週刊デッキウォッチング vol.112 -時の縫い合わせデルバー-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 白青ビートダウン


Okayama Hironori「白青ビートダウン」
晴れる屋スタンダード杯(5-1)

8 《平地》
6 《島》
4 《大草原の川》
2 《進化する未開地》
4 《港町》

-土地 (24)-

4 《霊廟の放浪者》
4 《鎖鳴らし》
4 《無私の霊魂》
3 《金属ミミック》
4 《呪文捕らえ》
4 《ネベルガストの伝令》

-クリーチャー (23)-
3 《予期》
2 《逆説的な結果》
1 《幻術師の謀》
2 《燻蒸》
1 《罪人への急襲》
4 《停滞の罠》

-呪文 (13)-
3 《大天使アヴァシン》
3 《否認》
3 《石の宣告》
2 《守られた霊気泥棒》
2 《不許可》
1 《逆説的な結果》
1 《罪人への急襲》

-サイドボード (15)-
hareruya



呪文捕らえ逆説的な結果燻蒸


 『異界月』で加入した強力なスピリットたちを主軸に据えた「白青スピリット」は、《反射魔道士》を失ったことで地上ビートとのクロック差を埋める術がなくなってしまい、デッキとして成立しなくなってしまったかのように思われた。だがこのデッキはビートダウンでありながら、《停滞の罠》と合わせて《燻蒸》《罪人への急襲》といった全体除去をコンセプトに据えるという、一見大胆な解決を図っている。

 自分のクリーチャーが巻き込まれるのではと思いきや、エンド前の《逆説的な結果》がアドバンテージをとりつつ自陣のクリーチャーを救済する。《呪文捕らえ》に封じられたクリーチャーもまとめて《燻蒸》してしまえば問題ない。

 また《無私の霊魂》があるので、《逆説的な結果》を引かなくても《燻蒸》で一方的な盤面を作ることもできる。

 《集合した中隊》《密輸人の回転翼機》《反射魔道士》……多くの相方を失ったとはいえ、ミッドレンジ環境で《呪文捕らえ》のカードパワーは依然として魅力的であることに変わりはない。このデッキのようにちょっとした工夫を加えれば、再びスタンダードの頂点に返り咲くことができるかもしれない。

【「白青ビートダウン」でデッキを検索】


■ モダン: 青赤デルバー


Onodera Yuuji「青赤デルバー」
平日モダン17時の部(3-0)

2 《島》
2 《山》
2 《蒸気孔》
4 《沸騰する小湖》
1 《溢れかえる岸辺》
4 《尖塔断の運河》
2 《硫黄の滝》
1 《シヴの浅瀬》

-土地 (18)-

4 《秘密を掘り下げる者》
3 《僧院の速槍》
1 《渋面の溶岩使い》
4 《嵐追いの魔道士》
3 《若き紅蓮術士》

-クリーチャー (15)-
4 《手練》
4 《稲妻》
3 《蒸気の絡みつき》
4 《マグマの噴流》
2 《魔力変》
1 《残響する真実》
3 《カーリ・ゼヴの巧技》
2 《一日のやり直し》
2 《時の縫い合わせ》
2 《不安定性突然変異》

-呪文 (27)-
3 《大祖始の遺産》
2 《氷の中の存在》
2 《鋼の妨害》
2 《呪文嵌め》
2 《使徒の祝福》
2 《粉々》
1 《カーリ・ゼヴの巧技》
1 《血染めの月》

-サイドボード (15)-
hareruya



嵐追いの魔道士カーリ・ゼヴの巧技時の縫い合わせ


 マジックの対戦で重要なことの一つとして、次のターンに何点のダメージを受けるかを計算するというのがある。もちろん通常なら相手のクリーチャーのパワーを足し算すれば済む話だが、《死の影》などパワーが可変なクリーチャーがいたり、オーラや装備品が大量に入ったデッキだとまた話が違ってくる。そしてダメージ計算がズレる最たる例が、果敢を持ったクリーチャーなのだ。

 《ギタクシア派の調査》が禁止になったとはいえ、強力かつ軽いスペルが多いモダンなら、1ターンに3回以上の呪文を唱えることも珍しくない。さらに《カーリ・ゼヴの巧技》で相手のクリーチャーを奪いつつスペルを重ねれば、そのターンに与えるダメージは対戦相手の予想を上回ること間違いなしだ。

 《時の縫い合わせ》はギャンブルになるが、果敢を持ったクリーチャーや《若き紅蓮術士》が入ったこのデッキなら外れても最低限の役割は果たすし、何より当たったときのリターンは凄まじい。3ターン目から追加ターンを得て殴ってくるとは、対戦相手もさすがに計算できないだろう。

 対戦相手のダメージ計算を狂わせることは、アグロデッキを使う場合において特に重要なポイントとなる。一般的なレシピでは使用されていないようなカードにこそ、勝利への鍵が眠っているかもしれないのだ。

