週刊デッキウォッチング vol.121 -バベルスケープエンド-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ


ketaendros「ローグ」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

5 《森》
3 《島》
1 《山》
1 《沼》
4 《異臭の池》
4 《隠れた茂み》
3 《泥濘の峡谷》
2 《灌漑農地》
2 《まばらな木立ち》

-土地 (25)-

4 《砂時計の侍臣》
4 《シェフェトのオオトカゲ》
1 《終止符のスフィンクス》

-クリーチャー (9)-
4 《検閲》
4 《花粉のもや》
4 《葬送の影》
4 《焼けつく双陽》
1 《暗記+記憶》
1 《副陽の接近》
3 《奇妙な森》
1 《信者の確信》
4 《新たな視点》

-呪文 (26)-
3 《払拭》
3 《造反者の解放》
3 《否認》
3 《没収》
3 《ドレイクの安息地》

-サイドボード (15)-
hareruya

新たな視点焼けつく双陽葬送の影

 2017年6月13日、霊気池の驚異、禁止2017年に入って半年足らずの間にスタンダードは5枚目の禁止カードを出すこととなったわけだが、ではいよいよ健全な環境がやってくるとして、これによりスタンダードはどのような環境になるのだろうか?「ゾンビ」?「機体」?否、『カラデシュ』『霊気紛争』にはまだまだ危険なコンボが山ほどあり、ただ《霊気池の驚異》の陰に隠れていただけなのだ。ここでは新環境期待のコンボデッキの一つとして、「ゼウスサイクリング」を取り上げておこう。

 このデッキの弱点の一つに「《新たな視点》を探すことができない」というのがあったわけだが、盤面のクロックを放置して《花粉のもや》を打っているだけでは結局解決にならないということなのだろう、《砂時計の侍臣》へのアクセスが主だった《ウルヴェンワルド横断》が入っていたスロットには代わりに《焼けつく双陽》を採用し、通常ドローとサイクリングドローができるターンを延ばすことで、実質的に《新たな視点》に近づけるというアプローチを採用している。

 《暗記+記憶》《記憶》で無理矢理手札と墓地をリセットできるので、《暗記》で時間を稼ぎつつ、《新たな視点》の条件発動のための手札枚数が足りない場合などにコンボ発動チャンスが増える面白いシナジーがある。

 《守護フェリダー》そして《霊気池の驚異》という「環境最強コンボ」がこれまで他のコンボデッキの存在感を薄くしていたわけだが、その霧はついに取り払われた。期せずして大波乱の展開となった『アモンケット』環境名人戦は、コンボデッキの博覧会が待ち受けているのかもしれない。

「ローグ」でデッキを検索

■ モダン: バベル


Matsuda Yukio「バベル」
休日モダン17時の部(3-0)

3 《島》
3 《山》
3 《沼》
2 《森》
2 《平地》
3 《神無き祭殿》
3 《神聖なる泉》
3 《聖なる鋳造所》
3 《蒸気孔》
2 《踏み鳴らされる地》
2 《血の墓所》
2 《繁殖池》
2 《草むした墓》
2 《湿った墓》
4 《乾燥台地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《湿地の干潟》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
4 《新緑の地下墓地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
4 《真鍮の都》
4 《禁忌の果樹園》
4 《マナの合流点》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
4 《ボジューカの沼》

-土地 (96)-

4 《不毛地の蠍》
4 《台所の嫌がらせ屋》
4 《幻の漂い》
4 《ディミーア家の護衛》
4 《意思切る者》
4 《秘法の管理者》
4 《包囲サイ》
4 《通りの悪霊》
4 《イフニルの魔神》
4 《死の一撃のミノタウルス》
4 《遺棄地の恐怖》
4 《巨怪なオサムシ》
4 《ガラス塵の大男》
4 《叫び大口》
1 《鋳塊かじり》
4 《砂漠セロドン》
4 《川蛇》
4 《よじれた嫌悪者》
4 《有翼の番人》
2 《炎血の襲撃者》
4 《大いなるサンドワーム》
4 《青ざめた出家蜘蛛》

-クリーチャー (83)-
3 《死せる生》
4 《死亡+退場》
4 《腹背+面従》
4 《乱暴+転落》
4 《四肢切断》
4 《当惑》
4 《暴力的な突発》
4 《悪魔の戦慄》
4 《牧歌的な教示者》
4 《神々の憤怒》
4 《明日への探索》
3 《知識の渇望》
1 《内にいる獣》
4 《風景の変容》
4 《至高の評決》
4 《審判の日》
4 《神の怒り》
4 《けちな贈り物》
4 《捕らえられた陽光》
2 《滅び》
4 《闇の誓願》
4 《脳崩し》
4 《白日の下に》
4 《献身的な嘆願》
4 《機知の戦い》
1 《罠の橋》

-呪文 (94)-
4 《安らかなる眠り》
4 《石のような静寂》
3 《コーの火歩き》
2 《失われた遺産》
2 《殺戮遊戯》

-サイドボード (15)-
hareruya

機知の戦い風景の変容死せる生

 「やめて欲しい」って……言ったのに……。

 という冗談はさておき、とある晴れる屋常連のリビングエンド使いの方が作り上げ、モダン神・松田 幸雄が3-0してしまったこの「バベルスケープエンド」は、早くも2017年の珍デッキ大賞 (?) の圧倒的有力な受賞候補にノミネートしてしまった感がある。

