週刊デッキウォッチング vol.90 -『カラデシュ』搭載、テゼレッター-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Satou Kenji「ローグ」
PPTQ2017#2 – 神奈川公会堂(Top8)

7 《森》
2 《沼》
4 《花盛りの湿地》
4 《秘密の中庭》
2 《風切る泥沼》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (21)-

4 《壌土のドライアド》
4 《夜市の見張り》
2 《墓所破り》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ズーラポートの殺し屋》
3 《薄暮見の徴募兵》
4 《武器作り狂》
3 《地下墓地の選別者》
3 《息詰まる忌まわしきもの》
4 《ヴォルダーレンの下層民》

-クリーチャー (35)-
4 《謎の石の儀式》

-呪文 (4)-
3 《無私の霊魂》
3 《膨らんだ意識曲げ》
3 《苦渋の破棄》
2 《集団的蛮行》
2 《失われた遺産》
2 《生命の力、ニッサ》

-サイドボード (15)-
hareruya



夜市の見張り生命の力、ニッサ武器作り狂



 【プロツアー『カラデシュ』】は八十岡 翔太の駆る「グリクシスコントロール」の優勝で幕を閉じた。ならば環境の終着点は「グリクシスコントロール」なのだろうか? 否。プロツアーが終わり、環境の基本的な登場人物が出揃ったこのタイミングがむしろ始まりなのであり、乗り越えるべき課題が示された今こそ、デッキビルダーが活躍するときなのだ。

 このデッキは旧環境の「黒緑ハスク」をベースにしつつもよりビートダウンに寄せた形で、スペル部分は4枚の《謎の石の儀式》のほかはすべてクリーチャーという潔い構成となっている。

 《夜市の見張り》《謎の石の儀式》《壌土のドライアド》とプチコンボを形成し、《ズーラポートの殺し屋》と合わせて相手のライフを詰められる。3マナでありながら3体のクリーチャーを生成できる《武器作り狂》は、《ズーラポートの殺し屋》はもちろん、《ヴォルダーレンの下層民》《ウェストヴェイルの修道院》との相性も抜群だ。

 サイドボードに投入されている《無私の霊魂》やコンボ対策の《膨らんだ意識曲げ》は、スペル的な役割を果たすカードながら《薄暮見の徴募兵》で探しだすこともできる。またコントロール相手に無類の強さを誇る《生命の力、ニッサ》は、プロツアー以後のスタンダード環境を定義する一枚ともなりうる。メインのビート要素・コンボ要素とサイドボードのミッドレンジ要素のバランスも良く、見た人に一度は使ってみたいと思わせる実に素晴らしいデッキだ。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: テゼレッター



Shinohara Gen「テゼレッター」
晴れる屋モダン杯(1位)

2 《島》
2 《沼》
4 《闇滑りの岸》
3 《忍び寄るタール坑》
4 《幽霊街》
4 《ちらつき蛾の生息地》
2 《ダークスティールの城塞》
1 《アカデミーの廃墟》
1 《発明博覧会》

-土地 (23)-

4 《搭載歩行機械》
4 《金線の使い魔》
4 《エーテリウムの達人》

-クリーチャー (12)-
3 《コジレックの審問》
2 《思考囲い》
2 《破滅の刃》
2 《燻し》
2 《次元の歪曲》
4 《ディミーアの印鑑》
2 《弱者の剣》
2 《飛行機械の鋳造所》
1 《饗宴と飢餓の剣》
1 《殴打頭蓋》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
4 《ボーラスの工作員、テゼレット》

-呪文 (26)-
3 《失われた遺産》
2 《難題の予見者》
2 《見栄え損ない》
2 《集団的蛮行》
2 《虚無の呪文爆弾》
2 《精神固めの宝珠》
1 《コジレックの審問》
1 《真髄の針》

-サイドボード (15)-
hareruya



ボーラスの工作員、テゼレット金線の使い魔失われた遺産



 アーティファクトをテーマにしたセットは、エターナル環境に多くの影響を与えることが多い。『カラデシュ』についてはこれまで《密輸人の回転翼機》ばかりを取り上げてきたが、デッキビルダーたちは既に他の様々なカードの可能性の探求に着手し始めているようだ。

