週刊デッキウォッチング vol.138 -御霊の足跡リアニ-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 黒赤緑コントロール


Matsuzaki Eiji「黒赤緑コントロール」
晴れる屋成田店 – LMC協賛イクサラン1Box争奪スタンダード杯(3位)

3 《山》
2 《森》
2 《沼》
3 《泥濘の峡谷》
3 《隠れた茂み》
4 《竜髑髏の山頂》
4 《根縛りの岩山》
4 《花盛りの湿地》
1 《屍肉あさりの地》

-土地 (26)-

3 《歩行バリスタ》
3 《群棲する猛竜》
3 《栄光をもたらすもの》
2 《殺戮の暴君》
1 《害悪の機械巨人》

-クリーチャー (12)-
4 《致命的な一押し》
2 《削剥》
2 《稲妻の一撃》
1 《板歩きの刑》
3 《大災厄》
2 《バントゥ最後の算段》
1 《無許可の分解》
2 《ヴラスカの侮辱》
1 《アルゲールの断血》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《生命の力、ニッサ》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》

-呪文 (22)-
4 《失われた遺産》
3 《才気ある霊基体》
2 《貪る死肉あさり》
2 《チャンドラの敗北》
2 《ヤヘンニの巧技》
1 《人工物への興味》
1 《没収の曲杖》

-サイドボード (15)-
hareruya

群棲する猛竜大災厄栄光をもたらすもの

 スタンダードの除去スペルとして軽くて万能な確定除去が用意されていた時代は終わりを告げ、最近では何かしらの制限を持った除去呪文ばかりが収録されるようになった。こうなると出てきたクリーチャーと引き込んだ除去との噛み合いが必要になるため、コントロールにとっては厳しい時代となってきているが、しかし除去カラーである赤と黒を同時に使用することでその噛み合いの負担を軽減できる可能性があることは、八十岡 翔太のグリクシスコントロールが示してくれている。

 このデッキでは3色目を青ではなく緑にすることで、よりボードコントロールとしてのコンセプトを強めている。《群棲する猛竜》は赤い除去を打ち込まれても損をしないので一向に構わないという性質を持つし、《歩行バリスタ》とのシナジーで継続的なマナブーストにもなる。

 《大災厄》《逆毛ハイドラ》への解答となるほか、青黒コントロール相手にも《スカラベの神》が処理できるカードとして裏目がない。また、これだけ除去が入ったデッキなら《殺戮の暴君》のバックアップは容易だろう。

 プレインズウォーカーを並べてからの《バントゥ最後の算段》は必勝パターンだ。サイドボードもバランスが良く、プロツアー『イクサラン』でも姿を見ることになるかもしれない。

「黒赤緑コントロール」でデッキを検索

■ モダン: ローグ


Tomomizu Takuya「ローグ」
平日モダン20時の部(3-0)

2 《沼》
1 《島》
1 《平地》
2 《神聖なる泉》
2 《湿った墓》
1 《神無き祭殿》
4 《汚染された三角州》
3 《溢れかえる岸辺》
1 《湿地の干潟》
1 《水没した地下墓地》
2 《忍び寄るタール坑》
1 《天界の列柱》
1 《永岩城》
1 《ガイアー岬の療養所》

-土地 (23)-

1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
4 《森滅ぼしの最長老》
3 《灰燼の乗り手》

-クリーチャー (8)-
4 《血清の幻視》
3 《致命的な一押し》
2 《思考囲い》
1 《流刑への道》
4 《集団的蛮行》
4 《航路の作成》
4 《御霊の足跡》
1 《けちな贈り物》
3 《堀葬の儀式》
3 《ヴェールのリリアナ》

-呪文 (29)-
3 《聖トラフトの霊》
2 《石のような静寂》
2 《試練に臨むギデオン》
1 《外科的摘出》
1 《流刑への道》
1 《コジレックの審問》
1 《残骸の漂着》
1 《至高の評決》
1 《拘留の宝球》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《ギデオン・ジュラ》

-サイドボード (15)-
hareruya

航路の作成御霊の足跡森滅ぼしの最長老

 『イクサラン』で加入した使い勝手の良い青いドローソースである《航路の作成》は、《秘密を掘り下げる者》デッキのようなクロックパーミッションはもちろん、コンボデッキでも採用の余地がある。特に手札からカードを捨てることがコンボの要となるリアニメイトにおいては、これ以上ないベストカードと言えるかもしれない。

 モダン環境でリアニメイトというと《御霊の復讐》かと思いきや、このデッキは名前のよく似た《御霊の足跡》を活用している。これまで《変幻の大男》との組み合わせくらいでしか見かけなかったこのカードは、3マナと重い代わりに対象を伝説のクリーチャーに限らず、しかもターン終了時も追放ではなく「生け贄」なので、「戦場に出たとき」「死亡したとき」の能力を両方味わうことができるのが魅力のカードだ。