 確かに『アモンケット』で1マナの「サイクリング」クリーチャーは大幅に増えた。増えたが、じゃあライブラリーが増えるのが自然なのかというと自然なわけがない。自然でなければ何なのか?変態である。これは紛れもなく変態の所業だ。しかしデッキビルダーとはつまるところ変態なのである。みんなも変態になろう (?)。

 しかし変態の一言で片づけてしまうのは味気ないほど、よく見ればこのデッキは極めてソリッドに作られている。コンセプトどれか1個でいいのではなどというマジレスをせずに、ぜひとも全部乗せのゴージャス感を味わってみて欲しい。

「バベル」でデッキを検索

■ レガシー: エルドラージ


Izumi Masaru「エルドラージ」
平日サービスレガシー20時の部(3-0)

8 《山》
4 《燃え柳の木立ち》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
4 《エルドラージの寺院》

-土地 (24)-

4 《猿人の指導霊》
4 《エルドラージの寸借者》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《罪を誘うもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》

-クリーチャー (24)-
4 《罰する火》
4 《虚空の杯》
2 《密輸人の回転翼機》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (12)-
3 《フェアリーの忌み者》
3 《歪める嘆き》
3 《漸増爆弾》
3 《三なる宝球》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《終末を招くもの》
1 《四肢切断》

-サイドボード (15)-
hareruya

難題の予見者罰する火エルドラージの寸借者

 赤単ストンピィといえば《血染めの月》が入るのが通常なため、クリーチャーのチョイスは赤単色のカードに限られていた。しかし、《血染めの月》は本当に必要なのだろうか?すべてのデッキに効くとは限らない上に他にフィニッシャーが必要な《血染めの月》より、《難題の予見者》の方が強いのでは?そんな根本的な疑問に立ち返ったのがこちらの「赤単エルドラージ」だ。

 《エルドラージの寸借者》はレガシーではあまり見かけないカードだが、それだけに「クリーチャーのコントロールを一時的に奪う」という効果は予想しづらく、たとえば相手が《不毛の大地》を警戒してメインでマリット・レイジ・トークンを出そうものなら、強烈なカウンターパンチをお見舞いすることもできる。

 無色土地として採用した《燃え柳の木立ち》によって《罰する火》コンボも搭載できているので、《ゴブリンの熟練扇動者》《難題の予見者》の道を阻むクリーチャーは、片端から焼き払ってしまえばいい。

 《密輸人の回転翼機》はストンピィ系のデッキにとっては貴重なドローソースとなるほか、《ゴブリンの熟練扇動者》で生んだゴブリン・トークンを「搭乗」させてトークンを溜めこむこともできる。見方を変えれば、相手の《不毛の大地》に強くボードコントロール力もあるエルドラージとして、きちんと差別化されたデッキと言えそうだ。

「エルドラージ」でデッキを検索

■ フロンティア: ローグ


Makuta_Miras「ローグ」
Reddit Frontier League – Week 1(4位)

5 《島》
2 《平地》
1 《山》
3 《大草原の川》
2 《灌漑農地》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《尖塔断の運河》
3 《感動的な眺望所》
1 《戦場の鍛冶場》

-土地 (25)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《氷の中の存在》

-クリーチャー (6)-
2 《マグマの洞察力》
4 《棚卸し》
3 《石の宣告》
2 《苦しめる声》
2 《焼けつく双陽》
2 《燻蒸》
3 《宝船の巡航》
4 《スフィンクスの後見》
3 《ジェスカイの隆盛》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
2 《先駆ける者、ナヒリ》

-呪文 (29)-
2 《ファイレクシアの破棄者》
2 《乱撃斬》
2 《力ずく》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《熱病の幻視》
2 《トーモッドの墓所》
1 《引き裂く流弾》
1 《石の宣告》
1 《燻蒸》

-サイドボード (15)-
hareruya

ヴリンの神童、ジェイススフィンクスの後見ジェスカイの隆盛

 今のところ『アモンケット』がフロンティア環境に与えた影響はそれほど大きくはないように見えるが、しかし地味ながらも着実に影響を与えているコンセプトもある。それは「サイクリング」だ。

 《宝船の巡航》《時を越えた探索》の使用に一切制限がないフロンティア環境では、「探査」のために墓地を肥やしつつそれらの「探査」カードにたどり着きやすくなるというのはこれ以上ないほどに魅力的な能力と言える。フェッチ+バトルランド環境とはいえ、24~5枚目の土地を「サイクリング」土地にするのは、それによって得られるメリットからすれば十分許容できる範囲だろう。

 また、「サイクリング」した《焼けつく双陽》《ヴリンの神童、ジェイス》で使いまわしたり、「サイクリング」でドロー回数を増やして《スフィンクスの後見》を誘発させるといった、フロンティア環境ならではのシナジーも見逃せない。

 まだまだ『アモンケット』にはフロンティア環境で試されていないアイデアがいくつも眠っている。スタンダードで使いそびれたカードやコンセプトがある方は、フロンティアでのデッキ構築を試してみると、意外な発展が見られるかもしれない。

「ローグ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

晴れる屋でデッキを検索する

この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事

このシリーズの過去記事