週刊デッキウォッチング vol.114 -バベルヴァラクート-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 白緑ビートダウン


Jeff Ko「白緑ビートダウン」
平日サービススタンダード20時の部(トップ4)

6 《森》
6 《平地》
4 《梢の眺望》
2 《産業の塔》
4 《要塞化した村》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (24)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《金属ミミック》
3 《ピーマの改革派、リシュカー》
1 《異端聖戦士、サリア》
1 《不屈の追跡者》
2 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (15)-
4 《霊気装置の展示》
1 《石の宣告》
4 《スラムの巧技》
4 《アジャニの誓い》
1 《停滞の罠》
3 《造命師の動物記》
1 《霊気圏の収集艇》
3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》

-呪文 (21)-
3 《霊気圏の収集艇》
2 《断片化》
2 《自然廃退》
2 《燻蒸》
1 《歩行バリスタ》
1 《異端聖戦士、サリア》
1 《自然のままに》
1 《鑽火の輝き》
1 《石の宣告》
1 《停滞の罠》

-サイドボード (15)-
hareruya

金属ミミックスラムの巧技アジャニの誓い

 『霊気紛争』は《歩行バリスタ》《致命的な一押し》をはじめ、モダンやレガシーにも影響を与えた強力なセットだったが、スタンダードでは早い段階でマルドゥ「機体」と4色サヒーリが台頭して以降あまりメタが動かなかったこともあり、様々な可能性が手つかずのまま残されている感触は否めない。《アジャニの誓い》もそんな1枚だ。

 《アジャニの誓い》をうまく使うためには、トークンを横に並べることとプレインズウォーカーを活用する必要がある。しかしそれらの要請は結局2~4マナを渋滞させがちで、《キランの真意号》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で高速化したスタンダード環境においてはテンポ面で不安がある。そこで、トークンの生成と《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》のプレイを同時に可能にする《スラムの巧技》の出番というわけだ。

 また、《金属ミミック》《アジャニの誓い》《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》で横に並べたクリーチャーすべてに+1/+1が乗るので、《ピーマの改革派、リシュカー》が戦場にいれば大量のマナを生み出すことも可能となる。《造命師の動物記》はそのマナを有効活用できる渋いチョイスだ。

 新環境の初期からミッドレンジ環境に移行しはじめたあたりでは、トークンデッキがソリューションとなることが多い。『アモンケット』後のスタンダードでも火を噴く可能性があるので、トークン関連のカードにも要注目だ。

「白緑ビートダウン」でデッキを検索

■ モダン: バベル


Imai Masakatsu「バベル」
晴れる屋大阪店モダン杯 – BIG MAGIC Invitational Qualifier vol.3 #3(トップ8)

4 《森》
3 《島》
3 《平地》
3 《沼》
2 《山》
4 《血の墓所》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
3 《聖なる鋳造所》
2 《繁殖池》
2 《神無き祭殿》
2 《神聖なる泉》
2 《つぶやき林》
2 《草むした墓》
2 《寺院の庭》
2 《湿った墓》
4 《乾燥台地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《湿地の干潟》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
4 《新緑の地下墓地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
3 《天界の列柱》
3 《活発な野生林》
2 《忍び寄るタール坑》
2 《怒り狂う山峡》
2 《乱脈な気孔》
1 《溢れかえる果樹園》
1 《沈んだ廃墟》
1 《黄昏のぬかるみ》
1 《地平線の梢》
3 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
3 《トレイリア西部》
1 《ボジューカの沼》
4 《幽霊街》
3 《地盤の際》
1 《僻地の灯台》
1 《アカデミーの廃墟》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地 (118)-

4 《前兆の壁》
4 《桜族の長老》
4 《とぐろ巻きの巫女》
4 《瞬唱の魔道士》
1 《漁る軟泥》
1 《呪文滑り》
1 《翻弄する魔道士》
1 《永遠の証人》
1 《肉袋の匪賊》
1 《再利用の賢者》
1 《月の大魔術師》
1 《台所の嫌がらせ屋》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《エレンドラ谷の大魔導師》
1 《強情なベイロス》
1 《スラーグ牙》
1 《黄金牙、タシグル》
1 《太陽のタイタン》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
1 《灰燼の乗り手》
1 《エメリアの盾、イオナ》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (35)-
4 《祖先の幻視》
3 《否定の契約》
2 《殺戮の契約》
1 《仲裁の契約》
4 《血清の幻視》
4 《ウルヴェンワルド横断》
2 《致命的な一押し》
1 《流刑への道》
1 《暗黒破》
1 《カラスの罪》
1 《有毒の蘇生》
4 《遥か見》
4 《不屈の自然》
4 《商人の巻物》
4 《きらめく願い》
2 《突然の衰微》
2 《稲妻のらせん》
1 《ラクドスの魔除け》
1 《跳ね返す掌》
1 《神聖な協力》
1 《壌土からの生命》
1 《黒の太陽の頂点》
1 《遠隔+不在》
4 《明日への探索》
4 《牧歌的な教示者》
4 《戦争門》
3 《禁忌の錬金術》
3 《機を見た援軍》
1 《四肢切断》
1 《鞭打つ触手》
1 《神々の憤怒》
1 《大渦の脈動》
1 《コラガンの命令》
1 《エスパーの魔除け》
1 《餌食》
1 《スフィンクスの啓示》
1 《捕獲+放流》
4 《けちな贈り物》
4 《魔性の教示者》
4 《風景の変容》
3 《至高の評決》
2 《謎めいた命令》
2 《神秘の指導》
1 《滅び》
1 《殺戮遊戯》
4 《闇の誓願》
3 《白日の下に》
1 《神聖なる埋葬》
1 《高まる野心》
1 《引き裂く突風》
1 《堀葬の儀式》
1 《残忍な切断》
1 《徴用》
1 《斑岩の節》
4 《ルーンの光輪》
2 《虹色の前兆》
1 《拘留の宝球》
4 《神聖の力線》
1 《魂の裏切りの夜》
4 《機知の戦い》
3 《仕組まれた爆薬》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《真髄の針》
1 《処刑人の薬包》
4 《血清の粉末》
3 《罠の橋》
2 《忘却石》
1 《世界のるつぼ》
1 《殴打頭蓋》
3 《先駆ける者、ナヒリ》

