週刊デッキウォッチング vol.93 -マシーンヘッド2016-

伊藤 敦

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 霊気池の驚異



Hoshino Kazuki「霊気池の驚異」
平日スタンダード11時の部(3-0)

7 《森》
2 《島》
1 《山》
4 《植物の聖域》
4 《尖塔断の運河》
4 《霊気拠点》

-土地 (22)-

4 《導路の召使い》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
4 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー (13)-
4 《霊気との調和》
4 《蓄霊稲妻》
3 《有事対策》
3 《発生の器》
2 《霊気溶融》
4 《織木師の組細工》
4 《霊気池の驚異》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-呪文 (25)-
4 《通電の喧嘩屋》
3 《逆毛ハイドラ》
2 《不屈の追跡者》
2 《つむじ風の巨匠》
2 《新緑の機械巨人》
2 《否認》

-サイドボード (15)-
hareruya



霊気池の驚異約束された終末、エムラクール通電の喧嘩屋



 スタンダードのトレンドは「青白フラッシュ」から「黒緑昂揚」に移り気味だが、【先週末のMOPTQで優勝】したことで、黒緑昂揚へのアンチデッキとしてにわかに注目を浴び始めているのが《霊気池の驚異》デッキだ。

 《霊気池の驚異》デッキといえば【プロツアー『カラデシュ』】の初日のトップメタだったが、当時はサイドボードから飛んでくる《儀礼的拒否》《否認》といったカードへの耐性があまりにもなさすぎたため、最終的な勝ち組とはならなかった。だが黒緑がトップメタとなった現在ならばメイン戦を勝利するのは容易だし、研究が進んだ今ではサイドから新しい戦略を取り入れることで、カウンター耐性を獲得することに成功している。そう、アグレッシブサイドボードである。

 このデッキではサイドから《通電の喧嘩屋》《逆毛ハイドラ》など15枚すべてを投入することで「赤緑エネルギー・ビートダウン」へと変化し、対戦相手のアーティファクト対策をかわすことが可能となっている。【第7期スタンダード神決定戦】でも活躍した《つむじ風の巨匠》は、《新緑の機械巨人》と合わせて空から対戦相手を強襲できる縁の下の力持ちだ。

 製作者のインアウトはわからないが、たとえば「3《絶え間ない飢餓、ウラモグ》、1《約束された終末、エムラクール》、4《織木師の組細工》、4《霊気池の驚異》、3《有事対策》」で15枚と考えると、サイド後も《発生の器》から《墓後家蜘蛛、イシュカナ》《約束された終末、エムラクール》へとつなげる「昂揚」要素も残ることとなる。ライフプレッシャーをかけつつ、隙を見せたところで《約束された終末、エムラクール》のハードキャストをお見舞いしてあげよう。


【「霊気池の驚異」でデッキを検索】





■ モダン: ローグ



Dylan Feeman「ローグ」
Grand Prix Dallas 2016(30位)

8 《島》
1 《山》
2 《蒸気孔》
4 《沸騰する小湖》
2 《霧深い雨林》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《汚染された三角州》
2 《硫黄の滝》
1 《尖塔断の運河》
1 《僻地の灯台》

-土地 (23)-

4 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《白金の帝像》

-クリーチャー (7)-
4 《血清の幻視》
4 《稲妻》
2 《呪文嵌め》
2 《マナ漏出》
2 《差し戻し》
2 《イゼットの魔除け》
1 《収穫の火》
1 《焙り焼き》
1 《電解》
4 《向こう見ずな実験》
2 《謎めいた命令》
4 《血染めの月》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-呪文 (30)-
2 《若き紅蓮術士》
2 《払拭》
2 《汚損破》
2 《突然のショック》
2 《神々の憤怒》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《否認》
1 《イゼットの魔除け》
1 《焙り焼き》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-サイドボード (15)-
hareruya



向こう見ずな実験白金の帝像血染めの月



 【赤単氷雪コントロールの優勝】という衝撃的な結果に終わった【グランプリ・ダラス・フォートワース2016】だが、『カラデシュ』発売後初のモダングランプリだけあって、上位デッキには他にも様々な挑戦的なアイデアが溢れている。その一つがこの青赤《向こう見ずな実験》コンボだ。

 デッキ内のアーティファクトの枚数を1~2枚に抑えることで、《新たな造形》コンボなどと違って盤面のカードを必要とせずに即座に狙ったアーティファクトを場に出せる1枚コンボが可能なこのカードだが、当然狙ったカードが10枚目にあるか20枚目にあるか、はたまた40枚目にあるかはわからないため、自滅のリスクもあるのが難点だった。しかしサーチ対象のアーティファクトを《白金の帝像》にすると、何とライフ減少のデメリットを無視できるのである。《向こう見ずな実験》さえ引けば4ターン目に確実に《白金の帝像》が出てくるとなれば、モダンで一大勢力を誇るバーンデッキとの相性はすこぶる良いに違いない。

 構造的には「ブルームーン」のフィニッシャーが《向こう見ずな実験》となった形をとっているため、特定のマッチアップでは設置するだけで勝ててしまう《血染めの月》を、無理なく4枚採用できているのも強みだ。

