USA Legacy Express vol.125 -奇跡復権の予報-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。先週末には【グランプリ・静岡2017春】があり、サイドイベントとして"「グレードアップ」争奪レガシー"も開催されましたが、皆さん参加されましたか?

気になる禁止改定は、前回の禁止改定以降グランプリ級の大きなレガシーの大会がなかったこともあり、予想どおりノーチェンジでした

 さて、今回の連載ではMOで月一で開催される【Legacy Challenge】【Eternal Extravaganza 6】の結果を見ていきたいと思います。

Legacy Challenge
~やはり強いMiracles。MOの名手が優勝を果たす~

3月13日

1位 Miracles
2位 Miracles
3位 Miracles
4位 Lands
5位 Grixis Delver
6位 BR Reanimator
7位 Miracles
8位 Elves

トップ8のデッキリストは【こちら】

 最近よく見られるようになってきたSultai系は全滅で、Miraclesがトップ8の半数を占めるという結果になりました。青いフェアデッキに強いLandsや、《真の名の宿敵》《致命的な一押し》の影響を受けないBR Reanimatorのようなコンボ、単体除去の効果が薄いElvesが勝ち残っていることからも、Sultai系のフェアデッキにとっては厳しいメタだったようです。

Legacy Challengeデッキ紹介

「Miracles」「Lands」



Mzfroste「Miracles」
Legacy Challenge(1位)

4 《島》
2 《平地》
3 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》

-土地 (20)-

3 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー (3)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
3 《予報》
1 《対抗呪文》
2 《天使への願い》
1 《議会の採決》
4 《意志の力》
4 《終末》
3 《相殺》
1 《仕組まれた爆薬》
4 《師範の占い独楽》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (37)-
4 《紅蓮破》
3 《狼狽の嵐》
2 《僧院の導師》
2 《外科的摘出》
2 《摩耗+損耗》
1 《山》
1 《瞬唱の魔道士》

-サイドボード (15)-
hareruya




Alakazimdk「Miracles」
Legacy Challenge(2位)

4 《島》
2 《平地》
1 《山》
2 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》

-土地 (20)-

2 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー (2)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
4 《予報》
1 《対抗呪文》
2 《天使への願い》
1 《議会の採決》
4 《意志の力》
4 《終末》
4 《相殺》
4 《師範の占い独楽》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (38)-
3 《狼狽の嵐》
2 《瞬唱の魔道士》
2 《外科的摘出》
2 《紅蓮破》
2 《赤霊破》
2 《摩耗+損耗》 1 《神聖な協力》
1 《仕組まれた爆薬》

-サイドボード (15)-
hareruya



 今大会でプレイオフにまで勝ち残っていたMiraclesは、すべて《予報》をメインから多数採用したカードアドバンテージバージョンで、フィニッシャーはSultai系との消耗戦において「奇跡」を発動させることで速やかにゲームを終わらせられる《天使への願い》が、メインでは《僧院の導師》よりも優先されています。MOのリストでは、今大会の優勝者でリーグでもコンスタントに5-0という好成績を残しているMzfrosteのスタイルが主流となっています

☆注目ポイント

予報

 ドロースペルの《予報》によって、《天使への願い》インスタントスピードで天使トークンを展開しやすくなります。

相殺

 《突然の衰微》の増加に伴い、Mzfrosteのリストでは《相殺》の枚数も減らされています。Sultai系とのマッチアップでは《相殺》によるロックは難しく、《予報》《瞬唱の魔道士》によるカードアドバンテージや《師範の占い独楽》によるカードセレクションでロングゲームに持ち込み、《天使への願い》でフィニッシュを決めるのがベストです。

僧院の導師

 最近はサイド後に相手の《突然の衰微》などの除去を無駄カードにするために、《僧院の導師》すら採用していないリストをオンラインを中心に見かけますが、ゲームを速やかに終わらせる手段となり、Sneak and Showを始めとする《相殺》によるロックに耐性のあるコンボなどにはクロックを展開する必要があるので、Mzfrosteはサイドに採用しています

神聖な協力

 ファイナリストのAlakazimdkのサイドにはレガシーでは見慣れないカードが一枚見られます。《神聖な協力》はあの《真の名の宿敵》に対するアンサーとなり、Burnなどに対してはライフゲインスペルとしても役立ちます。2マナインスタントで使いやすく、ぜひ試してみたいカードです。


Call1Me1Dragon「Lands」
Legacy Challenge(4位)

1 《森》
2 《Taiga》
2 《Tropical Island》
1 《樹木茂る山麓》
1 《霧深い雨林》
1 《新緑の地下墓地》
3 《燃え柳の木立ち》
1 《地平線の梢》
2 《平穏な茂み》
1 《ボジューカの沼》
1 《カラカス》
4 《幽霊街》
4 《不毛の大地》
3 《演劇の舞台》
1 《アカデミーの廃墟》
3 《イス卿の迷路》
2 《暗黒の深部》
1 《Glacial Chasm》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》

