週刊デッキウォッチング vol.109 -即席テゼレッター-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 白黒赤コントロール


Travv「白黒赤コントロール」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

3 《山》
3 《平地》
3 《沼》
3 《燻る湿地》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》
3 《乱脈な気孔》
1 《鋭い突端》

-土地 (24)-

4 《歩行バリスタ》
2 《スレイベンの検査官》
1 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (7)-
4 《致命的な一押し》
2 《グレムリン解放》
3 《無許可の分解》
1 《苦渋の破棄》
3 《チャンドラの誓い》
3 《リリアナの誓い》
3 《改革派の地図》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
4 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《死の宿敵、ソリン》

-呪文 (29)-
4 《精神背信》
2 《ハンウィアー守備隊》
2 《異端聖戦士、サリア》
2 《大天使アヴァシン》
2 《キランの真意号》
1 《経験豊富な操縦者》
1 《領事の権限》
1 《先駆ける者、ナヒリ》

-サイドボード (15)-
hareruya



歩行バリスタリリアナの誓い反逆の先導者、チャンドラ


 【グランプリ・ユトレヒト2017】を制した「マルドゥバリスタ」の特徴は、そのサイドボードにある。メインは「機体」と同様の動きをしておきながら、サイドからは《チャンドラの誓い》《リリアナの誓い》を搭載したプレインズウォーカーコントロールへと変形するのだ。だが冷静に考えてみると、「機体」がトップメタで《致命的な一押し》《チャンドラの誓い》といった軽量除去があらゆるデッキにメインから搭載されている現状、メインからプレインズウォーカーコントロールでいいのではないかという進んだ発想も出てくる。その先進的なコンセプトを実現したのがこちらのデッキだ。

 4枚ずつの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《反逆の先導者、チャンドラ》に加えて2枚の《死の宿敵、ソリン》まで搭載したこのデッキならば、《チャンドラの誓い》《リリアナの誓い》が生むボーナスも馬鹿にならない。

 「機体」同型を見据えて《グレムリン解放》も当然のメイン採用で、《反逆の先導者、チャンドラ》のマナを生み出す「+1」能力からプレイできれば圧倒的なテンポをとれる。ミシュラランドも4枚と多めに搭載されており、長期戦の準備は万端だ。

 メインからサイドプランをとってしまっている分、サイドからはアグロ寄りに変形するオプションを用意することでバランスをとっている。こうした極端な進化はもちろん「機体」というデッキが持つ強みを逆に損なってしまうリスクを孕んでいるが、初見の相手が正確に対応できないような構造をとっていることによる情報的優位は、そのリスクに見合うだけの魅力を有していると言えるだろう。

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■ モダン: テゼレッター


Shinohara Gen「テゼレッター」
晴れる屋モダン杯(5-0)

3 《島》
1 《沼》
1 《繁殖池》
1 《草むした墓》
1 《湿った墓》
4 《汚染された三角州》
2 《霧深い雨林》
2 《闇滑りの岸》
2 《沈んだ廃墟》
2 《ダークスティールの城塞》
2 《幽霊街》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地 (22)-

1 《呪文滑り》
1 《ファイレクシアの変形者》

-クリーチャー (2)-
4 《致命的な一押し》
3 《集団的蛮行》
4 《発明品の唸り》
2 《オパールのモックス》
2 《ミシュラのガラクタ》
1 《溶接の壺》
1 《真髄の針》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《墓掘りの檻》
4 《五元のプリズム》
2 《飛行機械の鋳造所》
2 《弱者の剣》
2 《罠の橋》
1 《世界のるつぼ》
1 《交易所》
2 《ヴェールのリリアナ》
3 《ボーラスの工作員、テゼレット》

-呪文 (36)-
3 《外科的摘出》
3 《突然の衰微》
1 《エレンドラ谷の大魔導師》
1 《練達の変成者》
1 《発明の領事、パディーム》
1 《集団的蛮行》
1 《滅び》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《真髄の針》
1 《魔女封じの宝珠》
1 《幽霊街》

-サイドボード (15)-
hareruya



発明品の唸り罠の橋ボーラスの工作員、テゼレット


 『霊気紛争』で個人的に何かをやらかしそうなカードナンバー1として鳴り物入りで登場した《発明品の唸り》だが、トリプルシンボルという制約もあってか、モダンやレガシーまで含めてもこれまで活躍を見る機会は少なかった。だが、この度ついに「テゼレッター」という最適な居場所を見つけたようだ。

 《発明品の唸り》《五元のプリズム》とはプチコンボで、「即席」含めてこれ1枚で3マナ分を賄えるため、3ターン目に《罠の橋》をサーチしたり、《オパールのモックス》《ミシュラのガラクタ》が絡めば《交易所》までサーチしてくることも可能となる。

 もちろん微妙な動きの相手には《飛行機械の鋳造所》《弱者の剣》「ソプターコンボ」をサーチしてこれる。ドレッジやカンパニー系にはメインから積んだ《墓掘りの檻》をサーチ、マナが足りないときは《オパールのモックス》《ダークスティールの城塞》を探してマナ加速。ほかにもプレインズウォーカーや《墨蛾の生息地》《真髄の針》で指定したり、相手の強力なクリーチャーやアーティファクトは《ファイレクシアの変形者》でコピーしたりと、その柔軟性は《召喚の調べ》に勝るとも劣らない。

 フル搭載した《致命的な一押し》で流行の《死の影》をケアするなど、最新セットを存分に生かした構築も素晴らしい。今後の活躍も楽しみなデッキだ。

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■ レガシー: 多色ビートダウン


none「多色ビートダウン」
晴れる屋レガシー杯(5-1)

