みなさんこんにちは。
今週末はアメリカのワシントン州シアトル・タコマでレガシーの【GP Seattle-Tacoma】が開催されます。【GP Lille】以来となる久しぶりのレガシーGPで、どのようなデッキが勝ち上がるのか非常に楽しみですね。
今回の記事では禁止改定後初の2日制のレガシーの大会である【SCGO St. Louis】と先週末にSCGO Dallasの併催イベントとして開催されていたSCG Premier IQ Dallasの結果を見ていきたいと思います。【GP Seattle-Tacoma】を観戦する際の参考になれば幸いです。
SCGO St. Louis トップ8
~Infect マスターのTom Rossが禁止改定後のレガシーオープンのチャンピオンに~
2015年10月25日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Infect
2位 ANT
3位 Temur Delver
4位 Reliquary Retreat
5位 Shardless Sultai
6位 WR Death and Taxes
7位 Miracles
8位 Shardless Sultai
トップ8のデッキリストは【こちら】
【2日目進出デッキの分布】によると、2日目進出デッキの中で最大勢力だったのはShardless Sultaiで、次点が最近好調のANT、安定のMiraclesと続いていました。
Shardless Sultaiは禁止改定の恩恵を受けて復権したデッキの一つで、Delver系やMiraclesなどフェアデッキに強いため現在はメタ的にも好位置です。
ANTは今大会でも準優勝と好成績を残しており、禁止改定後に最も成功を収めているデッキの一つです。コンボデッキでありながら手札破壊によって妨害に耐性があり、青いデッキに対しても先ほどのShardless Sultaiのようにカウンターの枚数が少なめのデッキに対しては互角以上の勝負になります。
優勝はInfectですが、これはメタと言うよりもプレイヤー性能によるところが大きかったと思われます。事実、Tom Rossのプレイオフは準々決勝ではShardless Sultai、準決勝のTemur Delver、決勝のANTといずれも決してInfectにとっては楽と言えるマッチではありませんでした。
SCGO St. Louis トップ8 デッキ解説
「Infect」「Reliquary Retreat」「Shardless Sultai」
1 《森》 4 《Tropical Island》 1 《ドライアドの東屋》 3 《霧深い雨林》 3 《新緑の地下墓地》 2 《吹きさらしの荒野》 1 《ペンデルヘイヴン》 4 《墨蛾の生息地》 1 《不毛の大地》 -土地(20)- 4 《貴族の教主》 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《荒廃の工作員》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 2 《ギタクシア派の調査》 2 《呪文貫き》 2 《Berserk》 2 《巨森の蔦》 1 《思案》 1 《海賊の魔除け》 1 《輪作》 1 《緑の太陽の頂点》 3 《目くらまし》 4 《激励》 3 《Force of Will》 1 《強大化》 1 《森の知恵》 -呪文(28)- |
2 《水没》 1 《ボジューカの沼》 1 《Karakas》 1 《不毛の大地》 1 《屍百足》 1 《呪文滑り》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《狼狽の嵐》 1 《水流破》 1 《外科的摘出》 1 《輪作》 1 《自然の要求》 1 《クローサの掌握》 1 《Force of Will》 -サイドボード(15)- |
旧環境でもInfectで勝利を積み重ねてきたSCG強豪プレイヤーのTom Ross。Miraclesに強く、苦手なGrixis系は減少傾向にあるため現在のメタでは有利なポジションにあります。
☆注目ポイント
メインから採られている《森の知恵》はドローの質の向上を約束すると同時に必要なら追加ドローもでき、カードアドバンテージが得られるため、各種妨害スペルに耐性が付きます。
メインに1枚だけ採用されている 《緑の太陽の頂点》は《ドライアドの東屋》サーチすることでマナ加速として使用したりもできますが、このデッキのこのカードの主な使い道は感染クリーチャー(《ぎらつかせのエルフ》、サイド後は《ヴィリジアンの堕落者》も)を探してくることです。Xの値を調整することで、相手の戦場に《相殺》がある状態でもクロックを展開しやすくなります。
また、《ドライアドの東屋》は《ヴェールのリリアナ》の「-2」能力から感染クリーチャーを守ります。《海賊の魔除け》は地味ながら増加傾向にあるShardless Sultaiなどが採用している《悪意の大梟》を「島渡り」付与によって気にせずにアタックに行けるようになるほか、パンプスペルや小型クリーチャーの除去スペルとしても使えます。
