皆さんこんにちは。本日、いよいよ待ちに待った新セット『アモンケット』がリリースされました。アメリカでは早速スタンダードのSCGOがAtlantaで開催されます。
気になる禁止改定ですが、公式アナウンスの予定日の4月24日の時点ではノーチェンジでしたが、4月26日に禁止制限告知の追加が行われ、前環境を支配したSaheeliコンボのパーツである《守護フェリダー》が急遽禁止カードに指定されました。この決定に至った詳しい経緯については公式でも発表されています。
今回の変更については賛否両論で世界中のプレイヤーがSNS上で討論をしています。筆者もSaheeliコンボは明らかに支配的で環境の停滞を招いていたので、コンボの片割れである《守護フェリダー》を禁止にすること自体には賛成でしたが、このタイミングで禁止カードを出すことには少し疑問を抱かざるを得ませんでした。
禁止改定がアナウンスされた4月24日から少なくても次の禁止制限告知までSaheeliコンボが使えることを前提に考えられていたので、デッキに必要なパーツを集めたプレイヤーや調整のために時間を費やしたプレイヤーにとってはこの予定外の追加の禁止は特に痛手となりました。ライターとしてもプレイヤーとしても、今後はなるべくこのようなことが起きないことを望むばかりです。
ただ、今回の変更の良かった点はプロツアーが対策困難なコンボの支配するイベントではなくなったことです。《守護フェリダー》の退場によりSaheeliコンボが死滅し、今までこのデッキの存在により肩身の狭い立場にあったデッキの復権が期待できます。
さて、今回の連載では新環境のスタンダードで活躍しそうなアーキタイプを見ていきたいと思います。
新環境のデッキ
Mardu Vehicles
まずは旧環境でSaheeliコンボと並んでベストデッキとされていたMardu Vehiclesから見ていきたいと思います。
4 《平地》 3 《山》 2 《泥濘の峡谷》 4 《産業の塔》 2 《霊気拠点》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 -土地 (23)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《経験豊富な操縦者》 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《異端聖戦士、サリア》 2 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー (20)- |
3 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 2 《耕作者の荷馬車》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (17)- |
Saheeliコンボを対策する必要がなくなるため、《歩行バリスタ》を抜いて本来のMardu Vehiclesに近い構成となりそうです。
《栄光をもたらすもの》は《大天使アヴァシン》に代わる5マナ域のクリーチャーで、4/4飛行速攻とあの《嵐の息吹のドラゴン》を彷彿とさせるクリーチャーです。プロテクションはないもののプレインズウォーカーに対するアンサーとして有力で、「督励」することで除去としても働きます。
Saheeliコンボの退場の影響により《ショック》よりも『アモンケット』から再録された《マグマのしぶき》が優先されそうなので、《屑鉄場のたかり屋》の支配力は以前よりも落ちそうです。とはいえ、前環境を支配していたデッキで禁止による影響を免れているので、プロツアーでもトップメタの一角として活躍が予想されます。
UW Cycling Control
7 《島》 5 《平地》 4 《灌漑農地》 2 《大草原の川》 2 《異臭の池》 2 《まばらな木立ち》 4 《港町》 -土地 (26)- 4 《秘法の管理者》 2 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー (6)- |
4 《検閲》 2 《鑽火の輝き》 4 《新たな信仰》 3 《不許可》 4 《ヒエログリフの輝き》 3 《燻蒸》 4 《ドレイクの安息地》 4 《排斥》 -呪文 (28)- |
『オンスロート』ブロックに収録されていた《稲妻の裂け目》と《霊体の地滑り》はAstro Glideという「サイクリング」を利用したコントロールデッキを生み出し猛威を振るいました。《ドレイクの安息地》は《稲妻の裂け目》を彷彿とさせる能力で、バーンの代わりに「サイクリング」するたびに1マナ払うことで2/2飛行のDrakeクリーチャーを生み出します。カウンターや除去を構えるスタイルの青白コントロールの方向性にもマッチしており、UW Drakeという新たなアーキタイプを生み出すほどのポテンシャルを持っています。
《ヒエログリフの輝き》は「サイクリング」付きスペルなので墓地に送りやすく、《奔流の機械巨人》とのシナジーもあり使いやすいドロースペルです。
《検閲》はマナが少ない序盤は相手の脅威をカウンターし、マナが余る中盤以降は「サイクリング」できるので無駄にならず、このデッキのように《ドレイクの安息地》を使ったデッキを含めると多くの青いデッキで使われそうな優秀な「サイクリング」付きのカウンターです。レガシーの《目くらまし》と同様に、このスペルが環境に存在することで相手もスペルをキャストする際に警戒してタップアウトしにくくなります。相手の展開を遅れさせることでこのデッキの得意なロングゲームに持ち込みます。今後多くの青を使うデッキで使われそうです。
《排斥》は「サイクリング」付きのインスタントスピードの除去で、黒を使用せずに青白でプレインズウォーカーを処理できるのは大きく、スタンダードの様々なデッキで採用されることが予想されるエンチャントで、このカードの影響でエンチャント対策の価値が増すことが予想できます。
黒緑アグロ
禁止制限告知の追加が行われる前の環境ですが、MOでは既に『アモンケット』がリアルに先行して導入されており、調整することで新環境でも使えそうなデッキもいくつか見られます。
前環境でも人気のあった黒緑アグロも『アモンケット』からの新戦力を獲得し、天敵であったSaheeliコンボの退場により、プロアクティブな戦略のこのデッキは今週末のSCGO Atlantaでも人気が出そうなデッキです。
