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みなさんこんにちは。
『ゲートウォッチの誓い』がリリースされスタンダードは新環境に突入しました。アメリカでは早速新環境のスタンダードの大規模な大会である【SCGO Atlanta】が開催されました。
今回の記事では先週末に開催された【SCGO Atlanta】の結果を見て行きたいと思います。
SCGO Atlanta トップ8
~新戦力を得たAtarka Redがエルドラージを抑えトップに!~
2016年1月24日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Atarka Red
2位 Mono Green Eldrazi
3位 Jeskai Black
4位 Abzan Company
5位 RB Dragons
6位 UR Prowess
7位 4C Bring to Light
8位 Abzan Blue
トップ8のデッキリストは【こちら】
奇しくも前環境初期と同様にAtarka Redが優勝を収めました。
【2日目進出デッキ分布】によると、『ゲートウォッチの誓い』から《反射魔道士》《永代巡礼者、アイリ》といった新戦力を獲得した4C Rallyが最大勢力だったようです。このデッキは【GP Oakland】でも活躍しており、地力の高さがうかがえます。
しかしトップ8には1人も残らず、多数のエルドラージクリーチャーの加入により大幅に強化されたエルドラージランプや 《ゲトの裏切り者、カリタス》《炎呼び、チャンドラ》入りのJeskai Black、《ドラゴンの餌》《軍族童の突発》といったトークンと相性のいい《無謀な奇襲隊》を得たAtarka Red、新カード《嵐追いの魔道士》も含めた果敢クリーチャー12枚体制のアグロデッキのUR Prowessなどが見られます。
GP Oakland デッキ紹介
「Atarka Red」「Mono Green Eldrazi」「Abzan Company」「UR Prowess」「Jeskai Black」
11 《山》 1 《森》 2 《燃えがらの林間地》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《樹木茂る山麓》 -土地(22)- 4 《僧院の速槍》 3 《鐘突きのズルゴ》 4 《ケラル砦の修道院長》 3 《無謀な奇襲隊》 -クリーチャー(14)- |
4 《タイタンの力》 4 《乱撃斬》 3 《焦熱の衝動》 4 《アタルカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 3 《軍族童の突発》 2 《強大化》 -呪文(24)- |
4 《自傷疵》 3 《弧状の稲妻》 2 《棲み家の防御者》 2 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 2 《燻る湿地》 2 《苦い真理》 -サイドボード(15)- |
Atarka Redを初めとした赤いアグロデッキは環境初期に強いとされていましたが、今大会でも見事に優勝を収めました。強化されたエルドラージランプや最大勢力だったRallyに相性がいい、といったことも影響がありそうです。
また、このデッキにとって相性の悪いマッチアップとされるJeskai系はエルドラージランプやRallyによって抑えられていたこともこのデッキにとっては追い風でした。
☆注目ポイント
今大会見事に優勝を収めたKorey McDuffieのリストの特徴はAtarka Redのメインの勝ち手段の一つである《ティムールの激闘》+《強大化》のコンボが不採用なことです。
ただし、攻撃が通ったゴブリントークンを強化することで6点の追加のダメージを与えることが可能で強化スペルとして単体でも十分な強さを発揮する《強大化》は採用されています。
前環境ではシーズンを通してBrian DeMarsが昨年『戦乱のゼンディカー』発売直後に開催された【SCGO Indianapolis】で優勝したリストから数枚のカードとサイドボードを除いてほぼ同様のものでしたが、新戦力によって若干構成の変化が見られます。
《無謀な奇襲隊》は「怒濤」コストを支払うことで全体強化をすることが可能で 《ドラゴンの餌》や《軍族童の突発》、サイドの《ピア・ナラーとキラン・ナラー》といったトークンを多数生み出すカードと特に相性がいいクリーチャーです。
単体強化スペルコンボからトークン戦略+全体強化にシフトしたことにより従来のようにインスタントスピードの単体除去を構えるという対策もこのデッキに対しては効果が薄くなります。
サイド後は 《棲み家の防御者》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 《苦い真理》といったカードアドバンテージ獲得手段を投入することでロングゲームに備えます。Abzan Aggroなどの緑の高タフネスのクリーチャーや、Esper Dragonsのフィニッシャーである《龍王オジュタイ》対策に使える《自傷疵》も忍ばせてあります。
今後は他のデッキもスイーパー系の除去を積んでくることが予想されるので環境に合わせて構成を変えていく必要も出てきそうですが、前環境のような強化スペルによるコンボ型に戻したり、今回のようにトークン戦略を取ったりと選択肢がいくつか存在します。
14 《森》 1 《荒地》 4 《ウギンの聖域》 4 《見捨てられた神々の神殿》 1 《崩壊する痕跡》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(25)- 4 《葉光らせ》 4 《爪鳴らしの神秘家》 4 《難題の予見者》 1 《破滅の伝導者》 3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 1 《大いなる歪み、コジレック》 -クリーチャー(17)- |