1 《森》 3 《Tropical Island》 2 《Tundra》 1 《Savannah》 1 《Taiga》 1 《ドライアドの東屋》 4 《霧深い雨林》 4 《吹きさらしの荒野》 1 《Karakas》 1 《セジーリのステップ》 2 《不毛の大地》 1 《ケッシグの狼の地》 -土地(22)- 3 《貴族の教主》 1 《極楽鳥》 1 《クァーサルの群れ魔道士》 4 《聖遺の騎士》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《鷺群れのシガルダ》 -クリーチャー(12)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 4 《緑の太陽の頂点》 3 《目くらまし》 4 《Force of Will》 1 《森の知恵》 4 《珊瑚兜への撤退》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(26)- |
2 《被覆》 1 《ボジューカの沼》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《クァーサルの群れ魔道士》 1 《漁る軟泥》 1 《イゼットの静電術師》 1 《流刑への道》 1 《輪作》 1 《議会の採決》 1 《クローサの掌握》 1 《水没》 1 《トーモッドの墓所》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
今大会で入賞を収めたデッキの中でも最も印象的なデッキでした。『戦乱のゼンディカー』の新カードである《珊瑚兜への撤退》と《聖遺の騎士》のコンボを搭載したデッキで、今大会の【デッキテク】も紹介されています。
Tempo Bantがベースで《緑の太陽の頂点》でマナクリーチャーや《聖遺の騎士》などを状況に応じてサーチしてこれるため動きが安定しています。
☆注目ポイント
マナクリーチャー経由で2ターン目に《聖遺の騎士》を出すことができれば、最速3ターン目に《珊瑚兜への撤退》をキャストしてコンボを決めることができます。
《聖遺の騎士》を起動しフェッチランドをサーチして「上陸」を誘発させ、《聖遺の騎士》をアンタップしフェッチを起動するという動作をループして、最終的に赤マナソースの《Taiga》と《ケッシグの狼の地》をサーチしてトランプルを付与してゲームを終わらせます。
《珊瑚兜への撤退》は単体でもそれなりに使えるカードで、青いカードなので最悪でも《Force of Will》のコストになります。《突然の衰微》などの除去もフェッチを残しておいて相手の除去スペルにレスポンスしてフェッチを起動し土地を置いて「上陸」を誘発させ、《聖遺の騎士》をアンタップして《セジーリのステップ》をサーチすることでプロテクションを付けることも可能です。
コンボに頼らずとも十分な強さを持つデッキで、《珊瑚兜への撤退》と《聖遺の騎士》のコンボによるプレッシャーを相手に与えつつTempo Bantとしても振る舞うことも可能で、モダンのSplinter Twinを彷彿とさせます。
スイーパースペル対策にサイドには《被覆》や追加の《ガドック・ティーグ》が採られています。InfectやElves対策になる《イゼットの静電術師》もおもしろいアプローチです。
《珊瑚兜への撤退》と《聖遺の騎士》のコンボはモダンの新たな戦略として話題になっていましたが、《緑の太陽の頂点》という強力なサーチスペルが存在するレガシーで先に結果を残す形となりました。
1 《沼》 1 《森》 3 《Underground Sea》 2 《Tropical Island》 1 《Bayou》 4 《汚染された三角州》 4 《新緑の地下墓地》 2 《霧深い雨林》 2 《忍び寄るタール坑》 3 《不毛の大地》 -土地(23)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 2 《悪意の大梟》 1 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《断片無き工作員》 -クリーチャー(15)- |
3 《祖先の幻視》 4 《渦まく知識》 2 《思考囲い》 4 《突然の衰微》 2 《Hymn to Tourach》 1 《毒の濁流》 1 《大渦の脈動》 3 《Force of Will》 2 《ヴェールのリリアナ》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(23)- |
2 《翻弄する魔道士》 1 《Scrubland》 1 《不毛の大地》 1 《概念泥棒》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《見栄え損ない》 1 《思考囲い》 1 《壌土からの生命》 1 《ゴルガリの魔除け》 1 《Force of Will》 1 《墓掘りの檻》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《真髄の針》 1 《無のロッド》 -サイドボード(15)- |
