週刊デッキウォッチング vol.145 -オルゾフアプローチ-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ

魔学コンパスヴラスカの侮辱副陽の接近

 「副陽はまたのぼりくりかえす」でも語った《副陽の接近》デッキの弱点は、「メインは大半のデッキに有利だが、サイドから《否認》《強迫》であらゆるデッキに厳しい戦いを強いられること」と「にもかかわらず赤単にはメインから勝てないこと」だった。ならば逆に、自分もサイドから手札破壊を採用した上で、メインから赤単に勝てる《副陽の接近》デッキを組めれば、ソリューション間違いなしということになる。

 そんな難題は実現不可能では?と思いきや、このデッキは少なくとも見た目上は問題を解決している。まずメインから《領事の権限》を4枚採用した上で《残骸の漂着》《燻蒸》も4枚ずつ、加えて《ヴラスカの侮辱》まで採用し、赤単を親の敵と言わんばかりにメタっている。

 さらにサイド後は黒ベースの恩恵で《豪華の王、ゴンティ》《強迫》《大災厄》を活用しており、《否認》《強迫》のセットを乗り越える。

 こうしたデッキのありがちな弱点としては除去ばかり抱えて土地が詰まってしまいがちなことだが、《魔学コンパス》《宝物の地図》があればその心配もない。まさしく死角なし、理論上最強の「オルゾフアプローチ」は、今スタンダードで最も試してみたいデッキの一つだ。

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■ モダン: エターナルブルー

時間のねじれ押し潰す触手永遠の証人

 「追加ターンを得る」系のスペルや《疲労困憊》で中盤以降相手に行動させずに勝つエターナルブルーは、完璧なチェインを前提とするなら《吠えたける鉱山》などの追加ドローカードが必須となり、また追加ターン獲得カードも大量に必要になるというデッキ構成上の制約があった。しかし逆に、対戦相手にマナの使用を許すことで出されてしまうであろう脅威を確実にリセットできるのなら、追加ターンのチェインを目指さなくても良いことになり、デッキ構成の自由度に幅が出てくる。

 《押し潰す触手》は「怒濤」でプレイできれば全バウンスに8/8のフィニッシャーが付いてくる破格の性能を持っており、《永遠の証人》と組み合わせれば8マナで毎ターンプレイすることも可能となる。さらに《祖先の幻視》の「待機」が明けるのは5ターン目のため、「怒濤」も達成しやすいというシナジーもある。

 また、青緑のデッキのサイドボードから急角度でプレイされる《血染めの月》は対戦相手の意表を突くこと間違いなしだ。

 《吠えたける鉱山》系のカードは親和やバーンなど手札消費の激しい対戦相手にはリスクになりやすいこともあり、なるべく設置しなくて済むよう改造したこちらの形は、「エターナルブルー」が活躍を広げる嚆矢となるかもしれない。

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■ レガシー: 発掘

ゴルガリの墓トロールギタクシア派の調査水蓮の花びら

 圧倒的なメイン戦の勝率を誇り、墓地を使ったコンボデッキの代表格たる「ドレッジ」も、《死儀礼のシャーマン》が登場してメインから墓地をケアされるようになって以降は厳しい戦いを強いられるようになった。だが「ドレッジ」プレイヤーの熱意はそのくらいでは止められない。固定パーツが多い「ドレッジ」であっても、工夫次第では様々な要請を実現できるのだ。

 このデッキが画期的なのは、通常の「ドレッジ」が (少なくともメインでは) 採用していない「ゼロ」のアクションである《水蓮の花びら》《ギタクシア派の調査》を搭載することで、1ターン目から全力で墓地を大量に肥やしにいけるという点にある。《死儀礼のシャーマン》の召喚酔いが解ける前に《陰謀団式療法》の「フラッシュバック」まで済ませてしまえば、ゾンビ・トークンの生成を止めることはできない。

 また《ギタクシア派の調査》は、「フラッシュバック」はもちろん手札から打つ1発目の《陰謀団式療法》をヒットさせるのにも一役買っている。

 《打開》を採用しない代わりに《入念な研究》をフル搭載し、加えて《セファリッドの円形競技場》を4枚積んでいる点からもかなりのこだわりが感じられる。《死儀礼のシャーマン》に溢れた環境だからこそ、《死儀礼のシャーマン》を乗り越えた新生「ドレッジ」がむしろ狙い目と言えるだろう。

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■ フロンティア: ローグ

エルフの神秘家発明の天使王神の贈り物

 先日のワールド・マジック・カップでは、原根 健太の駆る「青白王神」が日本優勝に大きく貢献した。そしてスタンダードで活躍するコンボデッキなら、フロンティア環境でも活躍の可能性がある。

 《エルフの神秘家》はスタンダードでは許されていない1マナ圏のマナ加速であり、これにより2ターン目に《巧みな軍略》《サテュロスの道探し》《パズルの欠片》で墓地を肥やしつつの3ターン目《復元》掟破りの3ターン目《王神の贈り物》着地すらも可能になる。3ターン目に6/6の《発明の天使》が速攻で走ってきたら、いかにアタルカレッドといえど逆転は難しいだろう。

 さらに《女王スズメバチ》は1枚で4体のトークンを引き連れて登場するので、防御力という意味では《発明の天使》を超えるほどの《王神の贈り物》とのシナジーを有する。

 フロンティアでは代替となるスペルが多くあるために《削剥》の採用率がスタンダードほどは高くないのも追い風になる。フロンティア環境に新風をもたらす素晴らしいアイデアだ。

「ローグ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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