週刊デッキウォッチング vol.132 -エウレカスニーク-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 白単


Kumazaki Taisuke「白単」
The Last Sun 2017予選 – イエローサブマリン マジッカーズハイパーアリーナ(トップ4)

16 《平地》
3 《シェフェトの砂丘》
3 《屍肉あさりの地》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (24)-

4 《単体騎手》
4 《栄光半ばの修練者》
4 《無私の霊魂》
4 《空中対応員》
4 《折れた刃、ギセラ》
2 《糾弾の天使》
3 《冠毛の陽馬》

-クリーチャー (25)-
4 《永遠の見守り》
2 《排斥》
3 《縫い師の移植》
2 《霊気圏の収集艇》

-呪文 (11)-
4 《聖なる猫》
4 《デジェルの決意》
4 《遥かなる旅路》
2 《糾弾の天使》
1 《屍肉あさりの地》

-サイドボード (15)-
hareruya

栄光半ばの修練者折れた刃、ギセラ縫い師の移植

 先日の環境名人戦のデッキテクでも取り上げられていたように、《単体騎手》《栄光半ばの修練者》《永遠の見守り》のラインは可能性に満ち溢れている。件のデッキでは《立身+出世》《栄光をもたらすもの》と組み合わせていたが、メインとなるラインがすべて白いカードで構成されていることを考えると、ひとまず白単で組むのが素直と言えるだろう。

 何せ5マナ域には、稼働すれば《栄光をもたらすもの》にも引けをとらない《冠毛の陽馬》が存在する。そしてライフゲインをコンセプトにすると採用カードの選択肢が限られると思いきや、3マナ域には《空中対応員》《霊気圏の収集艇》が、4マナ域には《折れた刃、ギセラ》がそれぞれ鎮座しているのだ。

 これらの絆魂クリーチャーをバックアップするのが《無私の霊魂》《永遠の見守り》。だがそれだけに留まらず、《縫い師の移植》までも採用している点が興味深い。《永遠の見守り》を引いていないときでも、《空中対応員》《糾弾の天使》に装備させれば強力なフィニッシャーが完成する。

 サイドボードの《デジェルの決意》は奇襲性も高い上にサイクリングで無駄にならないし、全体除去に対しては《遥かなる旅路》でうまく立ち回ることが可能となっている。「ラムナプ・レッド」が憎いという方は、このデッキでライフを徹底的に回復して懲らしめてやろう。

「白単」でデッキを検索

■ モダン: ウーズコンボ


Minobe Yoshihiro「ウーズコンボ」
平日モダン14時の部(3-0)

4 《沼》
3 《森》
2 《草むした墓》
1 《神無き祭殿》
1 《寺院の庭》
3 《新緑の地下墓地》
2 《吹きさらしの荒野》
3 《黄昏のぬかるみ》
3 《魂の洞窟》
1 《ケッシグの狼の地》

-土地 (23)-

3 《歩行バリスタ》
3 《極楽鳥》
4 《献身のドルイド》
3 《獣相のシャーマン》
2 《療治の侍臣》
2 《ロッテスのトロール》
4 《壊死のウーズ》
3 《つまみ食い貯め》
1 《妖精の女王、ウーナ》

-クリーチャー (25)-
4 《忌まわしい回収》
3 《突然の衰微》
2 《花崗岩の凝視》
3 《ジャラドの命令》

-呪文 (12)-
3 《失われた遺産》
2 《漁る軟泥》
2 《自然の要求》
2 《四肢切断》
2 《内にいる獣》
2 《墓所への乱入》
2 《地の封印》

-サイドボード (15)-
hareruya

壊死のウーズ獣相のシャーマンジャラドの命令

 先週のHareruyaCOMBATはモダン神・松田 幸雄が使用したバベルスケープエンドのド派手な登場が見どころだったが、対戦相手の細川 侑也もなかなか珍しいデッキを使っていた。《壊死のウーズ》を中心に据えたウーズコンボだ。

 自分の墓地にあるクリーチャー・カードの起動型能力を獲得できる《壊死のウーズ》は、《獣相のシャーマン》《ジャラドの命令》といった、手札からクリーチャーを墓地に送り込みつつコンボパーツとなるクリーチャーを探せるようなカードと相性が良い。墓地に《献身のドルイド》《つまみ食い貯め》が揃っている状態で《壊死のウーズ》を出せば即座に無限マナが生成できるので、そこから《歩行バリスタ》《妖精の女王、ウーナ》、あるいは《ケッシグの狼の地》につなげても良い。

 《献身のドルイド》《療治の侍臣》のコンボも採用されており、このデッキでは《献身のドルイド》が先出しで除去されても《壊死のウーズ》が2枚目以降の《献身のドルイド》として機能する点が噛み合っている。

 《壊死のウーズ》以外のパーツはすべて墓地に落ちて問題がないものばかりなので、《花崗岩の凝視》も気兼ねなく打つことができる。墓地コンボではあるが墓地を封じられてもクリーチャーでビートダウンできるので、意外と粘り強く戦えるのが魅力のデッキだ。

「ウーズコンボ」でデッキを検索

■ レガシー: 騙し討ち


Sugita Tomohiro「騙し討ち」
晴れる屋レガシー杯(4-1-1)

3 《森》
2 《山》
4 《Taiga》
4 《樹木茂る山麓》
2 《吹きさらしの荒野》
1 《血染めのぬかるみ》
3 《古えの墳墓》

-土地 (19)-

4 《オークの木こり》
4 《ほくちの壁》
4 《呪文砕きのビヒモス》
4 《アルゴスの庇護者、ティタニア》
2 《業火のタイタン》
2 《ワームとぐろエンジン》
2 《グリセルブランド》
1 《テラストドン》
2 《世界棘のワーム》
2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (27)-
3 《混沌のねじれ》
4 《Eureka》
3 《ニッサの誓い》
4 《騙し討ち》

-呪文 (14)-
3 《外科的摘出》
3 《突然のショック》
3 《花の絨毯》
3 《血染めの月》
2 《精神壊しの罠》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》

-サイドボード (15)-
hareruya

アルゴスの庇護者、ティタニアEureka騙し討ち

 レガシー環境には、緑色のスーパー《実物提示教育》こと《Eureka》が存在する。その両方を搭載してマストカウンターを水増ししたエウレカテルは過去にも紹介したが、《Eureka》《実物提示教育》の代替となるのであれば、むしろ「スニークショー」の「ショー」を《Eureka》に変換した「エウレカスニーク」が成立しても何ら不思議ではない。

 赤緑ベースで組まれたこのデッキは、《Eureka》《騙し討ち》による強襲と、《呪文砕きのビヒモス》をプレイしてからデカブツを素出しするプランの二段構えをコンセプトにしている。

 マナ加速として採用されている《オークの木こり》《アルゴスの庇護者、ティタニア》との相性も良いし、いざとなったら自分で《混沌のねじれ》を打ちこんでデカブツのめくれを期待するオプションもある。

 墓地を使わない上に《紅蓮破》も効かず、《カラカス》《狼狽の嵐》も刺さりづらいので、通り一遍のコンボ対策に引っかからないのが強みのこのデッキは、意外と現在のレガシー環境にマッチした合理的なコンボデッキと言えるのかもしれない。

「騙し討ち」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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