週刊デッキウォッチング vol.85 -食物エルドラージ-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 青緑ビートダウン



Shirai Taiga「青緑ビートダウン」
晴れる屋スタンダード杯(4-1-1)

7 《森》
4 《島》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《森林地の小川》
4 《伐採地の滝》
2 《ウギンの聖域》

-土地 (25)-

4 《薄暮見の徴募兵》
4 《森の代言者》
4 《ラムホルトの平和主義者》
4 《ネベルガストの伝令》
4 《跳ねる混成体》
4 《狩りの精霊》
4 《狩猟の統率者、スーラク》
4 《老いたる深海鬼》
1 《州民を滅ぼすもの》

-クリーチャー (33)-
2 《集合した中隊》

-呪文 (2)-
4 《呪文萎れ》
2 《捕食》
2 《ムラーサの胎動》
2 《集合した中隊》
2 《即時却下》
1 《州民を滅ぼすもの》
1 《巻き込み》
1 《森》

-サイドボード (15)-
hareruya



狩りの精霊狩猟の統率者、スーラク老いたる深海鬼



 マジックが上手くなるためには、盤面の情報だけから正解となるプレイングをきちんと導き出せるかが焦点となるが、それは裏を返すと、対戦相手に正しい情報を与えないこともまた、強者たる秘訣ということでもある。その観点からすると「瞬速」や「速攻」といった能力持ちのクリーチャーは、対戦相手の予測を覆すことができるので、実際のゲームにおいては見た目以上の脅威となるのだ。

 こういった性質に着目したデッキがこちらの「青緑フラッシュ」で、2マナ域に《薄暮見の徴募兵》《ラムホルトの平和主義者》といった「狼男」をプレイしてから《ネベルガストの伝令》《跳ねる混成体》《狩りの精霊》という強力な3マナ域の「瞬速」持ちクリーチャーを構えることで、「狼男」を「変身」させつつ支障なくクリーチャーを展開することができる。

 さらに4マナ域には《狩猟の統率者、スーラク》が控えており、エンド前に《ネベルガストの伝令》《跳ねる混成体》でクリーチャーをタップされてしまえば、この「速攻」5点アタックを押しとどめることは容易ではない。

 たとえ展開で後手後手に回ったとしても、4枚入った《老いたる深海鬼》で強引に劣勢を跳ね返せる。そのまま《ウギンの聖域》から《州民を滅ぼすもの》をサーチすれば、たとえ10点以上のライフが残っていたとしても一瞬で消し飛ばすことができるだろう。


【「青緑ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: 青緑赤ジャンク



Ishikawa Shou「青緑赤ジャンク」
晴れる屋モダン杯(4-2)

2 《島》
1 《森》
2 《蒸気孔》
2 《踏み鳴らされる地》
1 《繁殖池》
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
3 《硫黄の滝》
2 《内陸の湾港》
1 《僻地の灯台》

-土地 (22)-

4 《タルモゴイフ》
3 《瞬唱の魔道士》
4 《詐欺師の総督》
3 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《永遠の証人》
1 《高原の狩りの達人》
1 《鏡割りのキキジキ》
1 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー (18)-
4 《血清の幻視》
4 《稲妻》
2 《蒸気の絡みつき》
1 《頑固な否認》
4 《差し戻し》
4 《異界の進化》
1 《電解》

-呪文 (20)-
2 《古えの遺恨》
2 《否認》
2 《ムラーサの胎動》
2 《神々の憤怒》
1 《呪文滑り》
1 《イゼットの静電術師》
1 《スラーグ牙》
1 《嵐の神、ケラノス》
1 《炎の斬りつけ》
1 《自然のままに》
1 《仕組まれた爆薬》

-サイドボード (15)-
hareruya



タルモゴイフ異界の進化詐欺師の総督



 モダン環境から《欠片の双子》が去って久しいが、アブザンカンパニーをはじめとしたクロックへの対処を迫りつつ隙を見てコンボを決めるいわゆる「コンボビート」の立ち位置は、依然として強力であることは疑う余地がない。そして《欠片の双子》は消えたとはいえ、《鏡割りのキキジキ》はいまだ環境に残されている。ならば何らかのきっかけがあれば、《詐欺師の総督》《鏡割りのキキジキ》とのコンボが再びモダン環境に舞い戻ってきたとしても何らおかしくはないのだ。

