USA Legacy Express vol.124 -予測不可能なレガシー環境-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。来週末にはグランプリ・静岡2017が開催されます。メインイベントはスタンダードですが、【レガシーの併催イベント】も開催される予定なので、これを機会に参加してみてはいかがでしょうか。

 さて、今回の連載ではアメリカで開催された【CFB Game Center 4K】の入賞デッキを見ていきたいと思います。

CFB Game Center 4K
~様々なデッキがトップ8に入賞~

2月25日
Top4 Jeskai Delver
Top4 Lands
Top4 Aluren
Top4 Shardless Sultai
Top8 Abzan
Top8 Goblins
Top8 Miracles
Top8 Esper Stoneblade

トップ8のデッキリストは【こちら】

 アメリカ大手のショップであるChannel Fireball主催の賞金総額4000ドルのレガシーイベントは、105名の参加者を出し上位4名(Jeskai Delver、Lands、Aluren、Shardless Sultai)が賞金をスプリットしました。定番のMiraclesやSultai以外にもAluren、Lands、StonebladeやGoblinsなど、異なるアーキタイプが勝ち残っていました。

CFB Game Center 4K デッキ紹介

「Jeskai Delver」「Goblins」「Abzan」



Michael Beck「Jeskai Delver」
CFB Game Center 4K(Top4)

4 《Tundra》
3 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
4 《不毛の大地》

-土地 (20)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《石鍛冶の神秘家》
1 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》

-クリーチャー (11)-
4 《稲妻》
4 《剣を鍬に》
4 《渦まく知識》
4 《思案》
3 《呪文貫き》
4 《目くらまし》
4 《意志の力》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》

-呪文 (29)-
4 《翻弄する魔道士》
2 《渋面の溶岩使い》
2 《赤霊破》
2 《安らかなる眠り》
1 《真の名の宿敵》
1 《弱者の報復》
1 《摩耗+損耗》
1 《墓掘りの檻》
1 《饗宴と飢餓の剣》

-サイドボード (15)-
hareruya



 2013年に開催されたグランプリ・ワシントンD.C.2013を制したアメリカのプロで、Hall of FamerであるOwen Turtenwaldが使用していたJeskai Delverとほぼ同一のデッキです。メタのシフトによる環境の変化はありますが、数年前に活躍していたデッキでも大会で結果を残せるのは、ローテーションや禁止改定による大きな変更の少ないレガシーならではです

☆注目ポイント

真の名の宿敵

 《致命的な一押し》の影響で単体除去が中心の環境となっている中、除去耐性の高い《真の名の宿敵》は信頼性の高いクロックとして多くの青いフェアデッキの主力クリーチャーです

石鍛冶の神秘家

 このデッキでは《石鍛冶の神秘家》と装備品のおかげで強化が可能であり、2種類の1マナ除去にアクセス可能なので、Delver系の中でもクリーチャーデッキに対して強い型です。

呪文貫き

 《ヴェールのリリアナ》のように《真の名の宿敵》に対する回答も《呪文貫き》などでカウンターしていきます。布告系の除去に対しては《若き紅蓮術士》も有効ですが、このデッキはGrixis Delverのように軽いプロアクティブなスペルをあまり採っていないので、わずか1枚の採用となっています。

翻弄する魔道士

他のDelver系と比べるとクリーチャー除去を多く積んでいるため無駄になりやすく、Miraclesも苦手とするため、コンボのキーカードやMiraclesのスイーパーである《終末》を禁止にする《翻弄する魔道士》がサイドに4枚積まれています。クロックにもなり青いカードなので《意志の力》のコストにもなるので、コンボに対しては特に有効なクリーチャーです


Brett Parise「Goblins」
CFB Game Center 4K(Top4)

3 《山》
2 《Plateau》
4 《乾燥台地》
3 《沸騰する小湖》
4 《魂の洞窟》
1 《ペンデルヘイヴン》
4 《不毛の大地》
2 《リシャーダの港》

-土地 (23)-

4 《ゴブリンの従僕》
2 《ゴブリンの群衆追い》
2 《モグの戦争司令官》
2 《巣穴の煽動者》
1 《棘鞭使い》
4 《ゴブリンの女看守》
3 《宝石の手の焼却者》
2 《ゴブリンの酋長》
1 《ゴブリンの名手》
4 《ゴブリンの首謀者》
1 《タクタクの潰し屋》
1 《Goblin Settler》
1 《包囲攻撃の司令官》
1 《鏡割りのキキジキ》

