週刊デッキウォッチング vol.144 -予言リビングエンド-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ モダン: ローグ

予言により死せる生トレイリア西部

 《予言により》とマナコストを持たない「待機」系スペルとのシナジーを利用したデッキは、これまでもvol.116(モダン) やvol.123vol.126(レガシー) などで紹介してきたが、ならば《死せる生》と組み合わせたデッキが出てきても不思議ではない。

 青単コントロールに《死せる生》デッキの要素をハイブリッドしたような構成のこのデッキは、「サイクリング」持ちのクリーチャーと《祖先の幻視》《差し戻し》といったカードでひとたび《予言により》にたどり着いて設置してしまえば、カウンター呪文を構えたまま《死せる生》を打つという夢の嵌めパターンを実現できる。

 通常の《死せる生》デッキと違って「続唱」による1枚コンボではないので《予言により》と「待機」呪文を揃える必要はあるものの、《死せる生》《祖先の幻視》は4枚入った《トレイリア西部》でサーチすることができるので、安定性もありそうだ。

 2マナカウンターによる受けと《死せる生》による攻めという新たな角度による攻防の組み合わせを実現したこのデッキは、モダン環境における《死せる生》のバリエーションとして注目を集めそうだ。

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■ モダン: ローグ

異界の進化宿命のネクロマンサー墨溜まりのリバイアサン

 「モダン環境の4Cレオヴォルド」を生み出したデッキビルダーによる怪作・ゴンティ忍者エヴォリューションは超宇宙的な発想に基づくカオスだったが、別のプレイヤーの手によっていつの間にかそこに10次元のスーパーストリングが加わって大変なことになってしまった。

 《異界の進化》のコンセプトは「マナコストの踏み倒し」にあるため、重いマナコストのクリーチャーがデッキに必要になり、それらはしばしば手札に来てしまうことがある。ということは、同じ「マナコストの踏み倒し」であるリアニメイト要素を混ぜ込むことで、手札に来てしまったデカブツの有効利用が図れるのだ。

 《宿命のネクロマンサー》は「え、それモダンでリーガルなの?」と確認されること間違いなしのマニアカードで(デッキ検索での採用実績はこのデッキのみだった)、クリーチャーでありながら《ゾンビ化》が打てる言わばモダン環境の《忠臣》である (ただし召喚酔いには影響される)。さらにスタンダードで大活躍中の《スカラベの神》も、出てくるのが《大修道士、エリシュ・ノーン》《墨溜まりのリバイアサン》ならサイズが多少縮んだところで問題はない。

 手札からは忍者が、墓地からはリバイアサンが、ライブラリーからは《異界の進化》で神やタイタンが、さらに《豪華の王、ゴンティ》で自分のデッキからも脅威が出てくるこのデッキを相手にすれば、あまりの多次元攻撃にたじたじになること間違いなしだ。

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■ レガシー: エクスプローラーロック

アカデミーの学長進化の飛躍圧倒的輝き

 《突然の衰微》があるとはいえ、レガシーもエンチャントに触ることが容易な環境というわけでは決してない。なら、何とかして一度貼ることができれば、「エンチャントで勝つ」ことも不可能ではない。

 このデッキは「エンチャントレス」ほどにエンチャントに特化した戦略はとらず、緑白黒カラーのミッドレンジ的構造に《アカデミーの学長》を混ぜ込んだ形となっている。「Nic Fit」でも見られる《老練の探険者》《陰謀団式療法》のシナジーは、重いエンチャントを素でプレイするためのマナを確保することはもちろん、《陰謀団式療法》が単品で《アカデミーの学長》の生け贄手段としても機能する。

 さらに異彩を放つのが《進化の飛躍》《老練の探険者》の追加の生け贄手段かつ、《未練ある魂》から《アカデミーの学長》を探しにいくこともできる。《圧倒的輝き》で盤面を捌くもよし、さらに《鳩散らし》《死の支配の呪い》のセットを揃えれば実質的にゲームセットだ。

 フェアデッキが幅を利かせる中で、「コンボ的要素を持った『Nic Fit』」というコンセプトはいかにも魅力的だ。レガシーのメタゲームを切り拓く鍵は、エンチャントにこそ隠されているのかもしれない。

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 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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