週刊デッキウォッチング vol.120 -ターボエメリア-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ


Inoue Takuto「ローグ」
平日スタンダード14時の部(3-0)

8 《平地》
2 《森》
1 《島》
4 《梢の眺望》
4 《大草原の川》
2 《まばらな木立ち》
4 《進化する未開地》

-土地 (25)-

4 《媒介者の修練者》
2 《折れた刃、ギセラ》
4 《シェフェトのオオトカゲ》
2 《保護者、リンヴァーラ》
4 《エメリアの番人》
1 《消えゆく光、ブルーナ》

-クリーチャー (17)-
4 《過去との取り組み》
2 《石の宣告》
2 《ジェイスの誓い》
4 《排斥》
4 《面晶体の記録庫》
2 《実地研究者、タミヨウ》

-呪文 (18)-
2 《不屈の追跡者》
2 《自然のままに》
2 《顕在的防御》
2 《鑽火の輝き》
2 《否認》
2 《神聖な協力》
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《月の力》
1 《実地研究者、タミヨウ》

-サイドボード (15)-
hareruya

エメリアの番人シェフェトのオオトカゲ排斥

 クリーチャーを墓地から戦場へと釣り上げる「リアニメイト」は、マナコストを踏み倒す強力な能力であるため、スタンダードでは《死の権威、リリアナ》など限られたカードにしか許されていない。だが、そんな「リアニメイト」能力を何度も、恒久的に使えるようになるカードが実は存在していた。そう、《エメリアの番人》だ。

 《平地》を置くたびにパーマネント・カードを墓地から戦場に戻せる《エメリアの番人》は、《大草原の川》《梢の眺望》といったバトルランドだけでなく、《まばらな木立ち》などのサイクリングランドとも相性が良い。この性質に着目し、3色デッキながら実質22枚の《平地》を確保しているこのデッキの構造は、さながらスタンダードにおける赤緑ヴァラクートのようだ。

 クリーチャーだけでなくパーマネントなら何でも戦場に戻せるので、ドローに変換した《面晶体の記録庫》や序盤にサイクリングした《排斥》も使いまわせる。さらに《過去との取り組み》《ジェイスの誓い》で2体目、3体目の《エメリアの番人》が落ちたなら、もはや手が付けられない盤面になってしまうだろう。

 「リアニメイト」が警戒されていないスタンダードなら、サイドボードからの墓地対策など飛んでくるはずもない。《霊気池の驚異》が注意を引きつけている隙に、目いっぱい墓地を悪用してやろう。

「ローグ」でデッキを検索

■ モダン: エターナルブルー


Shindou Ibuki「エターナルブルー」
平日モダン20時の部(3-0)

3 《森》
3 《島》
2 《冠雪の島》
4 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《霧深い雨林》
1 《樹上の村》
1 《フェアリーの集会場》
1 《海の中心、御心》

-土地 (24)-

4 《貴族の教主》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
3 《クルフィックスの狩猟者》

-クリーチャー (11)-
1 《万の眠り》
2 《差し戻し》
2 《謎めいた命令》
2 《オジュタイの命令》
4 《時間のねじれ》
4 《永劫での歩み》
2 《過ぎ去った季節》
1 《水の帳の分離》
4 《楽園の拡散》
2 《自然に仕える者、ニッサ》
1 《野生語りのガラク》

-呪文 (25)-
2 《糾弾》
2 《広がりゆく海》
2 《石のような静寂》
2 《法の定め》
2 《大祖始の遺産》
2 《罠の橋》
1 《戦争の報い、禍汰奇》
1 《外科的摘出》
1 《神聖な協力》

-サイドボード (15)-
hareruya

ヴリンの神童、ジェイス時間のねじれ自然に仕える者、ニッサ

 モダンの「エターナルブルー」といえば青単で組まれるのが定番だが、ただでさえ高速化したモダン環境で嵌めパターンに持っていくまで時間がかかり、《氷の中の存在》を手に入れたとはいえ、そのための防御も手薄になりがちなのが難点だった。そこでこれらの問題の解決を図っているのが、今回紹介する青緑型の「エターナルブルー」だ。

 このデッキでは《貴族の教主》《楽園の拡散》の8枚で能動的にマナを伸ばしていくことによって、厳しい序盤をショートカットする。そうなれば当然手札の消耗も激しくなり、《クルフィックスの指図》など手札を補充する術が必要になってくるが、基本は《ヴリンの神童、ジェイス》《クルフィックスの狩猟者》などによる間接的なアドバンテージ確保にとどめ、手札補充は《過ぎ去った季節》に任せている点が先進的だ。

 さらに緑のマナ加速を混ぜることで、プレインズウォーカーのオプションをとりやすくなっている。《ヴリンの神童、ジェイス》でタイムワープ系スペルを使いまわすことはもちろん、その状況下で《自然に仕える者、ニッサ》が戦場にいれば占術でさらなるタイムワープ系スペルを探しにいくこともでき、そうなれば奥義は目前だろう。

 色を増やすことはサイドカードの拡充にもつながる。サイドからは白をタッチして《石のような静寂》や2ターン目に出せる《法の定め》などをしっかりと採用できており、「エターナルブルー」の新たな形としてこれから見かける機会が増えるかもしれない。

「エターナルブルー」でデッキを検索

■ レガシー: 白青石鍛冶


Matsumoto Yuki「白青石鍛冶」
第9期レガシー神挑戦者決定戦(9位)

1 《島》
4 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
1 《カラカス》
4 《エルドラージの寺院》
4 《不毛の大地》
3 《古えの墳墓》
1 《裏切り者の都》

-土地 (24)-

4 《石鍛冶の神秘家》
1 《瞬唱の魔道士》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》

-クリーチャー (13)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
3 《思案》
2 《頑固な否認》
4 《目くらまし》
4 《意志の力》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》

-呪文 (23)-
3 《終末》
2 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《解呪》
2 《安らかなる眠り》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《瞬唱の魔道士》
1 《外科的摘出》
1 《頑固な否認》
1 《天使への願い》

-サイドボード (15)-
hareruya

石鍛冶の神秘家難題の予見者意志の力

 298人が参加した第9期レガシー神挑戦者決定戦は「オムニスニーク」の優勝で幕を閉じた。だが、惜しくもトップ8には入れなかったトップ16デッキリストの中には、あと一歩で世界を変えられるかもしれなかったアイデアがまだいくつも眠っている。BIG MAGIC所属プロ松本 友樹が持ち込んだこちらのデッキも、そんな画期的なアイデアの一つだ。

 「《渦まく知識》《意志の力》を打つエルドラージ」があったら最強ではないだろうか?そんな力強いメッセージ性が伝わってくるこちらのデッキは、構成上どうしても少なくなってしまうフェッチランドの代わりにシャッフル手段として《石鍛冶の神秘家》を採用し、《紅蓮破》《赤霊破》を有効活用させない構造となっている。

 気になるブルーカウントは18枚、コンボデッキの初動を弾くためには十分な枚数とは言えないが、《難題の予見者》《現実を砕くもの》を出した後のバックアップとしてなら通用するといったところだろうか。

 だがこのデッキにはそれに加えて、「サイドボード後からは『奇跡』になる」という驚愕のギミックまで隠されている。こうしてリストを見ていてすら製作者の意思が完全にはトレースできないので、実際に対戦した相手からすれば、たまったものではなかったに違いない。

「白青石鍛冶」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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