週刊デッキウォッチング vol.117 -ストーカー・スティル-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ


Usui Akihiro「ローグ」
第31回ビギワン!(5-1)

6 《沼》
3 《平地》
4 《進化する未開地》
3 《霊気拠点》
4 《乱脈な気孔》
4 《秘密の中庭》
2 《荒廃した湿原》
1 《ガイアー岬の療養所》

-土地 (27)-

4 《歩行バリスタ》
4 《永遠の災い魔》

-クリーチャー (8)-
4 《致命的な一押し》
4 《闇の掌握》
2 《鑽火の輝き》
4 《失われた遺産》
1 《苦渋の破棄》
3 《罪人への急襲》
4 《排斥》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《死の権威、リリアナ》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-呪文 (25)-
2 《鞭打つ触手》
2 《破滅の道》
2 《誘惑に負けて》
2 《死の重み》
1 《心臓露呈》
1 《精神背信》
1 《エムラクールの囁き》
1 《餌食》
1 《俗物の放棄》
1 《燻蒸》
1 《死の宿敵、ソリン》

-サイドボード (15)-
hareruya

失われた遺産永遠の災い魔罪人への急襲

 『アモンケット』で《没収》が出たとはいえ、《霊気池の驚異》相手にサイドインするなら、《失われた遺産》も捨てがたい。サイド後は《霊気池の驚異》側も《霊気池の驚異》への依存度を減らしてミッドレンジのように振る舞ってくるからだ。そんな《失われた遺産》だが、自分に対してもプレイできることをご存知だろうか?

 自分のデッキのカードを追放するなんて頭がどうかしていると思いきや、晴れる屋のプレビューカードだった《永遠の災い魔》を宣言すれば、追放領域に4枚が一挙に送り込まれ、疑似的にアドバンテージを得ることができるのだ。

 《罪人への急襲》《永遠の災い魔》と相性が良いし、《無情な死者》も追放できるのでゾンビに強く、今後注目の全体除去と言える。

 《失われた遺産》に加え、「昂揚」サポートで《排斥》も採用されており、《霊気池の驚異》対策は万全。白黒コントロールという構造でビートダウン耐性もあり、野心的なアイデアに満ちた構造ながら実用性も高そうなデッキだ。

「ローグ」でデッキを検索

■ モダン: 白緑ビートダウン


Madsutzon「白緑ビートダウン」
Modern Constructed League(5-0)

3 《森》
1 《平地》
2 《寺院の庭》
4 《新緑の地下墓地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《地平線の梢》
1 《剃刀境の茂み》

-土地 (19)-

4 《極楽鳥》
4 《貴族の教主》
2 《アヴァシンの巡礼者》
4 《献身のドルイド》
4 《薄暮見の徴募兵》
4 《療治の侍臣》
2 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《改革派の結集者》
4 《永遠の証人》
1 《不屈の神ロナス》

-クリーチャー (33)-
4 《召喚の調べ》
4 《集合した中隊》

-呪文 (8)-
4 《流刑への道》
4 《石のような静寂》
3 《ブレンタンの炉の世話人》
1 《苛性イモムシ》
1 《無私の霊魂》
1 《弁論の幻霊》
1 《静寂の守り手、リンヴァーラ》

-サイドボード (15)-
hareruya

療治の侍臣改革派の結集者集合した中隊

 『アモンケット』で加入した《療治の侍臣》《献身のドルイド》と合わせて無限マナコンボになることは発売当初より注目されていたが、それからしばらくは洗練されたリストの登場が待たれる状態が続いていた。そんな中で今回紹介するのは、メインボードに関してはかなり洗練されたと思われるデッキリストだ。

 無限マナから《薄暮見の徴募兵》の無限起動からの勝ち手段サーチにつなげるのは恒例だが、サーチ先を《不屈の神ロナス》にすることで、《集合した中隊》の当たりとしてもカウントできるようになっている。

 《改革派の結集者》《療治の侍臣》《献身のドルイド》のどちらも戦場に戻せるため、《永遠の証人》と合わせてバックアップに最適だ。

 大量のマナクリーチャーで《集合した中隊》《召喚の調べ》の恩恵を受けやすいこともあり、サイドボードもヘイトベアを駆使して様々なデッキに対応できる。グランプリ・神戸2017でも活躍が期待できそうだ。

「白緑ビートダウン」でデッキを検索

■ レガシー: 青黒コントロール


osmanozguney「青黒コントロール」
Legacy Challenge(4位)

3 《島》
1 《沼》
4 《Underground Sea》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
1 《忍び寄るタール坑》
4 《ミシュラの工廠》
3 《不毛の大地》

