USA Standard Express vol.94 -環境終盤を制する機体と塔-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。

 グランプリが終了し、この環境のスタンダードもあとわずかです。新セット『アモンケット』の情報も出始めており、過去のブロックで採用されていた「サイクリング」の復活など、面白そうな要素が満載で今から楽しみです。

 さて、今回の連載ではグランプリ・静岡2017春と、グランプリ・ポルトアレグレ2017の入賞デッキを見ていきます。

グランプリ・静岡2017春
~やはり最強はMarduか~

3月19日

※画像はマジック:ザ・ギャザリング日本公式より引用させていただきました。


1位 Mardu Vehicles
2位 Mardu Vehicles
3位 Temur Dynavolt
4位 Mardu Vehicles
5位 Mardu Vehicles
6位 Mardu Vehicles
7位 Mardu Vehicles
8位 Jund Smasher

トップ8のデッキリストは【こちら】

 直前の週に開催されたグランプリ・ニュージャージーで勝っていた4C Saheeliは今大会のプレイオフでは見られず、Mardu Vehiclesがトップ8に6名、決勝戦もMardu Vehiclesのミラーマッチで、トップ32まで見渡しても16名と半数を占め、環境最強のデッキということが証明されました。

他にはSaheeliコンボや緑黒に続く勢力とされていたTemur Dynavoltや、緑黒とエルドラージのハイブリットのJund Smasherが見られます。

グランプリ・静岡2017春 トップ8デッキ紹介

「Mardu Vehicles」「Jund Smasher」


桐野 亮平「Mardu Vehicles」
グランプリ・静岡2017春(優勝)

4 《平地》
1 《山》
1 《沼》
2 《燻る湿地》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》
1 《乱脈な気孔》
1 《鋭い突端》
4 《産業の塔》
3 《霊気拠点》

-土地 (25)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《屑鉄場のたかり屋》
2 《異端聖戦士、サリア》
3 《大天使アヴァシン》
3 《歩行バリスタ》

-クリーチャー (20)-
3 《致命的な一押し》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (15)-
2 《ショック》
2 《苦い真理》
2 《停滞の罠》
2 《グレムリン解放》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
1 《保護者、リンヴァーラ》
1 《致命的な一押し》
1 《リリアナの誓い》
1 《苦渋の破棄》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya



 今大会で見事に優勝トロフィー獲得を果たした桐野 亮平 選手のリストは、アメリカのプロでHall of FamerのOwen TurtenwaldがGP New Jerseyでトップ16入賞を果たした物と同様でした。初出場のグランプリで優勝というパフォーマンスには脱帽です。

 禁止改定の結果もノーチェンジだったことからベストデッキは変わらず、ミッドレンジ寄りのMardu Balistaが安定した成績を残し続けていました。《大天使アヴァシン》がメインから採用され、サイド後はプレインズウォーカーも投入してコントロールに変形するため土地も25枚と多めに採用されており、多色ながらマナ基盤も安定しています

☆注目ポイント

歩行バリスタ

 Saheeliコンボの妨害にもなり、《大天使アヴァシン》を反転させる手段にもなる《歩行バリスタ》は、アーテイファクトなので《模範的な造り手》《産業の塔》《無許可の分解》といったカードともシナジーがあることからMarduにも採用されています。

大天使アヴァシン

 メインから3枚と多めに採用されている《大天使アヴァシン》は高いカードパワーを持ち、ミラーマッチでは相手のプレインズウォーカーにプレッシャーを与え、相手にとっては5マナがアンタップしている状態では《キランの真意号》でアタックするのもリスクが伴います。

 Saheeliコンボに対しても《無許可の分解》などの妨害スペルを構えつつ、サヒーリ側が何もせずにターンを終えた場合も瞬速で着地させることが可能でターンが無駄になりづらく、変身させることでブロッカーの飛行機械トークンを一掃します。Saheeliコンボ側は《大天使アヴァシン》に対する有効な除去が少ないので、頼りになるフィニッシャーとなります。

停滞の罠

 サイドの《停滞の罠》はミラーマッチで活躍します。《大天使アヴァシン》《屑鉄場のたかり屋》といったクリーチャーに有効でインスタントタイミングでもキャストできるので、使いやすい除去です。

保護者、リンヴァーラ

 《保護者、リンヴァーラ》もミラーマッチで使えるクリーチャーで、不利な状況を逆転する能力を持っており、コントロールに変形するサイド後のゲームで重宝します


伊藤 大明「Jund Smasher」
グランプリ・静岡2017春(8位)

4 《森》
2 《沼》
1 《山》
1 《燻る湿地》
1 《進化する未開地》
4 《花盛りの湿地》
1 《風切る泥沼》
1 《獲物道》
4 《霊気拠点》
3 《産業の塔》

-土地 (22)-

4 《歩行バリスタ》
4 《屑鉄場のたかり屋》
3 《巻きつき蛇》
3 《地下墓地の選別者》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
2 《不屈の追跡者》
3 《現実を砕くもの》
1 《新緑の機械巨人》

