週刊デッキウォッチング vol.86 -みんな大好き地獄の樹-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Miyaguni Musashi「ローグ」
平日スタンダード20時の部(3-0)

4 《沼》
3 《森》
2 《島》
4 《窪み渓谷》
4 《進化する未開地》
3 《ラノワールの荒原》
2 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《風切る泥沼》
1 《伐採地の滝》

-土地 (24)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《地獄の樹》
3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《龍王シルムガル》

-クリーチャー (12)-
2 《ウルヴェンワルド横断》
4 《蛙変化》
2 《集団的蛮行》
2 《衰滅》
4 《発生の器》
2 《突撃陣形》
1 《穢れた療法》
3 《謎の石の断片》
4 《最後の望み、リリアナ》

-呪文 (24)-
2 《否認》
2 《精神背信》
1 《苛性イモムシ》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《強迫》
1 《無限の抹消》
1 《破滅の道》
1 《衰滅》
1 《過去に学ぶ》
1 《即時却下》
1 《血統の呼び出し》
1 《護法の宝珠》

-サイドボード (15)-
hareruya



地獄の樹蛙変化謎の石の断片



 そろそろスタンダードにおける『タルキール龍紀伝』と『マジック・オリジン』も使い収めか……というこの時期に、大事件が起こってしまった。『異界月』神話レアの永遠のベンチウォーマー最終兵器、《地獄の樹》コンボの登場である。

 《地獄の樹》単体では相手のライフを13点にすることしかできない。だがこのデッキにおいては、まず《突撃陣形》によって《地獄の樹》4マナ13/13というウィスピーウッズもびっくりの凶悪ボスへと変貌させることができる。

 また、《地獄の樹》の能力起動にスタックして《蛙変化》を打ち込むと、対戦相手のライフを強制的に1にすることができる。なんだそれだけでは勝てないのか……と思うなかれ、その状況に至ったなら安全確認用の《集団的蛮行》やマナサポートも兼ねる《謎の石の断片》が即座に勝利をもぎ取ってくれることだろう。

 さらに極め付けは《穢れた療法》とのコンボである。「118.5 効果がプレイヤーのライフ総量を特定の値にする場合、そのプレイヤーはライフ総量をその値にするために必要な量のライフを得たり失ったりする。」により、《地獄の樹》のタフネスの方が高い状態で能力を起動すると、相手のライフが勝手に減っていくのだ。これほど夢の溢れるコンセプトで見事3-0を飾った製作者に敬意を表したい。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: 白赤緑ビートダウン



Toukairin Taishi「白赤緑ビートダウン」
晴れる屋モダン杯(4-1-1)

14 《森》
2 《寺院の庭》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《樹木茂る山麓》

-土地 (22)-

4 《極楽鳥》
3 《貴族の教主》
4 《絡み根の霊》
1 《呪文滑り》
1 《漁る軟泥》
3 《捕食者のウーズ》
2 《ダングローブの長老》
1 《月の大魔術師》
1 《エイヴンの思考検閲者》
1 《最後のトロール、スラーン》
1 《悪斬の天使》
1 《鷺群れのシガルダ》

-クリーチャー (23)-
3 《巨森の蔦》
2 《ティムールの激闘》
4 《異界の進化》
1 《内にいる獣》
4 《怨恨》
1 《不動のアジャニ》

-呪文 (15)-
2 《流刑への道》
2 《審判の日》
1 《漁る軟泥》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《再利用の賢者》
1 《弁論の幻霊》
1 《巨森の蔦》
1 《神聖な協力》
1 《内にいる獣》
1 《安らかなる眠り》
1 《血染めの月》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《倦怠の宝珠》

-サイドボード (15)-
hareruya



絡み根の霊捕食者のウーズ異界の進化



 モダンで《異界の進化》を使ったツールボックス系のデッキは【vol.79】でも紹介したが、それはあくまで《出産の殻》デッキの文脈から派生したものだった。だが今回は、全く別のアプローチから《異界の進化》を組み込んだデッキを紹介しよう。