-土地 (24)-

3 《瞬唱の魔道士》
2 《墓忍び》

-クリーチャー (19)-
4 《渦まく知識》
4 《致命的な一押し》
3 《思考囲い》
2 《思案》
2 《無垢の血》
2 《対抗呪文》
2 《悪魔の布告》
1 《毒の濁流》
4 《意志の力》
4 《行き詰まり》
3 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (31)-
3 《外科的摘出》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《狼狽の嵐》
2 《侵襲手術》
2 《罠の橋》
1 《毒の濁流》
1 《漂流》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《世界のるつぼ》

-サイドボード (15)-
hareruya

墓忍び行き詰まりミシュラの工廠

 レガシー環境は《師範の占い独楽》の禁止によって奇跡がいなくなり、デルバーとコンボが幅を利かす環境となった。だが、コントロールが通用しない環境というわけではない。まだコントロールの最適な形が見出されていないだけなのだ。では、はたして現在のレガシー環境で最強のコントロールとは何なのか?そんな難題に挑戦したのが、今回紹介する「青黒ランドスティル」だ。

 《行き詰まり》はイーブン以上の場で貼れば、こちらはいずれ《ミシュラの工廠》《忍び寄るタール坑》を引くので、対戦相手に先に呪文を使用させて3ドローすることができる。《墓忍び》は古典的なフィニッシャーだが、《グルマグのアンコウ》と違って《死儀礼のシャーマン》にチャンプブロックされないのは心強い。

 4枚フル投入《致命的な一押し》に加えて投入された《無垢の血》《悪魔の布告》《真の名の宿敵》をケアする。たっぷり3枚搭載された《瞬唱の魔道士》を使えば、サイドインしたインスタント・ソーサリーの再利用も容易だ。

 コントロールがいないと思われている今、「ランドスティル」のマークはかなり甘いだろうと思われる。奇跡に代わって環境の頂点に立つのは、《行き詰まり》かもしれない。

「青黒コントロール」でデッキを検索

■ フロンティア: サヒーリコンボ


Sonoe Akira「サヒーリ・コンボ」
晴れる屋フロンティア杯(5-0)

1 《森》
1 《島》
1 《山》
1 《平地》
2 《燃えがらの林間地》
2 《大草原の川》
1 《梢の眺望》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
1 《尖塔断の運河》

-土地 (22)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《サテュロスの道探し》
4 《改革派の結集者》
4 《守護フェリダー》
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》

-クリーチャー (17)-
4 《蓄霊稲妻》
3 《燻蒸》
4 《時を越えた探索》
4 《ニッサの誓い》
4 《サヒーリ・ライ》
1 《先駆ける者、ナヒリ》
1 《生命の力、ニッサ》

-呪文 (21)-
2 《アラシンの僧侶》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《絹包み》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《苛性イモムシ》
1 《竜使いののけ者》
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《払拭》
1 《自然のままに》
1 《光輝の炎》
1 《生命の力、ニッサ》

-サイドボード (15)-
hareruya

サヒーリ・ライ改革派の結集者燻蒸

 サヒーリコンボを構築するにあたっては、「《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》でコピー/明滅しがいのあるパーマネントとして何を採用するか」が問題となる。フロンティア環境においてはこれまで《反射魔道士》《ならず者の精製屋》が採用されることが多かったが、このデッキに採用されている《改革派の結集者》は、(デッキ検索を見る限り既に何度か試されていたとはいえ) フロンティアの常識を大きく塗り替える可能性があるアイデアだ。

 《サヒーリ・ライ》《守護フェリダー》を直接戦場に戻すことはできないが、除去の的となりやすい《ヴリンの神童、ジェイス》を戻したり、重ね引いた《ニッサの誓い》を戻すことで、間接的にそれらを引き込むことにつながる。もちろんフェッチランドの再利用は強力だ。《守護フェリダー》で明滅すると自動的に「紛争」を達成するので下準備が必要ない点もお得感がある。

 緑白青赤の4色となるのでマナベースへの負担はかかるが、《サテュロスの道探し》を引けば事故は回避できるし、肥やした墓地を《ヴリンの神童、ジェイス》《時を越えた探索》《墓後家蜘蛛、イシュカナ》で活用するエコの精神が地球に優しい。また、《改革派の結集者》はサイドの《アラシンの僧侶》《苛性イモムシ》と相性が良い点も見逃せない。

 《ヴリンの神童、ジェイス》《時を越えた探索》を再利用し、探し出した2枚で躊躇なくサヒーリコンボを決めることができる夢の環境がここにある。スタンダードで禁止されているカードも使える「なんでもあり」のフォーマットであることもあり、8月の第9期フロンティア神挑戦者決定戦に備えて主要なデッキの動きはチェックしておいた方が良さそうだ。

「サヒーリコンボ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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