。


大歓楽の幻霊 極上の炎技 雷破の執政






Jim Davis「UW Control」
SCGO Milwaukee(4位)

5 《島》
3 《平地》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《汚染された三角州》
1 《進化する未開地》
4 《啓蒙の神殿》
4 《平穏な入り江》
4 《光輝の泉》

-土地(27)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》

-クリーチャー(4)-
3 《今わの際》
3 《意思の激突》
1 《軽蔑的な一撃》
4 《解消》
4 《オジュタイの命令》
3 《対立の終結》
1 《ジェイスの創意》
4 《時を越えた探索》
3 《払拭の光》
3 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(29)-
3 《アラシンの僧侶》
2 《見えざるものの熟達》
2 《異端の輝き》
2 《否認》
1 《魂火の大導師》
1 《真珠湖の古きもの》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《今わの際》
1 《勇敢な姿勢》
1 《存在の破棄》

-サイドボード(15)-
hareruya



UW Controlを使い続けているSCGの強豪プレイヤーのJim Davisは今大会でもUW Controlを持ち込み、惜しくも優勝は逃したもののトップ4という優秀な成績を収めました。軽いスペルが少なかったことが欠点だったこのデッキも『マジック・オリジン』から《ヴリンの神童、ジェイス》《意思の激突》を得て強化されました。


☆注目ポイント

このデッキのフィニッシャーでもありAbzan Controlなど多くのデッキに採用され環境を支配した《太陽の勇者、エルズペス》も、惜しまれつつもスタンダードを去ります。《今わの際》《払拭の光》《異端の輝き》といった軽い除去スペルを失いますが、ローテーション後も『戦乱のゼンディカー』から《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《停滞の罠/Stasis Snare》、《風への散乱》、《大草原の川/Prairie Stream》といったカードが加入予定なので、新環境でも青白系のコントロールは見られそうです。


ヴリンの神童、ジェイス 意思の激突 太陽の勇者、エルズペス




ボーナストピック: 『戦乱のゼンディカー』後の環境予想

今週末に新セット『戦乱のゼンディカー』がリリースされ、環境が激変するスタンダードの環境の予想を、新カードのレビューも交えながらしていきたいと思います。



◆ プレインズウォーカー


《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》




4マナと軽く、忠誠度の消費なしで2/2のトークンを生産できるので最低限自身を守ることが可能で、トークンが同盟者でもあるのでデッキによっては恩恵を受けられるのも強みです。

固めて引いてしまっても「-4」能力で自軍のクリーチャーや2枚目以降の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》自身の強化をすることができます。Abzan、UW系などの新たなフィニッシャーとしてよく目にするプレインズウォーカーになりそうです。



《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》




ドローカードの「+1」能力とクリーチャー除去の「-3」能力のどちらの能力もコントロール向けで、4ターン目に《衰滅》で場を一掃、5ターン目に《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》でカードドロー or 相手の後続を除去という展開が可能です。

ライフゲインできる《包囲サイ》などにアクセスできるAbzan Controlで特に強さを発揮しそうです。



◆ スペル


《破滅の道》




ソーサリーになった代わりに「覚醒」が付いた《英雄の破滅》。 「覚醒」はフラッド対策になるのでAbzanのようなミッドレンジにとってはありがたい能力ですが、ソーサリースピードなのでカウンターを構えながら相手のエンド時に除去を撃つというのが不可能なので、Esper Dragonsのようなデッキでは使いにくいカードになりそうです。

「疾駆」してくるクリーチャーを除去できないのは不便ですが、プレインズウォーカーにも触れる環境の貴重な除去なので、黒を使う多くのデッキで見られそうです。



《風への散乱》




《解消》の後釜になりそうなカウンター呪文。「覚醒」は明らかに長期戦向けの能力なので強さは環境の速度に左右されますが、中盤以降のフラッド防止になりつつ自分のターンに土地をタップすることなくクロックを展開できる能力は、青いコントロールデッキが必要としていたものです。



《光輝の炎》




残念ながら《神々の憤怒》のようにクリーチャーを追放することはできなくなりましたが、環境の貴重な3マナの全体除去。「収斂」の条件を満たすために3色以上でデッキを組む必要が出てきますが、フェッチランド、バトルランド、トライランドを活用すれば容易です。JeskaiやMarduなどのサイドボードでよく見かけることになりそうです。



◆ クリーチャー


《絶え間ない飢餓、ウラモグ》




キャストするだけで対象の2つのパーマネントを追放するエルドラージクリーチャー。10マナと重いため、必然的にマナ加速を多数採用したデッキ専用のフィニッシャーとなります。 残念ながら《エルフの神秘家》《ニクスの祭殿、ニクソス》といったマナ加速はスタンダードから去ってしまうので、他のカードを探すことになります。

とはいえ、新環境にも 《爪鳴らしの神秘家》、《獣呼びの学者/Beastcaller Savant》、そしてプレインズウォーカーの《深海の主、キオーラ》などが存在するので、緑のマナ加速を利用したエルドラージビッグマナも見られそうです。