 《ボーラスの工作員、テゼレット》をフィーチャーしたこちらのデッキは、何と《金線の使い魔》を4枚採用している。【バーン】が一大勢力を占めるモダンにおいては、この無色の《台所の嫌がらせ屋》は非常に頼もしい存在だ。

 1枚差しの《発明博覧会》は、土地でありながら「《飛行機械の鋳造所》《弱者の剣》」コンボを揃えにいけるほか、毎ターンのライフゲインも地味に馬鹿にならない。《領事の旗艦、スカイソブリン》《コジレックの審問》《突然の衰微》で触れず《ヴェールのリリアナ》に強いカードとして、黒緑系のデッキに対する切り札となりうる。

 だが、このデッキの一番の収穫はサイドボードの《失われた遺産》だろう。モダンの大半のコンボデッキに通用する《頭蓋の摘出》が3マナとなったことで、「スケープシフト」や【リビングエンド】【アドグレイス】などのコンボデッキとの相性は大きく向上したものと思われる。アーティファクトの強さを最大限生かしつつも、親和と違って《石のような静寂》が効きにくい「テゼレッター」は、モダン環境でまだまだ研究しがいがありそうなアーキタイプと言えそうだ。


【「テゼレッター」でデッキを検索】





■ レガシー: 青黒緑コントロール



lincolnthree「青黒緑コントロール」
Competitive Legacy Constructed League(5-0)

1 《森》
1 《島》
1 《沼》
2 《Underground Sea》
2 《Tropical Island》
1 《Bayou》
3 《汚染された三角州》
3 《霧深い雨林》
1 《ボジューカの沼》
1 《陰謀団のピット》
1 《孤立した砂州》
4 《不毛の大地》
1 《演劇の舞台》
1 《暗黒の深部》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》

-土地 (24)-

2 《瞬唱の魔道士》
2 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー (4)-
4 《輪作》
4 《渦まく知識》
4 《突然の衰微》
2 《集団的蛮行》
2 《直観》
2 《壌土からの生命》
4 《意志の力》
2 《森の知恵》
4 《モックス・ダイアモンド》
1 《師範の占い独楽》
2 《ヴェールのリリアナ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (33)-
3 《思考囲い》
2 《悪意の大梟》
2 《狼狽の嵐》
1 《カラカス》
1 《外科的摘出》
1 《暗黒破》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《毒の濁流》
1 《大渦の脈動》
1 《Drop of Honey》
1 《造物の学者、ヴェンセール》

-サイドボード (15)-
hareruya



暗黒の深部森の知恵壌土からの生命



 レガシーの「土地単」ではない《暗黒の深部》デッキといえば黒緑の2色が主流だが、安定性やコンボ耐性という観点からすると、青をメインカラーにするメリットは計り知れない。そこで、思いきって黒緑を黒青緑にしてしまったのがこちらのデッキだ。

 黒青緑コントロール要素、「土地単」要素、《暗黒の深部》コンボ要素と多種多様な側面を持つこのデッキは、うまく回れば「コンボ耐性のある『土地単』」という最強のコンセプトともなりうる。《罰する火》コンボや《イス卿の迷路》がないため「土地単」ほどのボードコントロール性能はないものの、《森の知恵》に加えて《渦まく知識》《精神を刻む者、ジェイス》でスペルを探しにいけるのは強力だし、《意志の力》のバックアップのあるマリット・レイジ・コンボは相手にとってかなりの脅威となるだろう。

 《直観》は「土地単」でも《ギャンブル》の代わりもしくは追加でたまに見られるカードで、《暗黒の深部》《演劇の舞台》《壌土からの生命》をサーチすることで確実にマリット・レイジ・コンボが揃うのが魅力だ。

 黒青緑の土地を見せておいて、4マナからエンド前の《輪作》で突如マリット・レイジ・コンボを決められるというのは奇襲性も非常に高い。また《集団的蛮行》《死儀礼のシャーマン》対策と手札確認を兼ねており、《壌土からの生命》で手札の枚数を補充できるこのデッキにはうってつけだ。レガシーにおいてデッキの全貌を悟られないことは大きなアドバンテージとなる。一か月後に迫った【グランプリ千葉】では一体どんな新しいテクニックが出てくるのか、今から楽しみだ。

【「青黒緑コントロール」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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