週刊デッキウォッチング vol.125 -赤単砂漠エルドラージ-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: エルドラージ


_Antoniou_「エルドラージ」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

10 《山》
4 《霊気拠点》
4 《ラムナプの遺跡》
2 《熱烈の砂漠》
4 《ハンウィアーの要塞》
1 《海門の残骸》

-土地 (25)-

4 《ハンウィアー守備隊》
4 《作り変えるもの》
2 《エルドラージの寸借者》
4 《難題の予見者》
4 《栄光をもたらすもの》
3 《現実を砕くもの》

-クリーチャー (21)-
2 《マグマのしぶき》
3 《削剥》
2 《蓄霊稲妻》
2 《焼夷流》
4 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (14)-
2 《竜使いののけ者》
2 《エルドラージの寸借者》
2 《アクームの火の鳥》
2 《マグマのしぶき》
2 《焼けつく双陽》
1 《罪を誘うもの》
1 《現実を砕くもの》
1 《集団的抵抗》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-サイドボード (15)-
hareruya

ラムナプの遺跡ハンウィアーの要塞反逆の先導者、チャンドラ

 いよいよ『破滅の刻』が発売となり、スタンダード環境は『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』『イニストラードを覆う影』『異界月』『カラデシュ』『霊気紛争』『アモンケット』『破滅の刻』という8つのセットを包含して、フォーマット最大の広がりを見せることとなった。これだけ広いカードプールになると、全く予想もしていなかったようなシナジーが眠っている可能性もあり、デッキビルダーの腕が問われる環境と言えそうである。さてそんな中で、早速『破滅の刻』のカードをうまく使って成功を収めたデッキを紹介しよう。

 こちらの「赤単エルドラージ」は、『破滅の刻』で加わった《ラムナプの遺跡》を待望の「赤・無色ランド」として採用することで色つきスペルとエルドラージ・クリーチャーたちとのバランスをとることに成功している。《難題の予見者》《現実を砕くもの》を採用してしまうと、《戦場の鍛冶場》《シヴの浅瀬》といった便利な土地のないスタンダードではダブルシンボルのカードが採用しづらくなってしまうデメリットがあったが、《ラムナプの遺跡》が加入した今ならそんな悩みとはおさらばだ。

 さらに《ハンウィアー守備隊》《ハンウィアーの要塞》も、エルドラージデッキで採用する場合にはダブルシンボルがきつい中で「変身」など望むべくもなかったが、今後は《のたうつ居住区、ハンウィアー/Hanweir, the Writhing Township》になってのたうっている姿が頻繁に見られるようになるかもしれない。

 『ゲートウォッチの誓い』からエルドラージ、『異界月』から《ハンウィアー守備隊》、『カラデシュ』から《反逆の先導者、チャンドラ》、『アモンケット』から《栄光をもたらすもの》、そして『破滅の刻』から《ラムナプの遺跡》。この2年間のカードを余すところなく味わえる「赤単エルドラージ」は、ローテーション前最後となる『破滅の刻』環境のスタンダードを楽しむのにぴったりのデッキだ。

「エルドラージ」でデッキを検索

■ モダン: トロン


Morioka Ryouta「トロン」
平日モダン20時の部(3-0)

4 《森》
4 《ウルザの鉱山》
4 《ウルザの魔力炉》
4 《ウルザの塔》
1 《大瀑布》
1 《ウギンの聖域》
1 《幽霊街》

-土地 (19)-

3 《歩行バリスタ》
1 《ワームとぐろエンジン》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー (5)-
4 《古きものの活性》
4 《森の占術》
4 《ニッサの誓い》
4 《彩色の星》
4 《彩色の宝球》
4 《探検の地図》
2 《生命の力、ニッサ》
2 《炎呼び、チャンドラ》
4 《解放された者、カーン》
2 《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》
2 《精霊龍、ウギン》

-呪文 (36)-
3 《外科的摘出》
3 《自然の要求》
2 《スラーグ牙》
2 《原基の印章》
2 《真髄の針》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《耳障りな反応》
1 《全ては塵》