【「青赤デルバー」でデッキを検索】


■ レガシー: 12ポスト


Nagaya Souseki「12ポスト」
晴れる屋GPT – GPTラスベガス2017(トップ8)

1 《カラカス》
1 《魂の洞窟》
4 《雲上の座》
4 《微光地》
4 《エルドラージの寺院》
2 《古えの墳墓》
1 《演劇の舞台》
4 《ヴェズーヴァ》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
1 《ウギンの目》
1 《イス卿の迷路》

-土地 (25)-

3 《歩行バリスタ》
4 《難題の予見者》
3 《終末を招くもの》
2 《ワームとぐろエンジン》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (15)-
2 《全ては塵》
1 《The Abyss》
4 《真髄の針》
4 《探検の地図》
2 《Candelabra of Tawnos》
3 《厳かなモノリス》
2 《精神石》
1 《殴打頭蓋》
1 《精霊龍、ウギン》

-呪文 (20)-
4 《虚空の力線》
3 《歪める嘆き》
3 《抵抗の宝球》
2 《磁石のゴーレム》
2 《罠の橋》
1 《爆積み》

-サイドボード (15)-
hareruya



雲上の座Candelabra of Tawnos難題の予見者


 《雲上の座》とエルドラージという組み合わせは【vol.69】でも紹介したが、今回は青単ではなく、比較的オーソドックスにほぼ無色だけで組まれたものをご紹介しよう。

 スペル構成的にはほぼマナランプの構造をとったこちらのデッキは、《探検の地図》から《雲上の座》をサーチし、《ヴェズーヴァ》《微光地》で「神座」を増やしつつ、それらを《Candelabra of Tawnos》でアンタップすることで膨大なマナの獲得を目指すことになる。

 露払いは《難題の予見者》《終末を招くもの》といったカードが務めるほか、《歩行バリスタ》は序盤から終盤まで活躍が見込める縁の下の力持ちだ。

 メインから《真髄の針》を4枚搭載する徹底ぶりで、天敵となる《不毛の大地》による凌辱を許さない。ストンピィ型のエルドラージとどちらが良いのかはメタゲーム次第といったところだろうが、BUG系のデッキに対抗するなら、こちらの形の方が良いかもしれない。

【「12ポスト」でデッキを検索】


■ フロンティア: 霊気池の驚異


Kitagawa Hiroyuki「霊気池の驚異」
晴れる屋チームフロンティア杯(2位)

4 《森》
3 《沼》
1 《島》
2 《窪み渓谷》
3 《汚染された三角州》
4 《霊気拠点》
4 《植物の聖域》

-土地 (21)-

4 《ならず者の精製屋》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《女王スズメバチ》
3 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー (11)-
4 《霊気との調和》
2 《集団的蛮行》
2 《闇の掌握》
2 《スゥルタイの魔除け》
2 《衰滅》
2 《闇の誓願》
1 《残忍な切断》
1 《命運の核心》
4 《織木師の組細工》
4 《霊気池の驚異》
2 《策謀家テゼレット》
1 《リリアナ・ヴェス》
1 《精霊龍、ウギン》

-呪文 (28)-
3 《スズメバチの巣》
2 《不屈の追跡者》
2 《否認》
1 《害悪の機械巨人》
1 《龍王ドロモカ》
1 《龍王シルムガル》
1 《餌食》
1 《霊気渦竜巻》
1 《過ぎ去った季節》
1 《護法の宝珠》
1 《頂点捕食者、ガラク》

-サイドボード (15)-
hareruya



霊気池の驚異闇の誓願策謀家テゼレット


 先週末はチームフロンティア杯が開催され、14チーム42名が参加する盛況ぶりを見せた。そんな中で惜しくも優勝は逃したものの、2位となったチームのデッキのうちの一つがこちらだ。

 《霊気池の驚異》デッキを黒ベースにすることで環境最強の全体除去である《衰滅》を採用でき、トップメタの一角であるアタルカレッドに耐性を付けている。《闇の誓願》は「魔巧」していれば5マナ6マナから《霊気池の驚異》のサーチから設置までをこなせるのが頼もしい。

 《スゥルタイの魔除け》も、《アーティファクトの魂込め》《硬化した鱗》《密輸人の回転翼機》といった強力なエンチャント・アーティファクトが揃っているフロンティア環境では3つのモードすべてに価値がある。さらにスタンダードではなかなか活躍の機会がなかった《策謀家テゼレット》を華麗に使いこなしている点もスタイリッシュだ。

 少し前のスタンダードから遊んでいた人ならすぐにでもデッキを組めるのがフロンティアの魅力の一つと言える。スタンダードで《霊気池の驚異》を使わずバインダーで眠らせているという方は、一度組んでみるのもいいだろう。

【「霊気池の驚異」でデッキを検索】



 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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