USA Legacy Express vol.101 -SCG Classics Baltimore-

Kenta Hiroki





 みなさんこんにちは。

 『イニストラードを覆う影』がリリースされ、その直後に【SCGO Baltimore】が開催されました。現在のところ『イニストラードを覆う影』はレガシーの環境には《侵襲手術》など一部を除いてそれほど影響はなさそうですが、まだリリースされて間もないのでしばらく様子見といったところでしょうか。

 個人的には《氷の中の存在》が気になります。


氷の中の存在


 さて、今回の記事では久々に開催されたSCGのレガシーの大会である【SCG Classics Baltimore】の入賞デッキを見ていきたいと思います。



SCG Classics Baltimore トップ8

2016年4月10日

Tyler Bailey
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。


1位 Shardless Sultai
2位 Miracles
3位 Punishing Abzan
4位 Death and Taxes
5位 ANT
6位 Nic Fit
7位 Punishing Abzan
8位 Cloud Post

トップ8のデッキリストは【こちら】



SCG Classics Baltimore デッキ紹介

「Shardless Sultai」「Punishing Abzan」「Nic Fit」「Cloud Post」「Death and Taxes」



Tyler Bailey「Shardless Sultai」
SCG Classics Baltimore(1位)

1 《森》
1 《沼》
4 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
1 《忍び寄るタール坑》
4 《不毛の大地》

-土地(22)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《タルモゴイフ》
3 《悪意の大梟》
4 《断片無き工作員》

-クリーチャー(15)-
4 《祖先の幻視》
4 《渦まく知識》
4 《突然の衰微》
3 《Hymn to Tourach》
1 《大渦の脈動》
4 《Force of Will》
2 《ヴェールのリリアナ》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(23)-
2 《見栄え損ない》
2 《思考囲い》
2 《ゴルガリの魔除け》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《四肢切断》
1 《外科的摘出》
1 《毒の濁流》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《無のロッド》
1 《森の知恵》

-サイドボード(15)-
hareruya



 現在のレガシーの最高のフェアデッキとされているShardless Sultai。豊富な除去、妨害、カードアドバンテージ獲得手段によってMiraclesなど青いフェアデッキに有利が付き、最近人気のEldraziに対しても相性がいいデッキとされています。


☆注目ポイント

 《虚空の杯》「X=1」を警戒してか、1マナのスペルはメインでは必要最低限まで絞られています。その《虚空の杯》を問答無用で破壊できる《突然の衰微》もメインからしっかり4枚採用されています。

 《悪意の大梟》は接死、飛行持ちなので相手クリーチャーとほぼ確実に相打ちを取ることができ、キャントリップが付いているためカードアドバンテージを得ることも可能です。Eldraziに強いクリーチャーとして最近注目を集めています。


突然の衰微悪意の大梟


 《不毛の大地》も4枚採用されているなど相当Eldraziを意識していたように思われます。サイドには《思考囲い》《見栄え損ない》など1マナのスペルも見られ相手によっては小回りが利くように構成されています。


不毛の大地思考囲い見栄え損ない





Kory Ponting「Punishing Abzan」
SCG Classics Baltimore(7位)

1 《森》
2 《Bayou》
1 《Badlands》
1 《Savannah》
1 《Scrubland》
1 《Taiga》
1 《ドライアドの東屋》
4 《新緑の地下墓地》
2 《吹きさらしの荒野》
3 《燃え柳の木立ち》
2 《やせた原野》
1 《Karakas》
1 《平穏な茂み》
4 《不毛の大地》
1 《Maze of Ith》

-土地(26)-

4 《闇の腹心》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《漁る軟泥》
4 《聖遺の騎士》

-クリーチャー(10)-
2 《緑の太陽の頂点》
4 《突然の衰微》
3 《罰する火》
2 《壌土からの生命》
2 《森の知恵》
4 《虚空の杯》
4 《モックス・ダイアモンド》
3 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(24)-
3 《虚空の力線》
2 《思考囲い》
1 《封じ込める僧侶》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《再利用の賢者》
1 《タルモゴイフ》
1 《スレイベンの守護者、サリア》
1 《大渦の脈動》
1 《毒の濁流》
1 《アーリン・コード》
1 《情け知らずのガラク》

-サイドボード(15)-
hareruya



 時折見かけるAbzanカラーのミッドレンジ。《壌土からの生命》《罰する火》エンジンを搭載しているため継続的にアドバンテージを広げていくことに長けたデッキで、コンボ以外の多くのデッキに強いデッキです。