-クリーチャー (29)-
2 《タール火》
2 《紅蓮操作》
4 《霊気の薬瓶》

-呪文 (8)-
3 《月の大魔術師》
2 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《安らかなる眠り》
2 《精神壊しの罠》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《タクタクの潰し屋》
1 《唐突なる死》
1 《紅蓮操作》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》

-サイドボード (15)-
hareruya



 最近のGoblinsはプリズン要素も含めたGoblin Stompyが主流ですが、今大会では久しぶりに伝統的なGoblinsが上位入賞を果たしました。苦手なコンボデッキ対策に《エーテル宣誓会の法学者》《スレイベンの守護者、サリア》の2体のヘイトベアー、墓地対策の《安らかなる眠り》のために白を足していて、ストーム系のコンボやReanimatorを特に意識しています。



☆注目ポイント

 最近はあまり見なくなりましたが、《霊気の薬瓶》《魂の洞窟》によりカウンターに耐性があり、《ゴブリンの女看守》のサーチ能力と《ゴブリンの首謀者》の提供するアドバンテージ、《宝石の手の焼却者》《タール火》といったゴブリンカードとしてもカウントされる除去などにより、環境のフェアデッキの多くと互角以上に渡り合えます

ゴブリンの女看守ゴブリンの首謀者

 《ゴブリンの女看守》《ゴブリンの首謀者》をうまく使い回すことで、《終末》も対策できます。

スレイベンの守護者、サリア安らかなる眠り精神壊しの罠

 コンボを苦手とするため、サイドは《エーテル宣誓会の法学者》《スレイベンの守護者、サリア》《安らかなる眠り》に加えて《精神壊しの罠》などの各種コンボデッキ対策が多数採用されています。

月の大魔術師

 LandsやEldraziといった特殊地形に依存したデッキとのマッチアップでは、《月の大魔術師》がサイドインされます。《血染めの月》と異なりクリーチャーであるため除去されやすくなりますが、《霊気の薬瓶》を利用すればカウンターされることなくインスタントタイミングに展開することも可能であり、Sultaiなどにも有効です。



Kevin Ligutom「Abzan」
CFB Game Center 4K(Top8)

2 《森》
1 《平地》
2 《Savannah》
1 《Bayou》
1 《Scrubland》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《新緑の地下墓地》
1 《地平線の梢》
1 《ドライアドの東屋》
1 《カラカス》
4 《不毛の大地》
1 《暗黒の深部》
1 《イス卿の迷路》
1 《演劇の舞台》

-土地 (25)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《ルーンの母》
1 《極楽鳥》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
1 《漁る軟泥》
1 《スクリブのレインジャー》
4 《聖遺の騎士》

-クリーチャー (25)-
4 《剣を鍬に》
1 《殴打頭蓋》
1 《火と氷の剣》
4 《緑の太陽の頂点》
1 《梅澤の十手》

-呪文 (11)-
3 《思考囲い》
3 《突然の衰微》
2 《ファイレクシアの破棄者》
2 《聖域の僧院長》
2 《毒の濁流》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
1 《漁る軟泥》

-サイドボード (15)-
hareruya



 時折上位で見かけるMaverick。Abzanカラーのグッドスタッフで、Death and Taxesのように《スレイベンの守護者、サリア》などのヘイトベアーを多数採用していますが、Death and Taxesとの違いは《聖遺の騎士》などのサイズで勝る緑のクリーチャーにアクセス可能なところで、サーチスペルの《緑の太陽の頂点》の恩恵で対応力があります。ヘイトベアーを多数搭載しているのでDeath and Taxesと同様にコンボに対して強く、《ルーンの母》のプロテクションにより単体除去が中心の多くのフェアデッキとも互角以上に渡り合えます



☆注目ポイント

ルーンの母火と氷の剣毒の濁流

 《ルーンの母》は単体除去が中心のSultai系にとっては厄介です。《真の名の宿敵》に対する回答に乏しいため、メインは主に《火と氷の剣》によるダメージレースを挑み、サイド後は全体除去である《毒の濁流》で対策していきます。

