みなさんこんにちは。
いよいよ来週末には【『イニストラードを覆う影』のプレリリース】が開催されます。いち早く新セットに触れるチャンスです。
新たな友好色ランドや両面クリーチャーカード《Archangel Avacyn》、両面プレインズウォーカーの《Arlinn Kord》などプレビューも続々公開されており、新環境のデッキについて考えるのが楽しい時期です。
さて、今回の記事では現環境最後のスタンダードの大規模な大会である【SCGO Indianapolis】、【GP Paris】の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Indianapolis トップ8
~Rallyがプレイオフの半数を占める~
2016年3月19-20日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 4C Rally
2位 Esper Dragons
3位 4C Rally
4位 4C Rally
5位 4C Rally
6位 Jeskai Black
7位 Grixis Control
8位 Abzan Aggro
トップ8のデッキリストは【こちら】
4C Rallyがトップ8の半数を占め、優勝も4C Rallyと現スタンダードトップメタに恥じない強さを見せます。
【GP Master】ランキングトップランナーであるOwen Turtenwald、2014年度ルーキーのRaymond Perez、SCGプレミアライターでSCGツアー(SCGO、SCG Invitational)入賞回数合計26回(その内優勝6回)のTodd Andersonといったプレイヤーが勝ち残っており、レベルの高い大会でした。
SCGO Indianapolis デッキ紹介
「Esper Dragons」「Mono-Red Eldrazi」
3 《島》 2 《沼》 1 《平地》 3 《大草原の川》 3 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 3 《乱脈な気孔》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《龍王オジュタイ》 2 《龍王シルムガル》 -クリーチャー(10)- |
4 《闇の掌握》 4 《シルムガルの嘲笑》 3 《精神背信》 1 《軽蔑的な一撃》 2 《忌呪の発動》 2 《苦い真理》 1 《完全なる終わり》 2 《命運の核心》 4 《時を越えた探索》 -呪文(23)- |
3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《強迫》 2 《見えざるものの熟達》 2 《絹包み》 1 《無限の抹消》 1 《苦い真理》 1 《衰滅》 1 《悪性の疫病》 1 《卓絶のナーセット》 -サイドボード(15)- |
2日目進出プレイヤーの中でEsper Dragonsを持ち込んでいたのはRobert Wrightただ1人でした。
環境も煮詰まってきており、Jeskai Black、Grixis Control、Mardu Midrangeなどミッドレンジやコントロールも増加傾向にあるため、ミッドレンジに強いEsper Dragonsは今大会では有利な選択だったようです。
☆注目ポイント
《精神背信》は《強迫》よりも1マナ重いもののクリーチャーも落とすことが可能で、追放するので《死霧の猛禽》など、このデッキが苦手としていたクリーチャーの対処も可能になっています。Eldrazi Rampなどに対してもエルドラージクリーチャーを追放できるので現在のメタでは《強迫》よりも使いやすいハンデススペルになります。
また、色拘束は強いものの《闇の掌握》の恩恵で序盤を凌ぎやすくなりました。
サイドの《見えざるものの熟達》は起動するマナさえあれば毎ターン「予示」クリーチャーを展開していくことができるのでコントロールミラーで強さを発揮します。コントロールとの対戦が多くなることを見越していたのか《卓絶のナーセット》や追加のハンデスの《強迫》などコントロールとのマッチで強さを発揮するカードが多めに積まれています。Rallyも意識しており《ゲトの裏切り者、カリタス》も見られます。
デッキの多くのカードはローテーション後も残りますが、歴代でも最も強力なドロースペルの1枚でこのデッキにとっても最も重要なスペルでもある《時を越えた探索》がローテーション落ちしてしまうので新環境でどのような立ち位置になるのかは未知数です。
10 《山》 4 《シヴの浅瀬》 2 《戦場の鍛冶場》 4 《領事の鋳造所》 3 《精霊龍の墓》 2 《オラン=リーフの廃墟》 -土地(25)- 4 《搭載歩行機械》 4 《面晶体の這行器》 4 《飛行機械技師》 4 《不快な集合体》 3 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 3 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 -クリーチャー(26)- |
3 《焙り焼き》 2 《次元の歪曲》 4 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(9)- |
2 《灰雲のフェニックス》 3 《エルドラージの寸借者》 2 《弧状の稲妻》 2 《前哨地の包囲》 1 《難題の予見者》 1 《忘却蒔き》 1 《引き裂く流弾》 1 《焙り焼き》 1 《次元の歪曲》 1 《石弾の弾幕》 -サイドボード(15)- |
