週刊デッキウォッチング vol.96 -グリクシス・デルバーン-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



jmanner「ローグ」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

1 《島》
1 《沼》
1 《山》
1 《平地》
2 《森》
1 《梢の眺望》
1 《燻る湿地》
4 《進化する未開地》
4 《霊気拠点》
3 《花盛りの湿地》
2 《感動的な眺望所》
1 《植物の聖域》
1 《燃えがらの林間地》

-土地 (23)-

4 《導路の召使い》
2 《巡礼者の目》
2 《不屈の追跡者》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《ゴブリンの闇住まい》
1 《害悪の機械巨人》
1 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー (13)-
3 《ウルヴェンワルド横断》
2 《霊気との調和》
4 《蓄霊稲妻》
2 《苦渋の破棄》
2 《光輝の炎》
4 《白日の下に》
1 《燻蒸》
3 《発生の器》
3 《先駆ける者、ナヒリ》

-呪文 (24)-
2 《儀礼的拒否》
2 《精神背信》
1 《呪文捕らえ》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《優雅な鷺、シガルダ》
1 《サリアの槍騎兵》
1 《保護者、リンヴァーラ》
1 《高木背の踏みつけ》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《払拭》
1 《自然のままに》
1 《知恵の拝借》
1 《光輝の炎》

-サイドボード (15)-
hareruya



白日の下に先駆ける者、ナヒリ墓後家蜘蛛、イシュカナ



 赤白機体、青白フラッシュ、黒緑昂揚、赤緑《霊気池の驚異》……現在活躍しているこれらのデッキを見る限り、スタンダードは2色環境と言える。バトルランドとシャドウランド、ファストランドだけでは3色以上のデッキを回すのは難しい。【マナベース記事】を見てもわかるように、早いターンに多色のマナを安定して供給するには、どうしても1枚で3色以上を供給できる土地のサポートが必要に思われる。だが、マナサポートとは必ずしも土地だけに限られない。5色が供給できるマナクリーチャーである《導路の召使い》《霊気との調和》《進化する未開地》を併用すれば、現環境でも5色《白日の下に》コントロールなんていう荒業が可能なのだ。

 ベースとなっているコンセプトは赤緑の「昂揚」に近く、最序盤は《霊気との調和》《ウルヴェンワルド横断》《発生の器》《導路の召使い》《巡礼者の目》でマナベースを整えながら墓地のカードタイプを増やしていく。《先駆ける者、ナヒリ》はクリーチャー除去だけでなく、引きすぎた土地の整理など手札の質を高める役割も兼ねている。

 サイドボードには《サリアの槍騎兵》パッケージも採用し、《ゲトの裏切り者、カリタス》《優雅な鷺、シガルダ》《保護者、リンヴァーラ》といった強力なレジェンドたちを自由にサーチしてこれる。

 《白日の下に》と「昂揚」済みの《ウルヴェンワルド横断》が合わされば、5マナ以下のスペルに加えてライブラリー中のクリーチャーを探してこれる。お気に入りのカードをちょっとずつ1枚差ししてみると、まるで統率者戦のような一期一会のバリエーションが味わえるようになるだろう。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: バント



Tak Myung Hyun「バント」
RPTQ2017#1(15位)

1 《森》
1 《島》
1 《平地》
2 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《霧深い雨林》
2 《植物の聖域》
1 《魂の洞窟》
1 《剃刀境の茂み》
1 《ガヴォニーの居住区》

-土地 (22)-

4 《霊廟の放浪者》
4 《貴族の教主》
4 《鎖鳴らし》
4 《無私の霊魂》
2 《幻影の像》
4 《ドラグスコルの隊長》
4 《呪文捕らえ》
3 《聖トラフトの霊》

-クリーチャー (29)-
4 《流刑への道》
4 《集合した中隊》
1 《神格の鋼》

-呪文 (9)-
3 《神聖な協力》
2 《戦争の報い、禍汰奇》
2 《クァーサルの群れ魔道士》
2 《否認》
2 《安らかなる眠り》
2 《石のような静寂》
1 《呪文滑り》
1 《仕組まれた爆薬》

-サイドボード (15)-
hareruya



ドラグスコルの隊長聖トラフトの霊集合した中隊



 『異界月』は《霊廟の放浪者》《無私の霊魂》《呪文捕らえ》と、「スピリット」を大幅に強化したセットとなった。そして新しいセットで特定のクリーチャータイプが強化されると、モダン以下の環境ではその種族のデッキの研究が進むのが定番だ。では『異界月』以前のカードで「スピリット」といえば何がいるだろうか? そう、《聖トラフトの霊》だ!

