皆さんこんにちは。
今月はスタンダードのグランプリがBarcelona、New Jersey、静岡、Porto Alegreで開催される予定で、スタンダード的に充実しています。特に日本国内で開催される【グランプリ・静岡2017春】はメインイベント以外のサイドイベントも充実しており、お祭り的な要素もあるので会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
今回の連載では【SCG Baltimore Classic】と【グランプリ・ユトレヒト2017】の結果を見ていきたいと思います。
SCG Baltimore Classic
~Copy Catの復権~
2月19日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 4C Saheeli
2位 BG Aggro
3位 B/G Delirium
4位 Jund Aggro
5位 B/G Delirium
6位 BG Aggro
7位 UR Control
8位 GB Aggro
トップ8のデッキリストは【こちら】
SCGO Baltimoreと併催して開催されたSCG Baltimore Classic。トップメタである緑黒がプレイオフの半数を占める中、優勝を収めたのはプロツアーではまったくと言って良い程振るわなかった「Saheeliコンボ(Copy Cat)」でした。
緑黒の隆盛によりMardu Vehiclesが数を減らした結果Saheeliにもチャンスが巡って来ました。Jeskaiではなく4色のバージョンで勝ち手段が散らされているので、各種デッキが積んでいる対策カードに耐性があり、コンボに頼らずにミッドレンジとして振舞うことができるのが強みで、流行りの緑黒に強いのも勝因の一つです。
SCG Classic Baltimoreトップ8 デッキ紹介
「4C Saheeli」「BG Aggro」
5 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《平地》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 3 《尖塔断の運河》 2 《伐採地の滝》 -土地 (21)- 4 《導路の召使い》 4 《つむじ風の巨匠》 4 《ならず者の精製屋》 4 《守護フェリダー》 3 《老いたる深海鬼》 -クリーチャー (19)- |
4 《霊気との調和》 4 《蓄霊稲妻》 4 《ニッサの誓い》 1 《チャンドラの誓い》 2 《霊気池の驚異》 4 《サヒーリ・ライ》 1 《実地研究者、タミヨウ》 -呪文 (20)- |
3 《不屈の追跡者》 3 《コジレックの帰還》 2 《自然のままに》 2 《否認》 2 《バラルの巧技》 1 《チャンドラの誓い》 1 《不撓のアジャニ》 1 《実地研究者、タミヨウ》 -サイドボード (15)- |
4色バージョンのCopy Catは、Jeskaiバージョンと異なり《ならず者の精製屋》 や《つむじ風の巨匠》など、アドバンテージを取れるクリーチャーを多数採用しているため、ミッドレンジとしても振舞えるので妨害に耐性があります。緑を足すメリットとして必要な色マナ、コンボパーツを探せる《ニッサの誓い》にアクセスできることが挙げられます。
Mardu VehiclesやJeskai Copy Catとのマッチアップは決して楽ではないものの、緑黒に対しては有利が付きます。
☆注目ポイント
《霊気池の驚異》はカウンタースペルにアクセスできない緑黒に対して無類の強さで、《老いたる深海鬼》はコントロールとのマッチアップで活躍します。相手の土地をタップアウトさせることで返しのターンにコンボを決めやすくなり、クリーチャーデッキに対してもターンを凌いだり相手のブロッカーをタップアウトします。
《老いたる深海鬼》はETB能力持ちのクリーチャーが多数採用されているこのデッキでは、アドバンテージを大きく失うことなくEmergeすることが可能でビートダウンプランを支えます。
《導路の召使い》はクロックであると同時に、エネルギーを補充しマナ加速にもなるクリーチャーで緑を使う理由の一つです。
《霊気との調和》はエネルギーを提供しつつ、多色のマナベースによる色事故を緩和します。
メイン、サイドに採用されている《チャンドラの誓い》は、《巻きつき蛇》などタフネス3のクリーチャー対策で、人気の緑黒を意識していることが分かります。
《実地研究者、タミヨウ》はMardu相手には遅くなりますがコントロールや同型、緑黒とのマッチアップで使えるプレインズウォーカーで、緑黒が多い現在のメタなのでメインからの採用です。
サイドの《バラルの巧技》はこのデッキにとって厄介な《歩行バリスタ》を含めた相手の戦場をスイープしつつ、《霊気池の驚異》や《サヒーリ・ライ》、《実地研究者、タミヨウ》といったカードを展開することが可能です。
4CバージョンはJeskaiと異なり、コンボに頼らずともクリーチャーによるビートダウンで勝つことも可能で、デッキパワーも高く流行りの緑黒に強く、Mardu相手にもサイド後は若干相性が緩和されるので、お勧めのデッキの一つです。
5 《森》 7 《沼》 4 《霊気拠点》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》 4 《導路の召使い》 4 《巻きつき蛇》 3 《光袖会の収集者》 4 《不屈の追跡者》 2 《豪華の王、ゴンティ》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (25)- |
3 《霊気圏の収集艇》 4 《致命的な一押し》 3 《闇の掌握》 1 《殺害》 -呪文 (11)- |
4 《精神背信》 2 《膨らんだ意識曲げ》 2 《自然廃退》 2 《造命師の動物記》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《殺害》 1 《苦い真理》 1 《破滅の道》 -サイドボード (15)- |
