皆さんこんにちは。先週末は久々にSCG関連のレガシーのイベントが、アメリカのBaltimoreで開催されました。
メインイベントは少し特殊なスタンダード、モダン、レガシーのチーム構築でしたが、レガシーのSCG Classicsも併催イベントとして開催されました。今回の連載では【SCGO BaltimoreとSCG Classic Baltimore】の結果を見ていきたいと思います。
SCGO Baltimore
~強豪プレイヤーのチームが多数参戦。
チームを優勝に導いたのはTrue Name Sultai Control~
2月20日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 True Name Sultai Control
2位 Miracles
3位 Grixis Delver
4位 Food Chain
5位 Lands
6位 Eldrazi
7位 Sultai Delver
8位 Burn
トップ8デッキリストは【こちら】
チーム戦の大会らしく、強豪プレイヤー同士でチームを組んだオールスターのようなイベントでした。スタンダード、モダン、レガシーで競われた極めて特殊なフォーマットであるチーム構築なため、トップ8入賞デッキが今大会での勝ち組かどうかは判断が難しい所ですが、競技志向のプレイヤーの多くはTrue Name Sultai ControlやMiracels、Delver系やSneak and Showといったトップメタのデッキを選択していました。特定のアーキタイプのエキスパートも上位に勝ち残っておりFood ChainやBurnといったデッキも見られます。
SCGO Baltimore トップ8 デッキ紹介
「Sultai Delver」「Food Chain」「Burn」
4 《溢れかえる岸辺》 3 《Tropical Island》 3 《Underground Sea》 4 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 2 《真の名の宿敵》 1 《トレストの使者、レオヴォルド》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー (13)- |
4 《渦まく知識》 4 《致命的な一押し》 4 《思案》 3 《呪文貫き》 3 《もみ消し》 3 《突然の衰微》 4 《目くらまし》 4 《意志の力》 -呪文 (29)- |
3 《外科的摘出》 2 《悪魔の布告》 2 《狼狽の嵐》 2 《思考囲い》 2 《真髄の針》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《湿地での被災》 1 《森の知恵》 -サイドボード (14)- |
無難なチョイスとしてMiraclesと共に競技志向のプレイヤーに人気のあるDelver。《稲妻》にアクセス可能なGrixis Delverや4C Delverの方が人気がありましたが、今年リリースされた新セットである『霊気紛争』から加入した《致命的な一押し》により、Sultai Delverも有力な選択肢の一つとされるようになりました。
☆注目ポイント
SCG Tourの強豪でDelver系のデッキを得意とするDylan Doneganのリストは、True Name Sultaiをさらにテンポ寄りにした構成です。4C Delverのカードアドバンテージを重視した構成かと思えばTemur Delverのようなテンポデッキでよく見られる《もみ消し》も採用されているなど、様々な要素が組み込まれています。
伝統的なDelverの軽いクロックで攻め、《もみ消し》や土地破壊、ソフトカウンターで決めるテンポデッキのように動き、《グルマグのアンコウ》や《真の名の宿敵》といったフィニッシャーを展開するなど、ロングゲームも視野に入れることが可能ですが、《呪文貫き》や《もみ消し》といった受動的なスペルは「探査」との相性が悪いので、Delver系の中では遅く、限定的な効果のスペルの多さからコントロールやミッドレンジとしては中盤以降パワー不足になりやすいのが気になります。
しかし《グルマグのアンコウ》や《真の名の宿敵》といったクリーチャーは《突然の衰微》や《致命的な一押し》がメインの除去であるSultai系に対して信頼性の高いクロックとなります。
《致命的な一押し》がフルに採用されており3枚の《突然の衰微》、クリーチャーデッキに強い構成です。しかしコンボに対してはそれらの除去は無駄になりやすく《呪文貫き》や《もみ消し》、《トレストの使者、レオヴォルド》といったカードが採用されているもののメインでは不利が付きそうです。