今大会でも安定した成績を残していたShardless Sultai。禁止改定の影響で復権を果たしたアーキタイプの一つで、Miraclesや他のフェアデッキに強いデッキです。
増加傾向にあるInfectに対してもハンデスや《悪意の大梟》のおかげで五分以上の勝負ができそうです。
☆注目ポイント
《ヴリンの神童、ジェイス》は死にやすいのが難点ですが、PWに「変身」した後《Hymn to Tourach》や《渦まく知識》を再利用することで大きなアドバンテージを提供するため、採用する価値は十分あると言えます。
ハンデスを多く採用していますが、「続唱」との相性の関係で《Force of Will》以外のカウンターを採用するのが難しく、デッキ自体も遅い方になるためコンボに対してはあまり相性がいいとは言えません。そのためコンボ対策になりクロックにもなる《翻弄する魔道士》がサイドに採られており、そのため白をタッチしています。
基本的に単体除去が中心で、クリーチャーを並べてくるデッキに対しては《ヴェールのリリアナ》を初めとして各種PWの強さを活かしきれないため、このデッキと同様に復権の兆しを見せているElvesやDeath and Taxes対策にメインからスイーパーの《毒の濁流》、サイドにも《ゴルガリの魔除け》が採られています。
SCG Premier IQ Dallas トップ8
~MiraclesマスターのJoe Lossetが新型のリストで優勝~
2015年11月1日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Miracles
2位 Aluren
3位 UG Cloudpost
4位 Miracles
5位 Lands
6位 Sneak and Show
7位 Sneak and Show
8位 Punishing Loam
トップ8のデッキリストは【こちら】
今大会の前の週に開催された【SCGO St. Louis】ではあまり満足のいく結果を残せていなかったSneak and Showや、ローグデッキのAluren、UG Cloudpostなどが入賞する中、Miraclesが優勝も含めてトップ4に2名という活躍っぷりでした。
SCG Premier IQ Dallas トップ8 デッキ解説
「Miracles」「UG Cloudpost」
5 《島》 1 《平地》 2 《Tundra》 1 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《乾燥台地》 2 《Karakas》 2 《魂の洞窟》 -土地(22)- 3 《瞬唱の魔道士》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《僧院の導師》 2 《造物の学者、ヴェンセール》 -クリーチャー(9)- |
4 《渦まく知識》 3 《剣を鍬に》 2 《思案》 1 《紅蓮破》 4 《Force of Will》 4 《終末》 4 《相殺》 4 《師範の占い独楽》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(29)- |
3 《狼狽の嵐》 2 《赤霊破》 2 《摩耗+損耗》 2 《大祖始の遺産》 1 《山》 1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《封じ込める僧侶》 1 《硫黄の精霊》 1 《イゼットの静電術師》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
Joe Lossettは今大会の前の週に開催されていた【SCGO St. Louis】でもほぼ同様のリストでトップ32に入賞を収めていたSCGの強豪で、Miraclesの名手です。
毎回個性的なリストを持ち込むことが多い彼は今回も期待を裏切らず、メインから2枚の《魂の洞窟》など興味深いアプローチを施したMiraclesを持ち込んでいます。
☆注目ポイント
彼のリストで定番だった3枚の《ヴェンディリオン三人衆》と2枚の《造物の学者、ヴェンセール》といった伝説のクリーチャーはそのままで、《瞬唱の魔道士》3枚に加えて《僧院の導師》までもメインから採用されているなどクリーチャーが多いのが特徴的です。
その代わり、定番の奇跡スペルでこのデッキの勝ち手段の一つである《天使への願い》は不採用となっています。コンボとの対戦では重く、ANTやSneak and Showといったデッキが多いメタではあまり強くないカードなので納得です。
