週刊デッキウォッチング vol.146 -ティムール不死進化-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ

サヒーリ・ライパンハモニコンレギサウルスの頭目

 「夢」と「実用性」を両立させるには、途方もない労力が必要だ。しかし、だからこそやりがいもある。『イクサラン』発売当初から話題になっていた《レギサウルスの頭目》《サヒーリ・ライ》との一撃14点コンボも、実現すれば興奮度120%の紛れもない「夢」でありながらも、「実用性」が伴わないためにこれまでは活躍が見られなかった。

 しかしこのデッキではティムールエネルギーベースのクリーチャー構成に加えて《パンハモニコン》まで搭載することで、「実用性」を確保することに成功している。14点では人は死なないが、《パンハモニコン》が設置してあれば20点パンチになるのだ。

 さらに《焼熱の太陽の化身》は単体で《レギサウルスの頭目》との相性も良い上に《パンハモニコン》《サヒーリ・ライ》ともシナジーがあり、「ティムールエネルギーなら本体火力はないだろう」と油断した相手に3の倍数でダメージを叩き込む。

 タッチの《人質取り》《スカラベの神》の効果も倍増するので、ティムール同型戦でもすべてのアクションが決定打となる。「夢」と「実用性」を両立させた実に楽しそうなデッキだ。

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■ モダン: ローグアグロ

雲ヒレの猛禽若き狼猿術

 「1回死んだ方が大きなサイズで帰ってくる」という奇妙な特性を持つ「不死」クリーチャーたちは、自分より大きなサイズのクリーチャーが出るごとにサイズを上げていく「進化」持ちのクリーチャーと相性が良い。とはいえそれだけなら相手が「不死」持ちを除去しに来なければどちらも小さなクロックで終わってしまうが、ならば自ら「不死」持ちを除去することで、対戦相手に依存しない高クロックを実現できる。

 《猿術》《急速混成》はどんな強力な能力を持ったクリーチャーも、たとえば《怒りの天使アクローマ》《大修道士、エリシュ・ノーン》であっても一瞬にして猿やカエルに変えてしまえる強力な除去スペルだが、3/3というのはそれ自体なかなか放置できるサイズではない。しかしこのデッキは自分の「不死」クリーチャーに打ち込むことで、たった1マナで「不死」を誘発させつつ3/3トークンを自らの場に生成するという荒業をコンセプトにしている。

 さらに「不死」と「進化」はどちらも+1/+1カウンターが乗る能力で、しかも「紛争」持ちの《ナーナムの改革派》も入っているので、《毅然さの化身》はコストパフォーマンスがかなり良いクリーチャーとなる。

 ほとんどのアクションが1マナな上に、フェッチから飛び出した《ドライアドの東屋》がいきなり3/3になるなど奇襲性抜群のコンセプトに《稲妻》も加わって、相手からしたらかなりやりづらいクロックパーミッションに仕上がっているこのデッキ。土地以外は格安となっているので、モダン初心者にもオススメできそうだ。

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■ レガシー: ペインター

絵描きの召使い帝国の徴募兵血染めの月

 《師範の占い独楽》が禁止されても「奇跡」は《アズカンタの探索》《先触れ》を駆使することで変わらずレガシー環境の強力なデッキであり続けているが、もとより赤単でドローソースに乏しい《絵描きの召使い》《丸砥石》とのコンボデッキ、「ペインター」の場合は、失った《師範の占い独楽》の穴埋めをするのはかなり難しいところだったかもしれない。だが『イクサラン』がレガシーにもたらしたのは、何も《アズカンタの探索》だけに限らないのだ。

 《宝物の地図》《師範の占い独楽》には及ばないもののドローを操作できるアーティファクトであり、3回目の能力起動以降はマナ加速にもなるので、《帝国の徴募兵》がマナを食うこのデッキのコンセプトにかみ合っている。《信仰無き物あさり》は手札の枚数自体は減ってしまうものの、どのカードも2枚目以降が不要なことが多いこのデッキでは、最低限のマナで手札をリフレッシュするのに最適だ。

 4枚の《反逆の先導者、チャンドラ》に加えて《屑鉄の学者、ダレッティ》まで採用されており、《血染めの月》で相手をロックした後は速やかにコンボを揃えにいくことができる。

 《罠の橋》《丸砥石》の枚数が減っていても問題にならないほどの赤らしからぬドローソースの量で安定した動きを実現した「ペインター」は、メタゲームの片隅からいつでも虎視眈々と頂点を狙える隙を窺っている。

「ペインター」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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