【今大会のデッキテク】としても挙げられています。惜しくもトップ8入賞は逃したものの初日全勝、最終成績トップ16という成績を残した赤単色のエルドラージミッドレンジ。
☆注目ポイント
除去耐性があり速攻トランプル持ちの《現実を砕くもの》、ハンデスETB能力を持つ《難題の予見者》といったモダン、レガシーでも活躍しているエルドラージクリーチャーに《搭載歩行機械》、《飛行機械技師》、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》といったトークンを製造するクリーチャーを加えた赤単色のエルドラージミッドレンジで、『ゲートウォッチの誓い』の強力な赤いPWの《炎呼び、チャンドラ》もフル搭載されています。
マナ加速として採用されている《面晶体の這行器》は無色マナを出すため各種エルドラージクリーチャーもキャストしやすくなります。
単色ですが、安定して無色マナを調達するために《シヴの浅瀬》《戦場の鍛冶場》といったペインランドや《領事の鋳造所》《オラン=リーフの廃墟》 《精霊龍の墓》といった特殊地形が多めに採用されています。
《領事の鋳造所》はマナが余る中盤以降のゲームではトークンを生み出すことができるためフラッドを受け入れやすくなり、《オラン=リーフの廃墟》の起動型能力も無色のクリーチャーが中心のこのデッキでは強力です。
『マジック・オリジン』と『戦乱のゼンディカー』ブロックのカードが中心の構成なのでローテーション後の環境のデッキとしても注目を集めています。
GP Paris トップ8
~決勝は青いデッキ同士のマッチ。優勝はGrixis Control~
2016年3月19-20日
※画像は【MAGIC: THE GATHERING 英語公式サイト】より引用させていただきました。 |
1位 Grixis Control
2位 Jeskai Black
3位 Bant Company
4位 Abzan Aggro
5位 Esper Dragons
6位 4C Rally
7位 Abzan Blue
8位 Mardu Green
トップ8のデッキリストは【こちら】
Rally祭りだった【SCGO Indianapolis】の結果と大きく異なりJeskai、Grixis、Abzan、Bant Comapny、Esper Dragons、Mardu Greenと異なるアーキタイプの活躍が目立ち、決勝戦も青いデッキ同士の対決を制したGrixis Controlの優勝で幕を閉じました。
環境も終盤に差し掛かり、仮想敵が明確になったため、コントロールデッキにとって勝ちやすいメタだったようです。
GP Paris デッキ紹介
「Grixis Control」「Abzan Aggro」「Bant Company」
3 《沼》 2 《島》 2 《山》 2 《窪み渓谷》 2 《燻る湿地》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 2 《樹木茂る山麓》 1 《溢れかえる岸辺》 4 《さまよう噴気孔》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー(7)- |
3 《焦熱の衝動》 2 《強迫》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《闇の掌握》 2 《焙り焼き》 2 《精神背信》 2 《苦い真理》 2 《破滅の道》 1 《衰滅》 2 《残忍な切断》 4 《時を越えた探索》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 2 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(17)- |
3 《払拭》 3 《光輝の炎》 1 《竜使いののけ者》 1 《龍王シルムガル》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《焙り焼き》 1 《精神背信》 1 《無限の抹消》 1 《苦い真理》 1 《衰滅》 -サイドボード(15)- |
Grixisカラーのコントロールデッキ。カウンターは少なめで、除去とハンデスによる1-1交換をしつつ《時を越えた探索》や《苦い真理》でアドバンテージを広げていきます。
『ゲートウォッチの誓い』から加入した《炎呼び、チャンドラ》がこのデッキのフィニッシャーで更地にした後にこの赤いPWが着地すれば速やかにゲームを終らせることができます。
☆注目ポイント
トップメタのRallyを相当意識していたようで 《ゲトの裏切り者、カリタス》がメインから採用されています。Rally相手に《ゲトの裏切り者、カリタス》を守ることができればかなり有利にゲームを進めていくことが可能で、《ゲトの裏切り者、カリタス》が戦場に居る状態で《炎呼び、チャンドラ》の「-X」能力で相手の場を一掃すれば勝利は目の前です。
《時を越えた探索》はこのデッキにとって最も重要なスペルでカウンター、除去、スイーパー、フィニッシャーの《炎呼び、チャンドラ》などを引き当てるのに一役買います。JeskaiやEsper Dragonsなど他の青いデッキと同様にフェッチや 《ヴリンの神童、ジェイス》の恩恵で「探査」もしやすくなっています。
Esper Dragonsの所でも挙げたように《精神背信》は現環境では使いやすい妨害スペルで打ち消し呪文と異なり能動的に相手のプランを妨害できるのが強みです。《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》は今大会で復権してきたAbzan Aggroとのマッチアップでカードアドバンテージが稼げる除去として活躍します。