 【SCGのモダンオープンで優勝】したこともあるこのデッキは、モダン級のカードである《呪文捕らえ》《霊廟の放浪者》《鎖鳴らし》《無私の霊魂》《ドラグスコルの隊長》といったありとあらゆる手段で守ることができる。4マナのカードがプレイできないと言われるモダン環境ならば、《呪文捕らえ》が対象にとれないスペルはほとんどないだろう。

 《ドラグスコルの隊長》は全体強化に加えて呪禁を付与と強力極まりないが、瞬速を持っていないのだけが難点だった。だが《鎖鳴らし》がいればフェアリーにおける《ウーナの末裔》以上のポテンシャルを発揮できる。さらに《幻影の像》でコピーすれば、単体除去が効かない無敵の軍勢の完成だ。

 さらに《鎖鳴らし》《集合した中隊》でエンド前に《聖トラフトの霊》という動きは、「3ターン目にノーガードで出さなければいけない」という《聖トラフトの霊》の弱点を見事に消し去っている。《苦花》のような特定のカードに依存しないこの「スピリット」デッキは、「フェアリー」使いたちの第二の故郷となりそうだ。


【「バント」でデッキを検索】





■ レガシー: 青黒赤ジャンク



yozo「青黒赤ジャンク」
Competitive Legacy Constructed League(5-0)

4 《Volcanic Island》
2 《Badlands》
2 《Underground Sea》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《汚染された三角州》
1 《沸騰する小湖》

-土地 (17)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《僧院の速槍》
2 《若き紅蓮術士》
2 《激情の薬瓶砕き》
2 《グルマグのアンコウ》

-クリーチャー (14)-
4 《渦まく知識》
3 《稲妻の連鎖》
4 《ギタクシア派の調査》
4 《稲妻》
4 《思案》
4 《目くらまし》
2 《火炎破》
4 《意志の力》

-呪文 (29)-
3 《外科的摘出》
3 《発展の代価》
3 《粉々》
2 《狼狽の嵐》
2 《硫黄の渦》
1 《紅蓮破》
1 《赤霊破》

-サイドボード (15)-
hareruya



激情の薬瓶砕き意志の力火炎破



 『統率者2016』のカードでレガシーでの活躍が期待されているカードに、《激情の薬瓶砕き》がある。

 「代替コスト」を持つカードと相性が良いこのカードは、《目くらまし》を打てば2点、《意志の力》なら5点と、文字通りのカウンターバーンを実現することが可能となる。「探査」のカードとも相性が良く、《グルマグのアンコウ》を出しながら7点を叩き込めば、1回分アタックが少なくて済む計算だ。

 だが何よりも爽快なのは《火炎破》だろう。何と驚き、ピッチスペルで一撃10点を可能にするのだ。

 もちろんこれらのカードは《秘密を掘り下げる者》《僧院の速槍》といったアグレッシブなラインナップと組み合わせれば、《激情の薬瓶砕き》を引かなくても強力なカードであることは言うまでもない。マナ否定戦略や手札破壊を放棄した青赤デルバーの亜種、このグリクシス・デルバーンはレガシーの新たな定番デッキとなるのか?今後の展開に注目だ。


【「青黒赤ジャンク」でデッキを検索】





■ フロンティア: 白黒赤ビートダウン



Ishiwata Kouichi「白黒赤ビートダウン」
平日フロンティア17時の部(3-0)

3 《山》
1 《燻る湿地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《戦場の鍛冶場》
4 《コイロスの洞窟》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》

-土地 (24)-

3 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《雷破の執政》
2 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
3 《嵐の憤怒、コラガン》

-クリーチャー (24)-
4 《龍詞の咆哮》
4 《無許可の分解》
4 《密輸人の回転翼機》

-呪文 (12)-
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
2 《集団的蛮行》
2 《精神背信》
2 《コラガンの命令》
2 《失われた遺産》
2 《光輝の炎》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》

-サイドボード (15)-
hareruya



嵐の憤怒、コラガン密輸人の回転翼機ゴブリンの熟練扇動者



 フロンティアはスタンダードに比べてかなり赤の火力が強い環境だが、なかでも一際強力なのが《龍詞の咆哮》《無許可の分解》だ。条件は厳しいものの、クリーチャーを除去しながら本体に3点というのはやはり魅力的である……ならば、8枚積めばいいのではないか? そんな欲張りな発想を実現したのがこちらの「マルドゥドラゴン機体」だ。

 フェッチを8枚以上搭載した多色に対しては、ライフを攻めるアプローチが効果的だ。相手も《反射魔道士》などを活用してくることが多いが、《密輸人の回転翼機》《雷破の執政》、さらに「疾駆」を持つ《嵐の憤怒、コラガン》というラインナップがナチュラルにメタできている。

 地味だが《ゴブリンの熟練扇動者》《密輸人の回転翼機》とのシナジーも見逃せない。《ゴブリンの熟練扇動者》をコントロールしていると生まれたゴブリントークンは片っ端からチャンプアタックしにいってしまうが、戦闘開始ステップに生まれたトークンをまとめて「搭乗」させれば、トークンを無為に死なせずに溜めることができる(飛行中のヘリコプターにゴブリンが群がっている図を想像すると、何となくすぐに墜落しそうだが)。

 ある程度トークンが溜まったところで《嵐の憤怒、コラガン》を「疾駆」で走らせれば大ダメージも期待できる。アーティファクトを出すカードは13枚、ドラゴンは7枚と多少心もとないものの、うまく回れば相手の展開をすべて跳ね返しつつ5ターンキルすることも可能なこのデッキは、【フロンティアチャレンジカップ】で優勝した【フライング・ジェスカイ】同様、年始の「フロンティア神決定戦」でも活躍が期待できそうだ。


【「白黒赤ビートダウン」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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