1 《森》
1 《沼》
2 《Bayou》
2 《Plateau》
2 《Savannah》
1 《Badlands》
1 《Scrubland》
1 《Taiga》
1 《血の墓所》
4 《湿地の干潟》
3 《新緑の地下墓地》
3 《樹木茂る山麓》
1 《カラカス》

-土地 (23)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《野生のナカティル》
4 《タルモゴイフ》
2 《魂火の大導師》
1 《改革派の結集者》
2 《マルチェッサ女王》

-クリーチャー (17)-
4 《稲妻》
4 《突然の衰微》
2 《未練ある魂》
1 《コラガンの命令》
2 《森の知恵》
2 《密輸人の回転翼機》
1 《梅澤の十手》
2 《復讐のアジャニ》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《幽霊暗殺者、ケイヤ》

-呪文 (20)-
2 《紅蓮破》
1 《封じ込める僧侶》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《聖域の僧院長》
1 《赤霊破》
1 《外科的摘出》
1 《摩耗+損耗》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《古えの遺恨》
1 《Fire Covenant》
1 《議会の採決》
1 《失われた遺産》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《墓掘りの檻》

-サイドボード (15)-
hareruya



マルチェッサ女王タルモゴイフ復讐のアジャニ


 1マナの《神の怒り》となる《終末》や、2ターン目に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出せる《実物提示教育》があるレガシーでは、《野生のナカティル》《稲妻》によるビートダウンを主軸に据えた「ZOO」はなかなかに成立しづらい。しかし昨今のフェアデッキ隆盛の流れからすると、タフなクリーチャーと除去・プレインズウォーカーを組み合わせたミッドレンジ的な「ZOO」であれば、成立する可能性は残されているようだ。

 青抜きの4色で構成されたこちらのデッキは、バニラクリーチャー、システムクリーチャー、トークン戦略、「機体」、プレインズウォーカー、装備品と、実に多種多様な攻め手でフェアデッキの受けを軽々と超えていく。一つでも受け手を間違えばそのテンポの分だけライフが減り、《稲妻》《死儀礼のシャーマン》《復讐のアジャニ》による火力死が刻一刻と近づいていくのだ。

 『コンスピラシー:王位争奪』の《マルチェッサ女王》《血編み髪のエルフ》のようにテンポはとれないものの、「統治者」による継続的なアドバンテージがレガシーにおいても強力なのは「デス&タックス」の《宮殿の看守》が証明済だ。《幽霊暗殺者、ケイヤ》はトリッキーだが、ライフコントロールにより、ドローした手札を使いきるまでの時間を稼いでくれることだろう。

 《渦まく知識》は確かに強力だが、アドバンテージをとることも盤面に触ることもできない。それに対して「ZOO」はフェアデッキ対決で有利に立ち回れるということで、これからのレガシー環境で存在感を増していくかもしれない。

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■ フロンティア: 白黒ビートダウン


Kawai Yuuichi「白黒ビートダウン」
晴れる屋フロンティア杯(2-3)

4 《産業の塔》
4 《感動的な眺望所》
3 《秘密の中庭》
4 《戦場の鍛冶場》
4 《コイロスの洞窟》
3 《乱脈な気孔》

-土地 (22)-

4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《単体騎手》
4 《アジャニの群れ仲間》
3 《永代巡礼者、アイリ》
3 《修復専門家》

-クリーチャー (18)-
4 《致命的な一押し》
2 《苦い真理》
1 《苦渋の破棄》
1 《はじける破滅》
4 《ゴンティの策謀》
4 《改良器具》
2 《密輸人の回転翼機》
2 《不動のアジャニ》

-呪文 (20)-
4 《領事の権限》
2 《精神背信》
2 《鞭打つ触手》
2 《トーモッドの墓所》
1 《配分の領事、カンバール》
1 《苦渋の破棄》
1 《コラガンの命令》
1 《悲劇的な傲慢》
1 《悪性の疫病》

-サイドボード (15)-
hareruya



アジャニの群れ仲間不動のアジャニゴンティの策謀


 土地コンボ、墓地コンボ、ストームなどの手札コンボなどコンボの種類はたくさんあるが、それらは要はどんなリソースを使ってコンボするかという分類によるものだ。そしてマジックにおけるリソースとは、土地や墓地といった領域だけにとどまらず、忘れがちだが「ライフ」も含まれるのだ。

 《単体騎手》《アジャニの群れ仲間》という「ライフを得ること」をメリットに変えるアタッカーで揃えたこちらのデッキは、ダメージランドと《ゴンティの策謀》というフロンティア環境ならではのシナジーに着目している点で革新的だ。さらに《修復専門家》は使い終わった《ゴンティの策謀》《改良器具》を一挙に回収できる。

 育った《アジャニの群れ仲間》《不動のアジャニ》の「+1」能力を起動するなどしてライフが30以上になったなら、《永代巡礼者、アイリ》で復活可能な《屑鉄場のたかり屋》を生け贄に捧げて相手のパーマネントを殲滅するフィーバータイムの開幕だ。

 他の環境でも「ソウルシスターズ」「ノリンシスターズ」など、「ライフ」をテーマにしつつも十分通用するデッキは数こそ少ないが存在している。フロンティア環境でも「ライフ」をテーマにした新しいアーキタイプが生まれる可能性があるので、新セットで「ライフ」関連のカードがあった場合は要注目だ。

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 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


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