みなさんこんにちは。
いよいよ【The Last Sun 2016】が今週末に開催されます。各地の予選を勝ち抜いた強豪プレイヤーとプロが競い合う招待制のイベントであり、まさに2016年を締めくくるのにふさわしい大会です。
今回は、The Last Sun 2016本戦に向けて、ここ2週間の間に開催されたスタンダードのイベントの結果を見ていきたいと思います。
SCG Invitational Atlanta
~スタンダードのメタに大きな変化が Naya Aetherworksのワンツーフィニッシュ
2016年12月2-4日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Naya Aetherworks
2位 Naya Aetherworks
3位 Esper Aggro
4位 BG Aggro
5位 Temur Aetherworks
6位 GR Aetherworks
7位 BG Delirium
8位 GR Aetherworks
トップ8のデッキリストは【こちら】
Atlantaで開催された年内最後の【SCG Invitational】は、スタンダードとモダンの二つの構築フォーマットでスイスラウンドが行われ、プレイオフはスタンダードで行われました。
スタンダード環境はWU FlashとBGの2強状態がしばらく続きましたが、ここに来て大きな変化が訪れました。プロツアーでブレイクした《霊気池の驚異》コンボが復権、そして進化し、今大会の上位のメタを支配しました。
《霊気池の驚異》オールインなため、青いコントロールやWU Flashに苦戦を強いられ、プロツアー後はあまり見られませんでしたが、MOのリーグにて緑赤や緑黒ミッドレンジに《霊気池の驚異》コンボをハイブリットしたバージョンが使われはじめ、徐々に数を増やしていきました。
今大会では《霊気池の驚異》を搭載したミッドレンジデッキが多数勝ち残り、決勝戦も《霊気池の驚異》のミラーマッチで、環境のトップメタであるBG DeliriumやWU Flashは、上位に少数でした。
SCG Invitational Atlanta デッキ紹介
「Naya Aetherworks」「Temur Aetherworks」「Esper Aggro」
8 《森》 2 《山》 1 《平地》 2 《進化する未開地》 4 《霊気拠点》 3 《獲物道》 -土地 (20)- 4 《導路の召使い》 3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《優雅な鷺、シガルダ》 4 《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー (12)- |
4 《霊気との調和》 2 《ウルヴェンワルド横断》 4 《蓄霊稲妻》 4 《発生の器》 4 《織木師の組細工》 4 《霊気池の驚異》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 3 《先駆ける者、ナヒリ》 -呪文 (28)- |
3 《不屈の追跡者》 3 《ヴァラクートの涙》 3 《コジレックの帰還》 2 《自然のままに》 1 《優雅な鷺、シガルダ》 1 《世界を壊すもの》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 1 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード (15)- |
BG Deliriumの台頭により再び注目されることになった《霊気池の驚異》デッキ。プロツアーのリストからも変化が見られ、コンボ重視型から《墓後家蜘蛛、イシュカナ》などの「昂揚」要素や《反逆の先導者、チャンドラ》などのプレインズウォーカーを加えるなど、ミッドレンジとのハイブリット型にシフトすることでBG Deliriumとのマッチアップの有利を維持しつつ、苦手としていたWU Flashなどとの相性の改善も図っています。「昂揚」要素を加えることで《霊気池の驚異》に頼らずとも《約束された終末、エムラクール》を展開することが可能になりました。
☆注目ポイント
今大会で見事に優勝を収めたJacob Baughのリストはプレインズウォーカーが多めで、他のリストよりもさらにミッドレンジ寄りの構成です。
《反逆の先導者、チャンドラ》はすべての能力が強く、《先駆ける者、ナヒリ》も現環境で最も使われている除去の一つである《停滞の罠》の回答になり、タップ状態の《密輸人の回転翼機》などを追放し、奥義によって《約束された終末、エムラクール》も出せるなど、優秀なプレインズウォーカーです。同型やBGとのマッチアップでは、相手はプレインズウォーカーに触るのが難しく、Jeskai Controlなどに対してもカウンターされずに着地させることができれば、比較的楽に奥義まで辿り着けます。