-クリーチャー (22)-
4 《致命的な一押し》
3 《霊気との調和》
4 《無許可の分解》
1 《ニッサの誓い》
3 《キランの真意号》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-呪文 (16)-
3 《精神背信》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《蓄霊稲妻》
2 《自然廃退》
1 《害悪の機械巨人》
1 《膨らんだ意識曲げ》
1 《グレムリン解放》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《生命の力、ニッサ》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya


 Mardu が上位の半数以上を占める中、革新的なデッキも見られました。緑黒に赤黒エルドラージアグロをハイブリットさせたような構成のアグロデッキ、Jund Smasherです。

現実を砕くもの

 マナカーブの頂点に採用されたクリーチャーに注目してみると、メインは《新緑の機械巨人》はわずかに1枚で、《現実を砕くもの》が採用されており、《サヒーリ・ライ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《反逆の先導者、チャンドラ》といったプレインズウォーカーにプレッシャーをかけていきます

☆注目ポイント

巻きつき蛇ピーマの改革派、リシュカー不屈の追跡者

 《巻きつき蛇》《歩行バリスタ》《ピーマの改革派、リシュカー》《不屈の追跡者》など、基本的な構造は緑黒で、MarduやSaheeliコンボがトップメタの環境に対応するために調整が施されています。

無許可の分解

 環境有数のインスタントスピードの除去で、赤を足す理由である《無許可の分解》《歩行バリスタ》《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》、そして《領事の旗艦、スカイソブリン》とアーティファクトが多めに採られているので追加のダメージも誘発させやすく、プレインズウォーカーの処理が大分楽になりました

地下墓地の選別者

 《地下墓地の選別者》はカードパワーでは他の3マナ域のクリーチャーと比べると若干劣りますが、《現実を砕くもの》を4ターン目に展開する助けになり、《致命的な一押し》の「紛争」の条件も満たしやすくします。

現実を砕くもの

 《現実を砕くもの》は環境の主要な除去である《致命的な一押し》が効かず、速攻、トランプル、除去耐性とプレインズウォーカー対策としても申し分ない性能です

グランプリ・ポルトアレグレ2017
~環境の伏兵である"あのデッキ"が、ついに勝利~

3月19日

※画像はマジック:ザ・ギャザリング英語公式より引用させていただきました。


1位 Temur Dynavolt
2位 Mardu Vehicles
3位 B/G Delirium
4位 B/G Energy
5位 Mardu Vehicles
6位 Four-Color Saheeli
7位 Four-Color Saheeli
8位 Four-Color Saheeli

トップ8のデッキリストは【こちら】

 現環境のスタンダードは既に解明されMarduとSaheeliコンボの2強だと思われていましたが、今大会で見事に優勝を飾ったVictor Fernando Silvaはそれに賛同することなく、GP級の大会でトッププロによってプレイされ、密かに注目を集めていたTemur Dynavoltを完成させました

 グランプリ・静岡2017春の結果と異なり、プレイオフは緑黒、Saheeliコンボ、Mardu、Temur Dynavoltと複数のアーキタイプが見られます。

グランプリ・ポルトアレグレ2017 トップ8デッキ紹介

「Temur Dynavolt」「Four-Color Saheeli」


Victor Fernando Silva「Temur Dynavolt」
GP Porto Alegre 2017(優勝)

3 《島》
3 《森》
2 《山》
4 《植物の聖域》
4 《尖塔断の運河》
2 《伐採地の滝》
4 《霊気拠点》

-土地 (22)-

4 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (4)-
4 《霊気との調和》
4 《蓄霊稲妻》
3 《否認》
2 《手酷い失敗》
2 《焼夷流》
2 《自然廃退》
1 《予期》
3 《コジレックの帰還》
3 《虚空の粉砕》
2 《不許可》
4 《天才の片鱗》
4 《電招の塔》

-呪文 (34)-
4 《牙長獣の仔》
4 《不屈の追跡者》
2 《ナーナムの改革派》
2 《払拭》
1 《自然廃退》
1 《否認》
1 《虚空の粉砕》

-サイドボード (15)-
hareruya



 「現環境のスタンダードはMarduとSaheeliコンボの2強の環境か?」と聞かれれば、多くのプレイヤーがYesと答えると思われますが、少なくとも今大会を制したVictor Fernando Silvaはそう考えなかったようです。

電招の塔

 Temur Dynavoltは決して新しいアーキタイプではありませんが、現環境で姿を見せるコントロールデッキで、「サヒーリコンボに対して強く、Marduに対して不利」という立ち位置でしたが、Victor Fernando SilvaはMardu対策になるカードを数種類メインから採用することで相性を克服し、決勝戦でも勝利しています。

☆注目ポイント

 《ならず者の精製屋》《守られた霊気泥棒》といったクリーチャーが抜けて、メイン戦では相手の《致命的な一押し》が無駄カードになるので疑似的なアドバンテージになります。

