週刊デッキウォッチング vol.113 -デーモン親和-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ


Matsui Yousuke「ローグ」
平日スタンダード20時の部(3-0)

17 《森》
4 《霊気拠点》

-土地 (21)-

4 《緑地帯の暴れ者》
2 《ナーナムの改革派》
4 《導路の召使い》
4 《牙長獣の仔》
4 《ピーマの改革派、リシュカー》
2 《襲拳会の革命家》
4 《逆毛ハイドラ》
2 《新緑の機械巨人》
1 《高木背の踏みつけ》
1 《ムラーサの緑守り》

-クリーチャー (28)-
4 《霊気との調和》
4 《顕在的防御》
3 《自然の流儀》

-呪文 (11)-
3 《不屈の追跡者》
2 《歩行バリスタ》
2 《薄暮見の徴募兵》
1 《高木背の踏みつけ》
1 《世界を壊すもの》
1 《自然のままに》
1 《自然廃退》
1 《英雄的介入》
1 《祝祭の開幕》
1 《春の賢者の儀式》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-サイドボード (15)-
hareruya

緑地帯の暴れ者ピーマの改革派、リシュカー逆毛ハイドラ

 現在のスタンダードは『カラデシュ』のファストランドや《霊気拠点》《産業の塔》など、アンタップインできる多色土地が強力すぎて、多色化しないという選択肢を採りづらい。しかし多色化とは本来単色の欠点を補い、できないことをできるようにするためのものであり、単色でクリーチャー展開・クリーチャー除去からフィニッシュブローまで十分にこなせるというのであれば、黒単フレンズ然り、単色でのデッキ構築にも一定の合理性を見出しうる。

 緑単で組まれたこちらのデッキは、1~5に《緑地帯の暴れ者》《牙長獣の仔》《ピーマの改革派、リシュカー》《逆毛ハイドラ》《新緑の機械巨人》と、各マナ域の最高スペックのクリーチャーを配置し、戦闘の主導権を握りにいく。加えて《顕在的防御》《無許可の分解》による打開を許さない。

 《逆毛ハイドラ》からの《自然の流儀》はシンプルだが強力なコンボとなる。メインは《キランの真意号》が厳しそうに見えるが、《高木背の踏みつけ》は攻守を逆転させる切り札となりうるし、サイド後は緑ならではの様々なアーティファクト破壊が目白押しだ。

 単色デッキは縛りが明確となり、個人的にデッキ構築の訓練にも最適なので、デッキ構築のアイデアに行き詰まったときには5色の各単色デッキを作ってみるといいかもしれない。

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■ モダン: ローグアグロ


_qfortier「ローグアグロ」
Modern PTQ(5位)

2 《沼》
1 《島》
2 《神聖なる泉》
2 《湿った墓》
1 《神無き祭殿》
4 《湿地の干潟》
4 《汚染された三角州》
2 《溢れかえる岸辺》
3 《闇滑りの岸》

-土地 (21)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《幽霊議員オブゼダート》
1 《黄金牙、タシグル》
1 《グリセルブランド》

-クリーチャー (8)-
4 《血清の幻視》
4 《思考掃き》
4 《思考囲い》
3 《致命的な一押し》
2 《コジレックの審問》
4 《御霊の復讐》
1 《喉首狙い》
4 《未練ある魂》
3 《パズルの欠片》
1 《残忍な切断》
1 《漂流》

-呪文 (31)-
2 《儀礼的拒否》
2 《断片化》
2 《集団的蛮行》
2 《天界の粛清》
2 《涙の雨》
1 《暗黒破》
1 《払拭》
1 《致命的な一押し》
1 《滅び》
1 《貪欲な罠》

-サイドボード (15)-
hareruya

ヴリンの神童、ジェイス幽霊議員オブゼダート御霊の復讐

 『マジック・オリジン』で《ヴリンの神童、ジェイス》が出た当時、《御霊の復讐》とのシナジーを活用したデッキはいくつか試みられたが、結局それらは定着することはなかった。だが、《致命的な一押し》という強力な武器を獲得したことで、欠けていた最後のピースが埋まった可能性がある。

 軽量除去が豊富なモダンで《ヴリンの神童、ジェイス》をただ出してもそのままターンが返ってくることは稀だが、除去された後に《御霊の復讐》で釣り上げ、墓地が4枚以上ある状態で能力を起動すれば、プレインズウォーカーとして盤面に定着させることができる。同様に《幽霊議員オブゼダート》も、《御霊の復讐》の遅延誘発型の追放より先に自身の能力による追放を解決すれば、次の自分のアップキープに戦場に舞い戻り、以後は何ら制約なく戦場を支配することが可能となる。