-土地 (35)-


-クリーチャー (0)-
4 《輪作》
2 《ギャンブル》
4 《壌土からの生命》
3 《罰する火》
2 《直観》
4 《踏査》
4 《モックス・ダイアモンド》
2 《仕組まれた爆薬》
1 《世界のるつぼ》

-呪文 (26)-
3 《クローサの掌握》
3 《虚空の杯》
2 《外科的摘出》
2 《生命の力、ニッサ》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》
1 《地底の揺れ》
1 《古えの遺恨》
1 《窒息》
1 《Zuran Orb》

-サイドボード (15)-
hareruya



 フェアデッキ全般に強いLands。普段よく見かけるバージョンは緑赤ですが、今回入賞していたバージョンは《直観》のために青をタッチしています《仕組まれた爆薬》《アカデミーの廃墟》で使い回すという動きもあり、メインから《相殺》ロックにも耐性があります。

☆注目ポイント

仕組まれた爆薬

 メインから採用されている《仕組まれた爆薬》は、《相殺》《真の名の宿敵》《血染めの月》など多くのパーマネント対策になり、特に厄介な《血染めの月》に対してあらかじめ"X=3"でセットしておくことも可能で、クリーチャーデッキなどに対しては《アカデミーの廃墟》で使い回すことによって、相手をロックすることも可能です

直観

 《直観》《アカデミーの廃墟》を利用することで、アーティファクトをサーチすることも可能です。サーチスペルとしては《ギャンブル》より重くはなりますが、インスタントスピードで一度に3枚のカードをサーチできるので、《壌土からの生命》や各種土地、《罰する火》を一度にサーチし、デッキのエンジンやコンボのセットアップがしやすくなるのが魅力です

生命の力、ニッサ

 サイド後の追加の勝ち手段には、最近多くのリストで採用されている《不屈の追跡者》ではなく、Elvesでも見られる《生命の力、ニッサ》が採用されています。最近は《不屈の追跡者》や、20/20の《暗黒の深部》対策に《剣を鍬に》などの除去を残してくる可能性があるので、除去で対処されづらいプレインズウォーカーは、特にMiraclesなどコントロールデッキに対して有効なフィニッシャーとなります


Eternal Extravaganza 6
~レガシーのトップメタが、アメリカ東海岸の大会も制する~

3月18日

1位 Miracles
2位 Miracles
3位 Death and Taxes
4位 ANT
5位 Alurens
6位 4C Control
7位 4C Control
8位 Elves

トップ8のデッキリストは【こちら】

 Eternal Extravaganzaは、アメリカの東海岸で定期的に開催されるエターナルフォーマットの大規模な大会で、賞金総額も20000ドルと豪華です。

 決勝戦こそ環境最強とされているMiraclesのミラーでしたが、その他はAluren、Elves、ANT、Death and Taxes、多色コントロールとコンボ、コントロール、クリーチャーデッキと多数の異なるアーキタイプが勝ち残りました。今大会で決勝戦まで勝ち残ったMiraclesのリストは、両プレイヤーともに先程説明したMOで勝ち残っているPredict型のMiraclesで、リアルでも主流となりつつあります

デッキ紹介

「Aluren」「4C Control」



Tyler Gardner「Aluren」
Eternal Extravaganza 6(5位)

1 《森》
1 《島》
1 《沼》
3 《Tropical Island》
2 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
1 《霧深い雨林》
1 《吹きさらしの荒野》
1 《樹木茂る山麓》
1 《ヴォルラスの要塞》

-土地 (20)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《悪意の大梟》
3 《洞窟のハーピー》
2 《光り物集めの鶴》
4 《断片無き工作員》
2 《トレストの使者、レオヴォルド》
2 《寄生的な大梟》

-クリーチャー (21)-
4 《渦まく知識》
3 《思案》
3 《突然の衰微》
4 《意志の力》
4 《魔の魅惑》
1 《森の知恵》

-呪文 (19)-
2 《思考囲い》
2 《外科的摘出》
2 《花の絨毯》
2 《夜の戦慄》
1 《カラカス》
1 《突然の衰微》
1 《苦い真理》
1 《弱者の石》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《真髄の針》
1 《梅澤の十手》

-サイドボード (15)-
hareruya


 最近のAlurenは従来の《帝国の徴募兵》を採用したコンボ型よりも、《悪意の大梟》《断片無き工作員》でアドバンテージを取りつつ隙を見つけてコンボを決めるという、ミッドレンジスタイルが主流になりつつあります。

 Sultaiの新たなバリエーションとしてMOを中心に広がっており、リアルでも最近見られるようになりました。Shardless Sultaiのフィニッシャーが、《タルモゴイフ》やプレインズウォーカーではなくコンボになったような構成です。

☆注目ポイント

トレストの使者、レオヴォルド

 今や定番カードとして定着しているSultaiカラーのパワーカード、《トレストの使者、レオヴォルド》の登場によって使われるようになったバージョンです。コンボ以外にもSultaiミッドレンジとしても振る舞うことが可能です。

