週刊デッキウォッチング vol.115 -カウビークル-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 黒赤ビートダウン


Kawada Shuuji「黒赤ビートダウン」
平日スタンダード11時の部(3-0)

5 《山》
5 《沼》
1 《荒地》
3 《燻る湿地》
2 《進化する未開地》
1 《産業の塔》
4 《凶兆の廃墟》
3 《オラン=リーフの廃墟》

-土地 (24)-

3 《ギラプールの希望》
4 《殺戮の先陣》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《作り変えるもの》
3 《不快な集合体》
2 《戦争に向かう者、オリヴィア》
1 《屑鉄さらい》
4 《塵の中を忍び寄るもの》

-クリーチャー (25)-
1 《致命的な一押し》
1 《暴力の激励》
3 《無許可の分解》
3 《キランの真意号》
1 《霊気圏の収集艇》
2 《高速警備車》

-呪文 (11)-
2 《屑鉄さらい》
2 《橋上の戦い》
2 《暴力の激励》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
2 《炎呼び、チャンドラ》
1 《精神背信》
1 《失われた遺産》
1 《ヤヘンニの巧技》

-サイドボード (15)-
hareruya

ギラプールの希望戦争に向かう者、オリヴィア塵の中を忍び寄るもの

 いよいよ週明け、4月24日には禁止改定がある。スタンダードに関しては、最大の焦点は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》やサヒーリ・コンボの処遇となるだろう。もちろんNo Changeの可能性もあるが、もし仮に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が禁止になったとしたら、《キランの真意号》の相方として白を選ぶ理由は半減することになる。そうなったとき、赤黒機体は有力な選択肢となりうるだろう。

 このデッキは一見グランプリ・バルセロナ2017でシルバーレベルプロ・高尾 翔太が持ち込んだ赤黒エルドラージを彷彿とさせるが、《難題の予見者》《現実を砕くもの》は採用しておらず、代わりに《殺戮の先陣》《塵の中を忍び寄るもの》でキルターンが1ターン早い構築を目指している。

 《戦争に向かう者、オリヴィア》に依存するファッティを採用すると、引くときと引かないときでムラが激しいため、《塵の中を忍び寄るもの》に白羽の矢が立ったものと思われる。確かに、《暴力の激励》が合わされば大打撃間違いなしだ。

 『アモンケット』で《試練に臨むギデオン》《自然の職工、ニッサ》といった強力な3マナのプレインズウォーカーがスタンダード環境に参入することを考えると、速攻クリーチャーの需要はこれから高まっていくとも考えられる。禁止改定の結果次第だが、自分で使うにしても仮想敵にするにしても、赤黒というカラーリングには注目しておいた方が良さそうだ。

「黒赤ビートダウン」でデッキを検索

■ モダン: 白黒ビートダウン


Yamakawa Hiroaki「白黒ビートダウン」
平日モダン14時の部(3-0)

2 《沼》
1 《平地》
2 《神無き祭殿》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《湿地の干潟》
4 《秘密の中庭》
1 《黒割れの崖》
4 《変わり谷》

-土地 (22)-

4 《模範的な造り手》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《戦隊の鷹》
4 《潮の虚ろの漕ぎ手》

-クリーチャー (16)-
4 《思考囲い》
4 《致命的な一押し》
2 《流刑への道》
4 《キランの真意号》
4 《密輸人の回転翼機》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文 (22)-
4 《先駆ける者、ナヒリ》
2 《マグマのしぶき》
2 《集団的蛮行》
2 《失われた遺産》
2 《苦渋の破棄》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
1 《山》
1 《血の墓所》

-サイドボード (15)-
hareruya

戦隊の鷹密輸人の回転翼機ヴェールのリリアナ

 スタンダードで大暴れした挙句禁止となった《密輸人の回転翼機》だが、フロンティア環境を制したり、レガシーでも活躍した実績を見るに、うまい使い方さえ見つかれば、モダンでも一時代を築く可能性がある。

 《戦隊の鷹》は単体では《密輸人の回転翼機》にしか乗れないが、ターンをかけて3体呼び出すか《変わり谷》と合わせれば《キランの真意号》にも乗れるし、出しきれない分は《密輸人の回転翼機》《ヴェールのリリアナ》で捨てるのにもちょうど良い。次から次へと《戦隊の鷹》《密輸人の回転翼機》に乗り去っていく様は、さながら「カウブレード」ならぬ「カウビークル」といったところか。

 手札破壊と「機体」は相性が良く、相手がインスタント除去を引いたと思ったら「搭乗」せずに手札破壊を待つことで、ゲーム後半に腐るという手札破壊のデメリットを緩和できる。単体でアタッカーとしては心もとない《潮の虚ろの漕ぎ手》も、《模範的な造り手》の強化役としてだけでなく、「搭乗」要員としても十二分の働きをするようになるはずだ。

 メインでサイドから目の敵にされそうなアーティファクトや手札破壊、墓地利用といった複数の角度を利用しておいて、サイドからそれらすべてを裏切る《先駆ける者、ナヒリ》で勝つアプローチも古典的だが効果的だ。《密輸人の回転翼機》と合わせて散らしたサイドカードを探しにいけるのも素晴らしい。マルドゥ「機体」がモダンでも天下をとる日は近いかもしれない。