2 《次元の歪曲》 3 《ニッサの巡礼》 2 《タイタンの存在》 3 《爆発的植生》 2 《ニッサの復興》 4 《面晶体の記録庫》 2 《精霊龍、ウギン》 -呪文(18)- |
4 《ジャディの横枝》 4 《バーラ・ゲドを滅ぼすもの》 2 《カル・シスマの風》 1 《世界を壊すもの》 1 《虚空の選別者》 1 《荒廃の双子》 1 《次元の歪曲》 1 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
新カードによって大幅に強化されたエルドラージランプ。新しいスイーパーの《コジレックの帰還》を使える赤緑の方が一般的ですが、このリストでは緑単色なことを活かし《葉光らせ》と《爪鳴らしの神秘家》の2種類のマナクリーチャーから3ターン目の《難題の予見者》や土地サーチスペルの《爆発的植生》からさらにマナを伸ばしてエルドラージに繋げます。
カードパワーの高さからAbzanやJeskaiといった中速デッキに強くAtarka Redのような速いデッキを苦手とします。特に緑単色のこのバージョンは《コジレックの帰還》の不在により、今大会の決勝戦のようなトークン戦略を取っているAtarka Redとのマッチアップは苦戦を強いられそうです。
☆注目ポイント
《大いなる歪み、コジレック》など新戦力となるエルドラージクリーチャーが多数加入したため、勝ち手段を《絶え間ない飢餓、ウラモグ》のみに頼る必要がなくなり、《無限の抹消》でKOということも少なくなりました。
サイドにフル搭載されている《バーラ・ゲドを滅ぼすもの》はミラーマッチで追加の勝ち手段として投入されるエルドラージクリーチャーで、一度アタックするだけでも大きく突き放すことができます。
《世界を壊すもの》も同型戦で強いカードで、ゲーム後半には余った土地を利用して再度プレイすることができるので消耗戦にも強くなります。
単体除去の《次元の歪曲》も地味ながら嬉しい追加です。これにより緑単色でもある程度までなら時間を稼ぐことが可能になりました。特に《カマキリの乗り手》などタフネス3のクリーチャーをわずか2マナで除去できるようになったのは大きな収穫です。
3 《森》 1 《平地》 1 《梢の眺望》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《コイロスの洞窟》 4 《ラノワールの荒原》 4 《乱脈な気孔》 2 《風切る泥沼》 2 《砂草原の城塞》 -土地(25)- 2 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 4 《森の代言者》 2 《永代巡礼者、アイリ》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《死霧の猛禽》 3 《作り変えるもの》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 -クリーチャー(25)- |
4 《ドロモカの命令》 2 《アブザンの魔除け》 4 《集合した中隊》 -呪文(10)- |
4 《アラシンの僧侶》 3 《強迫》 2 《絹包み》 1 《フェリダーの仔》 1 《冷酷な軍族》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《歪める嘆き》 1 《無限の抹消》 1 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
Abzan Megamorphをベースに《集合した中隊》でアドバンテージを取っていくミッドレンジデッキで、新カードも多数採用されており、今大会の【デッキテク】でも紹介されています。
☆注目ポイント
Abzanカラーのミッドレンジですが、このタイプのデッキでは必ずと言っていいほど採用されていた《包囲サイ》が不採用で、《集合した中隊》や《作り変えるもの》によってより確実にアドバンテージを得るために3マナ以下のクリーチャーでまとめられています。
『ゲートウォッチの誓い』で得た新たな2マナ緑クリーチャーの《森の代言者》は《焦熱の衝動》や《乱撃斬》といった2点火力で落ちないクリーチャーです。土地が並ぶ中盤以降は4/5と悪くないスペックで《乱脈な気孔》と《風切る泥沼》を強化します。
同様に新カードの《作り変えるもの》は死亡誘発能力持ちのクリーチャーで、採用されているクリーチャーのほとんどが3マナ以下なため能力が有効に働くことも多そうです。土地がめくれた場合でも《森の代言者》の強化に役立ちます。
呪文などが公開された場合でも手札に加えることができるので、追放されない限り確実にアドバンテージが稼げます。
サイドの《ゲトの裏切り者、カリタス》は 《先頭に立つもの、アナフェンザ》と共に墓地を活用するRallyに対して有効なクリーチャーとなります。全体的にタフネス3以上のクリーチャーでまとまっているので《コジレックの帰還》にも耐性があります。
3 《山》 2 《島》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 4 《シヴの浅瀬》 2 《さまよう噴気孔》 -土地(21)- 4 《僧院の速槍》 4 《ケラル砦の修道院長》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《嵐追いの魔道士》 -クリーチャー(16)- |
4 《焦熱の衝動》 4 《空間の擦り抜け》 4 《タイタンの力》 2 《促進》 1 《払拭》 2 《焙り焼き》 2 《ティムールの激闘》 4 《宝船の巡航》 -呪文(23)- |
2 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 2 《払拭》 2 《強迫》 2 《乱撃斬》 2 《沸き立つ大地》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《焙り焼き》 1 《苦い真理》 1 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
