週刊デッキウォッチング vol.98 -帝像ヴァラクート-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 白緑ビートダウン



Blue_「白緑ビートダウン」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

9 《平地》
6 《森》
4 《梢の眺望》
4 《要塞化した村》
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (24)-

4 《スレイベンの検査官》
2 《造命の賢者、オビア・パースリー》
4 《薄暮見の徴募兵》
4 《サリアの副官》
3 《不屈の追跡者》
2 《異端聖戦士、サリア》
4 《優雅な鷺の勇者》
2 《優雅な鷺、シガルダ》

-クリーチャー (25)-
3 《石の宣告》
3 《停滞の罠》
1 《永遠の見守り》
4 《密輸人の回転翼機》

-呪文 (11)-
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
3 《導路の召使い》
3 《断片化》
1 《不屈の追跡者》
1 《石の宣告》
1 《垂直落下》
1 《永遠の見守り》
1 《停滞の罠》

-サイドボード (15)-
hareruya



優雅な鷺、シガルダサリアの副官優雅な鷺の勇者



 現環境のビートダウンデッキの筆頭といえば赤白「機体」だが、ビートダウン同士の戦いにおいては、マナ域が少し重い方が勝利する。そうした観点から、マナカーブをあえて「1→1+1」に寄せず、横並べのビートダウンながらも単体のサイズもでかい太い攻めを実現しているのが、こちらの緑白人間だ。

 《優雅な鷺の勇者》《優雅な鷺、シガルダ》の能力とかみ合うことはもちろん、ビートダウン対決では絆魂能力がダメージレースを崩壊させる。瞬速は《薄暮見の徴募兵》を「変身」させるのにも役立つほか、初見の対戦相手に対してはスタンダード環境では珍しいコンバットトリックとして、裏をかくのに重宝することだろう。

 かつての「バントカンパニー」のように、単純なビートダウンというだけでなく、ターン経過によってリソースを増やせる《造命の賢者、オビア・パースリー》《薄暮見の徴募兵》《不屈の追跡者》など、対戦相手にとって放置できないシステムクリーチャーが大量に入っているので、黒緑「昂揚」相手にも長期戦で戦えるのも強みだ。

 《約束された終末、エムラクール》も6枚入った除去呪文と合わせて《優雅な鷺、シガルダ》でケアしており、シンプルな構成ながら環境の多くのデッキ相手に手広く戦えそうだ。


【「白緑ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: 風景の変容



nsw1074「風景の変容」
MODERN REGIONAL PTQ(4位)

6 《山》
2 《森》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《燃えがらの林間地》
4 《樹木茂る山麓》
4 《沸騰する小湖》
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》

-土地 (26)-

4 《桜族の長老》
2 《猿人の指導霊》
2 《強情なベイロス》
4 《原始のタイタン》
2 《白金の帝像》
2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (16)-
2 《召喚士の契約》
2 《遥か見》
4 《明日への探索》
4 《向こう見ずな実験》
2 《風景の変容》
4 《裂け目の突破》

-呪文 (18)-
3 《突然のショック》
3 《溶鉄の雨》
2 《神々の憤怒》
1 《再利用の賢者》
1 《強情なベイロス》
1 《自然の要求》
1 《古えの遺恨》
1 《調和》
1 《塵への崩壊》
1 《粉砕の嵐》

-サイドボード (15)-
hareruya



向こう見ずな実験原始のタイタン裂け目の突破



 『カラデシュ』発売とともに話題となった《向こう見ずな実験》《白金の帝像》とのコンボだが、《流刑への道》《ヴェールのリリアナ》のあるモダン環境では、単体で勝ち手段とするには頼りない。しかし、ジャンドやアブザンには有利なもののバーンが苦手なデッキに搭載するならば、たった6枚のスロットで苦手を克服できるため、十分採用を検討する価値がある。

 そんな発想から《向こう見ずな実験》コンボを採用しているのがこちらの赤緑ヴァラクート。これまではバーンを苦手としていたが、《不屈の自然》系が多く入ったこのデッキなら《向こう見ずな実験》を3ターン目には安定してプレイできることから、後手でもバーン相手に間に合わないということはない。

 《向こう見ずな実験》でめくれた残りのカードはライブラリーの下に帰っていくので、《原始のタイタン》《風景の変容》でサーチする《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《山》が足りなくなるということもない。

 《白金の帝像》がうっかり手札に来てしまった場合、《裂け目の突破》で出すカードとしては心許ないが、8マナ払っての素出しならさすがに相手としても何らかの対応をせざるをえない。新エキスパンションによって進化したデッキの好例と言えるだろう。