※記事公開時、誤った説明がされておりましたが、現在は修正してあります。
1 《森》 1 《島》 1 《沼》 2 《Tropical Island》 2 《Underground Sea》 1 《Bayou》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 3 《新緑の地下墓地》 -土地 (19)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《悪意の大梟》 3 《トレストの使者、レオヴォルド》 2 《激情の共感者》 1 《永遠の災い魔》 3 《霧虚ろのグリフィン》 1 《グルマグのアンコウ》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー (19)- |
4 《渦まく知識》 3 《思案》 3 《突然の衰微》 3 《運命の操作》 4 《意志の力》 1 《森の知恵》 4 《食物連鎖》 -呪文 (22)- |
4 《トーラックへの賛歌》 2 《致命的な一押し》 2 《外科的摘出》 2 《毒の濁流》 1 《狼狽の嵐》 1 《突然の衰微》 1 《集団的蛮行》 1 《真髄の針》 1 《無のロッド》 -サイドボード (15)- |
Alurenなどと同様にFood Chainも一部で固定ファンの存在するローグコンボで、このデッキの使用者であるEric Englishはグランプリ・ルイビルでも同様のデッキでトップ32という好成績を残しています。
《運命の操作》によって《霧虚ろのグリフィン》を3枚追放し、《食物連鎖》を戦場に出し、《永遠の災い魔》か《霧虚ろのグリフィン》を追放領域からキャストして、《食物連鎖》で追放し、追放領域から再キャストという動きが基本です。これを繰り返すことでクリーチャースペル限定ですが無限マナを得ることが可能になり、最終的に《引き裂かれし永劫、エムラクール》にまで繋げて追加のターンを得てゲームを終わらせます。
ギミックを多数積んでいることもあり、妨害要素は少な目なのでメインでのコンボとのマッチアップは不利が付きます。そのためサイドのスペースは《トーラックへの賛歌》や《集団的蛮行》といったハンデスや、追加のカウンターである《狼狽の嵐》などのコンボデッキに対する妨害要素に多く割かれています。
☆注目ポイント
コンボとしては遅い方でこのデッキよりも速いコンボデッキやDelver系を苦手としていましたが、《トレストの使者、レオヴォルド》は他の青いデッキや、コンボデッキに対して《死儀礼のシャーマン》《突然の衰微》《悪意の大梟》など定番のSultaiのパーツも搭載されているので、《食物連鎖》のコンボに頼らずともSultai系のミッドレンジとして振舞うことも可能で、コンボパーツでありサーチスペルである《運命の操作》は実質ドロー4と同様の効果です。
《死儀礼のシャーマン》《グルマグのアンコウ》《意志の力》など、《霧虚ろのグリフィン》を追放する手段も豊富です。《終末》でデッキに戻されても《運命の操作》で再度《霧虚ろのグリフィン》や《永遠の災い魔》をサーチしてくることが可能です。
環境のベストカードの一枚である《トレストの使者、レオヴォルド》を使いつつ、True Name Sultai Controlといった定番のデッキとは少し違ったデッキを使いたいと考えている方に、特にお勧めのデッキです。
20 《山》 -土地 (20)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《僧院の速槍》 4 《大歓楽の幻霊》 -クリーチャー (12)- |
4 《稲妻の連鎖》 4 《溶岩の撃ち込み》 4 《稲妻》 4 《火炎の裂け目》 4 《発展の代価》 4 《裂け目の稲妻》 4 《火炎破》 -呪文 (28)- |
4 《灼熱の血》 4 《極上の炎技》 2 《焼尽の猛火》 2 《粉々》 2 《硫黄の渦》 1 《突然のショック》 -サイドボード (15)- |
SCG Tourの司会者としての活動が中心のPatrick Sullivanも、チーム戦というスペシャルなイベントということで、プレイヤーとして参加していました。ZooやBurnといった赤いデッキを得意とし過去のSCGやGPでも結果を残している強豪プレイヤーです。今大会でも得意のBurnを持ち込み、見事に上位入賞を果たしています。
☆注目ポイント
最近のBurnのリストではあまり見られなくなった《火炎の裂け目》は《大歓楽の幻霊》が戦場にいる状態では自分自身にも6点ダメージと少し痛くなりますが、2マナ4点火力はスピード勝負になりやすいコンボデッキとのマッチアップでは《極上の炎技》や《硫黄の渦》よりも有用です。