光り物集めの鶴

 メインから10枚のアーティファクト・カードを入れている上に、《渦まく知識》《思案》《森の知恵》でライブラリートップを操作できるので、《光り物集めの鶴》アドバンテージを稼ぎやすくなっています

洞窟のハーピー

 《洞窟のハーピー》のクリーチャーバウンス能力で各種ETB能力持ちのクリーチャーを再利用することが可能で、コンボ以外の使い道もあるのがこのバージョンの強みです。

ヴォルラスの要塞

 《ヴォルラスの要塞》はSultai特有の"消耗戦の強さ"に拍車をかけます。《悪意の大梟》《断片無き工作員》といったクリーチャーを使い回していきます。


Phil Pratt「4C Control」
Eternal Extravaganza 6(6位)

1 《島》
1 《沼》
4 《Underground Sea》
2 《Tropical Island》
2 《Volcanic Island》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
1 《霧深い雨林》

-土地 (20)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《悪意の大梟》
4 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー (13)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
3 《致命的な一押し》
2 《呪文嵌め》
2 《突然の衰微》
2 《コラガンの命令》
1 《苦い真理》
4 《意志の力》
2 《相殺》
1 《ヴェールのリリアナ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (27)-
2 《紅蓮破》
2 《外科的摘出》
2 《思考囲い》
2 《悪魔の布告》
1 《トレストの使者、レオヴォルド》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《致命的な一押し》
1 《狼狽の嵐》
1 《侵襲手術》
1 《突然の衰微》
1 《仕組まれた爆薬》

-サイドボード (15)-
hareruya



 今大会で2名の入賞者を出していた青黒ベースの多色コントロールデッキ。新除去《致命的な一押し》の登場により強化されたアーキタイプで、効率的なスペルや除去を《瞬唱の魔道士》で再利用して、アドバンテージを稼いでいきます。

 《致命的な一押し》という軽い除去を得た恩恵で、《剣を鍬に》《稲妻》といった1マナ除去に新たな選択肢ができ、黒ベースのコントロールデッキも組みやすくなりました

☆注目ポイント

死儀礼のシャーマンコラガンの命令瞬唱の魔道士

 最強のマナクリーチャーである《死儀礼のシャーマン》のおかげで色もタッチしやすく、《突然の衰微》《コラガンの命令》といった強力なスペルにアクセスできます。《コラガンの命令》は相手のクリーチャーを除去しつつ《瞬唱の魔道士》を墓地から戻すという動きも可能であり、他のフェアデッキと比べてもアドバンテージを稼ぐ手段が豊富です

苦い真理

 《苦い真理》は3マナなので《相殺》でカウンターされづらく、中盤以降はライフに余裕があれば《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックして、さらにアドバンテージを稼ぐことが可能です。3ドローは、あの《宝船の巡航》と同様の枚数であり、黒いスペルなので《紅蓮破》されないのも強みです。

致命的な一押し

 《石鍛冶の神秘家》は不採用ですが《瞬唱の魔道士》《致命的な一押し》などの軽い除去を使い回してアドバンテージを取っていき、ゲームをコントロールしていく動きはStonebladeを彷彿とさせます。Miracles以外のコントロールデッキを使いたいという方にもおすすめです

総括

 一時期はSultai系の台頭により環境にも変化が見られましたが、やはり環境のベストデッキであるMiraclesはメタの変化にしっかり対応してきています

虚空の杯魂の洞窟トレストの使者、レオヴォルド

 《虚空の杯》《魂の洞窟》《トレストの使者、レオヴォルド》といったカードは確かにMiraclesに対して強い要素を持っていますが、それらを使用したデッキの多くはMiraclesほど安定した動きは望めず、多色であることから特殊地形に依存する構成なため、《不毛の大地》を使うデッキが多数を占める環境では厳しくなります。

仕組まれた爆薬

 Miracles側も最近はメインから《仕組まれた爆薬》を採用することで《虚空の杯》などの置物に対抗しており、《トレストの使者、レオヴォルド》も青いカードなので《紅蓮破》で対処可能です。

 こうして見てみると環境はMiraclesと、数種類の《死儀礼のシャーマン》を使ったSultai系のデッキ(Sultai Delver、Shardless、True-Name Control、Aluren)が支配しており、環境の停滞を招いているように見えますが、比較的最近開催された【グランプリ・ルイビル2017】ではMiraclesはプレイオフにわずか1名で、BR Reanimator、Delver系、Sneak and Show、Sultaiといった異なるアーキタイプが見られました。

 Miraclesはトータルの勝率は他のデッキよりも高く、データ上は常にトップメタに位置していますが、デッキの難易度が高く、熟知している一部のエキスパートが勝ち続けている結果というのも、無視できないファクターです。

護衛募集員トレストの使者、レオヴォルド

 ベストデッキは確かに存在しますが、《護衛募集員》《トレストの使者、レオヴォルド》のように環境を支配する青いデッキに対抗し得るパワーを持つ新カードが登場することによって環境が変化することが望ましく、個人的にはレガシーで禁止カードを極力出さないという方針には賛成です。

以上USA Legacy Express vol.125でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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