 なので《御霊の足跡》《灰燼の乗り手》を釣り上げればパーマネントを2個追放できるし、《森滅ぼしの最長老》ならクリーチャーでないパーマネントを2個破壊した上に5/5トランプルが戦場に残るという意味不明な事態となる。さらに《堀葬の儀式》で使いまわせば、相手の戦場は壊滅間違いなしだろう。

 サイドボードからの《聖トラフトの霊》《試練に臨むギデオン》による奇襲もなかなかに対応しがたい。『イクサラン』からの新戦力をうまく生かした面白いコンセプトのデッキだ。

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■ レガシー: 親和


Shinohara Gen「親和」
TLSQチャレンジ – 晴れる屋大阪店(2位)

3 《空僻地》
3 《大焼炉》
3 《教議会の座席》
3 《囁きの大霊堂》
4 《古えの墳墓》

-土地 (16)-

4 《羽ばたき飛行機械》
4 《メムナイト》
2 《悪意の大梟》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《刻まれた勇者》
3 《金属ガエル》

-クリーチャー (16)-
4 《感電破》
1 《Transmute Artifact》
1 《ギラプールの霊気格子》
1 《対立》
4 《オパールのモックス》
4 《バネ葉の太鼓》
3 《頭蓋囲い》
2 《飛行機械の鋳造所》
1 《弱者の剣》
1 《王神の玉座》
1 《冬の宝珠》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《ボーラスの工作員、テゼレット》
1 《求道者テゼレット》

-呪文 (28)-
2 《外科的摘出》
2 《摩耗+損耗》
2 《血染めの月》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《力ずく》
1 《鞭打ち炎》
1 《失われた遺産》
1 《ギラプールの霊気格子》
1 《崇拝》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《大祖始の遺産》

-サイドボード (15)-
hareruya

オパールのモックスボーラスの工作員、テゼレット飛行機械の鋳造所

 親和デッキというと《オパールのモックス》の助けを借りて脅威を高速で全展開するオールインビートのイメージが強いが、このデッキはプレインズウォーカーやソプターコンボを軸にした、「ミッドレンジ親和」とも呼ぶべき構造をとっている。

 《破滅的な行為》がほとんど見られなくなった今、アーティファクト土地のリスクは通常のデュアランとさほど変わらない。《頭蓋囲い》《刻まれた勇者》に装備させれば、《真の名の宿敵》すら問題にならない速度で対戦相手を倒すことが可能だ。

 《Transmute Artifact》はソプターコンボを揃えるほかにも、《エーテル宣誓会の法学者》《冬の宝珠》といった致命的なアーティファクトをサーチすることもできる。

 《古えの墳墓》の存在により、このデッキのマナカーブは見た目より一回り低い。クリーチャー、エンチャント、アーティファクト、プレインズウォーカーと多種多様な脅威を展開できるこのデッキは、フェアデッキに絶望をもたらすことだろう。

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■ ヴィンテージ: フィッシュ


Sperling「フィッシュ」
Competitive Vintage Constructed League(5-0)

1 《平地》
1 《沼》
2 《Scrubland》
1 《Bayou》
1 《Savannah》
1 《ドライアドの東屋》
4 《湿地の干潟》
2 《湿地の干潟》
1 《地平線の梢》
4 《不毛の大地》
1 《露天鉱床》

-土地 (19)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《迷宮の霊魂》
3 《闇の腹心》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《タルモゴイフ》
2 《ラムナプの採掘者》
1 《刻み角》

-クリーチャー (20)-

1 《Black Lotus》
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Pearl》

-パワー9 (4)-
4 《思考囲い》
2 《剣を鍬に》
2 《緑の太陽の頂点》
4 《突然の衰微》
1 《名誉回復》
1 《石のような静寂》
1 《虚空の杯》
1 《アメジストのとげ》
1 《無のロッド》

-呪文 (17)-
4 《安らかなる眠り》
2 《断片化》
2 《剣を鍬に》
2 《苦花》
2 《墓掘りの檻》
1 《再利用の賢者》
1 《石のような静寂》
1 《無のロッド》

-サイドボード (15)-
hareruya

迷宮の霊魂闇の腹心ラムナプの採掘者

 ヴィンテージにおける《死儀礼のシャーマン》《闇の腹心》《突然の衰微》デッキ、「墓荒らし」はスゥルタイカラーのデッキだが、相手の行動を束縛するプリズンデッキとしての性質を強めたいなら、《スレイベンの守護者、サリア》のある白を3色目に据えるのも十分魅力的な選択肢と言える。

 緑黒白というカラーリングならドロースペルは入らない。なら《迷宮の霊魂》は環境にはびこる青いデッキに対して一方的に制約を付け加えることができるカードとなる。

 《ガドック・ティーグ》は自らの《緑の太陽の頂点》をも封じてしまうが、それでも相手が《逆説的な結果》を打てなくなるならお釣りが来るだろう。

 《ラムナプの採掘者》《不毛の大地》《露天鉱床》との組み合わせで、一旦相手がプリズンにハマったなら二度と復帰できなくなるよう状況を確定させる力を持っている。停滞しがちなヴィンテージ環境を切り拓こうとする意思が感じられる良いデッキリストだ。

「フィッシュ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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