☆注目ポイント

 この環境では定番の《モックス・ダイアモンド》によるマナ加速からの《虚空の杯》によるプリズン要素をメインから採用しているので、コンボに対しても従来のLoamと比べるとそこまで絶望的な相性にはならないようです。《虚空の杯》の高い使用率により苦手なコンボが減少傾向なのもこのタイプのデッキにとっては追い風です。《スレイベンの守護者、サリア》《エーテル宣誓会の法学者》といった豊富な妨害要素もコンボとの相性改善に貢献しています。


モックス・ダイアモンド虚空の杯スレイベンの守護者、サリア


 『イニストラードを覆う影』からの新カードである《アーリン・コード》が試験的に採用されています。クリーチャーがそれほど多く採用されていないこのデッキでの使い勝手は未知数ですが、トークンを生み出すことが可能で、第1面の「+1」を《聖遺の騎士》に対して使うのが主な運用方法となりそうです。警戒が付与されるため相手をアタックしつつ能力を起動できるようになります。


アーリン・コード聖遺の騎士





Sean Griffith「Nic Fit」
SCG Classics Baltimore(6位)

3 《森》
2 《平地》
2 《沼》
2 《Bayou》
1 《Savannah》
1 《Scrubland》
1 《Taiga》
3 《新緑の地下墓地》
3 《吹きさらしの荒野》
2 《ファイレクシアの塔》
1 《Karakas》

-土地(21)-

4 《老練の探険者》
2 《死儀礼のシャーマン》
1 《再利用の賢者》
1 《漁る軟泥》
1 《裏切り者グリッサ》
1 《永遠の証人》
4 《包囲サイ》
1 《ネル・トース族のメーレン》
1 《鷺群れのシガルダ》

-クリーチャー(16)-
4 《陰謀団式療法》
4 《緑の太陽の頂点》
3 《流刑への道》
4 《突然の衰微》
2 《苦い真理》
1 《大渦の脈動》
3 《破滅的な行為》
2 《師範の占い独楽》

-呪文(23)-
3 《殺戮遊戯》
3 《思考囲い》
2 《外科的摘出》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《毒の濁流》
1 《津波》
1 《情け知らずのガラク》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《真髄の針》

-サイドボード(15)-
hareruya



 《老練の探険者》《陰謀団式療法》をフルに活用した緑黒のランプコントロール。《罰する火》エンジンや《出産の殻》《風景の変容》など様々なハイブリットが見られますが、今大会入賞を収めたリストは《包囲サイ》《流刑への道》のために白と足したAbzanカラーでした。


老練の探険者


 豊富な除去とカードアドバンテージ獲得手段によりEldraziを含むクリーチャーデッキ全般に強いデッキです。また、《老練の探険者》を運用している関係上、基本地形を多く取っているため《血染めの月》のようなアンチ特殊地形カードにも耐性があります。


☆注目ポイント

 《師範の占い独楽》《破滅的な行為》に巻き込まれないライブラリー操作カードで、《森の知恵》よりも優先されて採用されています。白を足したことで《包囲サイ》《鷺群れのシガルダ》といった強力なクリーチャーや、除去の《流刑への道》にアクセスが可能になり、3色になったことで優秀なドロースペルの《苦い真理》も使えるようになりました。


師範の占い独楽包囲サイ苦い真理


 『統率者2015』の伝説のクリーチャーである《ネル・トース族のメーレン》毎ターン確実にアドバンテージを稼げるクリーチャー《ファイレクシアの塔》《陰謀団式療法》の「フラッシュバック」といった自軍のクリーチャーを墓地に送る手段を持ち合わせたこのデッキと相性の良いクリーチャーです。


ネル・トース族のメーレンファイレクシアの塔陰謀団式療法





Joseph Milia「Cloud Post」
SCG Classics Baltimore(8位)

1 《森》
1 《島》
3 《Tropical Island》
2 《樹木茂る山麓》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《魂の洞窟》
1 《ボジューカの沼》
1 《Karakas》
4 《雲上の座》
4 《微光地》
3 《ヴェズーヴァ》
1 《ウギンの目》
1 《Glacial Chasm》
1 《Maze of Ith》

-土地(26)-

1 《粗石の魔道士》
4 《原始のタイタン》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《大いなる歪み、コジレック》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(8)-
4 《渦まく知識》
3 《輪作》
2 《計略縛り》
4 《実物提示教育》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《Candelabra of Tawnos》
4 《師範の占い独楽》
3 《探検の地図》
3 《真髄の針》
1 《精霊龍、ウギン》