 なお、通常はトロンデッキなどで使われることからあまり意識されないが、《白金の帝像》をコントロールしていると1点以上のライフが支払えなくなるため、フェッチランドが起動できなくなることは覚えておいた方が良いだろう。


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■ レガシー: 黒赤ビートダウン



Endou Yuuta「黒赤ビートダウン」
平日レガシー14時の部(3-0)

6 《沼》
1 《山》
4 《Badlands》
1 《Taiga》
4 《血染めのぬかるみ》
2 《新緑の地下墓地》
1 《樹木茂る山麓》
3 《不毛の大地》
2 《リシャーダの港》

-土地 (24)-

4 《死儀礼のシャーマン》
2 《精神病棟の訪問者》
3 《惑乱の死霊》
4 《冒涜の悪魔》
1 《刃の翼ロリックス》
1 《墓忍び》

-クリーチャー (15)-
4 《稲妻》
4 《暗黒の儀式》
4 《思考囲い》
1 《コジレックの審問》
3 《トーラックへの賛歌》
2 《終止》
1 《四肢切断》
3 《ヴェールのリリアナ》

-呪文 (22)-
4 《殺戮遊戯》
3 《紅蓮破》
3 《ラクドスの魔除け》
2 《火炎舌のカヴー》
1 《強迫》
1 《トーラックへの賛歌》
1 《戦慄掘り》

-サイドボード (15)-
hareruya



惑乱の死霊冒涜の悪魔暗黒の儀式



 「マシーンヘッド」といえば『インベイジョン』当時のスタンダードで活躍し、世界選手権を制したこともあるデッキだが、《暗黒の儀式》が使えるレガシーなら、同一のコンセプトを再現することは不可能ではない。

 しかしカードパワーが上がった現代においては、《ファイレクシアの盾持ち》《燃え立つ死霊》では物足りない。そこでこのデッキでは《冒涜の悪魔》のスペックに着目している。2ターン目に降臨すれば、クリーチャーを横に並べることが少ないレガシーにおいてはデメリットなしの6/6飛行として活躍が見込まれるし、《ヴェールのリリアナ》を1ターン目にプレイできれば、《意志の力》を引いていない対戦相手は悶絶するしかないだろう。

 マナ域をずらした戦略はナチュラルに《師範の占い独楽》《相殺》コンボへの対策となるし、山盛りの手札破壊でコンボデッキへの耐性も十分ありそうだ。

 レガシーは歴史あるフォーマットだけあって、強力なコンセプトは既に研究し尽くされていると思われがちだが、コンボやクロックパーミッションの研究は進んでいても、このデッキやNic Fitのようなジャンク・グッドスタッフ系ミッドレンジについては、まだまだ開拓の余地がある。「使いたいカードを使う」といった遊び心が、意外と新アーキタイプ誕生のきっかけとなるかもしれない。


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■ フロンティア: ローグ



Sukegawa Hayato「ローグ」
晴れる屋フロンティア杯(3-1-1)

11 《島》
3 《窪み渓谷》
4 《汚染された三角州》
3 《溢れかえる岸辺》
4 《光輝の泉》

-土地 (25)-

2 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (2)-
1 《払拭》
4 《予期》
2 《軽蔑的な一撃》
4 《パズルの欠片》
3 《水撃》
4 《岸の飲み込み》
2 《霊気渦竜巻》
1 《シルムガルの命令》
4 《水の帳の分離》
4 《時を越えた探索》
4 《プリズムの指輪》

-呪文 (33)-
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《氷の中の存在》
2 《集団的蛮行》
2 《機械医学的召喚》
1 《払拭》
1 《否認》
1 《残忍な切断》

-サイドボード (15)-
hareruya



岸の飲み込み時を越えた探索プリズムの指輪



 スタンダードでは《呪文捕らえ》との遭遇確率の高さから使用が躊躇われる青単プリズンだが、環境の速度がスタンダードとそれほど変わらない割りにデッキが多様なフロンティア環境で使う分には、ソリューションとなる可能性がある。

 《ドロモカの命令》のリスクをケアし、《ジェイスの聖域》をあえて全抜きしたこの形は、《プリズムの指輪》《光輝の泉》を併用することでフェッチランドを全力採用しつつもライフ水準を高く保つことが可能となっているほか、刺さる妨害スペルの種類がかなり限られるため、単純なビートダウンでの突破は極めて難しい。

 《奔流の機械巨人》はフロンティア最凶コンボと名高い「《奔流の機械巨人》《時を越えた探索》」も実現するほか、《岸の飲み込み》で再利用できるので、デッキコンセプトとの相性は抜群だ。

 サイドボードはほぼノンクリーチャーのメインボードから《ヴリンの神童、ジェイス》《氷の中の存在》によるアグレッシブサイドに変形する選択肢だけでなく、《機械医学的召喚》《水の帳の分離》による奇襲も狙える。タッチの《集団的蛮行》《時を越えた探索》との相性も良く、見た目以上に侮れないデッキパワーがありそうだ。


【「ローグ」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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