 《パズルの欠片》はモダンでの採用例は珍しいが、《思考掃き》と合わせて《未練ある魂》を墓地に落としつつ「探査」材を供給したり、伝説のクリーチャーを墓地に落としつつ《御霊の復讐》を探しにいけるいぶし銀のカードだ。

 手札破壊+《致命的な一押し》のパッケージは必ずしも《死の影》とだけ結びつくわけではない。《御霊の復讐》を活用したフェアとコンボのハイブリッドは、まだまだ研究しがいがありそうだ。

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■ レガシー: 親和


Nakano Akinori「親和」
休日レガシー17時の部(3-0)

6 《沼》
4 《囁きの大霊堂》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《古えの墳墓》
4 《ダークスティールの城塞》

-土地 (20)-

4 《搭載歩行機械》
4 《歩行バリスタ》
4 《電結の荒廃者》
4 《鋼の監視者》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《艱苦の伝令》

-クリーチャー (24)-
4 《陰謀団式療法》
4 《オパールのモックス》
4 《活性機構》
4 《頭蓋囲い》

-呪文 (16)-
4 《致命的な一押し》
3 《外科的摘出》
3 《罠の橋》
3 《最後の望み、リリアナ》
2 《真髄の針》

-サイドボード (15)-
hareruya

電結の荒廃者艱苦の伝令活性機構

 『カラデシュ』『霊気紛争』はヴィンテージにまで影響を与えるような強力なアーティファクトを数多く輩出した。ということは、レガシーでの「親和」の復権にも一役買うことになるかもしれない。その先陣を切ったのがこちらのデーモン親和だ。

 かつて《墓忍び》がレガシー環境で活躍していたことを考えれば、定着すればそれ以上の脅威となる《艱苦の伝令》にも同様の可能性がある。

 《活性機構》《電結の荒廃者》との相性が抜群で、出てきた霊気装置・トークンを生け贄に捧げることでマナがある限り成長させることができる。トークンが横に並ぶので《鋼の監視者》との相性も良く、それがさらなるトークンを生み出すことにもつながる。《搭載歩行機械》《歩行バリスタ》絡みのギミックはヴィンテージと同様非常に強力だ。

 《搭載歩行機械》《屑鉄場のたかり屋》があるので《陰謀団式療法》はフラッシュバックも容易となる。レガシーでオリジナリティを出しつつ結果を残すのはかなり難しいはずだが、コンスタントにそれを成し遂げる製作者のデッキ構築力には驚かされるばかりだ。

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■ フロンティア: サヒーリコンボ


Hatakeyama Tomoki「サヒーリコンボ」
平日フロンティア20時の部(3-0)

2 《山》
1 《島》
1 《平地》
1 《沼》
2 《窪み渓谷》
1 《大草原の川》
1 《燻る湿地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
3 《神秘の僧院》
2 《乱脈な気孔》

-土地 (26)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《守護フェリダー》
4 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (12)-
4 《焦熱の衝動》
2 《集団的蛮行》
4 《コラガンの命令》
3 《はじける破滅》
1 《オジュタイの命令》
4 《時を越えた探索》
4 《サヒーリ・ライ》

-呪文 (22)-
4 《魂火の大導師》
4 《カマキリの乗り手》
4 《神聖なる月光》
2 《払拭》
1 《グレムリン解放》

-サイドボード (15)-
hareruya

ヴリンの神童、ジェイスコラガンの命令サヒーリ・ライ

 (※メイン59枚、サイド16枚で登録されているが)(0411リスト修正しました) スタンダードを席巻し、既にモダンでの活躍の可能性をも見出されている「サヒーリ・コンボ」だが、となればフロンティアではどうだろうか?と思考を働かせるのは、自然な発想と言える。しかし、ダークジェスカイと合体させるというのはなかなかに意外なアプローチだ。

 《ヴリンの神童、ジェイス》《奔流の機械巨人》を有効活用することを優先し、ETB能力を持つカードをほとんど入れずに《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》をコンボパーツと割り切ったことで、ダークジェスカイの構造を維持しながらコンボの枠をとることに成功している。

 さらにこうした構築が許されるのは、《時を越えた探索》があるフロンティア環境だからというのも大きい。1枚でコンボパーツを2枚とも探しに行けるので、さながらレガシーでの一時期の《時を越えた探索》入り《実物提示教育》のように何度もコンボを決めることが可能なのだ。

 サイドからコンボを抜き、《魂火の大導師》《カマキリの乗り手》を入れることで普通のダークジェスカイにも変身できる。フロンティアのデッキに《発火器具》《領事の権限》が必要になる日も遠くなさそうだ。

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 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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