「白黒ビートダウン」でデッキを検索

■ レガシー: フェアリー


HJ_Kaiser「フェアリー」
Competitive Legacy Constructed League(5-0)

1 《森》
1 《島》
3 《Tropical Island》
2 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《ドライアドの東屋》
4 《霧深い雨林》
3 《汚染された三角州》
1 《新緑の地下墓地》
3 《変わり谷》

-土地 (21)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《呪文づまりのスプライト》
2 《スクリブのレインジャー》
1 《クイックリング》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《トレストの密偵長、エドリック》
1 《トレストの使者、レオヴォルド》
1 《再利用の賢者》
1 《誘惑蒔き》
1 《霧縛りの徒党》

-クリーチャー (18)-
4 《渦まく知識》
3 《緑の太陽の頂点》
2 《呪文貫き》
3 《突然の衰微》
1 《ディミーアの魔除け》
4 《意志の力》
3 《苦花》
1 《梅澤の十手》

-呪文 (21)-
3 《侵襲手術》
3 《外科的摘出》
3 《致命的な一押し》
2 《狼狽の嵐》
2 《仕組まれた疫病》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《梅澤の十手》

-サイドボード (15)-
hareruya

苦花緑の太陽の頂点呪文づまりのスプライト

 レガシーとは《渦まく知識》の環境だ、とよく言われる。ということは、《渦まく知識》に対して強いカードは活躍してしかるべきだろう。1マナの呪文に対して確実にアドバンテージがとれる《呪文づまりのスプライト》はそんな1枚だが、やはり1マナに対して2マナは構えづらかったり、後手だと間に合わなかったりすることもある。そこでこのデッキでは《緑の太陽の頂点》からの《ドライアドの東屋》《死儀礼のシャーマン》でマナ加速した上で運用することで、その問題を解決している。

 緑をタッチしたということは、《突然の衰微》《相殺》を克服できるようになったということを意味する。メインから《再利用の賢者》も入っているので、置き物にハマって負けることは少ないだろう。

 《スクリブのレインジャー》《死儀礼のシャーマン》とのトリックで急激に打点を増やせるので奇襲性が高いし、《ドライアドの東屋》を恒久的なブロッカーとして扱うこともできるようになる。

 統率者戦で統率者としてよく使われているイメージの《トレストの密偵長、エドリック》《苦花》との相性も良く、盤面で優勢になった際の蓋役にうってつけだ。《霧縛りの徒党》《誘惑蒔き》といったわからん殺し要素も強く、モダンでフェアリーを使っている人ならなおさら手に馴染むことだろう。

「フェアリー」でデッキを検索

■ フロンティア: ローグ


Sukegawa Hayato「ローグ」
平日フロンティア20時の部(3-0)

4 《森》
3 《平地》
2 《山》
3 《梢の眺望》
2 《燃えがらの林間地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
2 《ハンウィアーの要塞》

-土地 (24)-

4 《小村の隊長》
4 《サリアの副官》
4 《改革派の結集者》
4 《不屈の追跡者》
4 《ハンウィアー守備隊》
2 《異端聖戦士、サリア》
1 《ランタンの斥候》
1 《巨森の予見者、ニッサ》

-クリーチャー (24)-
4 《アタルカの命令》
4 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》

-呪文 (12)-
2 《断片化》
2 《神聖なる月光》
2 《石の宣告》
2 《悲劇的な傲慢》
2 《領事の権限》
2 《進化の飛躍》
1 《通電の喧嘩屋》
1 《アブザンの鷹匠》
1 《巨森の予見者、ニッサ》

-サイドボード (15)-
hareruya

サリアの副官ハンウィアー守備隊集合した中隊

 フロンティアで《集合した中隊》といえば「バント人間カンパニー」が主流だが、《衰滅》を使ったコントロールやダークジェスカイのようなデッキもいることを考えると、《反射魔道士》の強さは相手によって違ってきてしまう。ならば生物構成を単体でフィニッシャーとなりうるクリーチャーだけに絞り、コントロールと当たったときの裏目をなくした方が良いのではないか……そんな思想が垣間見えるのがこちらの「ナヤ人間カンパニー」だ。

 《改革派の結集者》は人間カンパニーに革命を起こした1枚で、このデッキならばフェッチと《不屈の追跡者》の手がかり・トークンでお手軽に「紛争」を達成できるところ、墓地から《サリアの副官》を拾えるのでリカバリーが容易になるほか、フェッチを拾って《巨森の予見者、ニッサ》の変身を早めることもできる。

 また、全体除去に対しては《ハンウィアーの要塞》で速攻アタックを決められる。《小村の隊長》を走らせることで大幅に打点を伸ばす動きも強力だ。わずかに残ったライフは《アタルカの命令》で刈り取れる。

 長期戦になれば《ハンウィアー守備隊》《ハンウィアーの要塞》とが「合体」することも考えられる。《反射魔道士》が必要かそうでないか、メタゲームによって使い分けるのが良さそうだ。

「ローグ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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