《焙り焼き》《焦熱の衝動》《闇の掌握》といった軽い除去にも恵まれており、《残忍な切断》やPWにも触れる《破滅の道》などあらゆる状況に対処できるようになっています。
2 《森》 2 《平地》 2 《梢の眺望》 1 《窪み渓谷》 1 《燻る湿地》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 4 《乱脈な気孔》 2 《ラノワールの荒原》 -土地(26)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《森の代言者》 3 《棲み家の防御者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 -クリーチャー(21)- |
4 《ドロモカの命令》 4 《アブザンの魔除け》 2 《残忍な切断》 2 《絹包み》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(13)- |
3 《強迫》 3 《自傷疵》 3 《精神背信》 2 《神聖なる月光》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《アラシンの僧侶》 1 《棲み家の防御者》 -サイドボード(15)- |
前環境のトップメタのAbzan Aggroでしたが純正のAbzan Aggroはしばらく見られず、『ゲートウォッチの誓い』後の環境で人気があったのは亜種のAbzan Blueでした。カウンターや『ゲートウォッチの誓い』から加入した《反射魔道士》などにアクセスできるAbzan Blueも捨てがたいですが、安定性では3色である純正の方が上になります。
☆注目ポイント
《羊毛鬣のライオン》退場後環境に合う2マナ域のクリーチャーの不足に悩まされましたが『ゲートウォッチの誓い』から《森の代言者》が加入し序盤の展開力が強化されました。《羊毛鬣のライオン》のような除去耐性はありませんが中盤以降も活躍する低マナ域のクリーチャーです。低マナ域の優秀なクリーチャーの増加に伴い《ドロモカの命令》も除去として使いやすくなりました。
メインではPWよりも《絹包み》など軽い除去が優先的に採用されており以前よりも《ヴリンの神童、ジェイス》や《僧院の導師》といった厄介なクリーチャーを処理しやすくなりました。除去が薄かったためJeskai Blackなどとのマッチで苦戦を強いられていたのでこの変更には納得です。
サイドにはハンデス、追加の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《棲み家の防御者》などコントロールを意識した構成で、RallyやBant Company対策の 《神聖なる月光》もしっかり採用されています。
3 《森》 2 《平地》 1 《島》 2 《梢の眺望》 2 《大草原の川》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《樹木茂る山麓》 1 《汚染された三角州》 4 《伐採地の滝》 -土地(25)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《森の代言者》 3 《棲み家の防御者》 4 《死霧の猛禽》 4 《空中生成エルドラージ》 4 《反射魔道士》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(28)- |
2 《ドロモカの命令》 1 《勇敢な姿勢》 4 《集合した中隊》 -呪文(7)- |
4 《アラシンの僧侶》 4 《軽蔑的な一撃》 2 《変位の波》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《払拭》 1 《否認》 1 《勇敢な姿勢》 -サイドボード(15)- |
昨年開催されたプロツアー『戦乱のゼンディカー』のファイナリストの玉田 遼一選手は今大会ではBant Companyを持ち込みトップ4入賞という好成績を残しています。Rallyがコンボ型のCompanyならこのデッキはミッドレンジアグロ型のCompanyで《空中生成エルドラージ》《風番いのロック》が各種4枚ずつ採用されているなど飛行クリーチャーが多めの構成です。
☆注目ポイント
地上の固いRallyや同型に対抗するために飛行クリーチャーが多めに採用されているのが特徴的です。《空中生成エルドラージ》はETB能力でマナ能力付きのトークンを出すので《風番いのロック》まで繋げやすく、アタッカーの多いこのデッキでは「強襲」も満たしやすいため4枚の採用となっています。
サイドの《変位の波》は「X=0」でキャストすることでトークンクリーチャーやPWに変身した両面カード、変異クリーチャーをまとめてバウンスすることが可能です。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は《集合した中隊》対策に《神聖なる月光》やスイーパーをサイドインしてきた相手に軸をずらした戦略としてこのデッキの対処を難しくします。
《風番いのロック》とフェッチランド、その他の一部のカードを除いてローテーションにより失うカードが少ないこのデッキは新環境でもよく見られるデッキとなりそうです。《反射魔道士》が『イニストラードを覆う影』から加入した多くのクリーチャーをバウンスする光景が目に浮かびます。
■ ボーナストピック
◆ ローテーション後の環境の予想
『イニストラードを覆う影』のリリースと同時に『タルキール覇王譚』ブロックがローテーションにより退場となります。果たして環境はどのように変化していくのでしょうか?