サイドに採用されている《生命の力、ニッサ》は《墓後家蜘蛛、イシュカナ》など、他の強い5マナのカードが多いためにあまり見かけませんが、自身を守ることが可能でありながら《呪文捕らえ》されないプレインズウォーカーなので、WU Flashとのマッチアップで使えます。
《墓後家蜘蛛、イシュカナ》はWU Flashなどのアグロデッキ相手に時間を稼ぐことで、プレインズウォーカーを守り易くします。WU Flashとのマッチアップの相性改善にも貢献しています。
《優雅な鷺、シガルダ》はあまり見かけないクリーチャーですが、タフネス5なので《蓄霊稲妻》や《闇の掌握》で除去されづらく、あまったマナを活用しながらカードアドバンテージも得られます。あなたに呪禁を与える能力は、同型やBGなどとのマッチアップで相手の《約束された終末、エムラクール》対策にもなります。
《蓄霊稲妻》と《織木師の組細工》はアグロデッキ相手にエネルギーカウンターを蓄積しつつ時間を稼ぎ、「昂揚」の達成にも一役買います。
7 《森》 1 《島》 3 《山》 2 《進化する未開地》 4 《霊気拠点》 4 《獲物道》 -土地 (21)- 4 《導路の召使い》 3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《世界を壊すもの》 4 《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー (12)- |
4 《織木師の組細工》 4 《発生の器》 4 《蓄霊稲妻》 1 《コジレックの帰還》 4 《霊気池の驚異》 4 《反逆の先導者、チャンドラ》 4 《霊気との調和》 2 《ウルヴェンワルド横断》 -呪文 (27)- |
3 《不屈の追跡者》 2 《儀礼的拒否》 2 《自然のままに》 2 《否認》 2 《ヴァラクートの涙》 2 《コジレックの帰還》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 1 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード (15)- |
☆注目ポイント
Chris Andersenのリストは赤緑にカウンターのために青をタッチしたTemurバージョンで、《霊気拠点》や各種エネルギーカウンタースペルにより、色を足すことは容易です。
基本的にはJacob Baughと同様に赤緑《霊気池の驚異》コンボをベースに、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》や 《反逆の先導者、チャンドラ》といったカードを追加したミッドレンジ寄りの構成で、サイドには同型対策のカウンター呪文を採用しています。《儀礼的拒否》はわずか1マナで《霊気池の驚異》、《密輸人の回転翼機》、『戦乱のゼンディカー』ブロックの「欠色」スペル、『イニストラードを覆う影』ブロックの「現出」スペルも打ち消せるので、意外と受けが広く、色を足す価値のある妨害スペルです。
《否認》も《霊気池の驚異》、《密輸人の回転翼機》、各種プレインズウォーカーを打ち消すので、多くのデッキ相手にサイドインされます。
7 《平地》 6 《島》 3 《大草原の川》 4 《秘密の中庭》 4 《港町》 -土地 (24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《反射魔道士》 4 《呪文捕らえ》 1 《異端聖戦士、サリア》 -クリーチャー (21)- |
2 《石の宣告》 2 《革命的拒絶》 3 《停滞の罠》 4 《密輸人の回転翼機》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (15)- |
3 《無私の霊魂》 3 《呪文萎れ》 2 《大天使アヴァシン》 2 《断片化》 1 《異端聖戦士、サリア》 1 《石の宣告》 1 《否認》 1 《停滞の罠》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード (15)- |
WU Flashをベースによりアグロ寄りにしたEsper Aggro。RG《霊気池の驚異》やBGに対して速度で対抗するデッキで、「機体」アグロとカウンターを採用したWU Flashを合わせた構成です。
WU Flashのリアクティブな要素を減らし《模範的な造り手》や《屑鉄場のたかり屋》といった軽いアグレッシブなクリーチャーが多数採用され、《無私の霊魂》や《大天使アヴァシン》といったクリーチャーがサイドに落とされています。《霊気池の驚異》コンボが多く勝ち残っていた今大会のスタンダード部門で7-1という好成績を残していたことからも要注目です。
☆注目ポイント
Mardu Vehiclesなどのようなアグロ寄りの構成になったことにより、《石の宣告》も除去として使いやすくなりました。2マナ3/2、墓地から復活する能力もある《屑鉄場のたかり屋》は、《無私の霊魂》よりもアグロ向きです。復活能力はインスタントスピードなので、カウンターや《呪文捕らえ》も構えやすくなります。