-サイドボード (15)-
hareruya

ニッサの誓い解放された者、カーンプレインズウォーカー、ニコル・ボーラス

 《思案》《定業》が禁止されているモダン環境では、軽量ドロー呪文の需要は極めて高い。しかし残された《血清の幻視》《手練》では不十分とみたプレイヤーたちは、新たな領域を開拓しはじめようとしている。それが、だ。

 サーチ先をクリーチャーや土地に限るなら、実は緑の軽量ドローはかなり使い勝手が良い。《古きものの活性》《ニッサの誓い》は特殊な土地をキーパーツに据えたデッキにおいては無類の強さを発揮する。さらに《ニッサの誓い》にはもう一つの能力がある。プレインズウォーカーのマナコストの色を無視できるようになるという能力が。

 3種のウルザ土地を揃えて大量に無色マナを出す「トロン」デッキは、その代償として《解放された者、カーン》のような色拘束の薄いプレインズウォーカーしか使用できない。しかし《ニッサの誓い》があったなら?そう、《生命の力、ニッサ》でも《炎呼び、チャンドラ》でも、はたまた《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》ですら、「トロン」からプレイすることが可能になるのだ。

 ということはつまり、『破滅の刻』以降は《王神、ニコル・ボーラス》も入れることが可能ということを意味している。そして《王神、ニコル・ボーラス》は7マナなので、最速3ターン目に着地する可能性があるのだ。はたして「ニコル・ボーラス・トロン」は『アモンケット』次元だけでなくモダン環境をも破滅の渦に叩き込むのか?今後の大会結果に注目だ。

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■ レガシー: 青黒赤コントロール


Clashed「青黒赤コントロール」
Legacy Constructed League(5-0)

2 《島》
2 《沼》
1 《山》
3 《Volcanic Island》
2 《Underground Sea》
1 《Badlands》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》

-土地 (20)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《悪意の大梟》
4 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー (12)-
4 《渦まく知識》
3 《思案》
2 《致命的な一押し》
2 《稲妻》
4 《燃え立つ願い》
2 《残響する真実》
1 《寄付》
1 《拭い捨て》
4 《意志の力》
4 《悪魔の契約》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (28)-
2 《外科的摘出》
1 《陰謀団式療法》
1 《思考囲い》
1 《再活性》
1 《虚空の罠》
1 《戦慄掘り》
1 《鞭打ち炎》
1 《トーラックへの賛歌》
1 《無害な申し出》
1 《苦い真理》
1 《毒の濁流》
1 《破滅》
1 《滅び》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya

瞬唱の魔道士悪魔の契約燃え立つ願い

 かつて存在した「エクステンデッド」というフォーマットには、「トリックス」というデッキが存在した。《Illusions of Grandeur》から20点ゲインというボーナスだけを受け取り、20点ルーズのデメリットは《寄付》で相手に押し付けるというコンセプトは、単純とはいえ強力無比なコンボだった。とはいえ、現在でも《Illusions of Grandeur》が使用可能なレガシー環境にまで移ってしまえば、あえて使用する理由はないだろう。結局《Illusions of Grandeur》《寄付》にさえ気をつけていればどこかで《Illusions of Grandeur》を維持できなくなるからだ。だが、ならば放置できない《Illusions of Grandeur》があったならどうだろうか?

 《悪魔の契約》は現代の多種多様なニーズを能力に織り込んだ敗北条件付きエンチャントであり、他の3つのモードを既に使用した状態で《寄付》すれば相手は敗北のモードを選ばざるをえず、即勝利となる。手札破壊やドローのモードが含まれているため、《寄付》だけカウンターしようと思っても先に手札破壊を打ち込まれてしまう。そうして隙だらけの対戦相手に《悪魔の契約》を押し付けてやればいい。

 《無害な申し出》《寄付》とほぼ同じ能力だが、《燃え立つ願い》経由でも《悪魔の契約》と合わせて《紅蓮破》《赤霊破》で打ち消されないメリットがある。

 契約が破綻しそうになったら《残響する真実》《拭い捨て》で再利用することもできる。レガシー環境で「トリックス」旋風が巻き起こる日は近い……のかもしれない。

「青黒赤コントロール」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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