-呪文 (148)-
1 《翻弄する魔道士》
1 《台所の嫌がらせ屋》
1 《罪の収集者》
1 《大爆発の魔道士》
1 《高原の狩りの達人》
1 《跳ね返す掌》
1 《ジャンドの魔除け》
1 《コラガンの命令》
1 《大渦の脈動》
1 《捕獲+放流》
1 《殺戮遊戯》
1 《至高の評決》
1 《白日の下に》
1 《太陽と月の輪》
1 《先駆ける者、ナヒリ》

-サイドボード (15)-
hareruya

きらめく願い機知の戦い風景の変容

 デカァァァァァいッ説明不要!!ライブラリーの総枚数301枚!統率者戦を超える厚みでプレイヤーの手首を粉砕しにかかるデッキ、みんな大好きバベルの登場だ。

 普通のバベルであれば青黒(白)のコントロールとして組まれることが多いところ、このデッキでは白日スケープシフトとのハイブリッドを図っているところが斬新で、301枚の4枚の《風景の変容》を、《白日の下に》《きらめく願い》からの《白日の下に》《魔性の教示者》《闇の誓願》とありとあらゆる手段で手札に加えにいく。

 さらに《けちな贈り物》からの《堀葬の儀式》リアニメイトのルートも《商人の巻物》《神秘の指導》でバックアップされているほか、《先駆ける者、ナヒリ》シュートや普通に《けちな贈り物》からの《世界のるつぼ》《カラスの罪》《壌土からの生命》《アカデミーの廃墟》など、さすがに301枚のデッキだけあって多彩な攻め方が可能だ。

 カバレージなどでデッキリストを打ちこむ側に立つと「滅んでくれ」という感情しかわかないデッキだが、プレイヤーとしてなら誰しもいつかは登頂してみたいと思うであろう禁断のコンセプトであることは間違いない。組むには他のモダンのデッキをすべて解体する必要があるだろうが、対戦相手を手っ取り早く驚かせることができるので、一度組んでみて……いや、できればやめて欲しいかも……。

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■ レガシー: ローグ・コンボ


Tanaka Mikito「ローグ・コンボ」
Known Magicians Clan – 75th(2位)

4 《平地》
2 《Tundra》
4 《魂の洞窟》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》

-土地 (18)-

4 《歩行バリスタ》
4 《僧院の導師》
2 《粗石の魔道士》
4 《オーリオックの廃品回収者》

-クリーチャー (14)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《オパールのモックス》
4 《水蓮の花びら》
4 《ライオンの瞳のダイアモンド》
4 《Lodestone Bauble》
4 《ウルザのガラクタ》
4 《虚空の杯》

-呪文 (28)-
4 《虚空の力線》
2 《ファイレクシアの破棄者》
2 《封じ込める僧侶》
2 《静寂》
1 《造物の学者、ヴェンセール》
1 《解呪》
1 《残響する真実》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《漸増爆弾》

-サイドボード (15)-
hareruya

オーリオックの廃品回収者歩行バリスタ虚空の杯

 最近では『霊気紛争』で《歩行バリスタ》が入ったことでレガシーの《食物連鎖》デッキが進化し、活躍を見せていると評判だが、《歩行バリスタ》の恩恵を受けたのは《食物連鎖》デッキだけではない。《オーリオックのチャンピオン》《ライオンの瞳のダイアモンド》による無限マナコンボデッキ、通称「ボンバーマン」もまた、《歩行バリスタ》によって大幅に強化されたデッキなのだ。

 フィニッシュ手段が1マナの《黄鉄の呪文爆弾》ではなくなったことで、《剣を鍬に》を封じる《虚空の杯》「X=1」を躊躇なく設置できるようになった。《僧院の導師》は2ターン目に着地すれば、0マナスペルばかりのこのデッキなら対戦相手をあっという間に轢殺できそうだ。

 そして《歩行バリスタ》は、邪魔な《スレイベンの守護者、サリア》を排除するなど最序盤の攻防における牽制役となりつつも、単体で放置できないクロックへと成長する上に無限マナ状態ではフィニッシャーとなるという、このデッキにとって救世主と呼んでいいほどの噛み合いぶりなのだ。

 《粗石の魔道士》がある割にはレシピがシンプルすぎると思うかもしれないが、コンボに必要なパーツとそうでないパーツを冷静に見極めた結果としての洗練であろう。製作者のブログに詳細な解説が書かれているので、興味がある方はぜひそちらも参考にしてみて欲しい (特に「何このカード?」という《Lodestone Bauble》のくだりは必見だ)。

「ローグ・コンボ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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