-呪文(26)-
4 《虚空の力線》
2 《歪める嘆き》
2 《クローサの掌握》
2 《Force of Will》
1 《白金の帝像》
1 《狼狽の嵐》
1 《白鳥の歌》
1 《一瞬の平和》
1 《漸増爆弾》

-サイドボード(15)-
hareruya



 《実物提示教育》型の青緑のPost。青を足したことにより《実物提示教育》やカウンターにアクセスできるようになり、コンボとの相性が若干改善されているようです。


☆注目ポイント

 マナを伸ばして各種エルドラージクリーチャーに繋げるのがメインのプランになります。《実物提示教育》《原始のタイタン》や各種エルドラージクリーチャーを唱える以外の方法でも出せるようにするので、土地が縛られた際のバックアップとして活躍します。赤緑と異なり除去が薄くなってしまいますが、《Glacial Chasm》《Maze of Ith》といった土地がその穴を埋めます。


実物提示教育原始のタイタンMaze of Ith


 サイドの 《白金の帝像》Burnや各種アグロなどライフを攻めてくるデッキに対して活躍するフィニッシャーで、除去耐性のなさがネックとなりますが、8/8というサイズは火力ではほぼ除去不可能です。気をつけるべき環境のポピュラーな除去は《剣を鍬に》ぐらいでしょう。

 《歪める嘆き》はすっかり定番の妨害スペルとして定着しています。受けの広さからメインからでも十分に活躍が期待できそうです。


白金の帝像歪める嘆き





Travis Cowley「Death and Taxes」
SCG Classics Baltimore(4位)

4 《平地》
2 《Plateau》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《吹きさらしの荒野》
2 《魂の洞窟》
2 《Karakas》
4 《リシャーダの港》
4 《不毛の大地》

-土地(23)-

4 《ルーンの母》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《石鍛冶の神秘家》
2 《ファイレクシアの破棄者》
3 《ちらつき鬼火》
3 《ヴリンの翼馬》
2 《帝国の徴募兵》
2 《月の大魔術師》
2 《ミラディンの十字軍》
1 《悪鬼の狩人》
1 《コロンドールのマンガラ》

-クリーチャー(27)-
4 《剣を鍬に》
4 《霊気の薬瓶》
1 《梅澤の十手》
1 《火と氷の剣》

-呪文(10)-
3 《唐突なる死》
2 《外科的摘出》
2 《歪める嘆き》
2 《安らかなる眠り》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《月の大魔術師》
1 《濠の大魔術師》
1 《狡猾な火花魔道士》
1 《真髄の針》
1 《殴打頭蓋》

-サイドボード(15)-
hareruya



 《帝国の徴募兵》《月の大魔術師》のために赤を足したDeath and Taxes。《月の大魔術師》の恩恵でLandsやLoam系のデッキとの相性が改善されると同時に流行りのEldraziにも強くなっています。


☆注目ポイント

 《帝国の徴募兵》《月の大魔術師》《悪鬼の狩人》、サイドの《エーテル宣誓会の法学者》《狡猾な火花魔道士》などを状況に応じてサーチしてします。《エーテル宣誓会の法学者》コンボ妨害手段兼クロックです。

 《悪鬼の狩人》ブロッカーとしても扱える追加の除去となり、特に除去の薄いEldraziなどとのマッチアップで強さを発揮します。


帝国の徴募兵月の大魔術師エーテル宣誓会の法学者


 サイドの《濠の大魔術師》はあまり見かけないクリーチャーですが、あの《Moat》をクリーチャーとしてリメイクされたものです。クリーチャーなので除去されやすいのが欠点ですが、除去の少ないEldraziに対してはそれほど気になりません。

 墓地対策も《安らかなる眠り》《外科的摘出》の2種類が採られています。Loam、Lands、Jundなど《罰する火》を使うデッキを徹底的に対策しています。特に《外科的摘出》はインスタントで低コストなのもあり、使いやすい墓地対策スペルです。


濠の大魔術師安らかなる眠り外科的摘出




総括

 久々に開催されたSCGのレガシーのイベントの【SCGO Baltimore】は非青のフェアデッキの活躍が印象的でした。《虚空の杯》の採用率が高く、1マナのドロースペルを主体としたコンボにとってはキツイ環境のようです。


虚空の杯


 対策が進んでいることもあり、Eldraziは今大会ではそれほど振るいませんでした。しかし、モダンで禁止改定によりモダンでEldraziを使っていたプレイヤーもレガシーに参入してくることも考えられるので衰退することはなさそうです。

 以上USA Legacy Express vol.101でした。

 それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!



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