週刊デッキウォッチング vol.116 -スニック・フィット-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 黒緑ビートダウン


Iwai Ryusei「黒緑ビートダウン」
札幌店開店記念スタンダード(2位)(※メイン1枚不明)

3 《沼》
2 《森》
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
4 《風切る泥沼》
4 《陽焼けした砂漠》
2 《オラン=リーフの廃墟》
1 《海門の残骸》
1 《荒廃した湿原》

-土地 (25)-

4 《歩行バリスタ》
4 《巻きつき蛇》
4 《ピーマの改革派、リシュカー》
3 《刻み角》
1 《地下墓地の選別者》
4 《難題の予見者》
3 《現実を砕くもの》
2 《新緑の機械巨人》

-クリーチャー (25)-
4 《致命的な一押し》
2 《造反者の解放》
2 《闇の掌握》
1 《死の権威、リリアナ》

-呪文 (9)-
4 《精神背信》
2 《作り変えるもの》
2 《殺害》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
1 《現実を砕くもの》
1 《害悪の機械巨人》
1 《闇の掌握》

-サイドボード (15)-
hareruya

難題の予見者刻み角陽焼けした砂漠

 新セットが出たとき、新しいカードに対してどれだけ多角的な視点で用途を考えられるかでデッキビルダーの才覚が問われる。《陽焼けした砂漠》《シェフェトのオオトカゲ》と組み合わせて《サヒーリ・ライ》への牽制に使うのが主な用途と考えられていたが、このデッキでは何とエルドラージデッキにおける《霊気拠点》に次ぐ強力な無色土地として、4枚フル搭載するに至っている。

 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》などのプレインズウォーカーを予想外の角度で落としにかかれることはもちろん、黒緑というカラーリングながら《歩行バリスタ》と合わせて火力勝ちのルートも見えてくるのが強みだ。

 また、メインから《刻み角》に加えて《造反者の解放》まで搭載し、「機体と霊気池は絶対許さない」という姿勢が見てとれる。

 ついでにライフを得るようなカードがあまり使われていない昨今、対戦相手の初期ライフを実質18~19にできるのは小さいが確実なアドバンテージとなる。エルドラージデッキにおける無色土地の選択肢に強力な1枚が加わったことは、覚えておいて損はなさそうだ。

「黒緑ビートダウン」でデッキを検索

■ モダン: 白青コントロール


Matedge「白青コントロール」
Modern Constructed League(5-0)

3 《島》
3 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《金属海の沿岸》
3 《天界の列柱》
3 《トレイリア西部》
2 《幽霊街》
1 《地盤の際》

-土地 (25)-

2 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー (2)-
4 《祖先の幻視》
1 《均衡の復元》
4 《血清の幻視》
4 《流刑への道》
2 《呪文嵌め》
1 《糾弾》
2 《マナ漏出》
1 《否認》
3 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
3 《予言により》
2 《拘留の宝球》
1 《試練に臨むギデオン》
1 《思考を築く者、ジェイス》
1 《ギデオン・ジュラ》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文 (33)-
4 《安らかなる眠り》
2 《払拭》
2 《機を見た援軍》
2 《石のような静寂》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《神聖な協力》
1 《否認》
1 《至高の評決》
1 《法の定め》

-サイドボード (15)-
hareruya

祖先の幻視予言によりトレイリア西部

 《予言により》と「待機」カードの相性の良さについては既にHareruya ProsのJeremy Dezaniが可能性を示していたところではあるが、どちらかといえばコンボデッキに近い運用だった。そこで今回はまた別の、《予言により》を使ったコントロールを紹介しよう。

 ごくごく一般的なスペル構成の青白コントロールに《予言により》が割り込んでくるこのデッキは、一見すると「《予言により》不要じゃね?」と思えるかもしれない。

 だが、その秘密はスペルではなく土地に隠されていた。そう、《トレイリア西部》の「変成」で《祖先の幻視》《均衡の復元》といった「待機」スペルを自在にサーチできるのだ。

 モダンなのに《Ancestral Recall》が打ち放題のこのデッキは、圧倒的な手札差で対戦相手の心を折るのに最適だ。《予言により》に4個カウンターが乗って《謎めいた命令》がタダになったらもう手が付けられない。強力なコンボを手に入れた青白コントロールが、モダンの頂点に君臨する日も近いかもしれない。

「白青コントロール」でデッキを検索

■ レガシー: 騙し討ち


jbone2016「騙し討ち」
Legacy Constructed League(5-0)

3 《森》
3 《沼》
2 《山》
2 《Bayou》
2 《Taiga》
1 《Badlands》
1 《ドライアドの東屋》
3 《新緑の地下墓地》
3 《樹木茂る山麓》
1 《ファイレクシアの塔》
1 《ヴォルラスの要塞》