ガドック・ティーグ

 《ガドック・ティーグ》はコンボデッキのキーカードや、Miraclesの《終末》をシャットアウトするヘイトベアーです。《緑の太陽の頂点》でサーチしてくることも可能で、召喚酔いが解けた《ルーンの母》が並んでいれば対策されにくく、このデッキを選択する理由の1つです

聖域の僧院長

 特定のコストのスペルをシャットアウトするクリーチャーであり、Death and Taxesでも見られる《聖域の僧院長》もサイドに採用されています。

暗黒の深部聖遺の騎士演劇の舞台

 《暗黒の深部》《演劇の舞台》コンボも搭載されており、《聖遺の騎士》によってサーチしてこれるので奇襲性があります。《剣を鍬に》なども《ルーンの母》で対策可能です。

ボーナストピック "MOで楽しむレガシー"

 住んでいる地域にもよりますが、最近はレガシーのリアルの大会が少なくなりました。筆者もレガシーをプレイする機会が減ってしまったため、MOレガシーを始めました。デッキはリアルでも愛用しているMiraclesです。

 空いた時間を利用してレガシーリーグに参加することで、何時でもレガシーを楽しむことができることがMOの魅力です。リアルに比べると、初期投資に掛かるコストも安上がりであり、カードの値段と需給がリアルと異なります

リシャーダの港宮殿の看守

 リアルと比べると《リシャーダの港》の値段と《宮殿の看守》の不在によってDeath and Taxesが少なく、リアルでもベストデッキの1つとされているMiraclesは、パーツの多くがEternal MastersやVintage Mastersから再録されており、再録禁止カードもMOならその制限を受けず、デッキの値段が他のTier1デッキよりも安上がりなのも手伝って、ダントツでトップメタに位置しています


Mzfroste「Miracles」
Competitive Legacy League(5-0)

1 《乾燥台地》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《島》
2 《平地》
4 《沸騰する小湖》
3 《Tundra》
2 《Volcanic Island》

-土地 (20)-

3 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー (3)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
4 《思案》
3 《予報》
1 《対抗呪文》
2 《天使への願い》
1 《議会の採決》
4 《意志の力》
4 《終末》
3 《相殺》
1 《仕組まれた爆薬》
4 《師範の占い独楽》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (37)-
4 《紅蓮破》
3 《狼狽の嵐》
2 《僧院の導師》
2 《外科的摘出》
1 《山》
1 《瞬唱の魔道士》
1 《摩耗+損耗》
1 《灰からの再興》

-サイドボード (15)-
hareruya



 Miraclesで勝ち続けているMzfrosteのリストは、大抵のリストでは4枚採用されている《相殺》が3枚に減量され、《思案》が4枚、《予報》がメインに3枚と、ドロースペルが多めに採られています。そのため、土地が20枚と切り詰められていますが、1マナのドロースペルによって土地を探すことも容易で、基本地形も多めなので土地に困ることは少なくなります。

予報

 《予報》は昨年頃から実験的に採用されていたドロースペルでしたが、《師範の占い独楽》《渦まく知識》とのシナジーがあり、《瞬唱の魔道士》を有効活用しやすくなり、最近流行りのSultai系やミラーマッチで重宝するカードアドバンテージ源となるため、現在では定番となっています。

相殺

 《相殺》はこのデッキにとって最も重要なカードの1枚で、ほぼ4枚固定だと思われていました。しかし近年はTrue Name SultaiやSultai Delverといった《突然の衰微》をメインから採用したデッキが多く、EldraziやDeath and Taxesのように《相殺》によるロックに耐性のあるデッキが増加傾向にあるので、特にMOのリストでは減少傾向にあるようです

紅蓮破

 同型やSultai系などの青いデッキが多数を占めるため、サイドには《紅蓮破》が4枚、《不毛の大地》を使うSultai系に対しても安定して赤マナを出せるように、追加の土地として《山》も採用されています。少な目の土地と、BR ReanimatorやANTといった速いコンボを意識しているため、サイドは軽いスペルが多目で《罠の橋》《基本に帰れ》といった置物は見られません。


GNORILGRANDE「Sultai Delver」
Competitive Legacy League(5-0)