・ 《鎌豹/Scythe Leopard》




「上陸」の再登場に伴い「上陸」持ちもクリーチャーが多数収録されています。《鎌豹/Scythe Leopard》はあの《ステップのオオヤマネコ》ほどの爆発力はないものの、フェッチランドが使える環境では安定して「上陸」することができるので、高いマナレシオのクリーチャーです。



・ 《ズーラポートの殺し屋/Zulaport Cutthroat》




《血の芸術家》を彷彿とさせる同盟者クリーチャー。《血の芸術家》と異なり味方クリーチャーが死亡したときのみにドレイン発動と調整が加えられていますが、同環境には《ナントゥーコの鞘虫》というサクリ台があるので、かつての「アリストクラッツ」のようなデッキが組めるかもしれません。



◆ 土地


・ 新友好色デュアルランド (バトルランド) と対抗色ミシュランド




残念ながら今回はミシュラランドは白黒と緑青のみの収録となりましたが、バトルランドは2つの基本土地タイプを持つため、デュアルランドやショックランドのようにフェッチランドでサーチすることが可能で、「収斂」のように多色を推奨するメカニックも登場することからも、新環境のスタンダードでも多色のデッキが主流となりそうです。

モダンやレガシーでは当たり前のようにフェッチランドからデュアルランドやショックランドがサーチされていますが、フェッチランドとデュアルランドのスタンダードでの共演は今回が初めてです。「占術」ランドが退場し対抗色ミシュラランドもまだ揃っていない現在ではマナ基盤の調整は今までよりも難しそうですが、バトルランドとフェッチランドをうまく組み合わせれば4色以上のデッキも組めそうなので、色々と試してみることをお勧めします。


吹きさらしの荒野


新環境のスタンダードでは既存のデッキは、ローテーション後も主要のパーツが多く残ったAbzan Aggroやバトルランドの登場でマナベースが強化されたEsper Dragons、《稲妻の一撃》《かき立てる炎》といった主要な火力を失いましたがデッキとしては十分に機能するAtarka Redなどが人気が出そうです。

一方新しいデッキとしては、「上陸」クリーチャーを多数採用したアグロやマナを伸ばして《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《精霊龍、ウギン》といった高コストの強力なスペルで勝負を決めるマナランプも出てきそうです。



◆ 新環境サンプルデッキリスト




「Landfall Aggro」

5 《森》
5 《山》
2 《燃えがらの林間地/Cinder Glade》
4 《樹木茂る山麓》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《血染めのぬかるみ》

-土地(24)-

4 《鎌豹/Scythe Leopard》
2 《鐘突きのズルゴ》
4 《噛み付きナーリッド/Snapping Gnarlid》
4 《マキンディの滑り駆け/Makindi Sliderunner》
4 《ケラル砦の修道院長》
4 《下生えの勇者》

-クリーチャー(22)-
4 《乱撃斬》
4 《アタルカの命令》
4 《極上の炎技》
2 《強大化》

-呪文(14)-
hareruya



「上陸」クリーチャーを火力と強化スペルでバックアップしていくアグロデッキ。軽い除去が弱体化したため、序盤からプレッシャーをかけていく戦略は今まで以上に強力です。また、フェッチランドを多数積んでいるので「上陸」するのも容易です。







「Abzan Aggro」

3 《森》
2 《平地》
1 《沼》
1 《梢の眺望/Canopy Vista》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《砂草原の城塞》
4 《乱脈な気孔》
1 《ジャングルのうろ穴》
4 《ラノワールの荒原》
2 《コイロスの洞窟》

-土地(26)-

4 《搭載歩行機械》
4 《ラクシャーサの死与え》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
4 《棲み家の防御者》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
4 《包囲サイ》
2 《風番いのロック》

-クリーチャー(23)-
3 《ドロモカの命令》
1 《究極の価格》
4 《アブザンの魔除け》
1 《破滅の道》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(11)-
hareruya



『テーロス』の退場により環境が激変するスタンダードですが、《包囲サイ》《先頭に立つもの、アナフェンザ》など強力なクリーチャーは健在なので、《アブザンの魔除け》など優秀なスペルが残るAbzanは新環境でも人気が出そうです。


ラクシャーサの死与え 包囲サイ




総括

『テーロス』ブロック+『タルキール覇王譚』ブロックのスタンダードは「占術」ランドのおかげで運の要素が低く、《思考囲い》など効率的な妨害スペルとパワーカードのバランスにより歴代でも面白いスタンダードだったと思います。

Abzan系のデッキが勝ち続けていましたが、毎週のようにメタが目まぐるしく変化していき、同じデッキでもメタに合わせた調整が大会ごとに要求されるフォーマットでした。Abzanや緑信心、Jeskaiのように安定して結果を残し続けているデッキが存在する一方で、UR ThopterやUR Mill Controlのように独創性のあるデッキがGPやプロツアーで結果を残すなど、環境終盤まで新しい戦略やデッキが生み出され続けていました。

さて今週末にはいよいよ『戦乱のゼンディカー』がスタンダード解禁となります。リリース早々アメリカではSCGOがIndianaploisで開催されます。新環境直後の大規模な大会なので要注目です。


以上USA Standard Express vol.56でした。

次回の記事ではSCGO Indianapolisの結果を中心にカバーしていきたいと思います。

それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!



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