プロツアー以来緑黒を使い続けているアメリカのプロ、Brad Nelson。スタンダードを得意とし、プロツアーでもスタンダード部門で8-2という好成績を残しており、今大会でも準優勝を収め、高い勝率を保っています。
☆注目ポイント
グランプリ・ピッツバーグ2017で優勝を収めていたリストと比べると、クリーチャーの選択が大きく異なります。《森の代言者》《ピーマの改革派、リシュカー》《地下墓地の選別者》といったクリーチャーが抜けて、《導路の召使い》、《不屈の追跡者》《豪華の王、ゴンティ》といったクリーチャーが採用されています。
《導路の召使い》はマナ加速以外にもエネルギーカウンターは《霊気圏の収集艇》や 《光袖会の収集者》があるので、使い道に困ることはありません。《ピーマの改革派、リシュカー》と比べると爆発力では劣りますが、《巻きつき蛇》を2ターン目に展開し除去されずに生き残ることが活躍する条件だったので、2マナと軽く、後手の際もそれほど遅れを取ることがない《導路の召使い》は安定感があります。
Brad Nelsonは後手の際に弱いカードの採用を可能な限り見送っており、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》も不採用となっているなど、Marduや緑黒ミラーといったアグロデッキとのマッチアップを意識しています。
《不屈の追跡者》は《巻きつき蛇》とのシナジーもあり、カードアドバンテージも取りやすく、Clueトークンをサクリファイスすることで《致命的な一押し》の「紛争」を誘発させることも可能で、Mardu相手には少し遅くなりますが、現在は緑黒が多いのでメイン採用です。
《豪華の王、ゴンティ》も接死持ちで1対2交換が可能であり、アドバンテージが取れるため、緑黒ミラー対策になります。キーカードを追放する能力はCopy Catに対しても効くため、《ゲトの裏切り者、カリタス》や他の4マナ域のクリーチャーよりも優先してメインから採用されています。
Copy Cat系とのメイン戦が厳しいため、《精神背信》や《膨らんだ意識曲げ》といった妨害要素や、《造命師の動物記》や《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》といったカードアドバンテージ獲得手段に多くのスペースが割かれています。
グランプリ・ユトレヒト2017
~Mardu Vehicleの逆襲~
2月26日
※画像は【Magic:the Gathering英語公式ページ】より引用させていただきました。 |
1位 Mardu Ballista
2位 Mardu Ballista
3位 Mardu Balista
4位 BG Aggro
5位 Mardu Vehicles
6位 BG Aggro
7位 BG Aggro
8位 4C Saheeli
トップ8のデッキリストは【こちら】
緑黒祭りだったグランプリ・ピッツバーグ2017と大きく異なり、グランプリ・ユトレヒト2017は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《歩行バリスタ》が活躍した大会でした。
Mardu Vehiclesは《歩行バリスタ》を採用し、緑黒の隆盛により復権してきているSaheeli コンボに対してリードを保ちつつ、ミラーマッチでも差を付けています。緑黒に強いSaheeliコンボは、Jeskai型よりもMardu Vehiclesとの相性が若干有利な4Cが主流となっています。
グランプリ・ユトレヒト2017 トップ16 デッキ紹介
「Mardu Balista」「Temur Energy Control」
2 《平地》 2 《山》 2 《沼》 4 《霊気拠点》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 4 《産業の塔》 1 《鋭い突端》 1 《凶兆の廃墟》 -土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《異端聖戦士、サリア》 -クリーチャー (18)- |
4 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (18)- |
4 《グレムリン解放》 3 《チャンドラの誓い》 3 《リリアナの誓い》 2 《先駆ける者、ナヒリ》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《領事の権限》 -サイドボード (15)- |
4 《平地》 2 《沼》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 4 《霊気拠点》 4 《産業の塔》 1 《乱脈な気孔》 -土地 (23)- 4 《歩行バリスタ》 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《屑鉄場のたかり屋》 1 《ピア・ナラー》 1 《異端聖戦士、サリア》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (20)- |
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 2 《霊気圏の収集艇》 4 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 -呪文 (17)- |
1 《領事の権限》 4 《グレムリン解放》 3 《チャンドラの誓い》 3 《リリアナの誓い》 2 《先駆ける者、ナヒリ》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
今大会の上位を支配したMardu Vehiclesは、特に新しいアーキタイプではないものの、初登場時よりもメタの移行とともに変化を遂げ、緑黒の増加やCopy Cat系のコンボの復権により、リストにも調整の跡が見られます。《歩行バリスタ》やメインのプレインズウォーカーの増量など、従来のMardu Vehiclesよりも重めの構成で、全体的にデッキパワーが高まっています。
☆注目ポイント
