週刊デッキウォッチング vol.141 -偉大なる雄羊様を崇拝せよ-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 即席


Okada Naoya「即席」
Grand Prix Shanghai 2017(トップ4)

5 《島》
3 《山》
2 《異臭の池》
4 《尖塔断の運河》
4 《産業の塔》
4 《霊気拠点》
2 《発明博覧会》
1 《廃墟の地》

-土地 (25)-

4 《霊気急襲者》
4 《つむじ風の巨匠》
1 《ピア・ナラー》
4 《異端の飛行機械職人》
1 《スカラベの神》

-クリーチャー (14)-
2 《マグマのしぶき》
3 《蓄霊稲妻》
3 《金属の叱責》
2 《解析調査》
4 《発明者のゴーグル》
4 《抽出機構》
1 《霊気圏の収集艇》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (21)-
4 《強迫》
3 《削剥》
2 《屑鉄場のたかり屋》
2 《没収の曲杖》
1 《橋上の戦い》
1 《金属の叱責》
1 《川の叱責》
1 《廃墟の地》

-サイドボード (15)-
hareruya

抽出機構つむじ風の巨匠異端の飛行機械職人

 先日のグランプリ・上海2017トップ8デッキでは、4人の「ラムナプ・レッド」と3人の「ティムール (4色)・エネルギー」に囲まれてものすごいデッキが入賞していた。The Finals2011チャンピオンにして、第7期モダン神挑戦者決定戦トップ8やThe Last Sun 2016トップ8の経験もあるモダンの《紅蓮術士の昇天》マスター、デッキビルダー岡田 尚也が製作したのは、なんと「工匠」デッキだったのだ (公式のデッキテクはこちら)。

 エネルギーによって霊気装置・トークンや飛行機械・トークンを生み出せる《霊気急襲者》《つむじ風の巨匠》と「即席」のカードを組み合わせるというアイデア自体はそこまで珍しいものではないが、4枚入った《発明者のゴーグル》に加え、《抽出機構》という一見2マナ損するだけのただの置き物が4枚とフル搭載されている点が画期的だ。

 『カラデシュ』発売当初は、生成するのは簡単だが使うのが難しいエネルギーの出口を求めて、多くのプレイヤーが《霊気池の驚異》に次いで《つむじ風の巨匠》に注目したものだった。その際、《抽出機構》を3枚置けば無限トークンというアイデアにもたどり着いていた人もいただろうが、まさかこの『イクサラン』環境のスタンダードになって実現するとは誰が考えただろうか。しかもコンボ抜きでも、「即席」の助けになりながらエネルギーの使用効率を上げつつ、《異端の飛行機械職人》などを使いまわせるいぶし銀のカードとなっているのだ。

 確かに、赤単とティムールというメタ状況をボードコントロールが突破できないというメタ前提からは、トークン戦略の優位性が導かれる。異端の構築でありながらグランプリトップ4という成果を残した岡田こそ、真のデッキビルダーと呼ぶべきだろう。

「即席」でデッキを検索

■ モダン: ローグ


Ishiwatari Shingo「ローグ」
平日サービスモダン11時の部(3-0)

20 《平地》
1 《霧覆いの平地》
3 《幽霊街》
1 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-土地 (25)-

4 《ニクス毛の雄羊》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (5)-
2 《牧歌的な教示者》
4 《抑制の場》
4 《偉大なるオーラ術》
4 《亡霊の牢獄》
4 《排斥》
4 《神聖の力線》
3 《崇拝》
2 《終わり無き地平線》
4 《安全の領域》

-呪文 (31)-
4 《石のような静寂》
3 《マイコシンスの格子》
2 《安らかなる眠り》
2 《ルーンの光輪》
2 《太陽と月の輪》
2 《金輪際》

-サイドボード (15)-
hareruya

偉大なるオーラ術ニクス毛の雄羊崇拝

 モダン環境には相手の行動を制限するエンチャントが多数存在する。それらを集めたエンチャントコントロールはマイナーとはいえ根強いファンがいるアーキタイプだが、今日紹介するのはかなり変わった形である。というのも、メインから《ニクス毛の雄羊》が4枚も搭載されているのだ。

 「ただバーンが憎いだけなのでは?」と早とちりすることなかれ。なんとこの《ニクス毛の雄羊》《偉大なるオーラ術》が設置してあると、クリーチャーであるだけでなくエンチャントということで被覆を持つので、単体除去で対象にできなくなるのである。さらに《神聖の力線》も置いてあれば、《ヴェールのリリアナ》の「-2」や「-6」能力も受け付けなくなる。最後に、この状態で《崇拝》を設置すれば、最強の防御の完成というわけである。

 《抑制の場》《亡霊の牢獄》で時間を稼げる上に《牧歌的な教示者》があるので、3枚コンボとはいえ実現性はかなり高い。

 《安全の領域》に引きこもったらあとは《ニクスの祭殿、ニクソス》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》をプレイするか、あるいは手札を溜めてからディスカードして相手のライブラリーアウトを待っても良い。コンボ的要素を兼ね備えた面白いプリズンデッキだ。

「ローグ」でデッキを検索

■ レガシー: 緑単ストンピィ


Hashimura Shintarou「緑単ストンピィ」
大阪店休日レガシー17時の部(3-0)

22 《森》

-土地 (22)-

4 《ラノワールのエルフ》
2 《Fyndhorn Elves》
2 《ティタニアの僧侶》
2 《ラノワールの使者ロフェロス》
4 《うろつく蛇豹》
2 《不屈の神ロナス》
2 《皮背のベイロス》
4 《殺戮の暴君》
4 《土を踏み付けるもの》
1 《進歩の災い》
1 《雲打ち》
1 《世界棘のワーム》

-クリーチャー (29)-
2 《巨大化》
2 《濃霧》
1 《ハリケーン》
2 《帰化》
2 《自然の秩序》

-呪文 (9)-
2 《葉の王エラダムリー》
2 《難問の鎮め屋》
2 《ガイアの伝令》
2 《薄暮の大霊》
2 《内にいる獣》
2 《踏み荒らし》
1 《津波》

-サイドボード (13)-
hareruya

ラノワールの使者ロフェロス殺戮の暴君土を踏み付けるもの

 レガシーで使用されている『イクサラン』のカードといえば《アズカンタの探索》《航路の作成》《魔術遠眼鏡》くらいだろうが、歴代の緑のクリーチャーの中でも突出した青耐性を持つ《殺戮の暴君》は、レガシーでも花開く可能性があるカードだ。

 このデッキでは1ターン目マナクリーチャー→2ターン目《ラノワールの使者ロフェロス》《ティタニアの僧侶》から3ターン目に6マナを生成すると、合わせて8枚と全力で搭載された6マナ域の《殺戮の暴君》《土を踏み付けるもの》の2択で《意志の力》を無視して相手を蹂躙する。

 《うろつく蛇豹》まで搭載した構成は、「打ち消したら勝つときか打ち消さないと本当に負けそうなカードだけ《意志の力》で打ち消すべき」というレガシーにおける基本テクニックに対する強烈なアンチテーゼと言える。

 コンボは無理と割り切って《森》22枚の緑単という思いきりの良い構造にした点も含め、実に柔軟な発想のデッキだ。

「緑単ストンピィ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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