週刊デッキウォッチング vol.148 -グリクシス無駄省き-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ

火付け射手謎変化選択

 Pauperのバーンでも採用されるほどのポテンシャルを持った《火付け射手》なら、《ショック》《稲妻の一撃》と揃ったスタンダードでも活躍して何ら不思議ではない。青赤《謎変化》というアーキタイプは『破滅の刻』ドラフトでも強力なアーキタイプだったが、『イクサラン』が加わったことでさらに洗練された形へと仕上がっている。

 《選択》《火付け射手》《謎変化》の8枚を探しにいくことで動きを安定させつつ、設置後の誘発にも寄与する。《航路の作成》《ボーマットの急使》と合わせて、呪文連打で手札を消耗しがちなこのデッキにとっては貴重なリソース源だ。

 《呪文貫き》《送還》を構えて相手が動けばテンポをとり、動かなければ《謎変化》の占術で少しずつアドバンテージを積み重ねていく。

 10点前後までライフを詰めることができれば、最後は《嘲笑+負傷》からの呪文連打でフィニッシュとなる。1マナ呪文の連打でPauperやモダンのような動きができるので、他のフォーマットからスタンダードに復帰する際には持ってこいのデッキと言えるかもしれない。

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■ モダン: ローグ

無駄省き燃え立つ調査悲しげな考え

 相手が捨てたカードによって効果が変動する《無駄省き》を効率良く運用するためには、結局能力の発動回数そのものを増やすしかない。だが手札破壊呪文はその性質上、相手の手札が尽きてしまうと役立たずとなってしまう。このジレンマを解消するにはどうすればいいか?答えは簡単だ。相手にカードを引かせればいいのだ。

 《燃え立つ調査》はわずか1マナで3枚を捨てさせることができ、しかもディスカードもランダムなので引かせることのデメリットもそこまで大きくはない。さらに《悲しげな考え》はカードカウントだけで見れば《精神腐敗》と同等の効果がある上に、《無駄省き》を設置している状況では4回も能力を誘発させることができる優れものだ。

 これらのスペルは相手の手札がなくなっても変わらず《無駄省き》を誘発させることができるので、《ヴリンの神童、ジェイス》《瞬唱の魔道士》で躊躇なく使いまわすことができる。

 《無駄省き》でマナが生まれたら《夢の回収》を打つことでさらにアドバンテージを拡充できる。《無駄省き》フリークにはたまらないデッキだ。

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■ レガシー: 兵士

秀でた隊長生ける願いトレストの随員

 vol.102でも紹介したことがある、レガシーで地味ながら根強い人気がある兵士ビートダウン。通常は白単で組まれることが多いこのアーキタイプだが、今回はかなり独創的な白緑のバージョンを紹介しよう。

 2ターン目までに着地させた《虚空の杯》《三なる宝球》で対戦相手の行動を封じたのちに《秀でた隊長》から出てくるのは、お馴染みの《警備隊長》に加えて緑の「え、これ『兵士』なの!?」というカードたち。「統治者」になる《トレストの随員》は確かに唯一無二の能力ではあるのだが、《ロウクスのやっかいもの》に至ってはすさまじい発想力としか言いようがない。だが確かに、「素出し可能な色とマナ域で」「単体で多くの障害を乗り越えられて」「かつ速やかに対戦相手を倒せる『兵士』」という検索条件となると、意外とこれくらいしか存在しないのかもしれない。

 《王位の守護者》《古えの墳墓》からのダメージも吸い込んでくれるし、《実物提示教育》に合わせて《永遠警備の歩哨》を出せれば、《引き裂かれし永劫、エムラクール》すらも封殺することができる。

 さらに緑を足した恩恵として、《生ける願い》から状況に応じたクリーチャーや土地を引っ張ってこれるというのもある。集めた《Savannah》の使い道に悩んでいる方などにぜひとも試してみて欲しい素敵なデッキだ。

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■ ヴィンテージ: 人間アグロ

封じ込める僧侶瘡蓋族の狂戦士ファイレクシアの破棄者

 《スレイベンの守護者、サリア》《封じ込める僧侶》《瘡蓋族の狂戦士》といった多様なヘイトベアーを手に入れたことで実用クラスになったヴィンテージの人間アグロは、とはいえ完全なクリーチャー単というわけではなく、《スレイベンの守護者、サリア》があるとはいっても《Ancestral Recall》《Time Walk》《突然の衰微》《剣を鍬に》といった一部の強力なスペルはしっかりと搭載しているのがこれまでは普通であり、しかしそれは同時に色付きスペルを唱えられる5色ランドの搭載を要求するため、マナベースに負担をかける一要素ともなっていた。

 だが昨今ますます強力になった人間クリーチャーのラインナップに加えて《手付かずの領土》が参入したことによって、実質クリーチャー単とも呼べる人間アグロにも一定の合理性が認められることとなった。《ファイレクシアの破棄者》《無のロッド》は、《魂の洞窟》《手付かずの領土》からでも関係なくプレイできるのが強みだ。

 スタンダードでも活躍する《過酷な指導者》《帆凧の掠め盗り》はヴィンテージでも変わらず強力だし、「高名」した《瘡蓋族の狂戦士》《配分の領事、カンバール》が並んでしまえば、もはや対戦相手は《逆説的な結果》など唱えてはいられないだろう。

 ヴィンテージといえど必ずしも《Ancestral Recall》《Time Walk》、あるいは《Mishra's Workshop》といったカードを使わなければいけないわけではない。「人間」というクリーチャータイプはセットが出るたびに強力になり続けていくだけに、ヴィンテージでも今後目が離せない存在になりつつあると言えそうだ。

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 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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