このデッキに採用されているクリーチャーはHumanかWizardに属するので、《魂の洞窟》によって相手のカウンターを気にせずに安定してクロックを展開することを可能にします。ここまでクリーチャーが多いと《精神を刻む者、ジェイス》も守りやすく、《ヴェンディリオン三人衆》と《造物の学者、ヴェンセール》の伝説のクリーチャーコンビは復権してきているSneak and Showに対して有効な妨害手段となります。
しかし、《Karakas》と《魂の洞窟》が2枚ずつ採用されたマナ基盤の影響で特に青シンボルを2つ要求する《相殺》を速い段階で安定してキャストするのは困難を極め《不毛の大地》を使ったデッキに対しても少し弱くなっています。
また同様の理由で多くのリストで見られる《対抗呪文》も不採用です。サイドには《狼狽の嵐》が3枚と多めに採られており、最近ほぼ毎回上位入賞を収めているANTを意識したことがうかがえます。
1 《森》 1 《島》 4 《Tropical Island》 4 《霧深い雨林》 1 《Karakas》 1 《ボジューカの沼》 1 《魂の洞窟》 4 《雲上の座》 4 《微光地》 2 《ヴェズーヴァ》 1 《ウギンの目》 1 《Glacial Chasm》 -土地(25)- 2 《粗石の魔道士》 4 《原始のタイタン》 1 《無限に廻るもの、ウラモグ》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(8)- |
4 《渦まく知識》 3 《撤廃》 3 《輪作》 2 《狼狽の嵐》 2 《実物提示教育》 4 《探検の地図》 4 《師範の占い独楽》 3 《真髄の針》 2 《Candelabra of Tawnos》 -呪文(27)- |
3 《ファイレクシアの破棄者》 3 《クローサの掌握》 2 《エレファント・グラス》 2 《虚空の杯》 1 《狼狽の嵐》 1 《輪作》 1 《実物提示教育》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《墓掘りの檻》 -サイドボード(15)- |
《雲上の座》から得られる莫大なマナを利用して最終的にエルドラージクリーチャーをキャストして勝利を目指すデッキです。異なる軸から攻めるためMiraclesに強く、「神座」ランドに頼っているため《不毛の大地》でマナ基盤を破壊しつつクロックを展開してくるDelver系デッキを苦手としています。
☆注目ポイント
青緑なことを活かして《雲上の座》や《Candelabra of Tawnos》によるマナ加速以外にも《実物提示教育》から《原始のタイタン》やエルドラージを出すという選択肢もあります。
《粗石の魔道士》は《Candelabra of Tawnos》、《探検の地図》、《師範の占い独楽》をサーチしてこれるので安定性の向上に一役買っており、妨害要素の《真髄の針》やサイド後は《虚空の杯》、《仕組まれた爆薬》、《墓掘りの檻》といった特定の戦略に対して大きな効果が期待できる”ほぞ”もサーチします。
また、サーチ後にシャッフルを行うため《師範の占い独楽》や《渦まく知識》との相性も抜群です。《Glacial Chasm》は立ち上がりがやや遅いこのデッキの時間稼ぎに貢献します。土地なので《輪作》で探してくることも可能です。
総括
禁止改定後の環境で初めて開催されたレガシーの2日制のイベントである【SCGO St. Louis】では「探査」ドロースペルの《時を越えた探索》の禁止とコンボデッキの増加によって《Hymn to Tourach》などハンデスの価値が相対的に向上したため、Shardless Sultaiが一番人気となり、優勝こそ逃したもののトップ8に2人を送り込むという安定したパフォーマンスを見せました。
《突然の衰微》で《相殺》を確実に割ることができることで最有力候補の一つとされていたMiraclesに強いということもこのデッキを選択する理由の一つとなります。
また、《時を越えた探索》を失い大幅な弱体化を強いられたOmni-tellは一線を退いており、Sneak and Showが再び《実物提示教育》系のコンボデッキの代表格としての地位を取り戻しつつあります。
しかし、今回一番印象的だったのはやはり【SCGO St. Louis】でトップ4入賞を収めていた《珊瑚兜への撤退》と《聖遺の騎士》のコンボを使ったBant Midrangeでしょう。
Miracles、Shardless Sultai、ANT、Sneak and Show、各種Delver、Elves、Death and Taxes、Lands、InfectなどOmni-tellとGrixis系が幅を利かせていた禁止改定前の環境と比べて混沌としているためGP Seattle-Tacomaが楽しみですね。
以上USA Legacy Express vol.90でした。次回の記事では【GP Seattle-Tacoma】の結果を中心にカバーしていく予定です。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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