5 《森》 3 《沼》 4 《霊気拠点》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地 (20)- 4 《歩行バリスタ》 4 《緑地帯の暴れ者》 4 《光袖会の収集者》 4 《牙長獣の仔》 4 《巻きつき蛇》 3 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《不屈の神ロナス》 1 《刻み角》 -クリーチャー (26)- |
4 《霊気との調和》 4 《致命的な一押し》 4 《闇の掌握》 2 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -呪文 (14)- |
4 《屑鉄場のたかり屋》 3 《刻み角》 2 《新緑の機械巨人》 2 《顕在的防御》 2 《不帰+回帰》 1 《生類の侍臣》 1 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -サイドボード (15)- |
緑のGodの《不屈の神ロナス》は3マナ5/5接死、破壊不能と高スペックで、起動能力や+1/+1カウンターによって強化が可能なこのデッキではクリーチャーとして機能させるのも比較的容易です。
メインから採用されている《刻み角》は、採用の理由の一つであったSaheeliコンボは居なくなったものの、《歩行バリスタ》《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》《霊気池の驚異》など環境には強力なアーテイファクトが多数存在するので、引き続きメイン採用でも良いかも知れません。また、2番目の能力は《奔流の機械巨人》が瞬速でブロックに参加するのを対策します。
UR Control
9 《島》 4 《山》 4 《霊気拠点》 4 《尖塔断の運河》 4 《さまよう噴気孔》 1 《高地の湖》 -土地 (26)- 4 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー (4)- |
4 《マグマのしぶき》 4 《検閲》 3 《否認》 2 《本質の散乱》 4 《蓄霊稲妻》 2 《明日からの引き寄せ》 4 《不許可》 2 《焼けつく双陽》 4 《天才の片鱗》 1 《暗記+記憶》 -呪文 (30)- |
3 《払拭》 2 《竜使いののけ者》 2 《氷の中の存在》 2 《グレムリン解放》 2 《本質の散乱》 2 《慮外な押収》 1 《否認》 1 《粗暴な排除》 -サイドボード (15)- |
『アモンケット』にはコントロールで使えそうな優秀なスペルが多数収録されており、青いコントロールデッキの復権にも一役買っているようです。
再録された《マグマのしぶき》はコントロールにとって頭痛の種であった《屑鉄場のたかり屋》など墓地から復活してくるクリーチャーに対する解答になり、新メカニズムである「不朽」持ちのクリーチャーも処理できます。Saheeliコンボなき今《ショック》に代わる軽い除去スペルとして赤を使うデッキの主力の除去として使われそうです。
《明日からの引き寄せ》は青いコントロールデッキが必要としていたインスタントスピードのドロースペルで、ライフゲインはないもののあの《スフィンクスの啓示》と同様に中盤以降カードアドバンテージによって引き離します。カードを捨てるのもインスタントスペルを捨てることで《奔流の機械巨人》とのシナジーもあり、メリットにもなり得ます。
《焼けつく双陽》は《光輝の炎》と異なり3色目のマナを必要としないので青赤の2色デッキでも使えるスイーパーで、このタイプのカードがあまり役に立たないコントロールミラーなどのマッチアップでは「サイクリング」することもできるので、使いやすいスペルです。
《暗記+記憶》は面白いスペルで『アモンケット』の中でも筆者のお気に入りのカードの1枚です。カウンターのように使うことも可能なバウンススペルで、あの《造物の学者、ヴェンセール》を彷彿とさせます。《造物の学者、ヴェンセール》と異なる点は手札に戻す代わりにライブラリーにバウンスさせるため、通常のバウンススペルと異なりアドバンテージを失うことなく危険なスペルやプレインズウォーカーなどの厄介なパーマネントを一時的とはいえ対処することが可能な点で、性質上無駄になりにくく、またマナコストも4マナと強すぎることも弱すぎることもない良くデザインされたカードです。
《奔流の機械巨人》で《暗記》の部分を再利用することが多くなりそうなので相手にもカードをドローさせてしまうリスクの高い《記憶》は現在のところあまり使うことはないと思われますが、ロングゲームにおいて無駄カードや余分な土地を入れ替えることができるという選択肢があることは重要です。6マナと決して軽いとは言えないコストですが、Vintageの制限カードである《Timetwister》と同様の効果です。
総括
Saheeliコンボが環境から退場することで、コンボ対策のために無理にデッキを歪める必要がなくなり、ミッドレンジやアグロなど様々なデッキが復権、登場することが予想されます。現時点では現環境でも頭一つ抜けたカードパワーの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《キランの真意号》を採用した、前の環境でも支配的な強さを見せたMardu Vehiclesが新環境のベストデッキの候補とされていますが、Saheeliコンボと相性が悪く環境から締め出されていたデッキも復権してくると思われるので、以前とは環境が異なり新環境初のビッグイベントであるSCGO Atlantaが楽しみです。
今回の決定はタイミング的な面では問題がありましたが、アメリカのプロのReid Dukeも懸念していた「プロツアーCopy Cat」状態になることは防ぐことができたことを考えると、長い目で見れば適切な判断だったと言えそうです。
以上USA Standard Express vol.95でした。次回の連載では新セットリリース直後に開催予定のSCGO Atlantaの入賞デッキを見ていく予定です。
楽しいスタンダードライフを!
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