《異端聖戦士、サリア》は最近はWU Flashでも採用され始めているクリーチャーで、相手の動きを著しくスローダウンさせ《墓後家蜘蛛、イシュカナ》やトークンもタップ状態で戦場に出ることになるので、相手のテンポを阻害します。
メインはアグレッシブな構成ですがサイド後は各種カウンターや《無私の霊魂》《大天使アヴァシン》が投入されWU Flashに近い戦略に変形します。
GP Denver
~《異端聖戦士、サリア》入りのMardu Vehiclesが優勝
2016年12月3-4日
※画像は【Magic:The Gathering】より引用させていただきました。 |
1位 Mardu Vehicles
2位 Temur Aetherworks
3位 WU Flash
4位 UR Zombie Emerge
5位 WU Flash
6位 RG Aetherworks
7位 WR Vehicles
8位 W/U Panharmonicon
トップ8のデッキリストは【こちら】
GP DenverでもSCG Invitational Atlantaと同様にAetherworksコンボが多く、惜しくも優勝は逃しましたが、準優勝を収めておりその影響かBGはトップ8に不在です。Invitationalと異なりWU Flashが3名と多く勝ち残っており、BGと異なった「Aetherworksコンボに強いこと」が今大会の勝因だと思われます。結果、WU Flashに速度で勝り、相性が良く、Aetherworksコンボに対してもカウンターで対処できるMardu Vehiclesが優勝を収めています。
Mardu Vehicles デッキ紹介
「Mardu Vechicles」「W/U Panarmonicon」
4 《平地》 2 《山》 4 《霊気拠点》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 4 《尖塔断の運河》 -土地 (22)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 3 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《経験豊富な操縦者》 3 《異端聖戦士、サリア》 -クリーチャー (22)- |
3 《蓄霊稲妻》 4 《無許可の分解》 4 《密輸人の回転翼機》 3 《耕作者の荷馬車》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (16)- |
4 《儀礼的拒否》 4 《流電砲撃》 2 《石の宣告》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《断片化》 -サイドボード (15)- |
Marduカラーの「機体」アグロ。相性が悪いAetherworks対策になる《儀礼的拒否》のために青をタッチした4色で、《霊気拠点》がそれを実現可能にします。4色にすることで各色から優秀なクリーチャー、除去、ユーティリティースペルが搭載されたグッドスタッフ的なアグロで、「スタンダード版のZoo」と呼べる構成です
☆注目ポイント
メインからフル搭載された《無許可の分解》は、インスタントスピードでありながら、対象に制限のない除去スペルで、クリーチャー化した《密輸人の回転翼機》を含めた様々なクリーチャーに対してクリーンなアンサーとなります。《屑鉄場のたかり屋》や《密輸人の回転翼機》といったアーティファクトを採用しているため、追加の3ダメージも発動しやすくなっています。
《蓄霊稲妻》は除去以外にも《霊気拠点》の色マナ捻出に必要なエネルギーカウンターを提供する重要なスペルとなります。
メインから《模範操縦士、デパラ》よりも優先して採用されている《異端聖戦士、サリア》は、《約束された終末、エムラクール》や《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を使うデッキに強く、相手はブロッカーを用意することが困難になるので、ダメージレースにおいても有利になります。
青を足す理由となっているサイドの4枚の《儀礼的拒否》は、今大会の上位を支配したAetherworks対策です。1マナなのでクロックを展開しながら構えることも容易で、苦手なデッキの対策をしっかりとして来ていたことが今回の勝因です。
9 《平地》 5 《島》 1 《荒地》 4 《大草原の川》 4 《進化する未開地》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 1 《巡礼者の目》 4 《雲先案内人》 2 《希望を溺れさせるもの》 3 《変位エルドラージ》 4 《光り物集めの鶴》 4 《反射魔道士》 1 《難題の予見者》 4 《スレイベンの検査官》 -クリーチャー (23)- |
