週刊デッキウォッチング vol.143 -マルドゥシャドウ-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ

活性機構抽出機構製造機構

 グランプリ・上海2017でトップ4に入賞したことでにわかにその実践性に注目が集まっている《つむじ風の巨匠》コンボだが、工匠アグロでの運用のほかにも、《抽出機構》がナチュラルに積めるデッキのサブプランとしての活用も考えられる。

 《活性機構》《抽出機構》《製造機構》の3種類を戦場に揃えると、どれかが誘発するたび、「1マナごとに霊気装置トークンが出てエネルギーが得られて+1/+1カウンターが乗せられる」という莫大なアドバンテージを獲得できるようになる。《歩行バリスタ》を育てれば盤面を捌けるし、《亢進する亀》《光り物集めの鶴》をひたすらでかくして殴りかかっても良い。

 さらに《金属ミミック》《活性機構》とのコンボで「(最初にどこかに+1/+1カウンターを乗せられれば) 1マナごとに2/2の霊気装置・トークンを生み出す」ことができる。《光り物集めの鶴》《発明品の唸り》に加えて《発明博覧会》もあるのでコンボを揃えるのは容易だろう。

 大量にトークンを生み出したあとは《ゴンティの霊気心臓》で追加ターンを得ての一撃大ダメージも狙える。ありきたりなエネルギーデッキに飽きたら、『カラデシュ』産の楽しそうな機械たちを並べてみるのも良いかもしれない。

「ローグ」でデッキを検索

■ モダン: 白黒赤ジャンク

死の影アダントの先兵熱烈の神ハゾレト

 グリクシス、ジャンド、スゥルタイ、エスパーなど、黒が絡む様々な3色でバリエーションが存在する《死の影》デッキだが、今日紹介するのはその中でもかなり珍しいマルドゥカラーの《死の影》だ。

 相方を白と赤にしたのにはそれぞれ理由がある。『イクサラン』からの新顔である《アダントの先兵》は4点単位で任意でライフを支払えるので、ライフに危険がない状況なら《死の影》のサイズを限界まで引き上げることが可能となる。

 さらに手札破壊と除去で手札の消耗が激しいところ、4ターン目には《熱烈の神ハゾレト》《死の影》とともに強烈な一撃をお見舞いする。サイドの《血染めの月》が使えるのも赤のメリットだ。

 マルドゥカラーはモダンではまだあまり研究が進んでいないだけに、来年2月のプロツアー『イクサランの相克』では台風の目となる可能性もある。今のうちから使っておいて損はないだろう。

「白黒赤ジャンク」でデッキを検索

■ レガシー: 青黒緑コントロール

死儀礼のシャーマン行き詰まり破滅的な行為

 「探査」持ちクリーチャーが登場したからか、最近ではあまり姿を見かけなかった「ディードスティル」が、構成を刷新して再び舞い戻ってきた。

 主な特徴は《無垢の血》《瞬唱の魔道士》といった受け身のカードを減らし、《死儀礼のシャーマン》から《破滅的な行為》と相性が良い《ヴェールのリリアナ》《精神を刻む者、ジェイス》につなげるという押し付ける動きを主体にして、ミッドレンジ的性質を強めた部分にある。

 さらにサイドからは相手が対コントロールに寄せたところを《タルモゴイフ》《ヴェンディリオン三人衆》によるビートプランで奇襲する。《不毛の大地》《壌土からの生命》のエンジンもあり、多角的な攻め手で対戦相手を翻弄できそうだ。

 フェアデッキの支配率が高まっている中では、ボードコントロールというポジションは確かに魅力的ではある。ストレージの中で埃を被っているであろう《行き詰まり》《破滅的な行為》を取り出すべきは今なのかもしれない。

「青黒緑コントロール」でデッキを検索

■ フロンティア: 白赤コントロール

試練に臨むギデオン焼けつく双陽反逆の先導者、チャンドラ

 フロンティア環境のコントロールといえば青黒を想起するかもしれないが、ドロー呪文やカウンターに頼らずとも、ボードコントロールに徹した方がクリーチャーデッキ相手の勝率の安定が見込める可能性がある。この「白赤コントロール」は、豊富な全体除去とプレインズウォーカーを擁する点で、フロンティア環境のソリューションとも言えそうな構成だ。

 《試練に臨むギデオン》は「+1」能力が起動すると、対戦相手は横並べで乗り越えるしかないが、そこに《焼けつく双陽》《残骸の漂着》《燻蒸》が突き刺さる。隙を見て並べるプレインズウォーカーを増やしていけば、あとは待っているだけで勝手に有利になる盤面の完成だ。

 ライフ回復要素と火力呪文、クリーチャー化や直接ダメージ能力があるプレインズウォーカーたちによってライフコントロールにも長けており、相手が消極的なら「プレインズウォーカーバーン」として積極的にライフを狙いにいく。さらにサイドボードからは《罪を誘うもの》も加わってアグロに振る舞うこともできる。

 赤単、ジェスカイ、アブザン、バントカンパニーなど、フロンティア環境のクリーチャーデッキは多様だが、この「白赤コントロール」なら、それらに対しても安心して立ち向かうことができそうだ。

「白赤コントロール」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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