4 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
1 《霧深い雨林》
3 《不毛の大地》

-土地 (19)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《秘密を掘り下げる者》
2 《タルモゴイフ》
2 《真の名の宿敵》
2 《トレストの使者、レオヴォルド》
1 《グルマグのアンコウ》

-クリーチャー (15)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
2 《致命的な一押し》
4 《突然の衰微》
4 《目くらまし》
3 《トーラックへの賛歌》
4 《意志の力》
1 《梅澤の十手》

-呪文 (26)-
3 《思考囲い》
2 《悪意の大梟》
2 《外科的摘出》
2 《真髄の針》
1 《侵襲手術》
1 《森の知恵》
1 《毒の濁流》
1 《夜の戦慄》
1 《梅澤の十手》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-サイドボード (15)-
hareruya



 《トレストの使者、レオヴォルド》《致命的な一押し》の加入は、Sultaiカラーを環境最高クラスに引き上げ、長い間トップメタに居座り続けていたMiraclesを脅かす存在となりました。

致命的な一押し秘密を掘り下げる者突然の衰微

 1マナという軽いコストでありながら、環境の多くのクリーチャーを除去できる《致命的な一押し》の影響でDelver系が増加傾向にあります。特に《相殺》によるロックを解除しつつ、環境の多くのクリーチャーや置物に触れる《突然の衰微》を使えるSultai Delverは、現在最もポピュラーなDelver系としてMOでも高い勝率を保っています



Andrea Mengucci
※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。


 プロツアーサンデー経験のある強豪プレイヤーで、ChannelfireballのサイトのライターでもあるAndrea Mengucciは、自身の記事でMOのプレイ動画をアップロードしていますが、同じリストを使用して【リーグ戦で5-0】という成績を残していました。

真の名の宿敵トレストの使者、レオヴォルド

 《致命的な一押し》を始めとする単体除去や、《終末》《真の名の宿敵》などが多く見られる現在の環境に対応し、《タルモゴイフ》の枚数を減らして《真の名の宿敵》《トレストの使者、レオヴォルド》といった3マナのクリーチャーが多めに採用されています。

梅澤の十手

 メイン、サイドに1枚ずつ採用された《梅澤の十手》は、《真の名の宿敵》やサイドに採用されている《悪意の大梟》と特に相性が良く、コンボよりもフェアデッキを意識した構成です

グルマグのアンコウ

 《グルマグのアンコウ》は多くの場合1マナ5/5で、《致命的な一押し》《突然の衰微》の対象にならないのが強みです。

真髄の針

 《紅蓮破》にアクセスできないSultai Delverは、《精神を刻む者、ジェイス》に対する回答に乏しいので、サイドの《真髄の針》は重要です。環境の様々なカードを止めることができ、1マナという軽さもあって、定番のサイドカードです。

侵襲手術

 《侵襲手術》《終末》《天使への願い》《実物提示教育》《再活性》《冥府の教示者》など、環境の多くのキースペルがソーサリーであるため、Miraclesだけでなくコンボデッキに対しても有効です。

精神を刻む者、ジェイス梅澤の十手悪意の大梟

 サイド後は《精神を刻む者、ジェイス》《梅澤の十手》《悪意の大梟》などが追加され、ミッドレンジに変形します。バランスの取れた構成で、Miraclesと同様に動きが安定しているデッキを好む方におすすめです。

総括

 CFB Game Center 4Kの上位はMiraclesやSultai、Landsといった定番のデッキから、StonebladeやGoblinsなどの懐かしいデッキもいくつか見られました。

真の名の宿敵

 単体除去を中心とするSultaiの増加によって《真の名の宿敵》が優先的に採用される傾向にあり、Delver系もミッドレンジ寄りにシフトしています。また、コンボが少ない環境ではフェアデッキ全般に強いLandsの活躍が目立ち、CFB Game Center 4Kでも結果を残しています。

 CFB Game Center 4Kの結果から、レガシーはある意味予測不可能なフォーマットであることが分かります。SCGOやグランプリによってMiraclesやSultai、Sneak and Showなどの、いわゆる"Tier1"は存在するものの、その他のデッキも使用人数が少ないだけであって、トップメタのデッキと互角以上に渡り合えるデッキが数多く存在するので、色々と試してみることをおすすめします。

 以上USA Legacy Express vol.124でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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