週刊デッキウォッチング vol.131 -御霊ホロウヴァイン-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: エルドラージランプ


CiriBarrayar「エルドラージランプ」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

5 《平地》
4 《森》
4 《要塞化した村》
1 《まばらな木立ち》
4 《ハシェプのオアシス》
3 《シェフェトの砂丘》
2 《見捨てられた神々の神殿》
1 《屍肉あさりの地》
1 《ウギンの聖域》

-土地 (25)-

4 《スレイベンの検査官》
3 《世界を壊すもの》
3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー (10)-
3 《砂の下から》
4 《燻蒸》
4 《約束の刻》
2 《罪人への急襲》
4 《副陽の接近》
4 《楽園の贈り物》
4 《奇妙な森》

-呪文 (25)-
4 《忘却蒔き》
4 《領事の権限》
3 《威厳あるカラカル》
3 《保護者、リンヴァーラ》
1 《世界を壊すもの》

-サイドボード (15)-
hareruya

約束の刻副陽の接近絶え間ない飢餓、ウラモグ

 『破滅の刻』環境のスタンダードは「ラムナプ・レッド」が存在している以上、ライフコントロールが強力なコンセプトとなりうる。そして最もライフコントロールに長けた色といえばやはりだ。となれば、もともとミッドレンジ~コントロール相手には抜群の相性差を誇るランプデッキの2色目を赤から白へと差し替えた白緑ランプの登場はある種必然と言えるかもしれない。

 メインボードは《燻蒸》《罪人への急襲》で時間を稼いだのちに《副陽の接近》連打でイージーに勝利することができるし、《約束の刻》からの高速《絶え間ない飢餓、ウラモグ》ルートも健在だ。

 《削剥》《蓄霊稲妻》のように汎用性の高い除去が採用できない分、《スレイベンの検査官》が序盤の時間稼ぎを一手に担う。

 サイドボードからは定番の《領事の権限》《威厳あるカラカル》のセットに加え、《保護者、リンヴァーラ》で徹底的に「ラムナプ・レッド」をメタっていく。今週末に迫った『破滅の刻』環境名人戦では、ランプが台風の目になるかもしれない。

「エルドラージランプ」でデッキを検索

■ モダン: ローグ


Sesquialtera「ローグ」
Modern Constructed League(5-0)

1 《沼》
3 《血の墓所》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《新緑の地下墓地》
4 《樹木茂る山麓》

-土地 (18)-

4 《死の影》
4 《傲慢な新生子》
4 《復讐蔦》
4 《虚ろな者》
4 《通りの悪霊》
3 《グルマグのアンコウ》
4 《グリセルブランド》

-クリーチャー (27)-
4 《思考囲い》
4 《信仰無き物あさり》
4 《安堵の再会》
3 《御霊の復讐》

-呪文 (15)-
3 《集団的蛮行》
3 《紅蓮地獄》
3 《古えの遺恨》
3 《虚無の呪文爆弾》
2 《大物狙い》
1 《渋面の溶岩使い》

-サイドボード (15)-
hareruya

虚ろな者死の影御霊の復讐

 『破滅の刻』で登場した、最高で0マナ4/4と無限大のマナレシオの可能性を持つ《虚ろな者》は、モダン環境で《復讐蔦》《通りの悪霊》《傲慢な新生子》と組み合わさって墓地利用コンボアグロ「ホロウヴァイン」を生み出した。だが、それぞれ4枚ずつしか入れられない《虚ろな者》《通りの悪霊》といったキーカード以外のスロットの間隙をどのように埋めるのかが難題で、爆発力と安定性のバランスをとるべく、プレイヤーたちが様々な形を模索しているのが現状だ。しかしそんな中で、非常に斬新なアイデアで結果を残した新型の「ホロウヴァイン」が登場した。

 こちらのデッキは1マナ域に《死の影》を採用しており、それ自体は「ホロウヴァイン」の中でも比較的ありふれたものだが、さらにそれに加えて《グリセルブランド》《御霊の復讐》が搭載されている点が画期的で、これによって手札を循環させた先としてのデッキのぶん回りパターンを増加させることに成功している。

 どのみちキープ基準が《信仰無き物あさり》《傲慢な新生子》《安堵の再会》なのであれば、たとえそこから早いターンの《復讐蔦》の呼び戻しや十分な《虚ろな者》の連打につながらなかったとしても、初手から墓地に《グリセルブランド》を送り込めればトップ《御霊の復讐》の受けも作れるのは確かに合理的である。

 「ホロウヴァイン」の最高速度のぶん回りはとにかく手が付けられないため、相手にするにしても難しいデッキであり、そしてそれはデッキのポテンシャルの証左でもある。最前線のアーキタイプの研究と進化の真っただ中に自ら飛び込むことで、他のプレイヤーに対して大きなアドバンテージを得ることができるだろう。

「ローグ」でデッキを検索

■ レガシー: デーモンストンピィ


Nakano Akinori「デーモンストンピィ」
休日レガシー17時の部(3-0)

12 《沼》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地 (22)-

4 《歩行バリスタ》
4 《アムムトの永遠衆》
4 《マルドゥの急襲指揮者》
4 《パリアノの大悪魔》
4 《冒涜の悪魔》

-クリーチャー (20)-
4 《悪魔の布告》
4 《トーラックへの賛歌》
4 《虚空の杯》
4 《金属モックス》
2 《最後の望み、リリアナ》

-呪文 (18)-
4 《大災厄》
4 《虚空の力線》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《毒の濁流》
2 《スカラベの責め苦》
1 《頭蓋の摘出》

-サイドボード (15)-
hareruya

アムムトの永遠衆冒涜の悪魔パリアノの大悪魔

 最近のレガシー環境では《血染めの月》を主軸にした「赤単ストンピィ」の活躍が目覚ましいが、《古えの墳墓》《裏切り者の都》《金属モックス》《虚空の杯》というパッケージは、別に赤単色でなくても搭載しうるものである。ならば、黒単色でストンピィを組んだって構わないはずだ。

 デーモンへの愛に満ち溢れたこちらの「デーモンストンピィ」は、4マナクリーチャーの中でも最高級のサイズを持つ《冒涜の悪魔》に加え、ドラフト中以外は読む必要のないテキストで溢れていて要するにデメリットのない4マナ5/4飛行である《パリアノの大悪魔》をフル搭載することで、デーモンへの信心を高めている。

 《マルドゥの急襲指揮者》は単体で放置できないフィニッシャーとなるし、《アムムトの永遠衆》の対処はいかにレガシーといえど容易ではない。

 《トーラックへの賛歌》も含めてデッキ全体が相手にとって不利な交換を強いるカードばかりで構成されているこのデッキは、好きなカードで勝つにはどうしたらいいかというその実例を示してくれており、趣味と実益を兼ねた素晴らしい構築と言える。

「デーモンストンピィ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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