-土地 (22)-

3 《老練の探険者》
1 《死儀礼のシャーマン》
1 《桜族の長老》
1 《漁る軟泥》
1 《不屈の追跡者》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《永遠の証人》
1 《激情の共感者》
1 《スラーグ牙》
1 《業火のタイタン》
1 《森林の怒声吠え》
1 《虐殺のワーム》
1 《ルーン傷の悪魔》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (16)-
4 《陰謀団式療法》
4 《緑の太陽の頂点》
2 《致命的な一押し》
2 《夜の囁き》
2 《突然の衰微》
1 《悪魔の意図》
1 《大渦の脈動》
2 《破滅的な行為》
4 《騙し討ち》

-呪文 (22)-
2 《フェアリーの忌み者》
2 《根絶》
2 《思考囲い》
1 《再利用の賢者》
1 《悪魔の布告》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《毒の濁流》
1 《餌食》
1 《失われた遺産》
1 《夜の戦慄》
1 《仕組まれた疫病》

-サイドボード (14)-
hareruya

老練の探険者騙し討ち陰謀団式療法

 《老練の探険者》を使ったミッドレンジ、「Nic Fit」はこの連載でもvol.58vol.83vol.107と何回か紹介してきたが、コンセプトがフェアデッキである以上、コンボ耐性が低くなってしまうことは避けられない。だが、もし「Nic Fit」にコンボ要素があればどうだろう。光と闇が両方そなわり最強に見えないだろうか?

 このデッキはそんな思想を見事に形にした「Nic Fit」で、《騙し討ち》を採用することで、EtB能力持ちの重いミッドレンジクリーチャーたちを正当化することに成功している。

 デッキ名をあえてつけるなら、「スニック・フィット」といったところだろうか。《騙し討ち》を引けばコンボとして振る舞い、引かなくても《破滅的な行為》などを駆使して普通の「Nic Fit」のように粘り強い戦いができる柔軟性が魅力だ。

 レガシーは《師範の占い独楽》が禁止になったことで、あらゆるデッキにチャンスが生まれているという状態にあるわけだが、それはつまりマイナーなアーキタイプ使いにとって最大の好機とも言える。工夫を凝らしたデッキで頂点を目指すなら、今このタイミングが一番だろう。

「騙し討ち」でデッキを検索

■ ヴィンテージ: ドラゴンストンピィ


KeeperX「ドラゴンストンピィ」
Vintage Challenge(8位)

11 《冠雪の山》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》

-土地 (19)-

4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《月の大魔術師》
4 《猿人の指導霊》
4 《罪を誘うもの》
1 《硫黄の精霊》
2 《熱烈の神ハゾレト》

-クリーチャー (19)-
4 《焦熱の合流点》
4 《血染めの月》
4 《金属モックス》
1 《虚空の杯》
4 《無のロッド》
1 《三なる宝球》
4 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (22)-
4 《突然のショック》
4 《虚空の力線》
3 《硫黄の精霊》
3 《罠の橋》
1 《粉みじん》

-サイドボード (15)-
hareruya

熱烈の神ハゾレト罪を誘うもの無のロッド

 ヴィンテージといえば《Black Lotus》《Ancestral Recall》が飛び交う環境だが、必ずしも「パワー9」がなければ戦えないというわけではなく、「ノーパワー9デッキ」の探求も行われている。そしてその場合、アーティファクトを封じるカードで「パワー9」を対策しにいくのが通例なので、これまでは《石のような静寂》《スレイベンの守護者、サリア》が使える白単が有力だった。しかしこの度、何と赤単ストンピィがヴィンテージでも十分通用するということを示してくれた。

 ヴィンテージの二大メタは「メンター」と「MUD」で、そのどちらも特殊地形を豊富に搭載している。ならば《無のロッド》さえ置いてしまえば、あとは《血染めの月》《月の大魔術師》で対戦相手を行動不能に追い込むことが可能となる。

 フィニッシャーは意外にも最近のカードばかりで構成されている。《罪を誘うもの》はスタンダードでは見向きもされないが、赤で回避能力とアドバンテージ能力を併せ持つ稀有なクリーチャーだ。《反逆の先導者、チャンドラ》はレガシーでも採用されており、違和感はあまりない。《焦熱の合流点》はフィニッシュの火力となりつつアーティファクトを一気に3個割れるので、《無のロッド》を引かないときも安心だ。

 さらに『アモンケット』からは《熱烈の神ハゾレト》が採用されているのも興味深い。《精神的つまづき》を完全に回避した構築ということもあり、「ドラゴンストンピィ」は実はかなりヴィンテージに適応したデッキと言えそうだ。

「ドラゴンストンピィ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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