手酷い失敗奔流の機械巨人虚空の粉砕

 《手酷い失敗》《虚空の粉砕》などのカウンターが多めに積んであり、それらを再利用できる《奔流の機械巨人》も合わせると合計14枚のカウンター呪文がメインに採用され、現在のスタンダードでは珍しい、ヘビーパーミッションのコントロールです。

 決定打となるスペルが《守護フェリダー》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》といった4マナ以上のスペルで、環境のアグロデッキ的な立ち位置であるMarduも同型を意識して重めの構成にシフトしてきているので、パーミッションは現在のメタでは中々良いポジションです

焼夷流

 Victorはメインから《屑鉄場のたかり屋》対策を多めに採っています《焼夷流》《自然廃退》《虚空の粉砕》《手酷い失敗》はすべて《屑鉄場のたかり屋》対策になり、これによってMarduとの相性が緩和されています。

コジレックの帰還

 《コジレックの帰還》はインスタントスピードで相手の小型クリーチャーをスイープしつつ《電招の塔》のエネルギーを補充します。

自然廃退

 《自然廃退》は、Mardu以外にも同型、各種機械巨人、緑黒でも見られる《歩行バリスタ》や、最近は《霊気池の驚異》など、Saheeliコンボ以外のほとんどのデッキが何かしらのアーティファクトを使っているので、無駄になることは少ないでしょう

牙長獣の仔ナーナムの改革派

 Victorは《牙長獣の仔》《ナーナムの改革派》《不屈の追跡者》と10枚の緑のクリーチャーをサイドに積んでおり、サイド後はTemur Aggroに変形します。これらのクリーチャーは軽く、除去が少なくなるサイド後は対策されづらくなります。このサイドテクは決勝戦のMarduとのマッチアップでも通用し、《牙長獣の仔》《不屈の追跡者》が大活躍していました


Carlos Alexandre Dos Santos Esteves「Four-Color Saheeli」
GP Porto Alegre 2017(8位)

5 《森》
1 《島》
1 《山》
1 《平地》
1 《進化する未開地》
4 《植物の聖域》
2 《尖塔断の運河》
2 《獲物道》
4 《霊気拠点》

-土地 (21)-

4 《導路の召使い》
2 《歩行バリスタ》
3 《つむじ風の巨匠》
3 《ならず者の精製屋》
2 《不屈の追跡者》
4 《守護フェリダー》

-クリーチャー (18)-
3 《霊気との調和》
4 《蓄霊稲妻》
4 《ニッサの誓い》
2 《チャンドラの誓い》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
4 《サヒーリ・ライ》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (21)-
2 《逆毛ハイドラ》
2 《ショック》
2 《払拭》
2 《否認》
2 《自然廃退》
2 《グレムリン解放》
1 《不屈の追跡者》
1 《領事の権限》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-サイドボード (15)-
hareruya



 MOを中心に活動し、かつてはDaily Eventで勝ち続けていたCarlos Alexandre Dos Santos Esteves(MOアカウント:_Batutinha_)も初日を不戦勝なしで8-1という好成績で終え、二日目も4-1-1でプレイオフ進出を決めました

 リアルでもグランプリ・サンパウロ2014で優勝を経験している強豪で、今大会ではFour-Color Saheeliを選択しています。

☆注目ポイント

不屈の追跡者歩行バリスタ

 《不屈の追跡者》《歩行バリスタ》をメインから採用した型で、コンボに頼らずとも多色ミッドレンジとしても振舞うことができます。相手がクリーチャーや《反逆の先導者、チャンドラ》の対策のためにリソースを消費したところでコンボを決めることが可能で、対戦難易度が高いデッキです

領事の旗艦、スカイソブリン

 Marduに対して有効なサイドカードであった《領事の旗艦、スカイソブリン》がメインから採用されています。Marduは現環境のベストデッキなので、メインから有利を取れるカードである《実地研究者、タミヨウ》よりも優先的に採用されているのも納得です。

歩行バリスタ

 《歩行バリスタ》はメインの除去密度を増しつつ余分なマナの使い道となり、同型でも相手のコンボを妨害する手段になります

逆毛ハイドラ

 サイドの《逆毛ハイドラ》はTemur Dynavoltのサイドにも採用されていたクリーチャーで、自身を強化しつつ除去耐性も付けることが可能です。クリーチャーを多くすると見越して除去を残す、または追加してくる相手に対して有効なフィニッシャーとなります。

総括

 グランプリ・静岡2017春の結果は、Marduの圧倒的な勝利で幕を閉じましたが、グランプリ・ポルトアレグレ2017では現環境で有力なデッキが揃って結果を残し、SaheeliコンボとMarduの2強に匹敵するポテンシャルを持つアーキタイプとされ、一部のトッププロからも注目を集めていたTemur Dynavoltが遂に優勝を果たしました

電招の塔

 グランプリ・静岡2017春でもプレイオフに勝ち残っており、トップメタの仲間入りを果たしたと考えて間違いありません

 以上USA Standard Express vol.94でした。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

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