週刊デッキウォッチング vol.135 -猫ビートダウン-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 猫ビートダウン


Ishikawa Shou「猫ビートダウン」
晴れる屋スタンダード杯(3-1-1)

5 《平地》
2 《森》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《手付かずの領土》
4 《シェフェトの砂丘》
1 《屍肉あさりの地》

-土地 (23)-

4 《聖なる猫》
4 《典雅な襲撃者》
4 《金属ミミック》
2 《たかり猫猿》
4 《誇り高き君主》
3 《威厳あるカラカル》

-クリーチャー (21)-
4 《顕在的防御》
3 《黄昏+払暁》
1 《アジャニの誓い》
3 《選定された行進》
3 《霊気圏の収集艇》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-呪文 (15)-
4 《領事の権限》
3 《形成師の聖域》
2 《啓示の刻》
2 《イクサランの束縛》
2 《ギデオンの介入》
1 《造命師の贈り物》
1 《生命の力、ニッサ》

-サイドボード (15)-
hareruya

典雅な襲撃者誇り高き君主威厳あるカラカル

 かつてこれほどまでに卑怯なデッキがあっただろうか?何せこのデッキは、猫派のマジックプレイヤーにはほぼ自動的に (精神的に) 勝利できてしまう最強のデッキなのだ。

 《手付かずの領土》をセットすればクリーチャータイプの指定は当然「猫」だ。「えっ、ねこ?」と聞き返されようが構わない。《金属ミミック》「猫」指定はさしずめ「ドラえもん」といったところ。《アジャニの誓い》は、出しにくいし絶対デッキに入れる必要はないと思うのだが、そこにもマスコット的なこだわりを感じる。

 《選定された行進》で増えるねこ。《霊気圏の収集艇》《領事の旗艦、スカイソブリン》に「搭乗」して運転するねこ。想像するだけで愛らしいこのデッキのプレイマットは《Kitten》 で決まりだろう。

 今やSNSで最強のコンテンツと言えば猫であることは疑いようがない。強さはもちろん、「このデッキに負けるのなら悔いはないにゃん……」と対戦相手に思わせることができる、エンタメ的にも100点のデッキだ。

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■ スタンダード: 青緑ビートダウン


keyo98「青緑ビートダウン」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

4 《島》
3 《森》
4 《植物の聖域》
4 《ハシェプのオアシス》
4 《霊気拠点》

-土地 (19)-

4 《導路の召使い》
4 《静電気式打撃体》
4 《戦利品の魔道士》
3 《逆毛ハイドラ》

-クリーチャー (15)-
4 《霊気との調和》
4 《顕在的防御》
4 《潜水》
4 《気宇壮大》
3 《塁壁壊し》
4 《織木師の組細工》
1 《霊気圏の収集艇》
2 《自然に仕える者、ニッサ》

-呪文 (26)-
4 《牙長獣の仔》
4 《呪文貫き》
4 《造命師の動物記》
3 《霊気圏の収集艇》

-サイドボード (15)-
hareruya

静電気式打撃体戦利品の魔道士自然に仕える者、ニッサ

 「スタンダードで最も殺傷力が高いクリーチャーとは何か?」と問われれば、私は迷いなく「それは《静電気式打撃体》だ」と答えるだろう。百八式波動球を例に挙げるまでもなく、男の子はみんな巨大なパワーが大好きなのだ。

 このデッキは赤緑のエネルギーデッキの戦略をより《静電気式打撃体》に特化させたもので、《戦利品の魔道士》を含めて8枚の《静電気式打撃体》を、《潜水》《顕在的防御》の8枚の防御カードで守り、《織木師の組細工》で有り余るエネルギーと《気宇壮大》《塁壁壊し》の7枚のトランプル付き《巨大化》ものすごいサイズにして一点突破するという潔いコンセプトとなっている。

 《戦利品の魔道士》《霊気圏の収集艇》やサイドの《造命師の動物記》もサーチできる。《逆毛ハイドラ》は3の倍数のエネルギー供給源兼、十分な防御カードを構えられるようになるまでの頼もしいブロッカーだ。

 《自然に仕える者、ニッサ》で欲しいカードを「+2」能力で探しに行きつつ相手の対応を迫ることもできる。シンプルだが、他のデッキではなかなか得られない爽快感が味わえそうなデッキだ。

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■ レガシー: 赤単


Kodaira Shouta「赤単」
Hareruya Holiday Cup Legacy – 晴れる屋大阪店(5-0)

11 《山》
1 《鋭き砂岩》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
1 《水晶鉱脈》

-土地 (21)-


-クリーチャー (0)-
3 《煮えたぎる歌》
4 《焦熱の合流点》
2 《抹消》
4 《血染めの月》
4 《虚空の杯》
3 《金属モックス》
2 《防御の光網》
3 《罠の橋》
2 《三なる宝球》
4 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《紅蓮の達人チャンドラ》
1 《炬火のチャンドラ》
1 《チャンドラ・ナラー》
3 《炎呼び、チャンドラ》
1 《燃え立つチャンドラ》

-呪文 (39)-
4 《虚空の力線》
3 《硫黄の精霊》
3 《熱烈の神ハゾレト》
3 《削剥》
1 《ジョークルホープス》
1 《三なる宝球》

-サイドボード (15)-
hareruya

反逆の先導者、チャンドラ紅蓮の達人チャンドラ炎呼び、チャンドラ

 『イクサラン』が発売したことで変わったのはカードプールだけではない。「プレインズウォーカーの唯一性ルール」の廃止は、同じプレインズウォーカーが少ないスタンダードでは影響が少ない部分だが、歴代の強力なプレインズウォーカーがすべて使えるエターナルフォーマットにおいては、環境を変えうるインパクトを有している。

 《虚空の杯》《血染めの月》《三なる宝球》《罠の橋》といったカードで相手をロックする「赤単ストンピィ」においては、ターン経過ごとにアドバンテージを拡充できる性質を持つプレインズウォーカーが果たす役割は非常に大きい。だが赤単色のプレインズウォーカーで場に触れるものとなるとほぼ「チャンドラ」に限られているため、需要に比してそれほど多くの枚数をデッキに入れられないのが難点だった。

 だが今回のルール変更によりそのような制約はなくなり、同名でなければ「チャンドラ」の横に「チャンドラ」を並べることも可能となった。《反逆の先導者、チャンドラ》が「+1」能力でマナを出せるため、「《煮えたぎる歌》から一気にダブル『チャンドラ』」も夢ではない。

 複数の「チャンドラ」を並べてからの《抹消》は、まるで炎の魔法使いの切り札とでも言わんばかりに、立ちはだかる障壁すべてを灰燼に帰す。ルール変更によって、レガシーの「赤単ストンピィ」の常識は塗り替わったと言えるかもしれない。

「赤単」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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