《歩行バリスタ》が2マナ域のクリーチャーとして採用されており、《歩行バリスタ》によって容易に除去されてしまう《経験豊富な操縦者》が抜けています。《キランの真意号》に搭乗できないのが気になりますが、余ったマナの使い道になり除去としても機能するのでミラーマッチでも強く、以前から相性が良かったSaheeliコンボとのマッチアップにもさらに強くなりました。
除去の選択にも変化が見られ、《致命的な一押し》が《ショック》の代わりにメインから採用されています。Saheeliコンボに対しては《歩行バリスタ》があり、緑黒やミラーマッチに強い《致命的な一押し》の方が現在は有効な選択肢です。《キランの真意号》や《巻きつき蛇》などをわずか1マナでインスタントタイミングで対策できるので、テンポ面でも優秀です。
今大会のファイナリストのFabrizio Campaninoは、《歩行バリスタ》とのシナジーのある《大天使アヴァシン》も採用しています。現環境でメインから採られていることの多い《致命的な一押し》で落とされないこともプラスです。
今大会の優勝者であるSamuel Vuillotのリストは《霊気圏の収集艇》が抜けて、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》4枚に加え、《反逆の先導者、チャンドラ》も採用されており、よりミッドレンジ寄りの構成です。プレインズウォーカーは忠誠カウンターを消費することで《キランの真意号》をクリーチャー化させることも可能などシナジーがあり、特に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はトークン生成能力、全体強化と、環境を支配するのに相応しいカードパワーです。
Samuelのサイドには《チャンドラの誓い》と《リリアナの誓い》いった2種類の除去に加え、《先駆ける者、ナヒリ》と《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》の2種類の追加のプレインズウォーカー、そして《グレムリン解放》がフルセットと、サイド後はMarduコントロールに変形していきます。Oathシリーズは、プレインズウォーカーが多いこのリストでは二つ目の誘発能力も発動しやすくなります。
《グレムリン解放》がフル搭載されていることから、ミラーマッチを意識していたことは明白で、決勝でもミラーマッチに勝利しています。
4 《森》 2 《島》 1 《山》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 4 《尖塔断の運河》 2 《伐採地の滝》 -土地 (21)- 3 《守られた霊気泥棒》 4 《ならず者の精製屋》 3 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー (10)- |
4 《霊気との調和》 2 《ショック》 4 《蓄霊稲妻》 3 《否認》 3 《予期》 1 《自然廃退》 1 《焼夷流》 3 《不許可》 4 《天才の片鱗》 4 《電招の塔》 -呪文 (29)- |
3 《つむじ風の巨匠》 3 《払拭》 2 《竜使いののけ者》 2 《慮外な押収》 2 《光輝の炎》 1 《否認》 1 《グレムリン解放》 1 《自然のままに》 -サイドボード (15)- |
惜しくもトップ8は逃しましたが、プロツアーサンデー経験もあるヨーロッパのプロのOndřej Stráskýは、Marduでも緑黒でもCopy Catでもないデッキを持ち込み、トップ16入賞を収めていました。
日本人プロでHall of Famerである八十岡 翔太さんが【MOのスタンダードリーグ戦で5-0したこと】で一部で注目を集めていた《電招の塔》を使ったTemurカラーのコントロールデッキで前環境から存在した青赤Dynavoltコントロールをベースに緑を足すことで機体に触りやすくなるとともに、エネルギーカウンターを補給しやすくなり、《光輝の炎》も3点スイーパーとして使えるようになり、マナ基盤も《霊気との調和》によって安定しています。
☆注目ポイント
《守られた霊気泥棒》は一見するとそこまで強そうなクリーチャーではないものの、瞬速持ちであり、カウンターや除去を構えながら、《屑鉄場のたかり屋》などのパワー3以下のクリーチャーをタフネス4で止めることが可能です。エネルギーカウンターも補給し、余裕があればカードドローも可能と、想像以上の強さを発揮します。
《ならず者の精製屋》は環境の多くのクリーチャーと相打ちが可能です。アドバンテージが取れるクリーチャーで、4C Saheeliコンボにも採用されており、緑を足すメリットの一つです。
《霊気との調和》はコントロールにとって必要な土地をサーチするとともにエネルギーカウンターも補充し、コストも軽いので《電招の塔》とのシナジーがあります。
青赤の2色のときには機体へのアンサーに貧しく、Marduなどのアグロデッキとのマッチアップを苦手としていましたが、緑を足したことでインスタントタイミングで機体対策が可能な《自然廃退》にアクセス可能になり、《屑鉄場のたかり屋》も墓地に送らずに対処できるようになりました。Marduが流行ることを想定していたようで、メインから採用されています。
総括
【前回の連載】でも予想したとおり、緑黒に対して強いSaheeliコンボが復権し、現在のスタンダードはMardu Vehicles、緑黒、Saheeliコンボの3強を中心にメタが回っています。
Saheeliコンボは4色型が人気で、苦手なJeskai型が少ないのも4色バージョンにとっては追い風です。
惜しくもトップ8は逃したもののTemur ControlはOndřej Stráskýも含めて使用していたプレイヤーの数名がトップ32フィニッシュだったこともあり、注目に値します。
以上USA Standard Express vol.92でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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