 【緑単ビートダウン】をベースにしたこのデッキは、《絡み根の霊》《捕食者のウーズ》《ダングローブの長老》といったこのアーキタイプにおいては馴染みのパーツを維持しつつも、《異界の進化》によって一撃必殺のコンボ要素を取り入れることに成功している。

 特殊地形に頼ったデッキには《月の大魔術師》《ヴェールのリリアナ》系のジャンクに対しては《鷺群れのシガルダ》。バーンや親和には《悪斬の天使》がそれぞれ最適なサーチ先として機能する。

 もちろんビートプランで勝てそうなときは、《怨恨》《巨森の蔦》のバックアップを受けたジャイグロビートを完遂すればいい。タッチの《ティムールの激闘》を引き込んだなら、対戦相手の予想の外から強烈な一撃をお見舞いできることだろう。


【「白赤緑ビートダウン」でデッキを検索】





■ レガシー: デスブレード



Orimo Yuuto「デスブレード」
GPT千葉(トップ8)

3 《Tundra》
3 《Underground Sea》
1 《Badlands》
1 《Savannah》
1 《Scrubland》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《湿地の干潟》
2 《不毛の大地》

-土地 (22)-

4 《死儀礼のシャーマン》
3 《石鍛冶の神秘家》
2 《悪意の大梟》
1 《瞬唱の魔道士》
3 《真の名の宿敵》
1 《トレストの使者、レオヴォルド》
1 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー (15)-
4 《渦まく知識》
3 《剣を鍬に》
2 《思案》
2 《思考囲い》
2 《突然の衰微》
2 《未練ある魂》
3 《意志の力》
1 《森の知恵》
1 《火と氷の剣》
1 《殴打頭蓋》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《幽霊暗殺者、ケイヤ》

-呪文 (23)-
2 《翻弄する魔道士》
2 《外科的摘出》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《封じ込める僧侶》
1 《概念泥棒》
1 《狼狽の嵐》
1 《侵襲手術》
1 《強迫》
1 《盲信的迫害》
1 《意志の力》
1 《真髄の針》
1 《梅澤の十手》

-サイドボード (15)-
hareruya



真の名の宿敵トレストの使者、レオヴォルド幽霊暗殺者、ケイヤ



 【第7期ヴィンテージ神挑戦者決定戦】は、挑戦者の座を勝ち取ったHareruya Pros・原根 健太の手によって《トレストの使者、レオヴォルド》の強さが改めて証明される結果となった。というわけで、【vol.84】に引き続いて《トレストの使者、レオヴォルド》入りのデッキを紹介しよう。

 搭載されているのは4色の「デスブレード」。もともとグッドスタッフ感の強いデッキではあったが、《突然の衰微》《森の知恵》といった緑のカードも搭載したことで、さらにその傾向が強くなっている。そしてこれだけ強いパーマネントばかりを搭載しているなら、《トレストの使者、レオヴォルド》が生き残る確率もかなり高いことだろう。

 また、《トレストの使者、レオヴォルド》と同じく『コンスピラシー:王位争奪』から採用されている《幽霊暗殺者、ケイヤ》は、盤面にこそ触れないものの、ライフと手札の両面でプレッシャーをかけられる。カードカウント的にアドバンテージもとれるプレインズウォーカーでありながら、《真の名の宿敵》に当てるために構えた《紅蓮破》をかわせるのは大きな強みだろう。

 「《渦まく知識》が打ちたい」「《意志の力》が打ちたい」「手札破壊がしたい」「《不毛の大地》を入れたい」「自分から動けるデッキが良い」「《相殺》に完封されたくない」……レガシーにおける様々な要請をすべて解決した丸いデッキが良いという人には、この4C「デスブレード」がオススメだ。


【「デスブレード」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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