《発展の代価》は《トレストの使者、レオヴォルド》の影響で特殊地形を多数採用したSultaiが流行っている現在では、4枚採用しない理由が見当たりません。対象を取らないので《トレストの使者、レオヴォルド》を誘発しないのもプラスです。
サイドは《極上の炎技》 や《硫黄の渦》といったメインでは相性があまり良いとは言えないMiraclesとのマッチアップ用のカードと、《焼尽の猛火》《灼熱の血》《突然のショック》といった対クリーチャーデッキ用の火力が多数積まれています。
《粉々》は、装備品やこのデッキにとって致命的となる《虚空の杯》を処理しつつ、本体にもダメージが入るので効率的です。クリーチャーや置物対策は全て本体にもダメージが入るスペルが選択されており、デッキの方向性を歪めることなく厄介なデッキや戦略に対抗できるように構築されています。
SCG Classic Baltimore
~エルドラージが久々に優勝~
2月20日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Eldrazi
2位 Shardless Sultai
3位 Sneak and Show
4位 UR Control
5位 UW Stoneblade
6位 Miracles
7位 Death and Taxes
8位 4C Delver
トップ16のデッキリストは【こちら】
SCGO Baltimoreと併催して開催されたSCG Classic Baltimoreは久々のレガシーのイベントで、200人以上の参加者を出しました。Miraclesやグランプリ・ルイビルで優勝を飾ったTrue Name SultaiはメインイベントであるSCGOほどは見られず、UR ControlやUW Stonebladeといったレアなデッキも勝ち残っていて、SCG Classicらしく多数の異なるデッキが見られます。
SCG Classic Baltimore トップ8デッキ紹介
「UR Control」「UW Stoneblade」
4 《島》 1 《山》 4 《Volcanic Island》 1 《Tropical Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《乾燥台地》 2 《不毛の大地》 -土地 (21)- 2 《渋面の溶岩使い》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《真の名の宿敵》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー (11)- |
4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 4 《思案》 2 《噴出の稲妻》 1 《呪文貫き》 2 《対抗呪文》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 2 《時間の熟達》 2 《師範の占い独楽》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (28)- |
3 《紅蓮破》 3 《外科的摘出》 3 《古えの遺恨》 1 《忌むべき者のかがり火》 1 《狼狽の嵐》 1 《二股の稲妻》 1 《侵襲手術》 1 《白鳥の歌》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード (15)- |
《師範の占い独楽》や《精神を刻む者、ジェイス》が採用されていることからも、他の青赤デッキよりもロングゲームを想定したUR Controlです。
火力とカウンターでコントロールしつつ、《瞬唱の魔道士》でアドバンテージを取り、信頼性のあるフィニッシャーである《真の名の宿敵》で勝利を目指す"カウンターバーン"のように見えますが、《時間の熟達》と《忌むべき者のかがり火》いう2種類の「奇跡」スペルも採用されており、カウンターバーンというよりは青赤奇跡コントロールで、今まで見られなかった新しいタイプの青赤です。
☆注目ポイント
《時間の熟達》と《忌むべき者のかがり火》は素では重いスペルですが、Miraclesと同様に《師範の占い独楽》や《渦まく知識》を利用することで「奇跡」を誘発させやすくすることが可能です。
《忌むべき者のかがり火》は《終末》と異なり《真の名の宿敵》に対する回答にはならないものの、本体にもダメージが入る全体火力なのでプレインズウォーカー対策にもなります。