【「風景の変容」でデッキを検索】





■ レガシー: ダークデプス



DNEELEY「ダークデプス」
Legacy Constructed League(5-0)

2 《Badlands》
2 《Bayou》
3 《新緑の地下墓地》
2 《湿地の干潟》
4 《燃え柳の木立ち》
1 《ボジューカの沼》
4 《不毛の大地》
3 《演劇の舞台》
2 《暗黒の深部》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
2 《イス卿の迷路》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》

-土地 (29)-

1 《冥界のスピリット》

-クリーチャー (1)-
4 《納墓》
3 《輪作》
1 《カラスの罪》
4 《小悪疫》
3 《突然の衰微》
3 《壌土からの生命》
2 《罰する火》
3 《ミリーの悪知恵》
4 《モックス・ダイアモンド》
3 《ヴェールのリリアナ》
-呪文 (30)-
2 《クローサの掌握》
2 《溶鉄の渦》
2 《苦花》
1 《輪作》
1 《棺の追放》
1 《炎の突き》
1 《古えの遺恨》
1 《天啓の光》
1 《真髄の針》
1 《カラカス》
1 《裂け岩の扉》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》

-サイドボード (15)-
hareruya



小悪疫暗黒の深部冥界のスピリット



 《暗黒の深部》《演劇の舞台》とで織りなす通称「マリット・レイジ・コンボ」は【土地単】のフィニッシャーとして有名だが、このコンボに特化した瞬殺デッキとして黒緑の「ダークデプス」デッキも最近活躍が見られるようになった。だがこのデッキはそれとはまた違う、コントロール型の「ダークデプス」となっている。

 【土地単】に限界まで黒いスペルを詰め込んだようなこのデッキの核は、たっぷり3枚も搭載された《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》《イス卿の迷路》だろうと《The Tabernacle at Pendrell Vale》だろうと黒マナが出せるようになるこのカードがあれば、《小悪疫》《ヴェールのリリアナ》をプレイすることなど造作もない。

 さらにこのデッキの《納墓》黒い《ギャンブル》といって差し支えない性能で、《壌土からの生命》や1枚差しの土地、《カラスの罪》《罰する火》などを状況に応じて墓地に送り込める。

 だが何よりこのデッキが感銘を誘うのは「ネザーゴー」を支えた懐かしの《冥界のスピリット》を採用していることだ。レガシーにおいては《剣を鍬に》《終末》されると帰ってこない可愛いクリーチャーだが、《ヴェールのリリアナ》を守るのには最適だ。レガシーで一風変わったデッキをお探しの方は、このデッキを試してみてもいいかもしれない。


【「ダークデプス」でデッキを検索】





■ フロンティア: ローグ



Hartigan「ローグ」
MTGFrontier Community Tournament – Week 1(6位)

11 《島》
2 《森》
4 《燃えがらの林間地》
4 《樹木茂る山麓》

-土地 (21)-

4 《爪鳴らしの神秘家》
4 《潮流の先駆け》
4 《跳ねる混成体》
3 《虚空を継ぐもの》
3 《龍爪のスーラク》
4 《奔流の機械巨人》
1 《老いたる深海鬼》

-クリーチャー (23)-
3 《焦熱の衝動》
4 《非実体化》
1 《焙り焼き》
4 《虚空の粉砕》
3 《ティムールの魔除け》
1 《呪文萎れ》

-呪文 (16)-
3 《自然のままに》
3 《粉々》
3 《呪文萎れ》
3 《変身術士の戯れ》
2 《払いのけ》
1 《焙り焼き》

-サイドボード (15)-
hareruya



潮流の先駆け龍爪のスーラク奔流の機械巨人



 『タルキール覇王譚』以降のカードが使えるフロンティア環境では、セットをまたがって様々なサブコンセプトが見つかることがある。【前回】のエンチャントもその一つだが、このデッキはインスタントタイミングという性質に着目している。

 39枚のスペルのうち34枚が瞬速持ちかインスタントという驚異の構成を見せるこのデッキが、対戦相手に隙を見せることは決してない。先にパーマネントを展開されたとしても、《焦熱の衝動》やエンド前の《潮流の先駆け》でテンポを取り戻せば、どこからでも嵌めパターンに持ち込めるのが強みだ。

 この手のデッキはクリーチャーを適宜潰されるとクロックがなくなり、1:1交換しかとれないことが重荷になっていくのが通例だが、そこは《虚空を継ぐもの》がクリーチャーをしっかりと守る。

 《奔流の機械巨人》をプレイできれば勝利は目前だ。往年の「フェアリー」を彷彿とさせる徹底した「待ち」デッキで、青という色の嫌らしさを対戦相手に思い知らせてやろう。


【「ローグ」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事

このシリーズの過去記事