4 《密輸人の回転翼機》 4 《パンハモニコン》 2 《停滞の罠》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -呪文 (12)- |
3 《断片化》 2 《金線の使い魔》 2 《保護者、リンヴァーラ》 2 《霊気溶融》 2 《呪文萎れ》 1 《難題の予見者》 1 《鑽火の輝き》 1 《否認》 1 《即時却下》 -サイドボード (15)- |
青白アグロといえばWU Flashでしたが、メタのシフト及びプレイヤーが環境に慣れてきたこともあり、WU Flashの勝率は母数に対して勝ち切れなくなってきていました。アメリカのプラチナプロ、Seth Manfieldは《パンハモニコン》と多数のETB能力持ちのクリーチャーを搭載した「青白アグロ」を選択し、惜しくも優勝は逃したもののプレイオフ進出を決めました。
☆注目ポイント
《パンハモニコン》とETB能力持ちのクリーチャーでアドバンテージを取っていき、《パンハモニコン》+ 《変位エルドラージ》+《希望を溺れさせるもの》による"無限トークンコンボ"が可能で、必要ならばトークンをサクリファイスすることで発生する無色マナを利用し《難題の予見者》を《変位エルドラージ》でループさせてライブラリーアウトさせる、といったことも可能です。
《雲先案内人》や《希望を溺れさせるもの》など単体でも十分に強いもの、また、アドバンテージを稼ぎ易く《光り物集めの鶴》や《スレイベンの検査官》といった軽いクリーチャー、そして《密輸人の回転翼機》があるので、コンボに頼らずとも十分に強いデッキです。《光り物集めの鶴》はキーカードである《パンハモニコン》に辿り着きやすくします。
気になる各デッキとのマッチアップですが、現環境のトップメタであるBG Deliriumはクロックが遅めで《停滞の罠》、《反射魔道士》《希望を溺れさせるもの》《変位エルドラージ》などフィニッシャーである《約束された終末、エムラクール》に対する回答が多数採用されているため、相性の良いマッチアップです。
WU Flashも構成上WU Flash側の《反射魔道士》に強く《希望を溺れさせるもの》や《雲先案内人》といった決定力のあるスペルが《呪文捕らえ》に引っかからず、《大天使アヴァシン》にさえ気を付ければメインはかなり有利にゲームが進みます。しかしWU Flash側も今後はAetherworks対策にもなり無色スペルの多いこのデッキにも効く《儀礼的拒否》をサイドに採用してくることが予想されるので、接戦になることが予想されます。
AetherworksはBG Deliriumとのマッチアップと同様にフィニッシャーである《約束された終末、エムラクール》に対する回答が多く採用されているため、このデッキが基本的に有利ですが、SCG Invitational Atlantaを制したNayaのように《パンハモニコン》に触れる《先駆ける者、ナヒリ》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》などを採用したバージョンも見られるので、サイドには《即時却下》やカウンターが見られます。
相性の悪いマッチアップはMarduやRWの「機体」、BR Aggroなど、このデッキよりも速くクロックを展開してくるデッキです。インスタントタイミングでクロックを減らすと同時に、パワーをマイナスすることによって「機体」対策にもなる《霊気溶融》、アドバンテージを取りつつ時間を稼ぐ《金線の使い魔》や《保護者、リンヴァーラ》、「機体」対策の《断片化》といったサイドボードで対抗していきます。
デッキパワーが高く、有名プレイヤーが使用して結果を残したこともあり、今後のスタンダード環境に影響を与えるデッキになりそうです。
GP Madrid
~トップ8の半数が Aetherworks
2016年12月3-4日
※画像は【Magic:The Gathering】より引用させていただきました。 |
1位 RG Aetherworks
2位 RB Aggro
3位 WU Flash
4位 RG Aetherworks
5位 BR Zombie
6位 WU Flash
7位 RG Aetherworks
8位 RG Aetherworks
トップ8のデッキリストは【こちら】
GP Madrid でもアメリカと同様にAetherworksが結果を残していました。プレイオフの半数がRG AetherworksでNayaやTemur、BGといった異なるバリエーションが見られたアメリカと異なり赤緑の2色のバージョンが中心のようです。RG Aetherworks以外にもBR ZombieやRB Aggroなど、WU FlashとBG Delirium2強と呼ばれていた環境もすっかり過去のものとなりました。
GP Madrid デッキ紹介
「BR Zombie」