青赤という構成上、相手の《真の名の宿敵》に対する回答に貧しいため、《仕組まれた爆薬》がサイドに採られています。3色目の色マナと《古えの遺恨》をフラッシュバックするために《Tropical Island》が一枚だけ採用されています。
4 《島》 2 《平地》 2 《Tundra》 4 《溢れかえる岸辺》 1 《汚染された三角州》 2 《魂の洞窟》 2 《カラカス》 4 《不毛の大地》 -土地 (21)- 4 《審判官の使い魔》 4 《霊廟の放浪者》 4 《翻弄する魔道士》 4 《石鍛冶の神秘家》 3 《呪文捕らえ》 3 《スレイベンの守護者、サリア》 2 《真の名の宿敵》 -クリーチャー (24)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《剣を鍬に》 4 《意志の力》 1 《梅澤の十手》 1 《火と氷の剣》 1 《殴打頭蓋》 -呪文 (15)- |
2 《安らかなる眠り》 2 《基本に帰れ》 1 《封じ込める僧侶》 1 《聖トラフトの霊》 1 《異端聖戦士、サリア》 1 《造物の学者、ヴェンセール》 1 《議会の採決》 1 《解呪》 1 《戦の惨害》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -サイドボード (15)- |
暫くぶりに上位で見られる青白のStoneblade。コントロール寄りの過去の青白と異なり《審判官の使い魔》や《スレイベンの守護者、サリア》など、軽いクリーチャーや《霊廟の放浪者》や《呪文捕らえ》といったスピリット要素も含まれており、軽いクリーチャーが多めでアグロ寄りの構成です。
☆注目ポイント
《スレイベンの守護者、サリア》に加えて、ソフトカウンターを内蔵した《審判官の使い魔》や《霊廟の放浪者》はクロックをかけつつ行動を著しく制限させます。
コンボデッキに対してはメインからフル搭載された《翻弄する魔道士》がキーカードをシャットアウトします。Miraclesのスイーパーも禁止することが可能なので、Delver系以外のデッキに対して有効なクリーチャーです。《ギタクシア派の調査》で相手の手札の状況を把握していればより有効に使う事ができます。
クリーチャー単体のサイズに難がありますが《石鍛冶の神秘家》+装備品のパッケージでカバーしていきます。
《呪文捕らえ》は《魂の洞窟》からキャストされたクリーチャースペルや、《突然の衰微》といったカウンターされないスペルも追放し、瞬速は装備品とも相性が良く、このデッキにフィットしたクリーチャーです。不安要素である除去耐性の無さも《石鍛冶の神秘家》や《スレイベンの守護者、サリア》といったマスト除去の多いこのデッキでは生き残りやすく、クリーチャースペルなので《スレイベンの守護者、サリア》の影響を受けないのも強みです。
2色であることを活かし、サイドにはアンチ特殊地形である《基本に帰れ》と《異端聖戦士、サリア》が採用されており、Sultaiなどの特殊地形を多用するデッキとのマッチアップに備えます。
《戦の惨害》はMiraclesやLandsなどに刺さり、Death and Taxesと同様に《スレイベンの守護者、サリア》の影響下ではリカバーも難しくなります。
サイド後はプレインズウォーカーと《造物の学者、ヴェンセール》が追加され、従来の青白に近い構成に変形します。
総括
近年まれに見る効率的な除去スペルである《致命的な一押し》はスタンダードやモダンだけでなくレガシーにも影響を与えました。《トレストの使者、レオヴォルド》と《致命的な一押し》の加入で大幅に強化されたSultaiの隆盛により、Miracles一強状態の環境も過去のものとなりつつあります。
《突然の衰微》と《致命的な一押し》といった単体除去が幅を利かせる環境なため、単体除去に耐性がある《真の名の宿敵》が多くのデッキで見られ、Delver系も優先的に採用しているリストが多数派です。このようにフェアデッキが多い環境では単体除去や《真の名の宿敵》に影響を受けないコンボが活躍する傾向にあり、各デッキのサイドには《外科的摘出》や《真髄の針》といったReanimatorやSneak and Showといったコンボデッキ対策が採られています。
個人的に、現在のレガシーは面白い環境です。4月に開催されるレガシーオープンであるSCGO Worcesterが楽しみです。
以上USA Legacy Express vol.123でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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