 そのきっかけとなったのが『異界月』で収録された《異界の進化》である。3マナのクリーチャーを5マナのクリーチャーへと変換できるこのカードは、決まれば即勝ちの《鏡割りのキキジキ》コンボとすこぶる相性が良い。3マナのクリーチャーをそんな簡単に生け贄に捧げられるのかと疑問に思うかもしれないが、エンド前の《ヴェンディリオン三人衆》プレイで脅威を抜き去りつつ、役目を終えた3/1飛行をコストの支払いにあてれば何の問題もない。

 何より《異界の進化》が素晴らしいのは、「3マナでプレイできる」という点……すなわち、圧倒的な隙の少なさにある。《欠片の双子》であればカウンターを構えるのに最低5マナ必要だったところ、《異界の進化》なら4マナあれば《頑固な否認》だろうと《蒸気の絡みつき》だろうと構えることができるのだ。

 他にも《異界の進化》はサイドボード後には「《嵐の神、ケラノス》をサーチ」することもできる。【初代モダン王者】《欠片の双子》を失った《詐欺師の総督》が再びモダン環境の覇権を握る日は、そう遠くないのかもしれない。


【「青緑赤ジャンク」でデッキを検索】





■ レガシー: 食物連鎖



Fukuda Gou「食物連鎖」
MINT協賛 最強の個人決定戦! マジックへプタスロン

4 《Tropical Island》
2 《魂の洞窟》
1 《カラカス》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《エルドラージの寺院》
2 《古えの墳墓》
2 《裏切り者の都》
2 《不毛の大地》
3 《ウギンの目》

-土地 (21)-

4 《エルドラージのミミック》
2 《永遠の災い魔》
4 《難題の予見者》
4 《霧虚ろのグリフィン》
3 《現実を砕くもの》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (18)-
3 《運命の操作》
1 《久遠の闇からの誘引》
3 《意志の力》
4 《食物連鎖》
1 《精霊の絆》
4 《虚空の杯》
4 《モックス・ダイアモンド》
1 《世界のるつぼ》

-呪文 (21)-
2 《永遠の災い魔》
2 《狼狽の嵐》
1 《魂の洞窟》
1 《カラカス》
1 《不毛の大地》
1 《現実を砕くもの》
1 《終末を招くもの》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《運命の操作》
1 《意志の力》
1 《安らかなる眠り》
1 《梅澤の十手》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-サイドボード (15)-
hareruya



永遠の災い魔食物連鎖虚空の杯



 【『異界月』のプレビュー】以来、「《食物連鎖》デッキに入るのでは?」と噂されていた《永遠の災い魔》だが、《意志の力》の餌にならないというのが想像以上に厳しかったのか、事前の予想に反して採用例はほとんど見られなかった。しかし先週ようやく《永遠の災い魔》を生かした《食物連鎖》デッキが登場したのだ。

 【MINT協賛 最強の個人決定戦! マジックへプタスロン】のレガシー部門に持ち込まれたこのデッキは、《食物連鎖》をハイブリッド要素に留め、メインコンセプトにエルドラージを据えるという大胆な構築を実現している。一見何らシナジーのないカオスなハイブリッドのようでいて、実際は上で挙げた「コンボビート」の精神をきちんと取り込んだ合理的なコンセプトなのだ。

 《エルドラージの寺院》《ウギンの目》というマナベースから《食物連鎖》コンボが決まるなどと誰が予想するだろうか?「相手はエルドラージだ」そう思った瞬間に相手は盤面を捌くことに注力するだろう。しかしそれこそがこの《食物連鎖》エルドラージの狙いなのだ。

 もちろん「《意志の力》入りのエルドラージ」として通常以上のぶん回りも期待できる。ビートをケアすればコンボが決まり、コンボをケアすればビートが決まる……相手に回したら嫌らしいことこの上ないこのコンセプトは、レガシー環境のエルドラージをまた一段上のステージへと運んでくれそうだ。


【「食物連鎖」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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