週刊デッキウォッチング vol.122 -ヒューマン・カンパニー-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 白緑ビートダウン


Toyama Takashi「白緑ビートダウン」
晴れる屋スタンダード杯(4-1)

10 《平地》
5 《森》
4 《梢の眺望》
4 《要塞化した村》
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (24)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《単体騎手》
4 《栄光半ばの修練者》
3 《無私の霊魂》
2 《異端聖戦士、サリア》
1 《不屈の神ロナス》
2 《優雅な鷺の勇者》
3 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (23)-
3 《顕在的防御》
2 《枕戈+待旦》
3 《停滞の罠》
1 《排斥》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (13)-
2 《薄暮見の徴募兵》
2 《折れた刃、ギセラ》
2 《英雄的介入》
2 《燻蒸》
2 《霊気圏の収集艇》
1 《優雅な鷺の勇者》
1 《保護者、リンヴァーラ》
1 《顕在的防御》
1 《黄昏+払暁》
1 《排斥》

-サイドボード (15)-
hareruya

単体騎手栄光半ばの修練者枕戈+待旦

 「2マナ4/4」は現代のインフレしたクリーチャースペックにおいても一つの限界と言えるサイズだが、実はスタンダードには《キランの真意号》の他にも、「2マナ4/4」のポテンシャルを持つクリーチャーが2種類も存在しているのをご存知だろうか?

 モダンレベルであることがグランプリ・神戸2017のトップ8デッキによって証明された《栄光半ばの修練者》は、「督励」によって4/4絆魂となる。さらにアタックでライフを得たのちに《単体騎手》を出せば、《同体騎手》に変身してダメージレースを完全に制することができるだろう。

 これらの4/4絆魂を《無私の霊魂》《顕在的防御》でバックアップするのが基本戦略となる。《枕戈+待旦》は「余波」で除去スペルとしても活用できるのでスロットの節約に最適だ。

 攻撃こそが最大の防御。《霊気池の驚異》が去り、ビートダウンとミッドレンジが主流になりそうなスタンダード環境では、ライフを得ながら攻撃するというこのデッキのコンセプトは一つのソリューションとなりえるだろう。

「白緑ビートダウン」でデッキを検索

■ モダン: 多色ビートダウン


Gainsay「多色ビートダウン」
Modern Constructed League(5-0)

1 《森》
1 《平地》
1 《神聖なる泉》
1 《草むした墓》
1 《寺院の庭》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《霧深い雨林》
4 《魂の洞窟》
2 《マナの合流点》
2 《剃刀境の茂み》
1 《花盛りの湿地》
2 《地平線の梢》

-土地 (21)-

4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《アヴァシンの巡礼者》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《サリアの副官》
4 《反射魔道士》
3 《ザスリッドの屍術師》
2 《罪の収集者》
1 《異端聖戦士、サリア》
1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》

-クリーチャー (31)-
4 《流刑への道》
4 《集合した中隊》

-呪文 (8)-
3 《安らかなる眠り》
2 《翻弄する魔道士》
2 《オルゾフの司教》
2 《配分の領事、カンバール》
2 《再利用の賢者》
2 《石のような静寂》
1 《罪の収集者》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード (15)-
hareruya

教区の勇者反射魔道士ザスリッドの屍術師

 6月の頭あたりから、Magic Onlineのモダンリーグでほとんど毎日のように5-0を重ね続けているデッキがある。本日紹介するのは、名だたるプロプレイヤーたちも次々と使用してにわかに注目を集めているそのデッキ、「ヒューマン・カンパニー」だ。

 《教区の勇者》の5~8枚目にもなる《サリアの副官》と、歴代最強の《大クラゲ》たる《反射魔道士》が加わったことで、「人間」という種族は「マーフォーク」と比べても遜色ないほどの打点と、それでいて容易に盤面に干渉できる柔軟性を獲得した。

 最近3マナ域に加入した《ザスリッドの屍術師》がいれば、ゲーム後半でもマナクリーチャーを有効活用できるようになる。白緑タッチ青黒という一見不安定に見えるマナベースも、《魂の洞窟》《マナの合流点》があれば問題なく回せることだろう。

 「親和」や「エルドラージトロン」のようなクリーチャーデッキだけでなく、たとえばモダンのメタ上位にいる「ストーム」や「死の影」といったデッキも、クリーチャーを軸にした戦略であることに変わりはない。そこにきて《流刑への道》《反射魔道士》でしっかりと相手に干渉しつつ、高い打点で早いターンに相手の解答を迫るこのデッキは、本来制約が強いはずの部族デッキでありながらも幅広い相手に互角以上に戦えるポテンシャルを有しており、今後の活躍が期待されるデッキの一つだ。

「多色ビートダウン」でデッキを検索

■ レガシー: スタックス


CharlieintheMox「スタックス」
Competitive Legacy Constructed League(5-0)

4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
4 《ミシュラの工廠》
4 《変わり谷》
4 《不毛の大地》
3 《リシャーダの港》
2 《絡みつく砂丘》
1 《発明博覧会》

-土地 (26)-

4 《磁石のゴーレム》

-クリーチャー (4)-
4 《虚空の杯》
3 《モックス・ダイアモンド》
4 《抵抗の宝球》
4 《漸増爆弾》
4 《世界のるつぼ》
4 《からみつく鉄線》
3 《罠の橋》
4 《煙突》

-呪文 (30)-
4 《ファイレクシアの破棄者》
3 《搭載歩行機械》
2 《呪文滑り》
2 《難題の予見者》
2 《Zuran Orb》
1 《剃刀毛のマスティコア》
1 《罠の橋》

-サイドボード (15)-
hareruya

抵抗の宝球世界のるつぼ煙突

 高速コンボや《秘密を掘り下げる者》などのクロックパーミッションが幅を利かせるレガシー環境においては、「プリズン」は成立しないと思うかもしれない。だが所詮《意志の力》は4枚しかデッキに入れられないのに対し、レガシーではヴィンテージと違って《虚空の杯》《磁石のゴーレム》も4枚ずつ搭載できるのであり、ありとあらゆるマナ拘束カードを搭載すれば、対戦相手を行動不能に陥らせるだけならむしろ容易と言える。だから問題は、その状況下でどのように優位を確保するかなのだ。

 《不毛の大地》《虚空の杯》《抵抗の宝球》《からみつく鉄線》《磁石のゴーレム》《煙突》と行動制限カードを全力で詰め込んだこちらのデッキは、《世界のるつぼ》を唯一無二のキーカードとしている。お互いに動けない状況で、呪文を唱えることなく墓地から土地を置き続けられることは決定的なアドバンテージだ。

 戦場のクリーチャーは《漸増爆弾》《罠の橋》に加えて《変わり谷》《ミシュラの工廠》でシャットアウトする。『アモンケット』の《絡みつく砂丘》《若き紅蓮術士》に強いほか、時間をかければシステムクリーチャーも倒せる縁の下の力持ちだ。

 天敵である《発展の代価》はサイドボードからの《Zuran Orb》でケアをする。《煙突》でじわりじわりと相手を追い詰めていく感覚が味わいたい方にオススメのデッキだ。

「スタックス」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

晴れる屋でデッキを検索する

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