軽いスペルと果敢持ちのクリーチャーを多数採用した青赤の2色のアグロデッキで、果敢持ちの《嵐追いの魔道士》の登場により生み出されたアーキタイプです。
このタイプのデッキにありがちな中盤以降の息切れも《宝船の巡航》によって手札を補充できるため、起こりにくくなっています。
☆注目ポイント
《嵐追いの魔道士》は一度果敢を誘発させれば2/4になるため火力系の除去に耐性があり、飛行持ちということもあって《僧院の速槍》よりもダメージが通しやすくなっています。元からタフネスが3あるため、《コジレックの帰還》に耐性があるのも強みです。
《促進》や《空間の擦り抜け》といった軽いキャントリップスペルの加入でドローを進めつつ果敢クリーチャーを強化し、《ティムールの激闘》によって勝負を決めます。特に《空間の擦り抜け》は強化されたクリーチャーの攻撃を通すためにも使えます。
相手の除去が増えそうなサイド後は《ピア・ナラーとキラン・ナラー》のように単体除去に強くアドバンテージも取れる追加の勝ち手段や《苦い真理》を投入することで、消耗戦の対応も可能になっています。
◆Interview With Gerry Thompson
StarCityGamesのプレミアライターでデッキビルダーのGerry Thompsonに、今回彼が持ち込み見事に入賞を果たしたJeskai Blackについてお話を聞くことができました。
1 《島》 1 《山》 1 《平地》 1 《沼》 2 《燻る湿地》 1 《梢の眺望》 1 《大草原の川》 1 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 3 《樹木茂る山麓》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《さまよう噴気孔》 2 《神秘の僧院》 1 《乱脈な気孔》 -土地(27)- 2 《僧院の導師》 3 《魂火の大導師》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー(10)- |
4 《焦熱の衝動》 2 《強迫》 2 《マグマの洞察力》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《焙り焼き》 4 《はじける破滅》 3 《苦い真理》 1 《残忍な切断》 3 《宝船の巡航》 1 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(24)- |
3 《否認》 3 《光輝の炎》 2 《払拭》 2 《焙り焼き》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《保護者、リンヴァーラ》 1 《無限の抹消》 1 《完全なる終わり》 1 《炎呼び、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
■ Jeskai Blackを選択した理由
Gerry: 最初はRallyかエルドラージランプが新環境のベストデッキだと思って調整していたんだけど、それらのデッキを倒せるデッキも作れると思って今回のJeskai Blackに行き着いたんだ。
エルドラージ系との相性は勝てないというほどは悪くはないけどキツイね。だけど《ゲトの裏切り者、カリタス》のおかげでRallyとのマッチは大分勝てるようになったよ。
--新カードの使用感はどう?
Gerry: 《ゲトの裏切り者、カリタス》と《炎呼び、チャンドラ》はすばらしかったね。《保護者、リンヴァーラ》はそれほどでもなかったかな。クリーチャーの数でも《僧院の導師》とかでリードしていることが多かったから《保護者、リンヴァーラ》の能力を活かし切れていなかったね。
《さまよう噴気孔》は強かったけど、このデッキのマナベースの構築は困難を極めた。(黒)(黒)、(白)(白)、(赤)(赤)が必要な場面に遭遇することも多く、時には青マナも2つ以上必要になるからね。タップインランドが増えたことで、負けたゲームの多くはマナによるトラブルが原因だったよ。
--変更したい所はある?
Gerry: 《保護者、リンヴァーラ》を抜いてエルドラージ系に強いカードを追加すると思う。《僧院の導師》は《コジレックの帰還》に弱くてカウンターも効果が薄いから、サイドに《強迫》や《精神背信》を追加しようと考えている。少なくとも《無限の抹消》よりは使えると思う。
あとSuper Sunday Seriesのスタンダード部門で優秀な成績を収めていた【Ignacio BarberoのGrixis Control】も使ってみたいデッキだね。Jeskai Blackよりも強そうだからプロツアーが終わったら試してみようと思う。
--なるほど。毎回インタビューに協力してくれてありがとう。
新環境のスタンダードのオープンではほぼ毎回斬新なアイデアを持ち込んで入賞を収めているGerry。新カードを多数採用した新環境のJeskai Blackは中々面白そうなデッキなので、スタンダードをプレイする際は試してみてはどうでしょうか。
総括
新セットリリース直後の大会にも関わらず新しいカードを多数採用したデッキが上位にも多く見られました。
『ゲートウォッチの誓い』からさらに強化されたエルドラージランプは惜しくも優勝は逃したものの準優勝と言う好績を残し、そのポテンシャルの高さを見せました。エルドラージランプや前環境でもコンスタントな強さを見せ、新戦力を得たことでさらに強化されたRallyが人気のあるデッキで、それらに強いAtarka Redというのが今回のSCGOでした。
Rallyは前環境終盤に開催された【GP Oakland】での活躍からメタられていたため使用人数に反して結果は振るいませんでしたが、まだまだ新環境1週目なのでメタが進むにつれて状況も変わります。
以上USA Standard Express vol.64でした。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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