10 《山》 5 《沼》 4 《凶兆の廃墟》 4 《燻る湿地》 -土地 (23)- 4 《ボーマットの急使》 4 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《ピア・ナラー》 4 《血の間の僧侶》 -クリーチャー (20)- |
3 《稲妻の斧》 4 《無許可の分解》 4 《癇しゃく》 4 《密輸人の回転翼機》 2 《街の鍵》 -呪文 (17)- |
3 《流電砲撃》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《ゴブリンの闇住まい》 2 《精神背信》 2 《失われた遺産》 2 《街の鍵》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
アーティファクトと「マッドネス」のシナジーを活用した赤黒のアグロデッキ。Marduなどと異なり、軽いクリーチャーを多数展開してビートダウンすることよりも、シナジーを活かしたアグロコントロール寄りな戦略を取ります。プレインズウォーカーや《ゴブリンの闇住まい》といったアドバンテージを提供する重めのクリーチャーが投入されるサイド後は、特にそれが顕著です。
☆注目ポイント
《血の間の僧侶》は除去耐性はないものの、「マッドネス」によるコストの軽減が可能です。手札を減らす手段である《街の鍵》とのシナジーもあり、能力も誘発させやすく、4マナで6点分のクロックになります。
《街の鍵》は《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と蜘蛛トークンなどのブロッカーを突破しつつ、「マッドネス」を誘発させることも可能で《発明者の見習い》も強化します。
《癇しゃく》は「マッドネス」なら《稲妻》、素でも現環境では貴重なインスタントスペルの火力として使えます。《稲妻の斧》と《無許可の分解》は《大天使アヴァシン》を除去できるインスタントスピードの除去で、特に《稲妻の斧》はクリーチャーを除去しつつ、《癇しゃく》や《血の間の僧侶》を「マッドネス」することも可能です。これを利用することで《血の間の僧侶》を疑似瞬速クリーチャーとして扱えることも注目です。
Aetherworksコンボがこのデッキにとって最も辛いマッチアップになります。そのため、サイドに《失われた遺産》や《精神背信》といったカードが見られます。
《失われた遺産》はAetherworksコンボとのマッチアップでは、ほとんどの場合《約束された終末、エムラクール》を指定することになります。最近は《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を初めとして、追加の勝ち手段を採用したリストが増加傾向にありますが、《約束された終末、エムラクール》を相手にするゲームよりも分があります。
サイド後は《ゲトの裏切り者、カリタス》《反逆の先導者、チャンドラ》《ゴブリンの闇住まい》といったカードが投入され、ミッドレンジ寄りにシフトします。
総括
プロツアー後のWU FlashとBG Deliriumの2強状態から、大きな動きが見られました。
MOでも使われていたことからもすでに流行の兆しは見せていたので時間の問題でしたが、Aetherworkコンボが《墓後家蜘蛛、イシュカナ》など緑のミッドレンジの要素を取り入れることで、苦手とされていたWU Flashとのマッチアップを克服しています。元々BG Deliriumとは相性が良かったこともあり、SCG Invitational Atlanta、GP Denver、GP Madrid の三つの大会すべてで結果を残しました。
WU Flashは一時期はトップ8の半数以上を占めるほどの強さを見せていましたが、環境に順応したAetherworkコンボやBG Deliriumに苦戦を強いられ、活躍に陰りが見られます。アメリカの各サイトのプロの間では、「過大評価をされていたデッキ」として挙げられていることもあり、WR機体やMardu機体のようなスピードもなく、メインでカードパワーが高いのは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《大天使アヴァシン》です。それらも他のデッキはしっかりと対策してきているので、今後はさらに厳しくなりそうです。BG DeliriumもWU Flashの衰退とAetherworksの台頭により厳しくなりそうです。
解明されていたと思われていたスタンダードでしたが、実はまだまだ発展途上という事が証明され今週末に開催されるThe Last Sun 2016からも目が離せません。
以上USA Standard Express vol. 87でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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