◆ マナ基盤
『タルキール覇王譚』ブロックの退場によって多色環境を支えていた友好色フェッチランドが落ちます。友好色フェッチと『戦乱のゼンディカー』のバトルランドの恩恵で3~4色のデッキが当たり前のように環境に存在しましたが、今後は同じようなデッキを構築するのは難しくなりそうです。
『イニストラードを覆う影』から新たな友好色ランドシリーズが収録予定ですが、単色~3色が主流になるかと思われます。
◆ クリーチャー
『タルキール覇王譚』ブロックは《先頭に立つもの、アナフェンザ》《包囲サイ》 《風番いのロック》《僧院の速槍》《カマキリの乗り手》《僧院の導師》など多色、単色と共に強力なクリーチャーが多数存在しました。それらのクリーチャーも『タルキール覇王譚』ブロックと共にスタンダードから姿を消します。
しかし、『タルキール龍紀伝』のドラゴンクリーチャー、《棲み家の防御者》《死霧の猛禽》、各種エルドラージクリーチャー、《森の代言者》、 《反射魔道士》、《ヴリンの神童、ジェイス》などは残ります。
フェッチランドが落ちることによって《ヴリンの神童、ジェイス》がPWに変身するのは遅くなりますが、『イニストラードを覆う影』で復活した「マッドネス」などのメカニズムとも相性が良く、今後も青を含む様々なデッキでの活躍が予想されます。
◆ スペル
《はじける破滅》《アブザンの魔除け》《残忍な切断》など効率的なスペルや歴代でも最高クラスのドロースペルであった《時を越えた探索》《宝船の巡航》もローテーションにより環境から姿を消します。
多色デッキの構築が困難になるので《苦い真理》も現在よりも使い難くなり、除去やドロースペルの弱体化はコントロールにとっては大きなロスとなりそうです。《先祖の結集》も落ちるのでRallyもローテーションと共に衰退します。
今後の環境に残るスペルの代表格としては《集合した中隊》が挙げられます。ローテーションにより失うパーツの少ないBant Companyは新環境でもよく見られるデッキとなりそうです。
◆ ローテーション後に残るデッキ
ローテーション後に残るデッキとしてまず挙げておきたいのがEldrazi Rampです。《精霊龍、ウギン》や《爪鳴らしの神秘家》など一部のカードを除いて無傷で、マナ加速には現在のところ 《面晶体の這行器》が使えます。【GP Paris】でも多くのプロが【Eldrazi Rampを次環境のデッキだと考えていました。】
先ほども挙げたBant Companyや赤単Eldraziもローテーションによる影響が少ないため、新環境でもよく見られるアーキタイプになりそうです。
総括
4C Rallyは『ゲートウォッチの誓い』後のスタンダード環境に最後までトップメタに留まり続けました。【GP Paris】では飛行クリーチャーを多数採用したBant Company、《ゲトの裏切り者、カリタス》や《精神背信》などをメインから採用することでRallyをメタったコントロールデッキが結果を出し最終的にGrixis Controlが優勝を掴んでいます。
優勝こそは逃したものの、Rallyは【GP Paris】でも対策の嵐の中で入賞を収めており、デッキの地力の高さと対策の難しさがうかがえます。
『イニストラードを覆う影』リリース直後に開催される予定のSCGO Baltimoreではどのようなデッキが活躍するのか今から楽しみです。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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