週刊デッキウォッチング vol.147 -緑単ベルチャー-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ モダン: ローグ

ゴブリンの放火砲絡み森の大長小道の再交差

 やったーベルチャーだ!!!vol.118以来の登場につい嬉しくなってしまった。やはり《ゴブリンの放火砲》はロマン……だがよく見ると土地が7枚も入っている。これは欠陥品では?と思うなかれ。そもそも《土地譲渡》の使えないモダンで《ゴブリンの放火砲》によって確実に致死ダメージを叩き出すには、地道にライブラリーから土地を取り除いてやる必要があるのだ。

 とにかく大量の土地サーチ呪文が入っているので、最初の緑マナさえ出せれば、あとは勝手にライブラリーの中の《森》の枚数を減らしながらマナが伸びる。《絡み森の大長》は初手に来れば最強のキープ基準となる上に、7マナに到達した後のフィニッシャーも兼ねている。《猿人の指導霊》《改革派の地図》のセットも1枚目の《森》をサーチでき、キープ基準を緩和している。

 たとえメインから《神聖の力線》を貼られたとしても、ライブラリーから《森》を枯らしきった上で《小道の再交差》を打つとライブラリーを好きな順番に並び替えることができるので、《原基の印章》をサーチして割ってしまえば良い。

 いざ「親和」「グリクシスシャドウ」「ジェスカイテンポ」といったTier 1級のデッキと戦ったときに勝つことは難しいかもしれないが、コンセプトに対する一貫性やデッキの美しさという点に関しては決してひけをとらないし、またこれほどモダン環境の可能性の広さを感じさせるデッキもないことだろうと思う。

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■ モダン: ローグ

アガディームの墓所絞り取る悪魔セドラクシスの死霊

 アガディームドレッジ!アガディームドレッジじゃないか!!とテンションが上がってしまうのには理由がある。私自身、スタンダード当時にこのデッキを調整していたことがあるからだ。ローテーション落ちしてからは記憶の彼方に忘れ去っていたわけだが、確かに「発掘」が使えるモダンならさらなる強化が見込める。

 このデッキがどういうデッキなのかというと、《面晶体のカニ》や「発掘」、《不可思の一瞥》、「サイクリング」などを駆使してひたすら墓地に黒いクリーチャーを溜め込んでいき、おもむろにセットしておいた《アガディームの墓所》から大量の(黒)マナを捻出すると、《絞り取る悪魔》《セドラクシスの死霊》《朽ちゆくネズミ》を一度に大量に「蘇生」させ、手札をぼろぼろにしたり大ダメージを与えたりして勝利する、というものになる。一撃で仕留められなかった場合も、《絞り取る悪魔》が自分のライブラリーを削って次の「蘇生」材を供給してくれる。

 《壌土からの生命》を「発掘」していればいつかはたどり着くとはいえ、《アガディームの墓所》がタップインなのは致命的と思うかもしれないが、《命運縫い》が落ちていれば即座に大量マナを生み出すことができる。セカンドプランとして《壌土からの生命》からの《蟲の収穫》連打もあり、大量マナからダメ押しにプレイすることもできる。

 サイドボードからは《朽ちゆくネズミ》で強化されるのがチャームポイントの《群れネズミ》による強襲で勝負を仕掛ける。《絞り取る悪魔》が使いたい人にオススメのデッキだ。デーモンはいいぞ。

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■ レガシー: 秘密を掘り下げる者

ステップのオオヤマネコ翻弄する魔道士妨害

 何ターン目になってもクロックとして通用するようなクリーチャーばかりを集めた「グリクシスデルバー」は、対戦相手を妨害することには長けているが、能動的にゲームを短くするためにはやはり《秘密を掘り下げる者》を引く必要がある。だが、そうした依存関係は本当に最適解なのだろうか?《秘密を掘り下げる者》並みの高クロックを誇るカードが8枚入っていれば、一貫した動きができるようになるのではないか。そんな考えを実現したのが、このジェスカイデルバーだ。

 テンポデッキとしての構成を一貫させたこのデッキは、《ステップのオオヤマネコ》を搭載することで1ターン目から確実な高クロックを形成する。《目くらまし》《不毛の大地》と相性が良く最低でも1マナ2/3のポテンシャルがある上にフェッチによる上振れもあるほか、2体並んでいるときにフェッチを起動すると爆発力が高まるという性質により、《渦まく知識》までフェッチ起動を温存することを正当化する。

 《ギタクシア派の調査》からの《翻弄する魔道士》は、《陰謀団式療法》の場合と違って《渦まく知識》で逃げることも《瞬唱の魔道士》で再利用することも許さない。とにかくその局面ごとに致命的なカードを確実に指定できるので、腕は出るものの使い方によっては一撃必殺の威力を持つ。時には自身の被害もいとわず《渦まく知識》を指定する必要も出てくるかもしれない。

 さらに追加の《意志の力》とも言える切り札、昔懐かしの《妨害》は意外性抜群。サイドの色鮮やかなオール1枚差しと合わせて対戦相手を「?」の嵐に放り込み、翻弄すること間違いなしだ。

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 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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